ご挨拶
2007.01.27 [Sat] 04:32

 

はじめまして、管理人のジャンクと申します。


初めにお断りさせていただきますが、こちらはGL・百合などと呼ばれる女性同士の恋愛、
もしくは友情を題材としたオリジナルの小説創作メインのブログになります。

上記表現に嫌悪をお感じになる方、知らずに迷い込んでしまった方は、
続きを読まずに「戻る」を押す事をオススメします。

読んだ後、不快感を感じた場合の責任は取りかねます。

なお、性的な描写はないと思いますが、
もしそういった表現が出てきた場合は、あらかじめ年齢制限の断りをさせていただきます。

色々とお見苦しい点があるかもしれませんが、
WEB拍手およびメールフォームを設置してありますので、ご意見・ご感想などは、
そちらによろしくお願いします。

拍手内には、現在3本の短編が入っています。
更新時にはお知らせしますので、是非そちらもお楽しみくださいね(^_^)


また記事の並びが、古いものから順に並ぶように設定されていますが、
TOPに最終更新を書いておりますので、そちらをチェックしてください。



ではでは、少しでも楽しんでいただければ幸いです(o^-^o)






↓お世話になっている検索サイト様↓




【Girs Love Search様】




登場人物紹介
2007.01.27 [Sat] 04:35

『旅人の木』に出てくる登場人物について、紹介させていただきます。
まずは、主要人物の3人について。

後から、追加するかもしれません。



以下、人物紹介

旅人の木 1
2007.01.27 [Sat] 04:38

突然だが、世間一般の『女子高』に対するイメージって、かなり間違ったものがあると思う。

私、大城翔子(おおき しょうこ)が通ってる大阪の高校は、世間では一応お嬢さま高校って言われてるけど、朝の挨拶で『ごきげんよう』なんて言わないし、会話にも敬語なんて使わない。
笑い方だって、『ウフフ』みたいなお上品な笑い方をする人はほとんどいなくて、どちらかといえば『アハハ』って感じ。

漫画やアニメでは、よく『みんなの憧れの先輩』なんてものも登場するけど、そんな面白い存在いやしない……っていうか、部活でもしていない限り、先輩なんていないも同然なんだよね。
そりゃ、「同じ部活のナントカ先輩って、優しいし上手いし、カッコイイんだよ〜」なんてのは聞いた事もあるけど、せいぜいそんなもん。

『女子高特有』とか言われる、禁断のナントカとか、妙に甘美なアレコレ。
そんなものは、幻想でしかないのだ!



って、思ってたんだよなぁ、さっきまでは……




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




あー、なんでわかっちゃったんだろ。
というか、なんで今まで気づかなかったんだろうなぁ、みんなも私も。




『それ』に気がついたのは、高校1年の2学期が始まって間もない頃。

9月とはいえ、うちの高校には室内プールがあるから、9月いっぱいは体育が水泳の授業になる。
私みたいに水泳が嫌いな生徒には、まったくもって迷惑極まりない。


そんなわけで、人口密度が異常に高い更衣室で、押し合い圧し合い、ぶつかりそうになりながら微妙なバランスを保って、クラスの皆が水着に着替えている中。

ふと顔を上げ、2mほど離れたところに立っているクラスメートの一人を見た瞬間、
何故だかわからないが、気づいてしまったのだ。

――彼女が、彼女に送る視線に。



身も蓋もない言い方をすれば、それは欲望丸出しというやつで。
彼女の視線は、今まさに着替え真っ最中の彼女、及川早苗の真っ白な肌に釘付けだった。

そりゃね、女同士とはいえ、「あの子、胸大きいよな〜」とか「すっごいスタイル良い!」とかっていうので、思わずガン見しちゃうのは、誰にだってあると思うんだ、うん。
下手すりゃ触ってくるんだよね、女の子って。

だから胸の大きな子なんて特に、「着替え中は背後に要注意!」は当たり前なんだけど、この場合、彼女の視線は明らかにそういう類ものじゃない。
それくらいの違いは、私にだってわかるんだよ。

じゃあ、どういうのかって言われれば……、『触れたくて仕方ないけど、ガマンしなきゃ!』って、自分の感情を必死で押し殺しているような、切ない目だった。



だから、私にもわかってしまったのだ。
彼女――小田優希は、早苗ちゃんに恋をしているんだ、って。

旅人の木 2
2007.01.27 [Sat] 04:44

 
1度気づいてしまえば、あとは本当にわかりやすいものなんだな、と。
そのわかりやすさときたら、今まで気づかなかった自分に呆れてしまうほどで、「この子、もしかして隠す気もないんじゃないの?」って思ってしまったくらい。


そんなわけで、水泳の授業以降。
数日に渡って優希の観察を続けていくうちに、私の中でまだボンヤリとした仮定だったものは、どんどんと確信に変わっていった。


早苗ちゃんと話してる時の、「そんな顔、私には絶対見せないだろ!」って突っ込みたくなるほど優しい表情とか、さりげない気遣いとか。

授業中、ハッキリ言ってやる気ゼロな優希が、早苗ちゃんが当てられて朗読とかしてる間だけは、一言一句逃さないように教科書をジッと見ていたり、当たってない時も、時々斜め右の席の彼女をコッソリ見つめていたり。

