【はじめに】 

December 31 [Wed], 2014, 22:52
ここはみなもが考えたオリジナル説ブログです。
苦手な方や荒らしさんはプラウザバック。

携帯投稿が主なので、機種の仕様で中途半端に切れる事があります。
確認はしていますが、漏れる事もあるので気付いた時はコメント等で教えてくださると嬉しいです。

リンクの切り貼りはご自由に。

無断転載は禁止ですが、うちの子はどうぞご自由にお描き下さい。

超賛同・超主張!

タマさんと僕1(続けばいいなと思ってる) 

July 28 [Wed], 2010, 15:54
僕が大きな猫(仮)と小さな子猫を拾ったのは、汗ばむくらいの陽気の、ある春の日のことでした。
もう少し説明を付け足すなら、在宅勤務なひきこもりんの僕が、数日降った大雨の久方ぶりの青空に誘われた日のこと。

僕の住むマンションから見える大きな河川は、晴れやかな空とは打って変わった濁り具合でした。
半乾きの階段に腰を下ろして、ぐるぐると渦巻くそれを眺めます。
赤ん坊を連れた若奥様方には白い目で見られます。
まあそれは仕方ないでしょう。
平日にもかかわらず野暮ったいシャツと寝癖混じりの頭の三十路近い男を見かけたら、僕だって同じ感想を抱くでしょう。
……さすがに寝癖は直した方がよかったでしょうか。
目にかかる前髪を引っ張って体裁を繕っているときに、それは聞こえました。

「……に゛ぃ゛」

かすかな音でしたが、僕の耳はそれを拾い上げました。
顔を上げて音の方を見れば、小さな段ボールが川の隅っこでぷかぷかと浮いています。
開いた蓋の隙間から、薄汚れた灰色の毛むくじゃらが顔を出して、僕を見つめていました。

「……に゛ぃ゛」

どのくらい見つめ合っていたでしょうか。
結構短かったと思っていたんですが、実際は正味10分程だったそうです。
「そんなに見るなら助けなさいよ」
毛むくじゃらに話しかけられたのかと思い、僕は首を傾げました。
だって獣は喋らないものでしょう。
「ちょっとアンタ、耳と脳味噌繋がってる?」
ぐいっと耳を引っ張られ振り向いた先には、化粧っ気のない女性が、くわえ煙草でしゃがみ込んでいました。
「おそらく電気信号は繋がってると思います」
僕が素直にそう答えれば、彼女は半眼になって煙草を噛み千切りました。
「バカにしてんの?」
「事実を言ったまでです。お見せできないのが残念ですが」
アンタムカつくわ、そういって彼女は僕の隣に腰を下ろしました。
ムカつくというのなら場所を移せばいいのに、と思いましたが、彼女はあの段ボールが気になるようで、いっこうに動く気配がありません。
ここは僕が大人(いやもう成人してウン年たっていますけど)になるべきかと、静かに立ち去ろうとしたところで彼女がまた声をかけてきました。
「アレ、助けないの?」
新しい煙草に火を付けた指そのまま、彼女は段ボールを指しました。
「助けたら情が移るでしょう。情が移ったら別れるのが辛い。だったら最初から手を出すべきじゃないんです」
生まれて死ぬ、それが世の常でしょう?
それだけ言い立ち去ろうとすれば、ズボンの裾を強く引っ張られました。
「じゃあなに、捨てられるってのも世の常なわけ? あのおチビさんは助けを求めてるってのにアンタも捨てるの? アンタが見捨てたらあのおチビさん死んじゃうのよ? 生まれちゃいけなかったの?」
なんだかよく解らない風に彼女は喚きました。
端から見れば別れ話するカップルでしょうか。
「あなたが拾えばいいじゃないですか」
「野良猫みたいなのに拾われて幸せになれるっていうならね」
彼女は言い捨ててそっぽを向きました。
ズボンも離してくれましたが、僕はなんだか立ち去れなくなっていました。
「幸せってなんでしょうね」
ぽつりと呟いた僕は、振り向いた彼女の脇をすり抜けて段ボールに近づきました。

