恋せども・・・ 

September 13 [Sun], 2009, 2:39
月曜日はきらいだ

私は月曜日が来るたびに
はやく金曜日が来ないかと
思ってしまう。
金曜日はあの神聖な
土曜日が待ち遠しいからだ

休日の誰もいなかった教室
とは思えないほど
平日の教室は
騒がしく、幼稚に見えた


朝のホームルームが始まる時間になって
岡崎先生の代わりに
先生がきた

「今日は岡崎先生が遅れているので
私がホームルームをします。
皆さん席について下さい」


教卓の目の前の席に座る私は
先生が教卓の上で出席簿を開く手を
なんとなく見つめながら
その細くて長く
少し不器用そうな指で
土曜日のことを思い出した

土曜日のことは
先生は覚えていないだろうか

私は思い出しただけで
少し顔が熱くなるのを静かに感じていた




話は耳に入らない


なんでこんなに気になるのだろう











お昼ごはんの時間に
由布子にはそのことは話さなかった

「昨日もまた走ってたの?」

「いやー走り出すと、止みつきになるっていうか
ほら、ランナーズハイってやつ。
あれだよあれ。」

由布子は最近、近所で
ジョギングをしているらしい

陸上部でもない彼女が
そんなことをはじめは
彼氏のあっくんこと敦士くんに
言われたことがきっかけらしいのだ


「まだ気にしてるの?
あれは痴話げんかでしょ・・・
由布子、全然太ってないじゃない」

私がそう言っても
由布子は
「だめ!まだつづけるんだ
痩せてきれいになって
あっくんをぎゃふんといわせてやるんだ」

あっくんは由布子のバイト先の先輩で
大学2年生
の割には、由布子の話から察するに
年上の大人っぽさには
かけているような気がする

由布子はかえってそこが良いのだという

恋せども・・・ 

October 11 [Sat], 2008, 21:29
図書館からでて
階段を降りると
ふわっとどこからか
甘くいいにおいがした

もうそんな季節になったのかと思った

また繰り返しやってくる
この一年で一番大好きで
でも苦しい季節が・・・






金木犀の香りは
トイレのにおいといわれるが
私はそうは思わなかった

この季節の始まりを意味する
大切な風の便りみたいなものだから

とても大事だった


恋心に気づいた
あの時を思い出す

狂おしいくらいに

愛しく、切なく

どうしたらいいか分からずに

ただもがいて

素直に気持ちをぶつけてしまう

まっすぐで弱弱しくて
幼い恋





いつからだろう
私はまっすぐな恋ができなくなった

いつもどこか構えて
相手との距離を取ってしまう

素直になれない

いや
そんなんじゃない

信じることができないのだ

相手も
自分も・・・・







土曜日の学校は
部活動の生徒くらいしかいないので

外の運動部の声や
吹奏楽部の練習の音以外はしない

たまに進路相談なのか
3年生が担任を訪ねて職員室へ行くのを
みかけるくらいで
生徒にも教師にも遭わない


私はそんな人のいない
校舎が好きだった

長くずっと続く廊下

机に出しっぱなしの
端の折れた教科書

しんとしていて
心が透きとおるんじゃないかって
思えた
なんだか神聖な場所になったような気がしていた



それは私の世界だった





教室の机にもたれかかるようにして
手をおいて

窓の外の校庭を眺め

少し鼻歌を口ずさむ

子供のころ
聞いた

名前はわからない歌だけど
気分のいい時は口ずさみたくなる







ガラ




いきなり教室にドアが開いて
私はあわてて何もしてなかったかのように
椅子にすわり
鞄に手を突っ込んだ



先生は少し驚いたような顔をして
その後ふわりと笑って
「三枝さんは、今日は部活ですか?」

少し低い声が響いた


先生は産休の山下先生の代わりにきた
理科の先生で
私のクラスの副担任になったひとだ

「い、いえ。私は学校に忘れ物があって・・・」

大方バレバレの嘘で
隠しながら
私は鞄を膝の上において鞄の中を
みつめて
先生の顔を見たくなかった



私の世界を壊されたような気がしたからだ

鼻歌だって人に聞かせるためじゃないのに

聞かれてしまったのだろうか



そうですか。

そう言って先生はずんずん教室の中に入ってきて
教卓までくる,
引き出しの中に手を突っ込んで
何かを探し始めた


私も気まずい雰囲気で
黙っていたが

あれ?あれー?
と先生が間の抜けた声で
一生懸命に何かを探すものだから

私もはやくこの場所から
先生に立ち去ってほしくて

「先生、何か探しているのですか?」
と尋ねざるをえなかった


「あー、いや学生の名簿がなくて
職員室の岡崎先生の机にあるって
言われたんだけど
ないんだよねー
だからもしかしたら、教室かなって思ってさ」


そういうと先生は教卓の机のプリント類を
引っぱり出し
床にばらばらと散らかした


岡崎先生はうちのクラスの担任で
昨日は娘が熱を出したとかで
早く帰った
子煩悩で有名な先生だ


「先生手伝いますよ」
私はそう言って
教卓の下に落ちたプリントを拾い
先生の顔を見上げた

眼鏡の下に隠された
長いまつげ
大きくないけど真剣な瞳

優しげな印象を作り出す口元
すこし薄い唇


先生と目が合うと
私は即座に目をそらして
先生にプリントを渡して

「岡崎先生は学級日誌と同じところに
名簿を置いていたと思いますよ」

といって私は教壇の上にたった

わたしは150cmもない身長で
背は低いけれど
先生は私よりもずーんと大きくて
すこしびっくりした

「ありがとう。もう一度職員室に戻って
見てみるよ」
そう言って先生は教卓の中にプリントを突っ込んで

よし
とかなんとかいって
教室を出て行った




先生との出会いはこんなものだったと思う


これから先のことなんて
知る由もなかった







2009年09月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
最新コメント
アイコン画像六兵衛
» 恋せども・・・ (2010年06月04日)
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:milkyribbon
読者になる
Yapme!一覧
読者になる