AGAIN 

2006年06月06日(火) 1時35分
「…いらっしゃい」
先に声を掛けたのは、慶一。スツールからは立ち上がらずに、秋史の様子を窺う。
頭を下げた挨拶だけで、秋史は店の中へ…慶一の方へと歩を進ませる。
手を離した扉が閉まるのに合わせて、ドアベルが再び軽やかに鳴った。
彼の座るスツールの傍へと寄れば、徐に下がる頭部。伸ばした腕が、傘を拾う。
渡そうと、差し出された傘を追い越して、慶一は秋史の腕を掴んで引き寄せる。
「…女神は、未だ俺を見捨てていないらしい。」
引いた腕は隣に座るようにと促し。テーブルへと落ちた煙草を摘み、灰皿へと押し付ける。
引かれる勢いに、バランスを崩したよう、秋史はスツールへと腰を落ち着けた。
「馬鹿にしないで、と女神に叱られますよ」
慶一の軽口に、秋史は呆れたように笑みを漏らす。笑う眉根が、困ったように寄って。
反して、慶一の口端は愉しそうに持ち上がる。
此方を向いてはくれない秋史の横顔を、ジ、と見詰めた。
「君が俺の女神かも知れ無いな。だったら、怒られても構わない。」



Untitled 

2006年03月08日(水) 12時10分
「真……真一。お前、今日外付き合う約束だったろうがよ」

甘えたように強請る彼の声が聞こえる。
真一の休日は、決まってこんな風に始まった。
今でも、まどろみの中で彼の声が聞こえることがある。
瞼を開き、身体を起こした真一は苦笑を漏らす。
窓の外を見れば、夜が明け始まったばかり。

こんな目覚めには、どうしたって考えてしまう。
あれは、真一が24歳の冬。彼は七つも年上、31歳だった。
自分が漸く彼の年齢に達した今でも尚、思い出す。
否、忘れることは、ないのであろう。

月明かりにだけ照らされて、見下ろしてくる彼の顔が好きだった。
普段はキツイ目許が、少しだけ緩むのを見られるのは自分だけの特権だった。


大きな体を屈ませて、耳許でI love you.発音良く囁かれるのが好きだった。
普段は穏やかな、時には悪戯な声が少しだけ甘く掠れるのを知っていた。


切羽詰まったような顔をして、身体を穿つ彼の熱すらも好きだった。
抱かれても良い、と思わせる相手に出逢ったのは、後にも先にも彼一人。


1-3:手料理 

2006年03月07日(火) 2時10分
口いっぱいに頬張っておべんとつけてどこ行くの

お天気のいい日は屋上へ行こう

青空の下でお弁当なんて遠足みたいだね

1-2:抱きしめる 

2006年03月05日(日) 5時05分
雪が降る日の帰り道

部活もみんな休みで、あたしは君を待っていた

外はもう真っ暗で、校舎の中には誰もいない

早く来ないと先に帰っちゃうよ


RAIN 

2006年02月22日(水) 3時31分
今夜もまた、雨が降っていた。ただ、逢いたかった。名も知らぬあの男に。
あの雨の日から、もう半月は過ぎた。其の間、二日と空けずに慶一はこの店へと通っていたのだ。
手にしていた傘をたたんで、コーヒーショップの軒下へと入る。
濡れた傘を片手に、扉を押して出来た隙間から店の中へと歩を進ませた。
見回せど、今日も閑古鳥の鳴く店で、慶一はジャズの音楽とカウンタの中の色男に迎えらる。

「全く…馬鹿か俺は」
一言漏らす声音は、不機嫌に低く。特に歓迎するでもない店主に断りもせず、窓際のカウンタ席へと足を向けた。
「なんだ、今日も来たのかお前さん。うちだって暇じゃァないんだよ。また珈琲1杯で粘る気かい?」
カウンタテーブルに傘を引っ掛け、腰を下ろしながら揶揄る店主を視線で黙らせて。
カウンタに右肘を乗せて未だ続く不機嫌な声音で呟く。
「珈琲、ホットで。この間みたいに、カフェオレなんて出すなよ」
上目に見上げた店主に念を押して、慶一はジーンズのポケットを探った。
潰れたソフトケースを取り出し、傾ければ数本滑り落ちた煙草を口端へと銜える。
「千寿、ライター」
「お前ね、ライターくらい持ち歩きなさいよ。」
千寿と呼ばれた店主は珈琲を落としながらぼやくも、結局はライターを投げて寄越す。もう慣れたものだ。