「に゛ぃ゛」

それは爛々と光るまん丸い目玉で僕を見据えていました。
「僕みたいなのに拾われて幸せになんてなるんですかねえ」
「に゛ぃ゛」
「僕のマンションペット可なんで、野良の1匹や2匹飼えなくはないんですよ」
「に゛ぃ゛」
「ねえ、しばらく住んでみます?」
「に゛「アンタ猫になに聞いてんの」」
胴に手を回してぶら下げるように持ち上げれば、重りを失った段ボールがぐるぐると川に飲み込まれていきました。
「野良猫2匹くらいなら飼えるって話を」
小さな猫の毛は泥水を吸ってぺしゃんこになっていましたが、きれいな白い毛が数本見えていて、洗えばさぞや美猫だろうと思いました。
「……1匹しかいないじゃない」
「え、だって野良猫なんでしょう?」
貴女と猫の手で示せば、彼女は一瞬目を見開いてから笑い出しました。


+ + +


どうもお久しぶりです、生きてます。
夏休み入ったってのにナツハの方もほとんど手をつけず、こんなところでこっちを更新。
ずいぶん前に書き留めてたのの放出ですが。

メガネ(目から10センチじゃないと本が読めないほどのど近眼)がお釈迦になり(スペアはあるが持ってくるのを忘れ)、違和感のあった前歯があり得ないくらい痛みだし、泣きっ面に蜂とはこのことかと妙に納得しています。
無気力勇者の続きが書きたい。

無気力勇者の道中記(仮題) No.0 

March 07 [Sun], 2010, 15:07
(見切り発車で突っ走れがこの話の基盤)

退屈な日常に嫌気がさすことはないか?
決まりきった物事、終わりのない平凡。
惰性で生きることになんの意味がある?

そんなことを考えていた、中学生の夏。
ダイチはその日初めて塾の夏期講習をさぼった。

中学三年ともなれば、高校受験に向けてのスパートをかけだす時期だろう。
医者一族の長男に当たるダイチは、それなりの好成績も押さえ、人当たりも(対外的には)良かったため、周りからの過分な期待に辟易していた。
夏休みも一週間が過ぎ、夏も盛りと蝉たちが鳴き喚く中、ふらりと通った公園の木陰に吸い寄せらたのは、そんな毎日に鬱屈がたまっていたからだろう。

木陰のベンチには誰の姿もなく、そのベンチに長々と寝そべってダイチは息を吐いた。
どれだけ息を吐き出しても、尽きることのない焦燥感。
枕にした鞄の中で、分厚い参考書が燻ぶっているように感じ、地面に払い落とす。
蓋がゆるんでいたのか、鞄の中からそれらは雪崩になって、心地よい木陰から焼け付く太陽の下へ飛び出した。

そのまま燃えてしまえばいいのに。

茫漠した視界の中でそれをとらえつつ、ダイチはゆっくり意識を手放した。

夢の中でだけでも、心が晴れるように願いながら。


 + + +


見切り発車のダイチさん(from【ナツハの日記】)の過去話。
大まかな流れは【ナツハの日記】で書いてみたものの、ちょっと細かく書いてみたくなった。
王道的なファンタジーを後ろ(前ではない)斜め45度くらいに眺めるお話。
まだ現代(日記からは11年前ぐらい)ですが、ダイチにはポーンと異世界に飛んでもらいます。
世界にもまれて今の彼があるので。

ちまちまと書いていきますが、やっぱり更新遅め。

呼ばれた理由を語る石 

January 04 [Mon], 2010, 13:05
ユノの似非方言は、今度じっくり考えて改稿する予定。
後打ち込んでないだけのがいくつかあります。
それはまた今度で。
しばらくこれ(夢謳シリーズ)はUP予定はないです。
なんか話がグダグダになってきているので全編改稿とかも考えてます。

その他の小話は上げるかもしれません。


「なぁなぁニイチャン、これ買うてかん?」

幼さの残る売り子の声に、レイシスは足を止めた。
ヴォルトはそれに気づかずに先へと歩いて行ってしまうが、今日の宿はもう決めていた。
はぐれたとしても宿に戻れば(遅くとも夜には確実に)大丈夫だろうと、
遠ざかっていくヴォルトの背中から売り子へと向きなおった。

「おぉー、ニイチャンええ奴やね。安くしとくでーってもしかしてネェチャンか?」

売り子――12,3歳くらいの少女だ。愛嬌のある顔に人好きする笑みを浮かべている――が、
身をかがめてフードの中を覗き込もうとするのに、レイシスは慌てて身を引いた。
黒を見に宿したのは悪魔の化身などという俗説のあるこの世界で、
レイシスの黒髪を見られるのはいただけなかった。