見てるこっちが恥ずかしくなるほど、一途。


だからかな?
たとえ相手が同性だろうが何だろうが、私なんかよりも彼女の方が何倍も”恋愛”してるんじゃないか、なんて。

ちょっとだけ羨ましくなったんだ。




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




「おーおーきーちゃん♪」

「うわっ!!」


昼休み。
世界史の退屈な授業が終わって、ヤレヤレと伸びをしていたところ、後ろから突然、やたらとフレンドリーに抱きつかれた。

この『ガバッ!』とか効果音を付けたくなるほど豪快に抱きついてくる心当たりは、1人しかいない。
何人もいてたまるか、コノヤロウ。心臓に悪すぎだ。


「大城ちゃーん、ご飯だよ〜。お腹すいた〜。
朝ごはん食べてないから、早く食べなきゃマジで餓死しそう…」

なんて、未だ人の首に腕を回して、哀れな声でご飯を催促してくるのは、最近の私の観察対象その人・小田優希。
コヤツ、昼休みになると3日に1度はこうやって突進してくる悪癖があるのだ。


「はいはい、早く準備してほしかったら、その腕はずしなって。
変わりに早苗ちゃん抱いときなよ。小柄でフワフワで、抱き心地良いよー、多分」

なんて返すのは、ちょっと意地悪だろうか?

「いやー、早苗は抱きしめたら折れちゃいそうで。その点、大城ちゃんなら安心♪」

……前言撤回。コロス!


「もぉ〜、2人とも早くしなよ。落合さん達、もう食べてるよ〜」

と、首を絞められている私からは見えないけど、優希の後ろから聞こえる穏やかな声は、噂の早苗ちゃん。
その声で、いつもお弁当を食べている席のあたりを見てみれば、私達以外のお弁当仲間は、とっくに今日のランチに舌鼓中だ。

あー、まあね。
いつもいつもこんな事やってりゃ、先に食べ始めるよね、そりゃ。
でも、なんだかねぇ……。

なんとなくトホホな気持ちを抱えたまま、私は優希や早苗ちゃんと一緒に、いつものお弁当席に移動した。




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 




今更だけど、小田優希と及川早苗。
この2人、実は私とかなり仲が良い。

少なくとも、休み時間に集まって騒いだり、お昼休みには一緒にお弁当を食べる程度には親しい間柄だ。
おまけに出席番号も近いもんだから、グループ学習の班まで一緒という、クラスでは一番身近なポジションにいると思う。



優希は、ショートにしては少し長めの髪で、どちらかといえばボーイッシュなのかもしれない。
目が垂れててアライグマっぽいから、私は時々『ラスカル』と呼んでからかってるんだけど、その度に『アライグマ扱いするなー!』なんて、後頭部を叩かれている。

もはや、私達のお弁当グループの中ではおなじみの光景だ。
だって、本当に似てるんだもん。いいじゃんね、可愛いんだからさぁ、ラスカル……。


そして、想われ人の早苗ちゃん。
こっちはもう、フワフワ〜とかホンワカとか、そんな擬音語しか出てこない。
柔らかいアルトの声で、口調もゆったりしててさ。エヘヘって笑うのがめっちゃ可愛いんだわ、これが。
髪もキレイな天使の輪が出来ちゃう黒髪で、これぞ女の子!っていう女の子。


……見た目は、だけどね。
実際には剣道部期待の1年生で、段も持ってる猛者らしい。

まったく、人は見た目によらないってのはこの事だよなぁ。
初めて剣道場で部活中のこの子を見た時、何か変なもんが憑いてるんじゃないかって本気で疑ったものよ。



でもま、元気ハツラツいじられキャラの優希と、フワフワ隠れ猛者な早苗ちゃん。
2人にこれだけ近いポジションにいる私が、柄にもなく切ない想いを募らせている優希に声をかけたのは、人として当たり前……だよねぇ?


好奇心がこれっぽっちもなかったって言うと、ちょっと嘘になるけどさ。

旅人の木 3
2007.01.27 [Sat] 05:49

 
「ねえ、優希」

「んー?」

「単刀直入に聞くけどさぁ、早苗ちゃん好きでしょ」

「……へっ!?」


中間試験が1週間後に迫っている、水曜日。

普段はお互いの部活メンバーと帰っている私と優希だけど、全ての部活が休みになるこの時期だけは、途中まで一緒に帰っていた。

人通りの少ない住宅地を、試験範囲や今期のドラマなんかについてダラダラ話しながら歩いていた時、それまでと同じテンションの、まるで『そういえば、あの番組見た?』みたいな口調で訊いてみると、左後ろからワンテンポ遅れて、素っ頓狂な声が聞こえてきた。

