二十歳の頃 その1 

2007年03月01日(木) 22時05分
今から二十数年前のこと・・・


 私はベンチで仮眠を取っていた。
昨晩から歩き続けてやっとたどり着いた彼女の町の公園。

彼女が学校へ行くまでにはまだ2時間もある。
それまでにすこし眠っておこうと思ったのだ

春の晴れた日であったが陽は明けたばかりで
すこし冷たい空気に包まれやがて眠りに落ちた。

「もしもし・・・ もしもし・・・」
私の肩を揺すり声をかけられた。
はっとして目を明けるとそこには制服の警官が居た。

普通ならいきなり警官が目の前に現れれば
誰でもドキッとするだろうがわたしの第一声は
「今、何時ですか!?」
ベンチから起き上がるやいなや質問する私に
驚いたのは警官の方だった
怪訝な顔しながら腕時計に目をやると。
「10時半過ぎたところだけど・・・」

私は警官から目をそらし再びペンチに腰を下ろした。
4時間も寝てしまった事を悔やんでいた。
彼女はもうとっくに学校へ行ったに違いない。

「貴方のお名前は?」
「ここで何してるのですか?」

職務質問であることはすぐに分かった。
私は彼女の事から彼へ意識の切替を行なわなければならなかった。

周りを良く見ると少しはなれた場所の砂場で
2組の母子がこちらに注目している。
きっと不審者と間違えたのだろう。
連絡したのは母親達かもしれない。

後ろめたいことはなにもないのだから
素直に学生証を警官に見せ
彼女を待つまでの間仮眠していた事を話した。

警官は学生証の写真と私の顔を交互に見ながら

「この辺りで変質者がたまに出ますので・・・」

おいおい変質者と間違えられたのか・・・
私は彼女に逢うためにここに来たのだ
それに私は変質者と呼ばれるような癖は持って居ない。

「どうもお手数かけました。もう結構です。気をつけて・・・」

そう言うと砂場にいる母子達の方に歩みより何か話し始めた。
きっと私が変質者じゃないことを説明しているのだろう。

しかしお気をつけてと言われてももう手遅れだ。
彼女はすでに大学のはずだ。
もう連絡の取りようがない。
昨晩の彼女から電話で出掛ける時間が分かっていたから
待って居られると思ったのだ。
帰りの予定は聞いていない。

しかしもうどうしようもない

私に残された選択は
いつ帰るかわからない彼女を待つことだけだった・・・

二十歳の頃 その2 

2007年03月02日(金) 15時43分
帰ったところで私がここに来た理由の解決にならない。
私はどうしても彼女に逢わなければならない。

気の遠くなる気分を抑えて私は駅の改札に向かった。
そして改札口正面にあるベンチに腰を下ろし彼女を待った。

11時、12時・・・5時・・・

5時までに帰って来るかなって甘い期待をして居たが
見事に外れてしまった。
どこか遊びに行ったかな、今日は金曜日だし。

こんな事なら家に帰って彼女の連絡待てば良かったかな
だんだん後悔する気持ちが強くなった。

しかし6時間も座っているとさすがに辛い。

そんなあきらめかけた時見慣れた姿が改札から出て来た。
彼女だ。

私に気付くと小走りに近寄り、分かっているのに
「ここで何してるの?」
いつものように微笑んだ

私はあの公園に彼女を連れペンチに座らせ
今日の出来事を最初から順番に説明した。

「ずっと待ってたの?」
「ずっと待ってたよ、他に行くところないでしょう?」

彼女は私の照れる顔を見つめながら
「そうだね、他に行くところないもんね」
「じゃあ、御飯でも食べに行く?」

と朝から何も食べていない私を察して食事に誘った

「行く行く!!」

彼女は私の手を取ると大通りにあるすこし洒落たレストランの方に向かった。




二十歳の頃 その3 

2007年03月03日(土) 10時18分

目覚ましのけたたましい音に
私は現実に戻され目を開けた。
夢か・・・
また同じ夢を見てしまった。


二十数年以上も前の事なのに今でも夢に見る。
忘れた頃に彼女が思い出せと言うかの如く夢を見る。

私は普通の家庭環境では育っていない。
父親との折り合いが悪く16から一人生活していた。
高校の間は僅かばかりの仕送りとバイト代で生計を立てていたが
大学からは親の仕送りは期待出来なかった。

