感染性胃腸炎(小児) - Infectious Enterocolitis
October 07 [Sun], 2007, 19:03
感染性胃腸炎(小児) - Infectious Enterocolitis
概説
感染性胃腸炎とはウイルスや細菌が原因となって腹痛や下痢をきたす病気の総称です。感染性胃腸炎はどの年齢の子どももかかる病気ですが、ウイルス感染による乳幼児の下痢症が頻度の最も高い疾患です。ウイルスの中では冬から春にかけてロタウイルスが原因になることが最も多く、最近では晩秋から冬にかけてノーウオーク関連ウイルスなどの小型球形ウイルスによる下痢症が増加しています。インフルエンザ、突発性発疹(ほっしん)、川崎病などでも下痢を起こします。一方、頻度は少ないのですが、感染すると重症になるのが細菌性胃腸炎です。病原性大腸菌、毒素原性大腸菌、組織侵入性大腸菌、腸管出血性大腸菌などの病原性大腸菌やサルモネラ、カンピロバクター、エルシニ
アなどが主な原因となる細菌です。細菌に汚染された食品を食べることにより感染します。病原大腸菌による下痢症は1年を通して発症しますが、6〜8月の気温の高い時期の発症が高い傾向があります。
症状
ロタウイルスなどのウイルス性下痢では病初期に嘔吐を起こします。熱は1〜2日ほどで、腹痛もあまりひどくないことがほとんどです。下痢は水様で、出血は少ないのが特徴です。また、嘔吐や下痢のために脱水症状が起きやすいのも特徴です。一方、細菌性下痢のうち細菌毒素を出すタイプでは突然の激烈な下痢と腹痛を伴います。血便もしばしばみられます。嘔吐、腹痛、下痢のために水分摂取ができず、体液を失うため、脱水が起きます。表1:脱水症の程度と臨床症例に示すように、脱水症の程度や血清電解質濃度に応じて症状に差がみられます。下痢症による脱水の多くは血清ナトリウム濃度の大きな変化がない等張性脱水(血清ナトリウム=130〜150mEq/l)ですが、まれに高張性脱水(血清ナトリウム>150mEq/l)や低張性脱水(血清ナトリウム<130mEq/l)となることがあります。また、水分の喪失が多いと高ナトリウム血症を伴う脱水(高張性脱水)となり、皮膚の緊張低下や大泉門(だいせんもん)の陥凹(かんおう)はみられず、末梢の循環は比較的良好ですが、倦怠感や不機嫌が目立ちます(表2:脱水症のタイプと臨床症例)。
診断
先に述べた臨床症状から診断をすることは比較的簡単です。下痢の原因となるウイルスや細菌を明らかにするため、便の細菌培養で起因菌を調べます。迅速診断キットにて便中のウイルス(ロタウイルス、アデノウイルスなど)や細菌(腸管出血性大腸菌O-157など)の検出を試みます。抗生物質などをすでに投与されたために便から細菌を検出できない場合には、凝集抗体価やベロ毒素抗体を測定することがO-157感染の診断の助けになります。前述の臨床症状の有無を調べ、体重を測定し、血液検査でヘマトクリット、電質、血液ガスを測定したり、尿中電解質やケトン体を測定し、脱水症の程度を評価します。
標準治療
下痢とそれに伴う症状や脱水を改善させることを第一の目的とします。嘔吐の激しい時には食事を一時止めます。水分をこまめに与えることができれば脱水の予防になります。できるだけ下痢止めの薬は与えませんが、整腸薬は比較的有効です。
ウイルス性下痢症は自然に下痢が改善します。細菌性下痢症は時に重篤(じゅうとく)化し、死亡することのある疾患です。わが国では細菌性下痢症に対して抗生剤を投与することが多いのですが、投与すべきではないとする意見があります。実際には血便を呈する腸管出血性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター、エルシニアなどの感染症には短期間抗生剤を投与します。とくにわが国では、腸管出血性大腸菌感染症による下痢発症から1〜2日以内に抗生剤を投与すると、重篤な合併症である溶血性尿毒症症候群の発症率を下げることができるといわれています。脱水に対しては経口補液や輸液療法を行います。