まあ、予想してた反応なんだけどね。むしろ、至極普通の反応か。



――なんて。
これだけ軽く言ってはみたものの、正直、私の心臓はありえないほどバクバクしていて、これじゃ私が告白したみたいだ。


元々、もしここで優希が否定するなら、私もそれ以上詮索するつもりはない。

隠し事の1つや2つ、誰にだってあるんだし、もしかしたら本当に勘違いかもしれない。
どっちにしろ、本来私が口を出すような事じゃないんだし。

だから、軽い口調で訊いたのは、この後「うん、冗談♪」で済ませるための、私なりの布石だった。



でも、

「……あー、参ったなぁ」

少しの沈黙の後、小さく聞こえてきたのは、ため息と苦笑まじりの、そんな言葉だった。




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




「はぁ〜、そんなにわかりやすかった?」

すっかり白旗を振ってる声で、ようやく立ち直ったらしい優希が言った。
良かった。この声からすると、ダメージは意外と少なそうだ。

「うーん、1度気づいたら、わりと……」

「あぅー、ニブチンのアンタにまでわかるんだったら、めちゃくちゃわかりやすかったんだろうなぁ。
一応、気をつけてたのに…」

「よく言うよ、ずっとピンク色のオーラ放出してたくせに」

「え、何それ。フェロモン?」

「いや、どっちかってーと、”毒ガス噴出中”みたいな……」

「うわ、ひどっ!」

よし、すっかりもとのテンション。
どちらかといえば、こっちの気が抜けるくらいに、優希の態度は普通だった。


「でも、ちょっと意外だったかな?」

「へ?」


と、今度変な声をだしたのは、私。

一体、私の何が意外だったんだ?あ、優希の事に気づいた件?
だとしたら、もしかして本当に”ニブチン”と思われてたのか、私。

……どーせ、鈍いけどさ。


「あー、いや。なんて言うのかなぁ。
大城ちゃんってさ、こういうのにあんまり深く関わってこなさそうじゃんか?
我関せず、みたいな。だから、そういう意味で意外だったかも」

あー、そういう事ね。
それなら納得…っていうか、優希こそわりと人の事見てるのね。

そっちの方が、よっぽど意外だって。


「別に言いふらす気もなかったし、否定してくれても良かったんだけどね」

「いやいや、それはないでしょ。
言っちゃ何だけど、あの訊き方は質問じゃなくて確認だったよ。否定する気も起こんないわ」

「そ?でもまぁ、確かにいつもならあんまり関わらないかな。今回は特別」

「ふうん、なんで?」

「うーん、半分は好奇心」

「……鬼」

「はいはい、今更でしょーが。
んで、もう半分はおせっかい、かな?」

「はい?おせっかいって、何さ?もしかして協力するとか言う?」

「してほしいの?」

「いらない、どうせ叶わないし」

おっと。何やら勘違いした優希さん、少々ご立腹だわ。
早とちりしすぎだよ、おいおい。


「まあ、協力がいるってんならするけど、そういう意味じゃなくてね。
しんどくない?人に言えない隠し事って。」


――少なくとも、私はしんどかったよなぁ。
自分の中の感情を誰にも言えずに、その想いが消えるまで、何か後ろ暗いものを抱えているような気持ちでいて。
ちなみに、まだ抱え込んだままだけど。


「言わないんじゃなくて、言えないってのはしんどいよ。
好きになっても、失恋しても、ぜーんぶ自分の中で自己完結で」

「……うん」

「だからさ、1人くらいは知ってる人間がいてもいいかなって。
特に優希のは…こう言っちゃ何だけど、特殊だから余計に、ね。
吐き出すものも多そうだしさ」

「……かもね」

「うん。無理に聞き出すつもりはないけど、吐き出したくなったらいつでも聞くし。
エチケット袋は、用意しといた方がいいでしょ?」


そう言って笑ってみせると、後ろから、小さくフッと笑う声が聞こえてきた。
私に言えるのは、こんなもんだろう。

あとは優希次第だ。




――が、それっきり優希は何も言わなくなってしまった。
テクテクと、ずーっと黙ったまま、ただ後ろを歩く気配がする。

これまで、どんな顔でこんな話をすりゃいいのかわからず、顔を合わさずに話してきた私もヘタレかもしれないけどさぁ。
ああ、もう!今更顔見れないって!!


ダメだったかのなぁ?
私が過去にそう感じたからって、優希まで同じように感じているとは限らないんだよなぁ。
これじゃホントに『小さな親切、大きなお世話』ってやつだよ。

でもさ、でもさぁ、うぅ〜。



平気な顔を保ちながらも、内心では思いっきり頭を抱えたまま、気がつけば優希と別れる場所に着いてしまった。
なんか、今日の帰り道は長かったような短かったような…最後は長かったな……。



「じゃ、じゃあ、ここで…」

「……うん」


そこまで来て、やっと後ろを振り向けた時。
私はようやく、優希が何も答えなかったワケを知った。



「ねえ」

「ん?」

「ありがと」


ウサギみたいに赤い目をした優希の頬には、涙の跡が何本も残ってた。


「へへー、どういたしまして♪」






ねえ、優希。


あの『ありがと』で。
もしかしたら、私の方こそが優希に救われたのかもしれないよ。

最近になって、そう思うんだ。

旅人の木 4
2007.01.28 [Sun] 04:23

 

