うなぎ割烹 江戸川 石ばし

May 10 [Thu], 2007, 0:05
うなぎ割烹 江戸川 石ばし
〜 これぞ江戸前うなぎの真打登場!
Vol. 66 
(* ミシュラン2010 ひとつ☆獲得)


  世の中に美味しいものが存在する。それを判ったうえで、黙って食べて、心の中で美味しかったと感謝できれば、それに越したことは無い。東京で、鰻!を所望されるなら、わたしは、間違いなく、江戸川橋・石ばしか、南千住・尾花あたりを薦めるであろう。東京で、鰻!と言えば、二大双璧と言っても過言ではない。殊に味で勝負するなら、もちろん石ばしである。それは、ひとつの到達点、もちろん、その上を行くものもあれば、他を探さずにあえて、石ばし止まりでも損はしないというものだ。 アクセス : 江戸川橋駅からだと、かなり歩く。高田馬場駅前から、都営バスで九段下行き、石切橋で下車、この橋の袂に位置するのが、先に紹介した、はし本さんで、其処から、さらにひとつ向こう側の橋=西江戸川橋を渡って、進んだ先の左側、目印の煉瓦塀が見えてきたら、其処が石ばしさんです。

 そう、現在の水道2丁目は、かつて神田上水が引かれていたところから付けられた名称で、もっと古く遡って江戸時代には西江戸川町という名で呼ばれた町がありました。石ばしさんは、創業明治41年、もう100年近くになる老舗です。もとは、ひとつ向こう側、中之橋の袂に店を構えて営業し始めましたが、大空襲により、この辺りは焼尽し、現在の場所へと移って再開されました。

 現在でも、その当時の面影を残すものとして、この煉瓦塀がその名残を留めております。母屋の建物の一部にも、古い建築が残されているといわれています。このあたりから音羽にかけて、中小の印刷業者が密集している町工場の様相を呈しています。調べによれば、明治期の頃に既に大きな紙問屋があったようで、古くから同業者が寄り合って町を形成してきたかと思われます。
 鰻は、《 串打ち三年、裂き八年、焼きは一生 》 
と申すそうです。 《 石ばし 》さんの鰻は、そんな丁寧な仕事で、いまも変わらず、江戸前の鰻を味わわせてくれる至高の店です。


 営業スタンス : 日曜・祝日・休み。 要・事前予約。 昼時は、11:30〜14:30 夜 17:30〜20:30 予約は、当日の鰻の仕入れの都合上で、本数を確保するために必要。従って、原則は、来店し、着席してから鰻を捌き始め、蒸し、焼かれるので優に小1時間以上は掛かると見積もって欲しい。鰻が焼かれる間、お酒など飲みながら、お通しなど摘み、待つ時間もなかなか小粋な鰻通のひとときでもある。(此処は、鰻が焼きあがる時間もかなり要するので、それに比例してお通しも、なかなか凝った感じに思える。)

 * 此処は、鰻に合うお酒と称して、酒蔵にわざわざ発注した特製なものや大吟醸のぬる燗など、趣向を凝らしたラインナップもあるので、酒のつまみに、付き出しや、白焼の贅沢三昧を試みて欲しいものです。〆は、もちろん鰻重の上で。夜には、コース料理も割安で◎です。
うなぎ : 鰻重(上)=2800円 ☆☆☆☆☆ この上には、もちろん特上もありますが、鰻の大きさ的には、上と特上は同じランクで、さらに御飯の上に載せられた際に量の多い少ないを意味します。なお並は、目方が小さい別物ものなので、こちらでは必ず上を頼むようにしてください。此処まで来て並では、意味がありません。

 上の重箱は輪島塗。此処の鰻は、静岡の吉田産を使用。焼きが食感で伝わってくるように、バリバリな外見とふわっとしてとろ〜りとした柔らかさの食感の醍醐味が味わえます。さらに鰻本体に対しても、タレが、けっして、くどくなく、鰻本来の良さを殺すことなく、あっさり目で上品な口当たりは、まさに絶品としか、いいようがありません。

 難を言わせて貰えば、表面は、少し硬く焼きすぎ、御飯には、もう少しタレを控えたほうが自分としては好みではあります。さて、とくに印象に残るのは、此処の鰻を食べた後味の良さ。つまり、その余韻が持つ深みに、美的なふくよかさが、そこはかとなく漂ってきます。

 実際に、口にしてみれば、万人が分かりうることで、クドさや嫌味が微塵の欠片もありません。すっ〜っと口に入って、とろけるような味覚が料理の確かさを物語っているようです。

 肝吸いは、椎茸入り、そこはかとなく吸地に生姜の風味がしますが、どうも濁りがあって、撚れた(よれた)味でした。あまり美味しいとは言えません。お新香は美味しかった、品々のバランスが良いです。奈良漬のある無しは、鰻屋の品格を求めるチェックポイントです。
 総評 : とりあえず、非の打ち所がありません。というより、此処の持ち味は、すべてにおいて標準点であり、ひとつの到達点ではありますが、バランスのよさを除いて、覇気(勢い)や華美(押しの強さ)、その他の圧倒するような技巧として見るべきものを見出しえません。つまり限りなく突き詰めた仕事をこなしつつも凡庸であるが、優美さは兼ね備えた逸品ということでしょう。

 わたしは、ここの鰻をもって、ひとつの基準値とします。これ以下の鰻は、よっぽどの鰻好きでなければ、食べるに値しないレベルということになります。逆に、石ばし以上のパフォーマンスを持った鰻屋は、存在するということなのです。

 しかし、それは、どこにその価値を見出すのか、ハッキリとした特徴があるゆえの展開という結論を待ちます。ようは、好みの範疇に属しうるもの、そう思ってもらってけっこうです。

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