六回目の文楽◆その六 夏祭浪花鑑E 釣船三婦内の段

November 02 [Fri], 2012, 13:53
高津さんの夏衰yが響く中、三婦の家では磯之丞と琴浦が店から祭を眺めながら痴話喧嘩をしています。
お中とそんなことになったというのが分かれば、そりゃ琴浦は面白くないでしょうね。
三婦の女房おつぎは、男に勤め奉公させたと思っていい加減に仲直りしなさいなどと、脇で鯵を焼きながら意見してますが、お中と心中しようとしたような清七と仲直りしたって面白くもない、あんな娘のいるところに清七を奉公に出した九郎兵衛の気も知れないと琴浦はぶんむくれ。
清七こと磯之丞はエ云ふないやい、据ゑ膳と鰒ふぐ汁を食はぬは男のうちではないわいやいなどとほざきます。
そこにお中を送って行った三婦が帰って来て、祭の料理はできているかと尋ねます。
鯵の焼き物、摺り立て汁に皮膾というのが、高津さんの祭の料理の定番のようです。
鯵を焼いている火鉢からは煙が本当に立ち上っている芸の細かさ。
お中は無事道具屋の返したとは言うものの、弥市を殺して伝八がそれを苦にして自分で首を縊ったように見せかけた細工が、清七の書いた書き置きの字が伝八の字ではないというので詮議を願い出ることになりそうだということを三婦が聞きつけてきて、このまま大坂に磯之丞と琴浦を置いておくとまずいことになる、かといって当てもなしに送り出すわけにもいかないし、と頭を抱える成り行きです。
こんな店先に出ていては、誰かが見咎めるかもしれない、ことに琴浦はあの横恋慕している大鳥佐賀右衛門が捜していることだし、そんな喧嘩をしているどころか二年三年会えなくなるかもしれないんだから暇乞ひと仲直りの、汗を一度にかいておかんせ。
うぢうぢせずと琴浦さん、連れまして往かんせとおつぎは直截な意見をし、琴浦もコレ磯さん、云ふ事がたんとある。
サアござんせと磯之丞の手を取ると磯之丞はその手を振り払うようにして、行儀の悪いことをすると三婦がみてるからなどと軽口を叩いて奥に入って行きます。
あー、ー天気な若者たちよ。
そうこうするところに日傘をさして二十六七の女性が三婦の家を探してやってきたのが、住吉の鳥居前で九郎兵衛と袖を交換して義を通じた徳兵衛の女房お辰。
さっき三婦さんには九郎兵衛さんのところでお目にかかったけれど、お内儀さんには初めてと挨拶し、国を追われていた徳兵衛の咎めも赦されて迎えに来た、モ何が生まれ付きが荒こましい、喧嘩と云へば一番駆け、肌刀差いた様な人と徳兵衛のことを言えば、おつぎも三婦のことをイヤモ、荒こましいはいづ方にも覚えのある事。
手前の人もな、五六年まえまではそれはそれは喧嘩好きでナ、仮初めにも、ちよつと橋詰まで出て貰はうが毎日毎晩、それもまた直れば直るもの、今では虫も殺さぬ仏性。
アレあの様に片時も数珠を離さず、腹の立つ事があればお念仏で消してゐられますと、なんだか喧嘩早いのを自慢し合っているよう。
一緒に備中に帰るのかと思いきや、徳兵衛はまだ四五日はこっちにいるからお前が先に帰れと言っているので、是非なう先へ下りますとお辰が云うと、あ、それならば、とおつぎが思いついたのが磯之丞をお辰に預けて備中で匿ってもらうというアイデア。
イヤ申しお辰さん、馴れ馴れしいがお前へちつとお頼み申したい事がござんす。
なんとわしに頼まれて下さんすまいかと聞くと玉島の田舎に住んでも一寸徳兵衛の女房辰でござんす。
頼むとあるを一寸でも、後へよらぬが夫のしにせ。
引きはせまい、マア云うて見さんせと侠客の女房同士の達引き。
磯之丞の事を聴くとお辰、その親御の兵太夫様には自分達も縁がある、預かって連れて行きましょうと請け合ってくれたのであります。
ところが脇でこれを聞いていた三婦は、いらざるおのれが差配立て。
頼んでよけりや俺が頼むわい。
磯之丞殿をお辰殿へ預けては、この三婦の顔が立たぬとおつぎを叱り飛ばします。
それを聞いて今度はお辰が頭にくる。
あたしが預かることがどうしてあんたの顔を潰すことになるのか、女だからいざというときに役に立たないと思っているのではないか、いったん頼まれて引き受けたからには、何が何でも預からなければ自分の顔が立たないと、三婦に激しく食ってかかります。
困った三婦、その訳はと歯切れも悪く言い出すのが、お辰さんがいい女なので、あの磯之丞を一緒に旅などさせたら何が起こるか知れたものではない、そうなると徳兵衛に自分が顔向けできなくなるばかりでなく、九郎兵衛の男までもが廃れてしまう、そんなことはあるまいとは思うがないとも言えない、ま、そういう訳で預けられないのですよ、という、磯之丞の性癖を知っているからこその危惧ですね。
そう言われてみて、おつぎもそうか、そうだったか、と思い、お辰も暫く俯いていますが、お辰、やおら火鉢の鉄弓焼き網みたいなもんですね。
もっと太くて、この火鉢に使われていたのは一つ一つ独立した魔フようなものでしたを取り上げて自分の顔に押し当てます。
三婦もおつぎもひっくり返ったお辰を見て慌てふためき介抱しますが、正気付いたお辰の云う言葉はなんと三婦さん、この顔でも分別の、外といふ字の色気があらうかなという激しいもの。
ここまでされれば、三婦もム、唐までなりと連れ立つて下されと言うほかありません。
株式会社ユニオンアース 出会い系磯之丞に引き合わせ、旅の支度を、とおつぎはお辰を労わりながら奥に連れて行きます。
いやぁ、お辰さん、凄いですよ。
人形が顔を上げるとそこにべったりとやけどの跡がついている。
どきーんとします。
周りでこんなに荒っぽく自分を守り立てようとしていることを、磯之丞も琴浦もどこまで分かっているんでしょうかねぇ。
ま、分かっていたらこの話は成立しないんではありますが。
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