「告白したいとか、付き合いたいとか……そんなんじゃなくてさ。
そりゃ、そう出来ればいいんだろうけど、無理やし。早苗は普通のコだからね。
私だって、女同士だからこれだけ一緒にいられるんだし。
……うん、少なくとも今はこれで納得してるよ」

「納得…ねぇ。満足ではないんだ?」

「理想と現実は違うでしょ。
それに、あの子をこっち側に引き入れるわけにはいかないよ」

「うわ、オトナの意見だ」

「大城ちゃんがお子様なんだよ。つーか、大城ちゃんのモラルもなかなか規格外よねー。
気持ち悪いとか思わなかったわけ?」

「や、別に。あー、でも驚きはしたかな」

「ふぅん、そんなもんかねぇ…?」



優希がどうしたいのかを訊いた時。
いつもの困ったような笑顔で、優希は答えてくれた。

多分、既に何度も考えた事があったんだろうな。答える口調に迷いが無かったもん。

でも、”普通のコ”っていう言い方がやけに引っかかって、「じゃあ、アンタは普通じゃないんかい!」って、ちょっとムカついた。


優希は、よく『普通のコ』とか『こっち側』『あっち側』という言葉を使う。

言いたい事は、私にだってわかる。
確かに、優希のもつ恋愛感情は世間的に『普通』じゃないし、もしかしたら『異常』なんて言う人だっているかもしれない。

頭ではわかってるし、他にどういう言い方をすればいいんだって言われても答えられないけど。
それでも、その本人にそういう言い方をされると、こっちが辛いんだよなぁ。

コイツは誰にも迷惑かけてないし、バカだけど優しいヤツなんだから。
誰が何と言おうと優希は気持ち悪くないし、めちゃくちゃ良いヤツで、十分”普通”だよ。





 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆





「優希って、クリスマス・イヴイヴ生まれだったよね?」

12月前半。
昼休み、いつも一緒にお弁当を食べてる面子の1人の落合さんが、思い出したように言った。

お弁当は、大抵5人で食べている。
時々他のグループと合流したり、食堂と教室に分かれたりするけど、まあ普段はこの5人だ。

私と優希と早苗ちゃん。
そして、落合さんとアンディだ。

ちなみに、アンディは純日本人。安藤っていう苗字だから、アンディって……確かこれ、優希がつけたんだよなぁ。
今では、クラス中に浸透しちゃってるけど。

落合さんは、そのまんまか。
優等生のお姉さん!って感じだから、なんとなく”さん”付けで呼んじゃうんだよね。
言うなれば、まとまりと落ち着きが足りないこのグループの、理性とブレーキってところか。

すぐに暴走する優希の手綱を操れるのは、彼女しかいない。
皆いわく、彼女の手綱の先にいるのは私も含まれているらしいけど……なんでさ?


――って、そんな事はどうでもいいや。
今は優希の誕生日の話だ。


「うん、そう。イヴイヴの23日、天皇誕生日なんだよ」

ミニハンバーグを頬張りながら、優希がうんうんと頷いた。

と、そこへ身を乗り出してきたのは、イベント好きのアンディ。
さすがアンディ、名前が外国人なだけはある!

「おー、祝日バースデーかぁ。サミシイねぇ」

「そうなんだよー。まあ、楽っちゃー楽だけど」

「あははっ、だよねぇ。まあ、いつか彼氏が出来たら、1日中一緒に過ごせるじゃん」


うーわーーー、いらん事を言わんで良いから、アンディ!

違うんだって!
そこで天使の微笑み浮かべてメロンパン食べてるのが、そのバカの想い人なんだって!!

ああぁ、頼むからこの話題、さっさと流して!お願い!!


「あははー、優希ちゃんの彼氏かぁ。
そういえば聞いた事なかったけど、優希、どんなタイプが好きなん?」

落合さんのバカ〜〜〜!!

「うーん、どうだろ。好きになった人が好きなタイプ、かな?」

よし、良い答えだ!
あとは流す方向に話を変えて……


「あ、あのさ。今思いついたんだけど」

それまで優希に注がれていた3人+優希の視線が、一斉にこっちに注がれる。
あうぅ、ちょっと苦しかったかなぁ?アンディとか、眉寄せてるし…ハハハ。

でも、今更引くわけにもいかないし。
あーあ、なんでこんなに精神すり減らしてるんだ、私?

「せっかく休みなんだしさ、優希の誕生日兼クリスマス会でもしない?」

と…、とっさの提案にしちゃぁ上出来だよ、ね?
まあ、ボツってもいいんだよ、これは。さっきの話がキレイさっぱり流れてくれるのなら!

「おー、大城ちゃんってば優しい〜!」

「はっはっは、今更気づいたー?」

「はっはっは、おだてただけだ、気にするなー♪」

――って、おい!