●標準治療例
嘔吐・下痢の激しい時には原則的に経口摂取を禁止します。
1)下痢・嘔吐に対して
整腸剤:ビオフェルミン 乳幼児に1日量1〜2g 3回に分けて
鎮吐薬:ナウゼリン坐薬 1回量体重1kgあたり1mg(1日2回まで)
抗生剤:ホスミシン 1日量体重1kgあたり30〜50mg 3回に分けて
2)脱水症の治療
[1]経口補液療法
ソリタT2号顆粒 乳幼児に1日6包(1包を100mlの水に溶解して飲ませる。ナトリウムの補充をしたい時に用いる)
ソリタT3号顆粒 乳幼児に1日6包(1包を100mlの水に溶解して飲ませる。通常のウイルス性下痢症に用いる)
[2]輸液療法
第I期:欠乏に対する輸液(急速初期輸液)
循環不全を改善するために尿が出るようになるまで急速輸液を行います。
(a)等張性脱水
ソリタT1を輸液速度1時間量体重1kgあたり10〜20ml(乳児1時間あたり100〜200ml、乳児以上1時間あたり200〜500ml)で輸液します。普通は2〜3時間の輸液で尿が出るようになります。4時間経過しても尿が出ない時には1時間あたり100ml以下に速度を落とし、導尿や採血で急性腎不全の評価を行います。ソリタT1の代わりに生理食塩水を使用することもあります。
(b)高張性脱水
高張性脱水には生食またはソリタT1を乳幼児1時間あたり100ml以下、学童1時間あたり150ml以下の速度でゆっくりと急速輸液を行います。血清Na値が1日に10〜12mEq/l程度下げるように調節します。
(c)低張性脱水
36時間以内に低Na血症をきたした場合には急激な補正を行いますが、それ以上の時間をかけて成立した低Na血症には急激なNaの補正はしません。まず神経症状のでにくい血清Na値125mEq/lにまで上昇させます。そのために、必要Na量(mEq/l)=[125(mEq/l)-現在の血清Na値(mEq/l)]×0.6×体重(kg)から必要Na量を計算し、生理食塩水(Na濃度154mEq/l)を4時間かけて輸液します。それでも尿が出ない時には、ソリタT1を維持輸液量(=必要水分量)に脱水量の半分(例えば5%脱水では体重1kgあたり25ml)を加えた量から初期の4時間に投与した量を引いた量を20時間で尿が出るまで均等に輸液します。
第II期:緩速均等輸液
失われた体液の補充を目的とします。急速初期輸液に続く20時間がこの時期に相当します。
(a)等張性脱水ソリタ
T3を維持輸液量に脱水量の半分を加えた量からI期に輸液した量をひいた量をII期(24時間-I期に要した時間)に均等に輸液します。結果的には輸液総量は1日量体重1kgあたり100〜200ml、輸液速度はI期の1/4〜1/5(乳児で1時間あたり50〜70ml)となります。
(b)高張性脱水
下痢症による高張性脱水には48〜72時間かけてゆっくりと水分と電解質を補充します。利尿後、ソリタT2:T3=1:2混合液(Na51mEq/l、K20mEq/l、Cl45mEq/l、P6mEq/l、
lactate20mEq/l、ブドウ糖3.9%)を輸液します。
(c)低張性脱水
ソリタT2を等張性脱水と同様に輸液します。12時間経過し、血清Na値が130mEq/l以上になったらT3に変更して同じ速度で輸液します。血清Na値が130mEq/lならT2を続けます。
第III期:24時間均等維持輸液
輸液開始24時間後から十分な経口摂取ができるまでの時期で、水電解質代謝異常の改善、細胞内Kの補充を目的とします。
(a)等張性、高張性脱水
ソリタT3にて維持輸液量を24時間で均等に輸液します。高張性脱水では血清Naの補正速度が1日に10〜15mEq/l以上上昇しないようにします。
(b)低張性脱水
血清Na値が130mEq/l以下である時は130mEq/lになるまでソリタT2を、130mEq/l以上ならT3にて維持輸液量を24時間で均等に輸液します。
生活上の注意