「いや、俺は男だよ。ところでそれ、何を売ってるの?」

少女が敷布に並べているのは、小さな石だった。
宝石のように輝くものから、ビー玉やおはじきのような玩具のようなもの。
少女の近くには、その辺でも転がっていそうな石ころ(少なくともレイシスにはそう見えた)が、
ベルベットに包まれて置かれている。
それらは日の光を浴びて、星のようにキラキラと瞬いていた。
まるで夜空を切り取って来たような、そんな印象を受ける。
レイシスがしゃがみこんで不思議そうに石を見ている中、
少女はよくぞ聞いてくれました! というふうに笑いかけた。

「ニイチャン、このあたりの人じゃないんね。せやったら知らんのも無理ないわ。これはなぁ、魔石って呼ばれてるもんや。
たとえば、これなんかは危険から身を守ったり、悪いもんを遠ざけてくれる力があるん。
ま、有体にいえばお守り石やな。
そっちのは精霊の力が少し宿っとるもんや。火種を起こしたり、氷を作ったり、種類は様々やね。
まぁ、山火事起こしたり洪水起こしたりするんはこの程度のじゃ出来へんけど」

少女は首飾り(守り石と呼んだものだ)を爪でピンとはじいて笑った。

「……魔石?」

レイシスは呟いて袖を捲った。
そこには、ヴォルトから貰った腕輪がぴったりとはまっている。
蔦の絡まる、繊細な金細工のそれには、小さな緑色の石が埋まっていた。
それは明滅を繰り返すように、絶えず煌めいている。

「ひょっとして、これもお守り石なのか?」

腕を突き出して尋ねると、少女は一瞬目を見開き、すぐさま手のひらで覆うように腕輪を握りこんだ。

「何……!」
「アカンよ、これは。簡単に人に見せたらアカン」

先ほどまでの、少女らしい明るい声とは違う低い声に驚いて、レイシスは腕を引こうとした。
だが、少女とは思えないほどの力に阻まれて、それはかなわない。

「ええ? これは、お守り石なんてちゃちなもんとは比べるまでもない、強いもんや。
自然に産まれるもんやない、人が、命をかけて生み出されるもんや。
誰にだって作れるもんやあらへん。ただひとつのために、命を捧げて生まれるもんや。
それを、簡単に人に見せたらアカン」

ええね? と、念を押して少女は腕を放した。
驚いて身じろぎもしないレイシスに、少女は可愛らしい顔に似合わず舌打ちを打って袖を手繰って腕輪を隠した。

「……アンタ、ほんとに何にも知らんようやね。
そんなもん着けさせたんどこの誰なん?
おまけにけったいな魔術までかかっとるし」

そういう少女の手のひらは赤く腫れ上がっていた。
痛ましいそれにはくっきりと、腕輪と同じ文様が浮かんでいる。

「これは、ヴォルト……俺の連れがくれた物だ」

ヴォルト、という名に一瞬眉をひそめた少女だったが、すぐにそれを解いて最初とおなじ笑みを浮かべた。

「さよか、ニイチャンの連れはごっつ強い魔術師なんやろうね」

少女の態度に面食らったレイシスだったが、ヴォルトの顔を思い浮かべ手遠い目になった。
そう、出会った当初は何か途方もない力の持ち主だと肌で感じた。
しかしそれは、ここ数日で勘違いだったんじゃないかと思うレイシスだった。

「凄い、かどうかは分からないな。
出会ってからまだひと月もたってないんだ。
確かに、知識やそれを扱う能力はすごいと思うけど、
――時々、本当はただのバカなんじゃないかと思うし」

