AGAIN
2006年06月06日(火) 1時35分
「…いらっしゃい」
先に声を掛けたのは、慶一。スツールからは立ち上がらずに、秋史の様子を窺う。
頭を下げた挨拶だけで、秋史は店の中へ…慶一の方へと歩を進ませる。
手を離した扉が閉まるのに合わせて、ドアベルが再び軽やかに鳴った。
彼の座るスツールの傍へと寄れば、徐に下がる頭部。伸ばした腕が、傘を拾う。
渡そうと、差し出された傘を追い越して、慶一は秋史の腕を掴んで引き寄せる。
「…女神は、未だ俺を見捨てていないらしい。」
引いた腕は隣に座るようにと促し。テーブルへと落ちた煙草を摘み、灰皿へと押し付ける。
引かれる勢いに、バランスを崩したよう、秋史はスツールへと腰を落ち着けた。
「馬鹿にしないで、と女神に叱られますよ」
慶一の軽口に、秋史は呆れたように笑みを漏らす。笑う眉根が、困ったように寄って。
反して、慶一の口端は愉しそうに持ち上がる。
此方を向いてはくれない秋史の横顔を、ジ、と見詰めた。
「君が俺の女神かも知れ無いな。だったら、怒られても構わない。」
先に声を掛けたのは、慶一。スツールからは立ち上がらずに、秋史の様子を窺う。
頭を下げた挨拶だけで、秋史は店の中へ…慶一の方へと歩を進ませる。
手を離した扉が閉まるのに合わせて、ドアベルが再び軽やかに鳴った。
彼の座るスツールの傍へと寄れば、徐に下がる頭部。伸ばした腕が、傘を拾う。
渡そうと、差し出された傘を追い越して、慶一は秋史の腕を掴んで引き寄せる。
「…女神は、未だ俺を見捨てていないらしい。」
引いた腕は隣に座るようにと促し。テーブルへと落ちた煙草を摘み、灰皿へと押し付ける。
引かれる勢いに、バランスを崩したよう、秋史はスツールへと腰を落ち着けた。
「馬鹿にしないで、と女神に叱られますよ」
慶一の軽口に、秋史は呆れたように笑みを漏らす。笑う眉根が、困ったように寄って。
反して、慶一の口端は愉しそうに持ち上がる。
此方を向いてはくれない秋史の横顔を、ジ、と見詰めた。
「君が俺の女神かも知れ無いな。だったら、怒られても構わない。」
- 真夏の果実 |
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