KISS 

2006年02月22日(水) 3時30分
流れていた曲が変わる頃、来客を知らせるドアベルが鳴る。
出掛けていた店主が帰ってきたのかと、其方へと顔を向ければ、視線は人影を捕らえた。
おかえりなさい、と開いた口の形がお、で止まる。後、眉尻が困ったように下がった。
店主よりも逞しい身体つきの男が一人、扉を潜ったところ。
雨に濡れた黒髪の癖毛に、彫が深くエキゾチックな顔をして。鋭い目付きが、冷たい印象を与えた。
「…いらっしゃいませ」
迷った挙句、秋史は定番の言葉で出迎えた。留守を預かった手前、追い返すわけにもいかない。
しかも、不意の来客は、傘を持っていなかったのか、頭から爪先まで雨に濡れていた。
秋史は自分のカップを戻してカウンタの中へと渡る。先程、店主がしてくれたようにタオルを探して。
「ホット。熱いのにしてくれ」
男は、濡れているのも構わないのか、カウンターの一番奥の席へと腰を下ろしていた。
低く響く声でオーダーを告げられては、秋史は困ったように眉尻を下げる。
留守を預かっただけだ。この店の店主のように美味いコーヒーが淹れられるはずがない。
「…すみませんが、店主は今留守にしているんです。」
カウンター越しに、タオルを差し出して申し訳なさそうに告げた。
男の鋭い双眸がこちらを向けば、秋史はゴクリと咽喉を鳴らした。
眉根を寄せた男が、唇を開くのを待つ。面倒なことになったら、と、秋史は下唇を噛む。
「…またか。それは…君の?」
口を開いた男の口調は、存外にフランクだった。呆れたような笑みを浮かばせ、秋史のカップを示す。
だいぶ冷めてしまったカフェオレだが、未だ僅かに湯気が上っているように見えた。


COFFEE 

2006年02月22日(水) 3時23分
雨が、降っていた。6月の梅雨時、午後5時を回ったところ。
折角早めに仕事を切り上げたのにと、秋史は溜息を漏らした。
会社を出て直ぐのコンビニでビニール傘を買い、慣れた景色の中を歩く。
小雨とは言えど、傘の柄を握る指先の体温を奪うのには十分だった。

少し歩けば、視線の先には馴染みのコーヒーショップ。
客が少ないのと、甘すぎないカフェ・オ・レが好みだった。
かじかむ指先に耐えかねて、爪先は自然とその店の扉を潜る。
温かな店内に入った途端、曇る眼鏡を笑うのは、カウンタの中に一人佇む店主。
低く流れるジャズに混ざって、豪快な笑い声を漏らすのを、秋史は軽く睨む。
髪が短く、顎先に髭なんて生やしたりして。
よく日焼けをした筋肉質のこの店主が、あのカフェオレを淹れるのかと、秋史は未だに信じられない。


1-1:告白 

2005年12月22日(木) 7時20分
空がとても綺麗な日だった。
風もとっても穏やかで、小春日和って、こういう日をいうんだ、きっと。
君が煙草の煙で作ったわっかが、雲みたいにぷかぷか浮いた。

7:本気でそう言っているのかと聞いている。 

2005年09月03日(土) 2時07分
言葉で聞きたい。

好きって気持ちも、嫉妬だって

言葉にしなきゃ伝わらない。

貴方の声で

貴方の言葉で

聞かせてほしい。

真夏 

2005年05月23日(月) 2時37分
頭ではもうとっくにわかってる。
心ではそれを否定したがってる。

狭いようで広い世界を隅々まで見渡して。
広いようで狭い世界を隅々まで探してる。

目を凝らして欠片を探しているのに、
どうしても見つからないよ。

どこにいる?
何をしてる?

もういい加減、貴方の影を追うのは辞めにしよう。
そう思うのに。
こんな夜は、どうしても貴方のことを想い出す。
優しく触れる指先。
甘く囁く声音。
仕草の一つ一つまで想い出せる。

お願いだから、夢には出て来ないでください。
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