ぶつぶつと呟くレイシスに、少女は笑みを浮かべた。

「魔術師をなめたらアカンよ? 顔で笑っとっても腹じゃ何考えとるか解らん奴らや。
真実を語ったかと思えば嘘をつき、信頼すれば裏切られる。
そういう奴らや。」

少女は笑いながら小さな石を一つ摘みあげた。

「これはな、嘘を見抜く目って呼ばれとる石や。
普段は青い石やけど、嘘吐きがそばにおると赤く染まって熱が出るんや」

アーモンド形のそれは夏の空のような青さで、
赤く染まるとは到底信じられなかった。

「――今のニイチャンに必要なもんやろうから。
これ、やるわ」

そう言って少女はレイシスの手に魔石を押し付けた。

「でも、これ売り物じゃ」
「ええから、持ってき」

レイシスは冷たいそれを握りこんだ。
ヴォルトの事を疑っているわけではないが、受け取った方がいいのだと心の片隅が告げていた。

「……ありがとう、もらっとく。実はオレ、金持ってないんだ。
連れに任せてるから……換わりにってわけじゃないけど、これ、使ってくれ」

レイシスは荷物から小瓶を一つ取り出して少女に渡した。
中身は、ヴォルトに教えられて作った薬だ。
擦り傷切り傷、打ち身や火傷といった悪い部位にすり込めば、数日で痕もなく消える。
少女はそれを日に透かして見つめ、手のひらに数滴たらした。
ほんの少し、腫れが引いた気がする。

「魔術師の薬やね。こっちこそおおきに、ええモン貰ったわ」

少女はにっこり笑って礼を述べた。

「けどな、今度は金持ってるやつ紹介してくれへん?
さすがに売れへんとおまんまの食い上げや」

少女がからからと笑うので、レイシスも笑い返した。

「確かにその方がいいな、今日宿屋で声掛けるよ。
いい魔石屋がいるってさ」

約束やで! と意気込む少女に、レイシスは笑顔で頷いた。


「レイシス―!!」


遠くから、レイシスを呼ぶ声がした。立ち上がって眺めると、ヴォルトが大きく手を振って近づいてくる。
ただでさえ目立つ容姿をしている彼がそんな事をすれば、まるでモーゼの十戒の如く人波が割れた。
苦笑して手を振れば、あからさまにほっとしたように笑顔を浮かる。
そういえば、と思いついて、レイシスは少女の方を向いた。

「オレはレイシスっていうんだけど、君の名前は――?」

少女に向いたはずのレイシスの目は、しかし誰も捉えなかった。
一瞬前まで広がっていた石も敷布も忽然と姿を消している。

「そんな、今まで……」

ふと手のひらに目をやる。
そこには、少女から貰った青く冷たい石が、確かに握られていた。


「レイシスー!!」


ヴォルトの声が徐々に近づいてくる。
レイシスは石を握りしめ、ポケットへ押し込んだ。
嘘を見抜く石。
助けてくれたヴォルトを疑うわけではない。
しかし、レイシスの脳裏には少女の言葉が反響していた。
《魔術師は真実も言えば嘘も付く、信じれば、裏切られる》
レイシスは腕輪をぎゅっと握りこんだ。
疑うわけではない、しかし、ヴォルトは何かを隠している。
レイシスは、自分がこの世界へ呼ばれた理由をまだ、聞いていない。
ヴォルトはそれを知っているのだろう事は、それとなく分かっていた。
それ以外にも、語られないことはたくさんある。
だけど、

(今は、まだ――)

なにも語らないヴォルトを、信じたいと思うのだ。

「いま行く」

レイシスはヴォルトに向かって歩き出した。
ポケットの中の石が、冷たく存在を主張していた。



夢謳・閑話? 

January 04 [Mon], 2010, 13:01
ユノのセリフとかウィードさんの口調の統一とか、やり足りないところが多々見受けられますがとりあえずUP




え、と思った瞬間、ヴォルトの身体は糸の切れた人形のように崩れた。

「ヴォルト!?」

慌てて駆け寄れば荒い息遣いが聞こえ、触れた額は火が出ているかのようだ。

「ヴォルト!」
「《大丈夫だよ》、レイシス」

は、とつかれる吐息は切れぎれで、それでも笑ってみせるヴォルトにレイシスは怒鳴った。

「そんな嘘吐くなよ! 大丈夫なんて、どこが、全然見えねぇよ!」

胸にある石が皮膚を焼くように熱かった。
嘘なんて吐くな と、レイシスは叫ぶ。

「……うん、本当言うと、ちょっと大丈夫じゃない」

へらりと笑うヴォルトに、レイシスは唇を引き結んで腕の下に肩を回した。
不安に涙がこぼれそうになるが、泣いている暇なんかないと心を奮い起こす。

「次の街まで、もうちょっとなんだろ? 連れてくから、死ぬなヴォルト」

祈るように、言葉を紡いだ。
ごめんね と、弱々しく呟くヴォルトに、
今度こそ、涙がこぼれそうだった。


     *  *  *


「ってなってさぁ、あー僕って愛されちゃってるーて思ったんだよ!」

目尻をこれでもかと下げてにやけるヴォルトに、レイシスは跳び蹴りを喰らわせたくなった。
しかし、ベッドに横になっている病人にそんなことはできないと理性が勝る。
レイシスは羞恥に顔を染めながら、運んできた水差しをドンと置いた。