それでも進路相談の結果、奨学金制度もあるからと言うことで
今の大学に入学した。

そんな頃友人の紹介で彼女と付き合い始めた。

彼女の父親は旧家の長男でとても厳格な父親だった。

私と彼女の事を知ると猛反対しもう2度と会わないと彼女に誓約させていた。
貧乏学生で明日の食事代にも困る私だったから
それも当然だったかもしれない。

あの日も急な出費でお金が無くてどうしようもなくなって
バイト代出るまでの間、彼女にお金を借りようと出掛けたのだ。

普通男が女に借金することはひものような気がして
ひけ目を感じるものだが彼女はそれを私に感じさせなかった。

付き合い始めた頃私が風邪を引いて家で寝込んでいる時
「どうして病院行かないの?駄目じゃない!!」
私がぎりぎりの生活で病院へ行く余裕が無い事を知ると
「お金に困った時はいつでも私がなんとかするから!!」
と言って一緒に病院まで付き添ってくれた。


人生で一番ひもじく苦しかった時を支えてくれた女性。


あの日は特にいくつもの災難が重なった。

前夜、友人が急用で田舎に帰るのでそのお金を貸して無一文になったこと
自転車がパンクしていて夜通し歩いて行ったこと
ベンチで寝過ごして駅で6時間余りも待ったこと
警察官に職務質問され変質者に間違われたこと
一日でいろんな事があった。

彼女との一番の思い出・・・
少しも甘い思い出じゃないのに・・・


それから2ヶ月後の事

別れたと思っていた娘がまだ付きあってると知って
父親が私のアパートにやって来た。

「娘を大事に思うなら別れろ、
 食うにも困るような奴とはつき合わすつもりはない。」
「金が欲しいならこの金をやる。これで暫くは困らないだろう!!」

そういうと封筒を投げ捨てた。

私は父親の言葉を噛み締めながらじっと涙堪えていた。


父親が帰った後、部屋の床に落ちた封筒を部屋の壁に投げつけた
彼女の父親への怒りより自分への怒りがどんどん増幅した。
そして悔し涙が次から次へと溢れて出ていった。

それから時計を確認すると彼女の家に向かって歩き出した。
出会いから今日までひとつひとつ思い出しながら夜の街を歩いた。

明け方着いた彼女の郵便ポストにあの封筒を入れ
あの公園に向かった。

ベンチに腰を下ろし2ヶ月前の事を思い出していた。
あの時一緒に腰掛け語らった場所で・・・

どれ位その場にそうして居ただろう

私はもう2度と彼女に逢わないと誓いを立てた。

何も言い返せなかった情けない自分自身・・・
彼女と続けても彼女のためにならないとひとり勝手に答えを決めた。

彼女の父親に別れさせられるのではなく
私から彼女と別れるのだと・・・

情けない自分に対する抵抗だったのかもしれない。



暫くは大学へもバイトへも行かず
だれからの電話も取らずに部屋に篭った。

彼女が何度か家を訪ねて来たようが
居留守を使って逢わなかった。

何度も逢いたいという気持ちが込み上げてきたが
その度あのベンチでの誓いを思い出し自分に言い聞かせた押し殺した。


ちょうどそんな時、友人が夏の信州でペンションの住み込みの
アルバイトをやらないか?と話を持ってきた。
彼女への想いを振り切るためにもそれがいいと即答で決めた。

もう大学へもこの家にも戻る気もなかったから
アパートを引き払い暫くは友人の家を転々としてすごし
7月初旬信州に向かった。

彼女の励ましが逢ったから1年間とすこしがんばれたのだ
彼女と別れた今私の向かう場所はどこにもない。

私は私の行くべき場所を自分の手で壊してしまったのだ。



あれはそう、もう27年も前の事・・・・


とらいあんぐる その1 

2007年03月09日(金) 11時08分
   あの頃いつも三人だったね


   私は付き合っていた彼女フミにゆうこを紹介された。
   幼馴染で幼稚園から中学まで一緒に通った仲。
   社会に出てからも休みには一緒に遊び歩いてたらしい。

   お互いの過去をすべて知るふたりは
   姉妹以上の存在だったのかもしれない。

   その頃のゆうこは彼に裏切られ別れた後で引き篭りがちだった。
   それを心配したフミは私とのデートに
   ゆうこを連れて来るようになった。

   付き合い始めて半年が過ぎようとしていたが
   そのことを聞かされた時素直には喜べなかったが
   ゆうこが外に気持ちが向くまでと言うことで押し切られてしまった。

   ゆうこは派手な感じで斜に構えたような態度で
   フミの説明からの印象とは違い第一印象はそんなに良くは無かった。

   それでもお茶したり、買い物したり、映画見たり
   一緒に時間を過ごす毎にその印象は変わっていった。

   フミはPCのシステム関連の仕事をしており仕事関係から知り合った。
   女性の割には仕事が出来たようで
   しばしば緊急で呼び出される事があった。

   その日も三人で出掛けた先でフミのポケベルが鳴った。
   また、仕事の呼び出しで客先に行かなければならなくなったらしい。
   「せっかくだから二人でどこかで遊びに行って!!」
   フミは苦笑いを浮かべながら諦め顔で言った。