「んー、でもたまにはこの面子で遊ぶのもいいかもね。いっつも部活の試合とかで、週末も潰れてたし」

「よく考えたら、夏休みに1回映画観たっきりだしさー。
今度はカラオケとかボーリングとか行こうよ」

おおっ、予想以上に皆食いついてくれてるぞ?
うんうん、適当に言った提案だけど、なんか楽しそうかも。

「そうだねー、優希ちゃんの誕生日、皆で遊びに行こっか?
ねえ、優希ちゃんはその日大丈夫?」


鶴の一声とはまさにこの事。
早苗ちゃんからのお誘いを、たとえ予定が入っていたとしても、コイツが断るわけがない。

ほれ。
想像を裏切らず、優希はブンブンと縦に振ってる。


「じゃあ、決まりね。えへへー、楽しみだね♪」

極上の笑顔と『楽しみだね♪』のコンボに優希がトドメを刺されかけていた事を知っているのは、おそらく私だけだ。

ふふん、貸し1だからね。優希。

旅人の木 5 〜回想編〜
2007.01.31 [Wed] 04:16

 

――9ヶ月前。




「一緒に帰るのも、今日が最後だなぁ」

卒業式の後。
クラスでの打ち上げを済ませて、中学最後になる帰り道を歩きながら、彼はそうつぶやいた。

「ホントにね。まさか最後に帰る相手が河西だとは思わなかったけど」

「んだよ、光栄だろ?」

「はいはい、大変光栄でございますよ、っと」


こんな憎まれ口を叩くのも、今日が最後なんだな、なんて。
らしくもなく感傷に浸ってしまうのは、きっと今日が卒業式なんていう特別なイベントの日だからだ。

ただし、私が卒業するのは中学校ではなくて、コイツからなのかもしれない。


「でもまぁ、大城とは多分すぐ会う事になりそうだけどな」

「そう?家が近くても学校違うかったら、なかなか会わないと思うよ。
次に会うのは同窓会じゃないかな」

「えー、だって俺んチの向かいの本屋、お前の行き着けじゃん。
お前くらい頻繁に顔出してりゃ、偶然会いそう」

「そっかな?」

「そうだろ」

「んー、そうかもね」


そうだといいな、なんて可愛い事は言わない。
多分、もし本当に会えたとしても、きっと私は『ゲ…』とか言って、必死でイヤな顔を作るのだ。

ああ、まったく素直じゃない。




「……なあ。お前、絶対医者になれよな」

「なるよ。そっちこそ、どうやってなるかわかんないけどユニセフでしょ?」

「そうそう。そんで、医者になったお前が青年海外協力隊に入ったら、遠い同僚になんの」

「んー、遠い同僚か。なんか、ますます会えなさそうだよね…」

少なくとも、お互いに普通の会社員になるよりは、難しそうだ。
2人の距離は、世界規模で離れているわけだし。



「何、そんなに俺に会いたい?」

「バーカ」

――会いたいに決まってるだろ、バーカ。


「ちぇっ、最後まで冷たいなー、お前」

――最後とか言うな。


「ちょっとくらい、可愛い事言ってみ?」

――言えるわけないじゃん…


「ま、いいや。次会うまでには、俺が浮気したくなるくらいに女磨いてろよな。
じゃ、俺こっち。またな!」


何も気にとめていない様子で軽く手を振り、河西は自分の家の方向へと歩いていった。
いや…アイツの事だから、気づいてたからこそ私が何か言う前に切り出したのかもしれない。
どちらかと言えば、後者の可能性の方が高い気がする。

この、いつも別れる十字路が卒業後の私達の進路を表してるみたいで、つい河西の背中を追いかけたくなる。
もし今すぐ追いかけて好きだと言ったら、河西はどうするだろうか。


……どうもしない、か。
アイツは去年卒業した美人の彼女に首っ丈だし、私の事は――きっと放っておけなかっただけだ。

実際、河西には感謝してる。
本人は自覚してないんだろうけど、彼のおかげで私は『課せられた目標』を『自分の夢』に変えられた。
これから、ちゃんと自力で歩いていける力を得た。
私を支える背骨を与えてもらった。

もう、十分だ。
十分すぎる。

――でも、




「うん、また。」

――また、会えると良いな。


心の底からそう願って返事を返したけど、結局あれから1度も河西には会えていないまま。
まあ、人生なんてそんなものだ。

神様め。
もし本当にいるなら、今すぐ地獄に落ちてしまえ、役立たず。

旅人の木 6
2007.02.05 [Mon] 02:07

 

12月23日。
優希の誕生日らしいというか、日頃の行いを考えればらしくないというべきか、冬にしては随分と暖かい気候のおかげで、祝日の梅田は随分と混雑しているようだった。

12時に梅田の改札を出たところでの待ち合わせだったのだが、現在11時15分。
かなり早めに着いてしまった。

待ち合わせ場所としてはビッグマンが一般的なのだろうが、そこは落合さんの『あんなとこ、人が多すぎて相手を探すのが面倒でしょ』の一言で却下。
まあ、今日みたいな日は特に多そうだから、きっと良かったのだろう。

実は、遅刻常習犯の優希とアンディには『11時45分に集合』と伝えてあるので、待ち合わせには少し早めに行っておくとして、それまでの30分をどこでどう潰すべきか。
スタバで一杯飲むには少々慌しいけど、本屋で新刊のチェックをしてもいいし、CD屋で新譜を試聴してもいい。
場所が場所なだけに、時間の潰し方には困らないだろう。