「うっさいんだよ馬鹿! ああもう大人しく倒れてろよ、ていうかもういっそ永眠しとけ」

けらけらと笑う顔は良くはなってきているがまだ青白く、言ってしまってから後悔する。
水差しに目を落とし、映った顔の酷さにため息をつく。
その向こうで、会話は続く。

「ほらほらほら! かっわいいでしょ!? 顔染めながら言ったって怖くもなんともないよね!っていうか可愛い!
 でしょ、ユノ?」
「……せやねぇ」

医者として呼ばれた、部屋にいるもう一人の魔術師。
ユノに生暖かい目で微笑まれて、レイシスは居た堪れなくなった。
見た目だけなら子供と言えるユノにそんな目を向けられては、プライドとか矜持とかが音をたてて崩れるようだ。
レイシスは頭を抱えて座り込む。

(ああ、もう、こっちが落ち込んでるってのにコイツ等は!)

そんなレイシスに、さらにとどめを刺すような会話が届く。

「ほらもうオトーサン、あんないじけてしもてちゃんとフォローしとかなアカンよ?」
「わかっているよカアサン。しかしあの可愛さは犯罪的だよね、
 いつか誘拐されちゃうんじゃないかと僕はもう気が気じゃなくって!」
「ここまで可愛いとほんまにしんぱいやわ。せやオトーサン、ウィードに頼んで護身術でも習わせんか?」

しばらくあの子預かるで。なぁ、ええやろ?
にっこり笑うのは誘拐犯のそれだ。
相対するヴォルトも笑顔で応酬した。

「いやいやカアサン、レイシスを守るのは僕の役目さ!
 他人に任せるなんてとんでもないね!
 だって僕は全身全霊をかけてレイシスを愛しちゃ――」
「お前らもう黙れー!!」

ノリノリな二人の会話を一喝して、レイシスは落ち着くために深呼吸した。
しかし――

「ああ、親に向かってなんて口を! カアサン僕は一体どうしたらいいんだ!」
(親じゃねぇ! とレイシスはつっこんだ)
「反抗期って奴やよ、オトーサン。大丈夫や、いつかきっとわかってくれる。……その前にウチに預けん?」
(わかりたくもねぇよ! とレイシスは叫んだ)

もう本当に居た堪れなくなって、レイシスは部屋を飛び出した。
残された部屋の中には、乱暴に閉められた扉を生暖かい目で見つめる大人げない大人が二人と、
それを冷ややかに見ている壮年の男の姿があった。

「……あまりからかいが過ぎると、本気で嫌われるぞ」

そう諭した男に、二人は声を揃えてのたまった。

「「だってかわいいんだ(や)もん」」

壮年の男――ウィードはため息をついて部屋を出た。
好きな子をいじめる子供のような二人に、フォローなど任せられるはずもなかったから。


     *  *  *


「レイシス」

低く落ち着いた声に名を呼ばれ、レイシスは顔を上げた。
走って火照った体はすでに夜気に冷やされて、寒さを感じた矢先に頭から外套をかけられた。

「着てろ」
「でも」
「いいから着てろ」

シャツ一枚になったウィードに外套を返そうとするが、甲斐甲斐しく手を出されていつの間にか着こまされていた。
最後にフードを被せられたところで、髪を隠していなかったことを思い出した。
慌てて周囲を見渡せば、日が落ちて時間が経っているものの、まばらに人影が見える。
薄暗く、気づかれなかったのは幸いした。
黒髪のレイシスは、見つかれば袋叩きにあうか、最悪殺されてしまう。
そのことに思い至って、レイシスは戦慄した。
もうあんな目にあうのは嫌だった。
レイシスはフードの影からウィードを盗み見た。
その視線に気づいたウィードはレイシスの横に座り込み、煙草に火をつける。

