(閉店)日本橋富沢町 との村(と乃村・登乃村)

December 05 [Fri], 2008, 0:05
日本橋富沢町 との村(と乃村/登乃村)
創業57年、路地裏の宝、鰻好きの聖地
*2013年7月閉店しました。

 《 なぜ?、屋号と家主が違うのかについての素朴な、しかし、ちょっと深い疑問について自分は、聞いてみた。併せて、このアタリの一風変わった町並みのことに就いても、話は尽きることがなかった。 》 

  鰻好きなら、それ相応のお店を、ひとつやふたつ持っているものだ。あまり教えたくない、地味な外見のこじんまりとしたお店に馴染む。自分は、間違っても、日本橋界隈でも、竹〇亭とか、高嶋〇、喜〇川、美〇屋、なんて名代の暖簾を潜らないに決まっている。そうあって欲しいものだ。鰻を食べるからには、美味しいのがイイに決まってる。けれども、ひょうたん屋から駒は出ない(笑)。

 日本橋界隈で、真面目に営業している鰻屋さんは、おそらく此処一軒ぐらいになってしまっただろう。世の中、移り変わりは、激しい。戦前、かつての久松町には、登乃村という、鰻屋さんが、あったそうだ。料亭風の大きな屋敷は、戦災で消失し、跡取りを継がせず、登乃村は、そのまま消滅に至る。

 その本家 登乃村で、小僧の時分から叩き上げで修行したのが、現在の”と乃村”のご主人の先代に当たる方。その後、戦後のどさくさで、人形町界隈で露天商として、当時、規制のなかった川魚の生を裂いて、売っていた、そんな戦後動乱の時機を掻い潜って来た。

 戦後復興で、折りしも、中央区に当時多数あった、掘割(河川)が残土で埋め立てられ、暗渠となった、現在の富沢町へと、お上により露天商売は、ご法度、整理され、この地へとまとめて強制移転させられ、現在の長屋のような商業地ができたと聞いている。
 
 先代は、かつての修行先であった登乃村の屋号だけを、恭しくも、いただいて、商い勝運のごとく登るようにと、と乃村の名前にて、鰻屋をこの地で再び商うことと相成った。

 カウンター5席ほどだけの、ほんの狭いお店。もとは掘割だったであろう、いまは暗渠の上に、急ごしらえで建造された、昭和の飲食店街の匂いが残る、富沢町の一角で、口数の少ないオヤジさんは、高齢だが、身体の具合が思わしくないなか、奥さんと商いを続けている。創業昭和26年以来、オヤジさんの身体が続く限り営業し、息子たちが継ぐ気はないのだという。絶えてしまえば、それまでである、実に長く頑張って欲しいものだ。 と乃村がある路地は、探せば、なかなか見つけにくい場所にある。わかってしまえば、早いのだが、久松町と富沢町の境界、そこだけ昭和の残滓が取り残されたような一角があって、ちょうど問屋橋交番の裏手といえば、おおよそ想像が付くであろう。

 都営地下鉄新宿線の馬喰横山駅から、東日本橋のV字状になった交差点から、堀留町へと抜けていく通りの途上にある。以前に紹介した、名古屋風のきしめんの寿々木屋の通りを隔てた真向かいの路地が、飲み屋街の一角の路地である。そのなかで、と乃村だけが、唯一、昼間営業している。平成の世に達して、もはや語られることのない、風前の灯のような、飲食店街である。

* 中央区日本橋富沢町14−5 土日祝休
11:30〜15:00頃まで(夜間なし)
 鰻重(特上) : 2500円(+100円別途で、肝吸い)
☆☆☆☆ (特注 : 一切、蒸さない地焼きバージョンで調理してもらった。)

 すべて地焼きにしてもらった。これ以上の贅沢はない。この上ない味わいであった。このお店、東京では、珍しく、地焼きをしてくれる。なぜなら、付近が昭和40年代頃から繊維問屋街として栄えたバックボーンをもっているんだが、その人たちの出身地が京都であるケースが多く、彼らが、関西風の蒸さない鰻を所望していたからだと言うことが、聞き取りにより判明した。

 といっても、通常、頼んだ場合、完全な地焼きではなく、蒸しの工程は入ります。そのほうが、ふっくらと仕上がるからでしょう。それでも、ふつうの店で行われているより、蒸しの具合が、かなり短めぐらいで出されるとのこと。

 また、鰻も、並と上では、あらかじめ作り置き、拵えた白焼きから、焼きに入るので、仕上がり時間は、すぐにできるが、特上だけ、品質も物の大きさも違う最上のものを使うとのこと。従って、地焼きは、特上のみで、あえて聞いてもらえる。