   駅までフミを送ると今日の予定が変わってしまったので
   「どっか行きたいところある?」
   とゆうこに尋ねた。

   暫く考えた後に「生駒山に行きたい」と答えた。

   生駒山は私の育った傍である
   私も久しぶりに行ってみたくなった。

   生駒へ上る阪奈道路は渋滞していた。
   ゆうこは喋らなくなり私の話にもうわの空。
   それでもなんとか山頂に辿りついた。

   車を降りるとゆうこは黙ったままある場所を目指した。
   駐車場からすこし歩いた場所ですでに他のカップルが
   場所をとり暮れて行く夕日を眺めていた。

   私たちはその外れのベンチに腰掛けた。
   「ここで別れたの・・・」
   「夜景見えるまでここに居ていい?」
   私は静かに頷いた。

   ゆうこは私に彼との事を最初から話し始めた
   出会い、楽しかったこと、悲しかったこと、
   いろんなこと、そして別れ・・・
   何ヶ月か前のここで彼から別れ話を聞かされた場所・・・

   ゆうこは涙声になりそれでも精一杯話を続けた。
   周りのカップルの視線が気にはなったかが
   話が終わるまで黙って聞いていた。

   話が終わった時、既に暗い闇に包まれており
   目の前には大阪の夜景が鮮やかに広がっていた。

   ゆうこの姿がいじらしく愛しくなり私はゆうこの肩を抱き寄せた。
   ゆうこもそれに抵抗することなく私の体にしな垂れかかって来た。
   私は天を仰ぎゆうこはうつむく。
   フミの事が頭をかすめたが今はゆうこを抱きしめていたかった。

とらいあんぐる その2 

2007年03月10日(土) 11時11分
   帰りの車の中、私は一人話し続けていた。
   会話が途切れる怖さを感じていたからだろう。
   それでも日にちが変わる前にはゆうこを送り届けた

   後日フミに電話を入れた。
   生駒山に登って夜景見て今送り届けてきたと・・・
   フミへの裏切りがここから始まっていたのだろう。

   それでも三人の時間は相変わらず続いた。
   私のマンションで二人の手料理で酒盛りをしたり
   フミを待っている喫茶店にフミが遅れるからとゆうこが来て
   私の相手をし、フミが来るとまた三人になる。
   フミからの電話でゆうこの飲み会が何時に終わるから
   迎えに行ってほしいとアッシーに使われることもあった。

   あの日から私はしばしばゆうこに電話するようになった。
   日常の話や彼の話を聞いたりそれは普通の電話だった。
   あの時の事は二人ともフミへの気兼ねからか触れる事はなかった。
   二人で電話で話していることもフミには話しそびれてしまった。
   ゆうこと私は2つの秘密をフミに作ってしまったのだ。

    その日私はフミとお茶していた。
   その話の中で前日ゆうこから聞いた話題をつい口走ってしまった。
   「それってまだゆうこにしか話してないよ。ゆうこと話したの?」
   「もしかして二人で逢ってるの?」
   私は覚悟を決めて電話でたまに電話で話している事を自白した。

   フミは私がそのことを言わなかったことに対して予想以上に激怒し
   「疚しい気持ちがあるから言えなかったのでしょう?」
   と私に対する不信感を顕わにした。
   フミにしてみればすべてをオープンにしている自分に対して
   恋人同士でないゆうこと私が
   秘密を共有している事が我慢出来なかったようだ。
   「暫くは逢わない」
   そういうとフミは席を立った。

   その夜ゆうこから電話があった。
   フミから二人の電話のこと聞かれて話したと・・・
   ゆうこ自身なぜ黙っていたかと問い詰められたらしいかった。
   結局わたしと同じような事を話したようだったが・・・
   ゆうこはごめんなさいを何度も繰り返した。
   私がゆうこに電話していたのだ ゆうこには責任はない。

   それから暫くはフミへもゆうこにも連絡を取らなかった。

   疚しい気持ち・・・
   私は気付かぬフリをして居ただけ・・・
   三人のバランスを壊したくなかっただけ・・・
   
   そしてフミとゆうこの関係の修復

   その事をずっと考えていた。


   久しぶりにゆうこに電話した。
   フミとの行き来は以前と変わっていない事
   フミが私の話題には一切触れない事を話してくれた。
   それを聞いた私は
   「けじめはつけるから・・・」
   そういうと電話を切った。