「何だ?」
「いや、アンタが――あなたが来るとは思っていなかったから――」
「普通でいい」

遮られたレイシスが不思議そうにウィードを見つめた。
ウィードは紫煙を吐き出した。

「言葉だ、そう硬くならなくていい。ユノやヴォルトに、そんなふうには話さないだろう」
「それはそうですけど」

ヴォルトにだって、最初は敬語で話していたのだ。
ただ、彼の性格がそれを崩させて今に至る。
ユノにしても、はじめは年下の女の子だと思っていた。
彼らに話すようにしろ と、(ちゃんとした)大人のウィードに言われても困る、とレイシスは思った。
ふいにくしゃりと頭を撫ぜられた。
いつの間にか下がっていた顔を上げれば、苦笑したウィードと目が合った。

「無理にとは言わん。だが、そうしてくれた方が嬉しい」

嬉しい、と素直に言われてしまってレイシスは俯いた。

(なんだこれ、すっげぇ恥ずかしい)

ウィードは口から煙草を離して、レイシスの言葉を待っていた。
俯いたまま、レイシスは答える。

「努力、は、する」

そうか、とウィードは笑った。


     *  *  *


「お前が駆け込んで来たときは、驚いた」

ウィードが二本目の煙草に火をつけ、ふっと息をついた。
レイシスはばつの悪そうな顔で、ごめんと謝った。

「ヴォルトが倒れて、どうしようって思った。
 オレはこの世界の事何にも知らなくて、ヴォルトしかいなくて、本当に、恐くなったんだ」

無事町には着いた。
しかしレイシスの黒髪では医者に行ったところで門前払いか、酷ければ殺されるだろう。

「二人を見つけて、オレのこと知ってる人たちで、すっげぇ安心したんだ。ヴォルトが助かるって。
 ……ヴォルトの事嫌ってるのに、二人を頼って、ごめん」

ごめん、と謝るレイシスの頭を、ウィードはわしわしと撫ぜた。

「ユノは、確かにヴォルトを嫌っているが、病気の人間を見捨てるような酷い人間ではない。
 俺にしてみれば、あいつは確かにユノの敵だろうが、同時に俺の良い酒飲み仲間だ。
 だから、お前が謝る必要はない」

謝るより、言うべき言葉があるんじゃないか?
泣き出しそうだったレイシスは、その言葉にきょとんとした。
しかし何かに気づくと、はにかむように笑った。

「うん……うん、そうだった――ありがと、ウィードさん」
「……宿の二人にも言ってやれ。あれで落ち込んだお前を心配している」
「……う、ん。どう考えても遊ばれてたと思うけど、そうする」

戻るぞ、言いつつウィードは立ち上がった。
目が腫れている気がしたが、せいぜい心配させてやろうと座り込んだまま思うレイシスの手をウィードが掴んだ。

「早くしろ。病み上がりの人間とユノが追いかけてくる前に――帰るぞ」

手を引かれて歩き出して、レイシスは可笑しくなって笑い声を上げた。
なんだ、と視線で問うウィードにこらえきれない笑い声のまま、レイシスは答えた。

「何か、ウィードさんってお父さんみたいだ」

その言葉に、ぴしりと固まったウィードは気付かなかった。
すぐそばの横道から、心配して宿を飛び出してきたヴォルトが、その科白を聞いて同じく固まっていたことにも。
な、な、どうしたん? とニヤニヤ笑いを浮かべてヴォルトをつついているユノにも。

「レイシスはうちの子なんですー! 誑かさないでくださーい!」

と恨みがましく絡むヴォルトの相手をしなくてはいけなくなったことに。



数日後、「ウィードさんっていい人だなぁ」と呟くレイシスに、
「あいつはロリコンなんだよ! レイシスも危ないから近づいちゃいけません!」
などと、のたまうヴォルトによってレイシスから疑惑の目で見られるようになる。

いつか見た夢の続きを話そうか 

January 04 [Mon], 2010, 12:53
中編か長編になる予定のお話の終章部分。
終わりからのせるなよって感じですが、この部分が最初に浮かんだので。
他の所も上げていきます。
お気に召しましたらコメントいただけると活力源になります。