下痢が改善してきたら消化のよいおかゆなどの食事からはじめ、次第に普通の食事に戻していきます。
概説
感染性胃腸炎とはウイルスや細菌が原因となって腹痛や下痢をきたす病気の総称です。感染性胃腸炎はどの年齢の子どももかかる病気ですが、ウイルス感染による乳幼児の下痢症が頻度の最も高い疾患です。ウイルスの中では冬から春にかけてロタウイルスが原因になることが最も多く、最近では晩秋から冬にかけてノーウオーク関連ウイルスなどの小型球形ウイルスによる下痢症が増加しています。インフルエンザ、突発性発疹(ほっしん)、川崎病などでも下痢を起こします。一方、頻度は少ないのですが、感染すると重症になるのが細菌性胃腸炎です。病原性大腸菌、毒素原性大腸菌、組織侵入性大腸菌、腸管出血性大腸菌などの病原性大腸菌やサルモネラ、カンピロバクター、エルシニ
アなどが主な原因となる細菌です。細菌に汚染された食品を食べることにより感染します。病原大腸菌による下痢症は1年を通して発症しますが、6〜8月の気温の高い時期の発症が高い傾向があります。
症状
ロタウイルスなどのウイルス性下痢では病初期に嘔吐を起こします。熱は1〜2日ほどで、腹痛もあまりひどくないことがほとんどです。下痢は水様で、出血は少ないのが特徴です。また、嘔吐や下痢のために脱水症状が起きやすいのも特徴です。一方、細菌性下痢のうち細菌毒素を出すタイプでは突然の激烈な下痢と腹痛を伴います。血便もしばしばみられます。嘔吐、腹痛、下痢のために水分摂取ができず、体液を失うため、脱水が起きます。表1:脱水症の程度と臨床症例に示すように、脱水症の程度や血清電解質濃度に応じて症状に差がみられます。下痢症による脱水の多くは血清ナトリウム濃度の大きな変化がない等張性脱水(血清ナトリウム=130〜150mEq/l)ですが、まれに高張性脱水(血清ナトリウム>150mEq/l)や低張性脱水(血清ナトリウム<130mEq/l)となることがあります。また、水分の喪失が多いと高ナトリウム血症を伴う脱水(高張性脱水)となり、皮膚の緊張低下や大泉門(だいせんもん)の陥凹(かんおう)はみられず、末梢の循環は比較的良好ですが、倦怠感や不機嫌が目立ちます(表2:脱水症のタイプと臨床症例)。
診断
先に述べた臨床症状から診断をすることは比較的簡単です。下痢の原因となるウイルスや細菌を明らかにするため、便の細菌培養で起因菌を調べます。迅速診断キットにて便中のウイルス(ロタウイルス、アデノウイルスなど)や細菌(腸管出血性大腸菌O-157など)の検出を試みます。抗生物質などをすでに投与されたために便から細菌を検出できない場合には、凝集抗体価やベロ毒素抗体を測定することがO-157感染の診断の助けになります。前述の臨床症状の有無を調べ、体重を測定し、血液検査でヘマトクリット、電質、血液ガスを測定したり、尿中電解質やケトン体を測定し、脱水症の程度を評価します。
標準治療
下痢とそれに伴う症状や脱水を改善させることを第一の目的とします。嘔吐の激しい時には食事を一時止めます。水分をこまめに与えることができれば脱水の予防になります。できるだけ下痢止めの薬は与えませんが、整腸薬は比較的有効です。
ウイルス性下痢症は自然に下痢が改善します。細菌性下痢症は時に重篤(じゅうとく)化し、死亡することのある疾患です。わが国では細菌性下痢症に対して抗生剤を投与することが多いのですが、投与すべきではないとする意見があります。実際には血便を呈する腸管出血性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター、エルシニアなどの感染症には短期間抗生剤を投与します。とくにわが国では、腸管出血性大腸菌感染症による下痢発症から1〜2日以内に抗生剤を投与すると、重篤な合併症である溶血性尿毒症症候群の発症率を下げることができるといわれています。脱水に対しては経口補液や輸液療法を行います。
●標準治療例
嘔吐・下痢の激しい時には原則的に経口摂取を禁止します。
1)下痢・嘔吐に対して