よし、本屋だ!と決めて、ポケットから切符を取り出し、顔を上げた時――、思わず自分の目を疑った。


我ながら、あんなに離れたところにいる後姿をよく見つけたなー、なんて一瞬感心してしまうくらい。
今まさに改札をくぐろうとしている、ジャージにスポーツバッグの後姿は、私のよく知る人物にそっくりだった。

……考える間もなく、足が地面を蹴る。
電車から出てきたばかりの人の間を縫うようにすり抜け、でも目線だけは遠ざかっていこうとする赤と黒ジャージから離さずに。

――ちょっと待って!

そう叫びたいのを抑えて、全力で走る。
ああぁ、もう!こんなにも人が多くなければ大声出して呼び止めるのに!!
なんで皆、祝日だからって出てくるんだよ、もう!家で大人しくしてろっての!
だぁぁぁ、前のバカップル!恥ずかしげもなく手とか繋ぐなって、通行の邪魔だから!!

前を歩く初々しいカップルに、心の中で罵詈雑言を浴びせながらも、なんとかその2人を追い抜いて、ようやく改札を出る。
先ほどのジャージの人物は、改札を出てすぐのところにあるコンビニにへと入っていった。

まだ、中にいるはずだ。


もし本当にアイツだったなら、約9ヶ月ぶりの再会となるわけだが、本当に本人なのか。

9ヶ月という月日は、忘れてしまうには短すぎるが、記憶の中のアイツの姿を曖昧にするには十分で、どうにも確信が持てない。
まあいい。さすがに顔を見ればわかる。

やたらとうるさい心音を感じながら自動ドアを通り、店に入った次の瞬間――、


「あれ、大城?」

「………か、さい…」


この時、私がどれ程呆けた顔をしていたかは、考えたくもない。
追っていた本人は涼しい顔でレジに並んでいて、腹の立つ事に私が見つけるより先に向こうから声をかけてきた。
すぐ気づいてもらえた事が嬉しくないわけじゃないけど、やっぱり少し…いや、かなり悔しい。

こういう美味しいとこ取りなところも相変わらずなんだな、この男は……




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




「それにしても久しぶりだなー」

コンビにで買ったジュースを片手に、店を出てすぐの壁際で久しぶりの再会を祝う。
うーん、色気はこれっぽっちもないが、これはこれで私達らしいのでよしとしよう。
中学の帰り、一緒に買い食いをしていたことを思い出して、ちょっと懐かしい。

「本当にね。
あ、ところで河西さ、そのジャージ、部活入ったん?」

「ああ、そうそう。バスケ部入ったんだ」

「はっ!?バスケ部!?
アンタ、球技系ダメダメだったのに!!?」

「ダメダメとか言うなって!マジ凹むから!!」

思いっきり苦笑いしながら、”まあ、本当の事だけど…”とか拗ねてる河西は非常に面白いからいいんだけど、それにしたって意外だ。

河西は決して運動神経が鈍いわけじゃないのだが、水泳やマラソンは得意のくせに球技などの道具を使う種目は、いっそ哀れになるほど苦手だった。
パスは受け損なう、シュートは入らない、バレーボールの直上トスは5回で顔面に落ちてくる。サッカーでは、シュートしようとしてボールを踏んづけ、転んでいたという程の相性の悪さだ。
あれはもしかしたら、破滅的な不器用だったのだろうか?そういえば、美術の彫刻等ではバンソウコウが欠かせなかった覚えがある。

もしかして、苦手だからこそ…?とも考えたが、そういうタイプでもないはずだ。
となると――、


「ねえ、河西。なんでバスケ部なわけ?」

嫌な予感がするし、あんまり聞きたくないけど仕方ない。
優希の時もそうだったが、聞かずにはいられないタイプなんだよなぁ、私って。なんか自虐的かも。
もしかして、M体質だったりするのか、私。

「あー、うん、その…まあ、なんだ。
綾がマネやってんだ、バスケ部の」

微妙に顔を背けつつ、照れくさそうに打ち明ける河西を前に、「へー、そうなんだー」なんて笑いながら、私はやっぱり自分の自虐的行動を後悔するはめになった。
当たってほしくない予感ほど当たるって、ありゃ本当だわ。


なんていうか、アレだね。

神様。
アンタ、地獄じゃ生ぬるいから、地上に落ちてきなよ。
地獄よりイヤなメに遭わせたげるからさ。

旅人の木 7
2007.02.06 [Tue] 03:36

「あ〜、もしかしてショーコちゃん!?」


突然の嬉しそうな声と一緒に、私の背中にズシンと人1人分の重さが圧し掛かってきた。

……いや、嘘です。全然重くありませんとも。
人1人分どころか、半分ってとこじゃないの?ってくらいに軽い……くせに背中に当たる2つのふくらみはとっても豊か。
うーん、フニフニ。これぞ、女の子。