「それから二人はどうなったの?」

急に口をつぐんだ旅人に、子供たちは話の続きをせがんだ。
旅人は乾いた唇を湿らすように舐めた後、静かにほほ笑んだ。

「一人は元の世界に帰っていき、もう一人はずっとそうして来たように旅を続けたんだ」
「どうして帰ってしまったの? 一人ぼっちはかわいそうだよ!」

子供の一人がそう叫ぶと、ほかの子供たちもそうだよと叫んだ。
旅人は微笑みを浮かべたまま、遠くを見つめるように言った。

「可哀想なんかじゃないよ? 彼はもう、一人ぼっちではなかったから」

子供たちは不思議そうに旅人の顔を見つめた。

「どんなに遠く、世界が離れてしまっても、心は共にあると約束したからね」

それは魂の約束。
けして途切れることのない、連綿と続く希望の灯。

「約束なんて……」

一人の子供が吐き捨てるように言った。

「約束なんて、そんなの、破ってしまうかもしれないじゃない」

強い瞳は射抜くように旅人を見ていた。

「……そうなったら、そうだなぁ……もう一度約束しにいくんじゃないかな?」

どんなに嫌がられてもね と、旅人は笑って立ち上がった。
空の色はとうに橙から赤へと変わっていき、東には丸い月がのぼっている。

「さあ、みんな。もうこんな時間だよ? 家にお帰り」

わあっと、子供たちは散っていく。
訪れた静寂に旅人は息をつき、まだ一人、残っていた子供に眉を下げて苦笑を洩らした。

「他のお話はまた明日。っていっても、明日にはもう出ていこうと思ってるから、
長い話は無理だなぁ……それで、君は何が聞きたいの?」

今だけ特別に答えてあげよう! と、旅人は役者のように腕を広げて笑った。

「旅人さんは、」

子供は旅人を見上げ、訊ねた。

「約束を破らないっていうの?」

ずっと? そう聞いた子供の視線に合わせるように旅人は膝をついて、子供の手を握り締めた。

「ずっとだよ。僕が生きている限り、僕の意思があり続ける限り、いつまでだって」

そう、と子供は呟いた。
旅人は子供の頭をくしゃりと撫で、家にお帰りといった。
子供はこくりと頷くと、旅人から離れて駈け出した。
それを見送って、旅人は再び樹に背を預けて座り込んだ。

「ずっとだよ、ずうっと」

呟く旅人の耳に、子供の声が届く。

「旅人さん! きっとその人も、約束を守ってくれてるよ! ずっとずっと、ずうっと!」

旅人が見つめたその先には、夜の中でひときわ美しく輝く緑色の星が無邪気な笑顔で手をいっぱいに振っていた。



「またね!」





レイシス、君に話したい事がたくさんあるんだ。

君と出会えたことが、夢でなくて良かったと思ったんだ。

君と出会えたことで、色んなものを見つめなおせたんだ。

旅の途中でした馬鹿な話もしよう。

僕の昔のはなしを聞いても、君は嫌わないでいてくれた。

君は、いつだって笑ってそばにいてくれたから。

いつか見た夢の続きを話したいんだ。

いまは、ただ

夢見るように、君の名を謳う。



タマさんと僕(こま切れ) 

December 31 [Thu], 2009, 22:56
タマさんは、人に言わせればたぶん十人並みくらいの容姿の人。
その辺の人にとっては、特に目立つでもなく、ごくごく平凡な人として風景に埋没してるんだろう。

だけど、僕はタマさんを世界で一番きれいな人だと思う。
猫みたいに気まぐれで、興味なんてないってふうに顔そむけて見せたり、だけど時々甘えたり、日向ぼっこが好きで、仕事が休みの時は化粧なんか一切しないで、飾りっけのある格好なんてまともに見たことなくて、口が悪くて手も早いけど謝る時は意外に素直で、そんなタマさんを、僕は誰より愛しいと思う。

陽炎の立つ、汗ばむくらいの春の午後。
久しぶりの気まぐれで外に出た引きこもりの僕と、仮面すら取り去ったすっぴんのタマさんに出会えたことを、僕は神様ってやつに感謝したい。
ああでも、かみさま、なんて口に出したらきっとタマさんは鼻で笑うだろうから、タマさんが眠ってからにしようと思う。