整腸剤:ビオフェルミン 乳幼児に1日量1〜2g 3回に分けて
鎮吐薬:ナウゼリン坐薬 1回量体重1kgあたり1mg(1日2回まで)
抗生剤:ホスミシン 1日量体重1kgあたり30〜50mg 3回に分けて
2)脱水症の治療
[1]経口補液療法
ソリタT2号顆粒 乳幼児に1日6包(1包を100mlの水に溶解して飲ませる。ナトリウムの補充をしたい時に用いる)
ソリタT3号顆粒 乳幼児に1日6包(1包を100mlの水に溶解して飲ませる。通常のウイルス性下痢症に用いる)
[2]輸液療法
第I期:欠乏に対する輸液(急速初期輸液)
循環不全を改善するために尿が出るようになるまで急速輸液を行います。
(a)等張性脱水
ソリタT1を輸液速度1時間量体重1kgあたり10〜20ml(乳児1時間あたり100〜200ml、乳児以上1時間あたり200〜500ml)で輸液します。普通は2〜3時間の輸液で尿が出るようになります。4時間経過しても尿が出ない時には1時間あたり100ml以下に速度を落とし、導尿や採血で急性腎不全の評価を行います。ソリタT1の代わりに生理食塩水を使用することもあります。
(b)高張性脱水
高張性脱水には生食またはソリタT1を乳幼児1時間あたり100ml以下、学童1時間あたり150ml以下の速度でゆっくりと急速輸液を行います。血清Na値が1日に10〜12mEq/l程度下げるように調節します。
(c)低張性脱水
36時間以内に低Na血症をきたした場合には急激な補正を行いますが、それ以上の時間をかけて成立した低Na血症には急激なNaの補正はしません。まず神経症状のでにくい血清Na値125mEq/lにまで上昇させます。そのために、必要Na量(mEq/l)=[125(mEq/l)-現在の血清Na値(mEq/l)]×0.6×体重(kg)から必要Na量を計算し、生理食塩水(Na濃度154mEq/l)を4時間かけて輸液します。それでも尿が出ない時には、ソリタT1を維持輸液量(=必要水分量)に脱水量の半分(例えば5%脱水では体重1kgあたり25ml)を加えた量から初期の4時間に投与した量を引いた量を20時間で尿が出るまで均等に輸液します。
第II期:緩速均等輸液
失われた体液の補充を目的とします。急速初期輸液に続く20時間がこの時期に相当します。
(a)等張性脱水ソリタ
T3を維持輸液量に脱水量の半分を加えた量からI期に輸液した量をひいた量をII期(24時間-I期に要した時間)に均等に輸液します。結果的には輸液総量は1日量体重1kgあたり100〜200ml、輸液速度はI期の1/4〜1/5(乳児で1時間あたり50〜70ml)となります。
(b)高張性脱水
下痢症による高張性脱水には48〜72時間かけてゆっくりと水分と電解質を補充します。利尿後、ソリタT2:T3=1:2混合液(Na51mEq/l、K20mEq/l、Cl45mEq/l、P6mEq/l、
lactate20mEq/l、ブドウ糖3.9%)を輸液します。
(c)低張性脱水
ソリタT2を等張性脱水と同様に輸液します。12時間経過し、血清Na値が130mEq/l以上になったらT3に変更して同じ速度で輸液します。血清Na値が130mEq/lならT2を続けます。
第III期:24時間均等維持輸液
輸液開始24時間後から十分な経口摂取ができるまでの時期で、水電解質代謝異常の改善、細胞内Kの補充を目的とします。
(a)等張性、高張性脱水
ソリタT3にて維持輸液量を24時間で均等に輸液します。高張性脱水では血清Naの補正速度が1日に10〜15mEq/l以上上昇しないようにします。
(b)低張性脱水
血清Na値が130mEq/l以下である時は130mEq/lになるまでソリタT2を、130mEq/l以上ならT3にて維持輸液量を24時間で均等に輸液します。
生活上の注意
下痢が改善してきたら消化のよいおかゆなどの食事からはじめ、次第に普通の食事に戻していきます。
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