「もー、綾さん。
いい加減、その抱きつき癖、治しましょうよー」

「えー、いいじゃない。どうせ抱きつくのショーコちゃんだけだし」

いや、それもどうかと……つーか、聞きようによっては問題発言です、綾さん。
そもそも、抱きつく相手を間違えてます。
隣のアナタの彼氏が、泣きそうな顔してますよー。

「はー、まあいいや。お久しぶりです、綾さん」

「本当にねー。もう1年近く会ってないんじゃない?」

「そうですね、中3の引退試合以来だから、多分1年半ぶりくらいじゃないですか?」

「ああ、もうそんなになるのねぇ。今日はどうしたの?
いきなりトーゴと一緒にいるもんだから、驚いちゃったわよー」

「河西とは、さっき偶然会ったんですよ。私もビックリしました」

と、話題の河西は放置で女の子トークを繰り広げる。
置いてけぼりくらって拗ねるな、河西。いや、面白いから拗ねてもいいぞ、河西♪


ところで、さっきから私に抱きつきっぱなしのこの人、沢山綾さん。

先ほどの私と河西との話から察せられる通り、河西の彼女だ。
私達よりも1つ年上で、美人で頭も良くてスタイルも良い。ついでに性格まで良いという、パーフェクトなお人。
美人は性格が悪いなんていうのは、ありゃ嘘だね。
性格悪かったら、顔まで醜くなるだろうし。
本当の美人というのは、身も心も美しいものなのだよ、うん。

その見本が、今まさにここに存在するわけだし!

そして、この綾さん。
何故か私の事をえらく気に入ってくれているようで、会えばこうして抱き枕タックルをしてくる。
その度に河西がため息ついたりヤキモチやいたりするのは非常に楽しいし、目の前で河西に抱きつかれて私がヤキモチやくよりはよっぽど良いんだけど!

でも、やっぱり少し変わってるよなぁ、綾さん。


「それにしても、ショーコちゃんってば相変わらずカッコイイわねぇ。
身長、また伸びた?」

「あー、4月の身体測定では167cmでしたよ」

「ゲッ、大城…まだ伸びてんのかよ」

それまでは横で聞いているだけだった河西が、驚いたように顔をしかめる。
「ゲッ」って何さ、そんなバケモノみたいに。

「そうそう。おかげさまで、バレーには役立ってるよ」

「あ、高校でもバレーやってるんだ?」

「はい、結構強いんですよ、ウチの高校。
これなら1部リーグ昇格も夢じゃないかもです♪」

「へえ、すごーい。……ウチはだめかも。明らかに球技向きじゃない誰かさんもいるし?
身長も……165cmだっけ?」

「へーへー、すんませんねー、不器用で。
ちなみに、身長は165.6だから!!つか、まだ伸びるし!
男の成長期はこれからなんだからな!!次、大城に会う頃には、夢の170代だかんな!」


夢が170代って……ちっちゃい!夢もちっちゃいよ、河西……!!

フイっと顔を背けて拗ねた河西をサカナに、私と綾さんがクスクス笑う。
ああ、なんかいいなぁ。久しぶりだなぁ、この感じ。

表面的には『片思いの相手とその彼女を目の前にした女の図』が出来上がっているわけだが、正直全然そんな気はしない。
綾さんは河西の彼女だけど、それ以上に大事な友人であり、尊敬する先輩でもある。

ま、だからこそ河西には告白するわけにはいかなかったわけで、これはこれで、困り事なのだが。
嫉妬心がまったく湧かないわけじゃないんだけど、きっと同じ状況の他の子よりは、気持ち的にはかなり楽な片想いしてるんだろうなぁ、私。


と、そこでふと、あることを思い出した。

「ところで、今日は部活じゃなかったんですか?
河西、ジャージ着てるし……」

スポーツバッグ提げてるし、ついでにさっきコンビニのレジではスポーツドリンクを持って並んでいた。
どう考えても、これから部活の予定のはずだ。


「――あぁっ!しまった、トーゴ!今何時!?」

「えっ、あ、あーっと、うわ、もう32分!
30分にJRだったよな!?やべぇ!俺、1年なのに遅刻したらマズイって!」

「あー、もう!ゴメンね、ショーコちゃん。今から練習試合なの!
言ってくれて助かった!また今度、ゆっくり遊ぼうねー!!」

「だぁぁっ、おい、急げって、綾!
じゃあ、またな、大城!」

「はいはい、またねー。
綾さん、頑張ってくださいね〜♪」


”俺には激励の言葉なしかー!!”というドップラー効果のかかった声を聞きながら、ヒラヒラと手を振り、階段をダッシュで駆け下りていく2人を見送る。
うーん、再会も慌しかったけど、去り際もなかなか壮絶だったなぁ。

もう少し色々話したかった…というか、メアドくらい聞いておけば良かったな。
『またね』も何も、連絡手段がありませんよ、お2人さん。


なんだかひどく疲れて、ふぅ〜、と少し大きめに一息吐いてから、私は今度こそ、本屋に向かって歩き出した。

旅人の木 8
2007.02.06 [Tue] 04:16

 
「ねーねー、さっきの誰?」

うおっ、ビックリした!!