  * * *

「若い奴が昼間っからぶらついてんじゃないよ」
タマさんから発せられた最初の言葉は、そんな無遠慮なものだった。
ムカつくとかそんなことは不思議と思わなくて、たぶんその時の僕は人との会話に飢えてたんだろう。
行きずりの人との、他愛もない言葉遊び。
あなただって若いじゃないですか、 と言外に皮肉れば(というか、確実にタマさんの方が年下に見えた。実際年下らしい)、
「精神年齢ー」
などとふざけた答えが返ってきた。
女性の方が精神年齢は高いって聞いたことはあるけどね。

  * * *

なんとも思わないはずだった。
だって僕はタマさんがどんな仕事してるのか知っていたし、これでもまあ男なのでそういう仕事の人にかかわったこともあった。
タマさんは、僕が見たこともないようなきらびやかな服を着て、僕の知らない顔で笑って、僕ではない誰かと腕を組んでそういう道へ歩いて行った。
僕は、その近くの本屋へ買い物に来ただけだった。
タマさんは僕と眼が合うと、まるで知らない人みたいに目をそらして、だけれど凛としたタマさんらしい後ろ姿で歩き去った。
僕はそのまま、何も買わずに部屋に戻った。
僕にとってタマさんは、犯しがたい神聖なものだったらしい。

そしてその夜、僕は初めてタマさんを抱いた。

  * * *

タマさんはきれいな人だ。
世界で一番きれいで、世界で一番愛しい人。
周りがどう思おうが関係なく、僕はタマさんが好きだ。

猫は死期を悟ると姿を消してしまうという。
僕はタマさんを抱えてソファーに座ってテレビを見てた。
タマさんは何が楽しいのか僕の手の爪にマニュキアを塗って、満足そうにしていた。
タマさんは猫みたいな人だから、死んじゃう時はどこかに消えちゃうんですかと僕は訊いた。
タマさんはひどくバカにした表情で、
「少なくともあんたの前では死にたくない」
なんて言って笑って。

1週間たたないうちにタマさんが消えた。

僕はタマさんを探した。
初めて会った河川敷とか、タマさんが仕事をしていたホテル街の街角、タマさんが好きだといった公園とか、騒がしいけど優しい商店街まで、たくさんの人に訪ね歩いた。
誰もタマさんの行方を知らなかった。
1週間たち、2週間たち、ついには1月たってもタマさんは見つからなくて、それどころか、タマさんの事を忘れる人も出てきた。
ああそんな人もいたねと返されると、僕は泣きたくなる。
タマさんは、こんなにも僕の中に残っているのに。

  * * *

「人殺しになろうかと思った」
タマさんは、ほんの少し膨らんだお腹を抱えて、ぽつりとつぶやいた。
「親になる資格なんてあたしにはないから。愛するとか愛されるって、あたしには無縁だろ」
などと自嘲するタマさんに、でも殺せなかったんですね、と僕は言った。
タマさんは僕を睨んだ。
「生きてるんだ、あたしの初めての家族なんだ、殺せるわけがない」
コーヒーカップの中で、ミルクの対流が生まれてぐるぐると混ざり合っていく。
ふと顔を上げれば、やっぱりきれいなタマさんの顔があって、僕は。

「ねえ、タマさん。僕ね、タマさんが好きだったんです」

だった。 ってもう過去形。
今のこの感情は好きなんて言葉じゃないから。
タマさんはうつむいて僕の言葉を待ってる。
きっと、タマさんは僕の事が好きなんだ。
じゃなきゃ、気まぐれなタマさんが僕みたいなのに付き合ってくれるはずないから。
だからねえタマさん、僕のわがままをあと1個だけ聞いてくれませんか。

「環さん、僕と、ずうっと一緒にいてくれませんか?」

  * * *

タマさんは、人に言わせればたぶん十人並みくらいの容姿の人で、その辺の人にとっては目立つでもなく、風景に埋没してしまうんだろう。
気まぐれで、身体を売るのが仕事で、口が悪くて手も早くて。
だけど僕は、そんなタマさんを誰より愛しいと思います。
好きなんて言葉じゃなくて、ねえタマさん。

「ねえ環さん、―――――」

  * * *

ぽたんと落ちたタマさんの涙、それがもうこぼれないように、僕はタマさんを抱きしめた。
P R
2014年12月
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プロフィール
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  • アイコン画像 職業:短大生・専門学校生
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