   次の日、フミに大事な話があるからといつもの喫茶店に呼び出した。
   フミの態度は相変わらずで低姿勢に勤めた。
   私は再度電話の件について謝罪した。
   このことでフミの表情は軟化したが・・・
   
   続けて私がなぜ黙っていたかを話し始めた。
   「疚しい気持ち」
   それが決してなかったわけではない事。
   フミのことも大事にしたいと思う。
   しかしゆうこの事も大事にしたいと思う。
   フミもゆうこもそれぞれに愛しい存在である事。

   途中、口を挟もうとするフミを制止させ私は最後まで続けた。

   このことをゆうこは一切知らない事。
   フミともゆうこともこれ以上一緒に居れない事。

   フミは頭を抱えてしまった。

   それでも私の決意が固いことを知ると
   もしゆうこにその気があるなら付き合っても良いとまで言ってくれた。
   しかし私はゆうこと付き合う意思がないと答えた。
   ゆうこと付き合う気がないなら
   聞いたこと忘れるからもう一度やり直せないかとも言ってくれた。

   私にはその言葉だけで充分だった。
   もう決めたことだからと・・・

   フミに対して今までの謝罪を済ませると私は席を立った。
   もう二度とくぐる事の無い扉を開けた。

   
   その後、数回留守電にゆうこからの電話があったが
   最後まで聞かずにすぐに消去した。

   私にはもう関係のない人からの電話だったから・・・

 縁 その1 

2007年03月16日(金) 11時27分
   私は派遣会社からある会社に出向していました。
   仕事内容はその会社専用の会計、発注管理のソフト作りでした。

   朝決まった時間に会社の傍でモーニングを食べ
   8時に出勤するのが日課でした。
   店は良く流行っておりその会社の人も結構来ていて
   顔見知りになりやがて一緒に遊びに行くことになるのですが・・・

   派遣の仕事もそろそろ終りに近づいた頃
   嵐山に遊びに行くのに男の数が足りないからと
   数あわせで誘われました。

   待ち合わせの場所に行くと見覚えのある喫茶店のウエイトレスさん2名
   とその友達と思しき女の子2名と面識のない男性が一人。
   それと会社のひと二人の4対4で出掛けました。

   どうも会社の二人はそれぞれウエイトレスの女の子がお目宛だったようで
   1対1でのデートに応じて貰えずグループでのデートとなったようです。

   2台の車でお目宛の子をそれぞれ助手席に乗せ数合わせの私と彼女は
   片方の車の後部座席にすわりました。

   車中の話で知ったのですがその女の子たちは高校2年、
   16歳の子もいました。

   こちらは30を筆頭に一番したの私が25です。
   わたしでさえ8つ違い、30の人では一回り以上歳の差があります。
   前の座席の話は盛り上がっていたのですが女子高生という違和感を
   感じてしまい後部座席は静かなものでした。

   現地に着くまで渋滞もあり2時間半の長かったこと・・・
   これなら家でのんびりしていれば良かったと後悔していました。

   嵐山に付いた頃にはもう昼を過ぎており川原で
   お弁当を食べることになりました。
   女の子がそれぞれにいろんな料理と
   おにぎりを用意してくれてありました。

   例によってお目宛の女の子の横に陣取る二人。
   私も後部座席で一緒だった彼女とお弁当の周りに座りました。

   朝早くから作ったとウエイトレス二人が自慢し
   それを聞いた男二人がそれを褒める
   他の4人はそれをしらけた感じで眺めていました。
   
   しかし彼女の作った料理がひとつが上手く出来て無かったようで
   他の6人はすこし箸をつけてすぐに食べるのをやめたのです。
   彼女のすまなそうな顔が可愛そうで見てられず
   「私は辛いのは大丈夫だから」と全部平らげました。

   どうも塩が固まっていたりそうでなかったりで
   味はバラバラで本音は苦しかったけれど・・・
   見た目はとても綺麗でした

   食事が終るとペアでボートに乗ろうと言う話になりました。
   その後もあの二人によって仕切られていました。

   結局ボート遊びを3時間するはめになったのです。
   幸いにも先ほどのことがきっかけになり
   なんとか会話にはなりましたが

   彼女も数合わせで呼ばれたのです。
   考えれば罪があるのはあの二人・・・

   それに良く見れば彼女だって美人系
   きっと学校ではモテル方に入ると感じていました。

   高校生であると言う意識が私の中に強すぎたのだと思います。


   私達が来なくても4人できっと盛り上がれた
   いいダシに使われてしまったと彼女にぼやいていました


   ボート遊びも終り今度は喫茶店・・・
   陽が暮れる頃に帰途につきました。

   帰りの車中は前の二人の雰囲気に圧倒され
   せっかく彼女と話せ始めたのにまた静かな後部座席になっていました。
      
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