ホラー小説を読んで感想をください

March 09 [Wed], 2011, 18:58
恐怖・二人のデートの顛末



俺は、何時ものように彼女を乗せ、明りの殆んどない山道を、愛車スカイラインGT−Rでドライブを楽しんでいた時、反対車線の一角にある防火水槽らしき側に、ボンヤリ霞むショッキングピンクらしいワンピースを着た女性を見たような気がして、彼女にその事を伝えると「ウッソー、何も見なかったわよ」とあっさり否定された。
車載時計を見るとまだ夜の十時であり「幽霊にしては早いお出ましだなあ」と思いつつ、俺の見間違いかなーと妙に納得して、彼女の言葉を信じる事にした。
門限は十二時であったので、もう長く付き合っているにも拘わらず、別れのキスだけをして家の近くまで送って行った。
俺は今まで五,六人の女性と付き合ってきたのだが、今の彼女程、お堅い女性は初めてで、そんなところも長く付き合える理由なのかな。

二流の大学を中位で卒業したにも拘わらず、一流メーカーに入社出来たのは、父が県会議員であったのが、大きく作用したに違いない。
現在二十五歳、入社三年目の俺が、正直、程度のいいスカイラインGT−Rを買える訳もなく、平成七年式、五速MT、黒い中古車だが、三万キロ弱の走行距離とワンオーナーの禁煙車であった事が気に入り、総額二百五十八万円を頭金〇円、均等払いローンを組んでるが、まだ半分以上残っていて、これから先、二年以上もローン会社に毎月支払わねばならない。

俺の家は、兵庫県神戸市の六甲道で、近くには、東西約三十KMの山の連なる六甲山系があり、六甲山・摩耶山から見える夜景は一千万ドルと言われ、函館・長崎と共に「日本三大夜景」で有名である。
良くTVに出てくる春の桜の咲く頃は、チョー満員になって動物達が見えなくなる程、盛況な神戸市立王子動物園。
教師のアドバイスも、偏差値すらも無視して果敢に受験に挑んだが、見事に落ちた国立神戸大学。
子供の頃、父親に連れられて主にアジ、サバ、イワシ、ガシラ、アブラメ等魚釣りをしたが、今では立ち入り禁止区域である神戸港の各突堤。
デパートあり、ビジネス街あり、季節ごとに植え替えられる花時計の近くには神戸市役所がある三宮。
横浜中華街、長崎新地中華街と共に「日本三大チャイナタウン」の一つで、東西約二百M、南北百十M範囲に百余りの店舗で賑わう元町等がある。

大人になった今では、海釣りの代わりに合コン等での岡釣り?の方に興味が移っているが。

彼女と出会ったきっかけは、確か西洋哲学説史か何かの一般教養の教室であった。
偶々、俺の隣でボンヤリと講義を聞いていたので、さり気なく小さな声で話しかけた。
話の楽しさにお互いが気に入ったのだろう、何時の間にか付き合っていた。
学部は同じ文学部であったが、俺は哲学科、彼女は英米学科で俺より二歳年下だ。
偶然、彼女は灘区で住まいも俺と近く、帰りは待ち合わせをして同じ電車に乗り、ピーチクパーチク(多分、近くにいるお年寄り達には、そう聞こえた事だろう)楽しく話をしていた。

二人とも社会人になり、スカイラインGT−Rで六甲山頂へ夜景を見に行くのを口実に、一度アベックの「聖地」ならぬ「性地」へ行き、キス以上をしようとしたが、キッパリ断られた。
それ以来、ある意味で頭が上がらなくなってしまった。
俺はチョー健康な男性なので、当然浮気をして『性の魔物』を放出したことも、当然、許されてしかるべきだろう。

さて、ここで中断してしまった話を続けよう。
最初に、俺だけが見たと思ったショッキングピンクらしきワンピースを着た女性を見た場所に、三日後のやはり十時頃、彼女を助手席に乗せてスカイラインGT−Rを転がせていると、同じ場所に同じ女性を発見したので、彼女に伝えようとした寸前「キヤー」と今度は彼女が叫び、ガタガタと震えている。

今でも、俺はフランス実存哲学者サルトルの秀作だが難解な『存在と無』等の哲学書、戯曲、小説等を繰り返し読んでいる。
同時に推理小説マニアでもあり、西欧では、特にイギリス、フランス、日本では明治後期から現代に至る多種多様な作家の作品を、高校時代より数多く読んでいる。
もし、もっと、もっと、もっと文才と勤勉さが俺に備わっていたなら、今頃は西村京太郎の様なミステリー作家になっていただろう。
従って、好奇心と推理力では余人に負けない自信があり、その出来事を科学的に解明、つまり、真相を解き明したいと願っている。

殺害されて,あるいは殺される前に、つまり生きたまま防火水槽に投げ込まれてその女性自身が幽霊となって、無念極まる己の存在を他人に知らせようとして現れているのか?
自縛霊となって殺害された時間に拘わらず、現れているのかの何れかであろう、と結論を出したのだ。
そうであるなら、警察に知らせて一刻も早く遺体を引き上げて弔ってやらねばならないだろう。
しかし、ここで矛盾に気がついた。
つまり、特別霊感のあるわけでもない二人に見えた、ということは、いくら車の通行が少ないとは言え、昼夜かなりの数の車や人が往来しているのに、誰も警察に連絡していない事に疑問を感じた。
幽霊だと思って、通報すれば、変人だと思われ警察署員に相手にされないと、皆が思ったのだろうか?
このまま放置するのは、もしも死体が中にあって、霊が浮かばれないとするなら可哀想だと思い
翌朝早くに、公衆電話を苦労して探し、この地区担当であろう警察署に直接TELした。
すると、早速、刑事一課、鑑識班が数台の車両と赤いポールで、防火水槽がある場所の一車線を塞ぐ形で封鎖し、這いつくばって中を大きなライトで照らしていたが、何かを見つけたらしく、捜査員が色めき立った。
防水ブルーシートを広げ防火水槽周辺を覆い、何やら作業をしていたが、刑事一課長が深刻な顔をして「通報者と連絡がまだ取れないのか?」と何度も部下に尋ねている。
夕刊にはどの新聞にもデカデカと、特にスポーツ新聞は一面トップ扱いで、山中の今は使われていない扉が錆びた古い防火水槽から、女性らしき骸骨が発見、年齢、身元不詳等とオカルトチックな文章が踊っていた。
その後、司法解剖(と言っても腐乱していて解剖する肉体はもう無かったが)、科捜研でのCP使用した調査、復元等により被害者の特徴が分かった。
年齢二十五〜三十歳の身長百六十CM位の中肉の女性である。
その後、失踪届の人々との歯並び、DNA鑑定、指紋等の照合により、身元も判明したらしい。
身元を知らしめる物品が一切ない事実、また周囲に争った形跡が見られなかった事実から判断し、恐らく別の場所で殺害されたに違いない。
身元を特定出来ない様に、全裸にされて防火水槽に放り込まれたというのが、捜査一課の見解である。
怨恨と物取りの両面から捜査されたが、捜査本部を立ち上げた四日後に、怨恨の線から、犯人は簡単に浮かび上がり逮捕されたらしい。

殺人事件は解決したが、例の防火水槽近く、約百五十M崖下で大破し、既に錆びてツタが絡み付いているスカイラインGT−Rに閉じ込められた俺達の死体は、未だ発見されていない・・・・・・






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