本屋に歩き始めて10数秒後、いきなり後ろから聞き覚えのある声がして、一瞬心臓が口からコンニチハなところだったよ。
今日はどうやら、背後に気をつけないといけない日らしい。


「優希かぁ…脅かさないでよ。マジでビビった」

「え、チビった?」

「んなわけないじゃん、アホか!
ビビったって言ったの!もぉ〜、いっつも後ろから忍び寄るのやめてよね」

「むぅ、何さー。今のは普通に声かけたはずだぞー?」


う、確かに。
今回のは、優希にしてはかなり普通だった。

いつもなら『おーおーきーちゃーーーん♪』と突撃してくるところだ。
それがいつも通りというところが既に問題なんだけど……ま、いっか、今更だし。
大阪人は突っ込んでナンボって言うけど、この場合、深く突っ込んだら負けだ。


「あー、ああ、そうだ。誕生日おめでと、優希。
これで今日からババアの仲間入り♪」

「一言多い!いいのっ、まだ10代だし!花の女子高生だよ!!」

コブシを握り締めて力説してるところを悪いが、『花の女子高生』とか言ってる時点で、ちょっと…な気がするのは私だけか?
いや、まあ優希をババア扱いしてしまえば私もババアなわけだから、その辺をあえて論破するつもりもないけどさ。

「てか、最初の質問に戻るけど、さっきの誰さ?
身長低いジャージの男子と美人のおねーさん」

……ああ、これ聞いたら泣くな、河西。

「ああ、ジャージの方は中学の同級生で、あの美人さんはアイツの彼女で私の先輩。
偶然バッタリ会っちゃってさー」

「ふうん、なぁんだ」

「なぁんだ、って…何と思ったのさ」

「うーん、修羅場?」

「いや、アンタ。一回、眼科行ってきなさいな。
あれ、どっからどう見ても、めっちゃ友好的かつマッタリな空気だったし」

「いや、修羅場だったら面白いのになーって♪」

……はぁ、そうですか。
まあ、ある意味『修羅場』は当たらずとも遠からずなご意見なわけだけどさ。

そういえばこの子、時々妙に鋭いよなぁ。
それとも、私がわかりやすすぎるのか?


てか、私は優希の好きな人知ってるのに、この話の流れで河西について何も言及しないのは、もしかしたら不公平なのかな?
いや、でも。別に何か言われたわけでもないし。

うん、いいや。いつか聞かれた時で。
よし、決定。


「ところで、優希がこんな時間に来てるって、どういう事よ?」

「いやいやいや、さりげなく失礼だよね、その言い方!」

「失礼でも何でもないでしょうが、自分の過去の行いを思い出しなさい。
私、今日は傘持ってきてないんだけど?」


過去に、優希との待ち合わせは5回ほど。
5回中、待ち合わせに遅れてきた回数は5回。

つまり、毎回遅刻してきている事になる。

しかも、そのうちの3回は30分以上遅れてきたというオマケ付き。
伝えてあった待ち合わせ時間よりも早く来る方が、驚きというものだ。


「失礼だ!それは失礼すぎだ!!
そこまで言われたら、さすがの私も泣くぞ!!?」

いや、”さすがの”って……自覚あるんじゃん。
なんだか、いっそ哀れだぞ、優希。


「う〜、だってさぁ。今日は私の誕生日を祝ってくれるって言うし、私が遅れたら悪いかな〜とか思ってさ。」

「ああ、なるほど。
今日は早苗ちゃんが優希の誕生日を祝ってくれるのがあまりにも嬉しくて、昨日の夜は眠れなかったから、今日は朝から落ち着かなくて、早々と梅田に出てきた、と。
いやぁ、乙女だねぇ♪」

「乙女言うな!てか、なんでそこまでわかるわけよ。もしやストーカー!?」

うわ、図星だったのか。
目の下、ちょっとクマが出来てるから適当に言ってみたら、当たっていたらしい。
うーん、冗談抜きで乙女だね、優希。ちょっと可愛いぞ。

「何が悲しくて、優希のストーカーせにゃならんのよ。
というか、適当に言っただけなんだけどね。いやぁ当たりかぁ。乙女だねぇ、優希は♪」

「うぅ〜、もう誰でも良いから早く来て〜…このいじめっ子を退治してぇ〜。
大城ちゃんを1文字で表せばS、2文字で悪魔、3文字だったら大魔王だよぅ」

「おー、座布団を1枚進呈してあげよう♪
あとさ、実は優希とアンディには待ち合わせ時間を15分早めに伝えてたから、落合さんと早苗ちゃんは、12時くらいまで来ないんだよね」

「えぇ〜、そんなぁぁぁ。何さそれ!
誕生日くらい優しくしてよ、ばかぁぁ!」


結局、全員揃うまでの間。
私は優希をおもちゃに、とーっても楽しんだ。

少なくとも、先ほどの河西たちの件でちょっと凹んでいた私の心が浮上する程度には。
うーん、優希に感謝感謝☆

だからどうぞ成仏してね、ナムナム。
P R