 従って、こちらでは、特上を頼んでから、オヤジさんが、活きた鰻を持ってきて、目の前で捌いてくれて、焼いてくれる。この際、白焼きでも可能。肝焼きは、なし。オヤジさんは、無口で、ひたすら調理に取り掛かっている。鰻が出来上がるまでの時間、約30分弱、おばちゃんは、話好きで、いろいろと日本橋の往時の話を語ってくれた。
 うなぎ : うなぎ本体は、値段にしてみれば、やや小ぶり、しかし、日本橋であることを思えば、千葉とは違うゆえ、御の字かとも思う。そして、紛れもなく、国産のいつも食べつけている、良い品物であることを窺わせた。

 ただ、返す返すも残念、惜しむらくは、炭火ではなく、ガス焼きであったことだろうか。それでも、東京で、目の前で地焼きのみで、調理してくれるお店を、またひとつでも見つけたことは、非常に嬉しい限りである。一度でも、地焼きの旨さに目覚めてしまうと、あまりに蒸しが効いた柔らかな鰻は、嘘っぽくていけないと思うようになる。

 蒸しは、技巧の問題ではなく、職人として、一種の焼くという仕事の放棄というに近い。蒸しに頼ることこそ、やっつけ仕事なのだろうと思う。もはや、好みの問題ではなく、やはり鰻本来の良さは、地焼きでこそ、まざまざと惹き出される物であろうものと思う。

 蒸し過ぎては、鰻の川魚としての自然として純な勢いを損なってしまう、だいいち、鰻料理が、こじゃれて上品なものである必然性もない、もとは、川魚料理なのだから。仕上げは、焦げていて、少し、無骨なほうが絶対に良い。

 うなぎは、毎朝、奥さんと連れ立って築地で仕入れてくるらしい。その時々で、産地も若干違うとおもわれるが、この日は、九州産とおっしゃっていた。タレは、異常に、辛口、あまり付け焼きしないほうが、より旨いかも知れない。ご飯は、大盛も可能だが、ふつうどおりでも、けっこうな量で、お重へと入ってくる。

 肝吸い : ☆☆☆
 
 肝吸いは別途、+100円。三つ葉、ゆず1欠け、かまぼこ2枚、しいたけなどが入ったもので、かなり吸地は、塩味が濃い味であるが、かつおの一番ダシが巧く出ていて、なかなか美味しい。

 お新香 : ☆☆
 
 大半は自家製と思われる。カブ、きゅうり、奈良漬、大根と、かなりの種類とボリュームがあり、こちらをつまみながら、ビールなども飲めよう。味は、家庭的ながら、ボリュームがあるので、かなり◎です。

 鰻重並=1600円、鰻重上=2000円、ですが、此処へ来て、特上を頼まない手はありません。なお、このあたりは、江戸時代に、最大の歓楽街であった、葭原(吉原=よしはら)があった場所です。いまでも、大門通りなんて、名称も残ってますが、富沢町から人形町にかけて地上げが多く、すっかりと街は寂れてしまって、往時の面影さえ思い浮かべることはできません。
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journaux 出挙  May 30 [Sat], 2009, 11:45
この人に煽られ続けて幾年月(笑)
やっと時間がとれて
との村へ行く事が出来ましたぁ?!
なんと今年初めてです。

特上が残っててラッキ?
この日はなんと店内に三人もお客さんが(爆)
今日は蒸し無しでお願いしました。

自転車必死でこいでったので、大汗。
....
journaux 出挙  May 30 [Sat], 2009, 11:42
こりゃぁ、重要無形文化財です!
journaux 出挙  May 30 [Sat], 2009, 11:41
Comment
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桃猫
>出挙さん、こんにちは。このあたりは、いまも、むかしも問屋街で、いまどきは、フェスティバルなんかをやってるみたいです。味がある町並みが、いつまでも、続いて欲しいものです。
May 30 [Sat], 2009, 16:19
はじめまして
いきなりのTB失礼いたしました。

との村は私も大好きなお店です
親爺さんにはいつまでもお元気でいてほしいです。
FUNKYさんもこちらにいらっしゃっているんですね〜


では、今後とも宜しくお願い致します。
May 30 [Sat], 2009, 16:11
桃猫
>mooさん、ありがとうございます。浅草めぐりの参考にさせていただきます。
May 23 [Sat], 2009, 0:11
桃猫さま、こんにちは。

お返事ありがとうございます。
ワタクシ勘違いしておりました。
まだアップしておりませんでした。
3日後のアップ予定です。
性急な書き方お許しください。

重ね重ねありがとうございます!
May 22 [Fri], 2009, 18:31
桃猫
>mooさん、こんにちは。いろいろなカテゴリーがあって、読みにくいことは多々ありますが、また、好きなジャンルから、お立ち寄りください。ありがとうございます。
May 22 [Fri], 2009, 17:49
はじめましてmooと申します。
との村さんを記事にするに当たって、こちらの記事の内容が素晴らしかったのでリンクさせていただきました。
事後報告で申し訳ありません。
なにか問題があったらおっしゃってくださいね。

素晴らしいブログですね。
また寄らせていただきます。
May 22 [Fri], 2009, 11:37
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