第3話 

September 03 [Sun], 2006, 11:37
シロは、生まれつき特別な人間である。
厳密に言えば、人間でもない。
5つの感覚は軽く、人の10倍はあるのである。
だが感覚が鋭すぎるというのも考え物なので、いつもは精々2倍程度にしている。
だが・・・今日は、運がよかった。

ぴくん、とシロが反応した。
確かに、悲鳴だった。
しかもクロのものだ。何かあったことは明確である。
シロは時々すべての感覚を極限まで高める訓練をしている。
いざというとき、鈍って五感が全くアテにならなかったら困る為だ。
そして今はちょうど、その訓練をしているときだったのだ。


ふぅぅぅ・・・息を吐く。
深呼吸して、目を閉じる。
心を無にし、また目を開く。
そして、静かに構える・・・全て師匠に教わったことだ。難しいことではない。
顔を引き締めて、改めて相手を見た。
坊主頭に、ラフなTシャツとGパン。だが手には、ごついナイフを握っている。
何より、正気じゃない。ゆるんだ頬、ほとんど白目・・・ヤクか?
記憶をひっぱりだして考えたが、こんなやつ、手配書にはいないはずだ。
ということは、すでに捕まった者がまた逃げ出したのか?
もしくは、ここ何日かで新たに現れた犯罪者か。
とにかく、さっきは何とかアイツをはじき飛ばせた。うっかり悲鳴を上げてしまったけど。
ここは、譲らない・・・
ギリっと間合いを詰める。
そして、始まる。

戦い、が。

第2話 

September 03 [Sun], 2006, 11:36
「まっ・・・待って、くださいーっ・・・」
細い路地を、白い少女と黒い少女が走っている。
白のワンピースについたリボンが可愛らしく揺れているが、決してはしたない格好では走っていない。本当に静かに走っているのに、獣のように早い。しかも驚くことに、ブーツを履いていた。
もう一人は、全身、黒いチャイナ服。ただし、ズボンを下に着ているが。
平べったい靴で、本当に動きやすそうな服装だった。
「何いってんの、クロっち!追いつかれるわよ!」
「もう大丈夫ですよぉシロさん!何キロ走ったと思ってるんですかぁぁ!!」
「それもそうね」
ぴた。がっしゃーん。
車は急には止まれない。人も急には止まれない。
この白い少女は別のようだが。
「いたたたたぁ〜・・・」
半泣きでガラクタの山から抜け出してきた少女―――クロ―――は、もう一人の少女―――シロ―――を睨んだ。
もう何日もこういう生活をしている二人の仲は、いい加減限界になっていた。
「シロさんっっっ!!!」
「ん?」
「もうイヤですよ!!情報屋にでも行きましょうよ!いい加減、犯罪者を捕まえましょうよ!こんな食い逃げの生活、耐えられません!」
目からぼろぼろと涙があふれてくるこの少女を見て、心が動かされない人間はいないだろう。
「あっそ」
・・・まあ、ほとんどの人間は動かされるだろう。
「耐えられないだぁ?そんな泣き言言うくらいなら、最初から私とコンビなんて組まなきゃよかったのよ!」
無理な話である。
この2人は、お互いの知人の紹介でコンビをくみ、しかも会ったときは必ずネコをかぶっていたのだから・・・シロは。
えっえっと嗚咽を漏らすクロを無視して、シロは宿屋の方へと歩いていった。
全く振り向かずに。
「はぁ・・・」
嘘泣きさえ通じない。どうすればいいんだろう?
ようやくクロが顔をあげた。
立ち上がろうとした瞬間―――
ナイフが、クロの首に触れた。

第1話 

September 03 [Sun], 2006, 11:30
ずるるるる。
狭い店内に、ラーメンをすする音が響き渡っている。
みんなが私ともう一人を見てる気がして、すごく恥ずかしい。
もしかしたら、耳まで真っ赤になってるんじゃないかなぁ・・・
黙っていると、ますます恥ずかしくなっていく。
ここは何か言った方がいい。そうしたらなんか吹っ切れるんじゃないかなぁ?勇気を出せ、クロ!!
「あの、何故そんなに派手な音を鳴らして食べているんでしょうか?」
「これがラーメンの正式な食べ方よ!上品に音を立てず、なんて食べ方は邪道だわ」
・・・そうですか・・・
私は全てをあきらめて、がっくりと肩を落とした。
目線を落とすと、黒いチャイナ服が目に入る。
その横に、白のフリル。目線をゆっくり上げていくと、思わずはっとする程の美少女が目に入った。
色彩の全てが薄い。白い髪、灰色の目、薄い桃色の唇。
整った顔立ちは、すけるように白い。
長いまつげだけが、ハッキリとした黒。すると、その顔がこちらを・・・私を見た。
「何?」
薄く笑う。
本当に、綺麗な人だ。ため息をついてしまうほどに。
また笑ったその少女は、
「さて、もう食べ終わったし。話の続きね」
私を、走って店から連れ出した。


お金は、払わなかった。
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