その後のヘバーデン

December 04 [Tue], 2007, 13:13
さて、ヘバーデン結節のその後。

ヘバーデン結節というのは手の指の第一関節が変形して痛みを起こす病気だ。



発症したのは9月。右手の中指。
http://yaplog.jp/mezzoatsuko/archive/1046
一番痛いときは、右手中指だけに、箸が持てない、ペンが持てない。
それから、靴を靴べら無しで履くだとか、ストッキングを履くだとか、瓶のふたを開けるだとか、そういうちょっとしたことが辛い。

イケメン整形外科医は出来るだけ使わないように、と言うのだが、一応私も主婦だし、歌い手だってピアノは弾かなあかん。そんなわけにいくかよ!

それで、痛み止めや消炎剤を飲むよう、処方されたのだが……
http://yaplog.jp/mezzoatsuko/archive/1071
毎日痛み止めを飲み続ける、というのがどうにもイヤで、10日ほどで飲むのをやめてしまった。それから痛み止め入りの湿布というのが、どうも……指が冷えるような感じがして好きになれないのだ。その指から手全体が冷たくなって、不快。

さる方から漢方薬なども教えていただいて、買いにいこうかな、と思っていたのだが、そうこうしているうちに少しずつ痛みがマシになって来たような気がした。でも、さわると第一関節がぽっこり変形してしまっているのが分かる。


で、先週末のこと。


私は来日中のさる世界的なピアノの巨匠、D氏のレッスンを受けた。もちろんピアノのレッスンではなく、歌曲の解釈についてのレッスンだ。

厳しいことで有名なその方にさんざん絞られ……(泣)

レッスンが終わり、ほっと一息。ちょっとソファに場所を移し、なんやかやとお話。


話しながら、何気なく指をさすっている私を見て、巨匠が言った。

「指、どうかしたの?」

まったく、こういう巨匠と言われる方々はもちろん気難しかったり、いろいろ取り扱い注意な面(笑)もあるのだけど、揃って言えることは、例えば私がちょっと指をさすっているだとか、そういうほんの小さなことに気がつく、ということだ。だからこそ繊細な音楽が生み出されるのだろうが。

そして私。

……ええ、痛むんです。

「なんで?なんか病気?」


さすが、ピアニスト、ことに指のことに関しては敏感だ。
でも、ヘバーデン結節なんて言うてもなあ、知りはれへんやろし、それ、どんな病気?なんて聞かれた日にゃ不自由なドイツ語でどうやって説明すればいいんだか。

そんでも一応(笑)言った。


……あの……ヘバーデンっていう病気なんですが……。



「ああ、ヘバーデン!ぼくも昔やったで!」



うそっ?!


「全部の指に次々と起こったんやけど、今はほれ、どうもないで

と、老いてはいるが、ピアニストらしい美しい指を私の前で広げた。

変形なんてしていない!


「そのころは変形してたんやけど、今はきれいにもとに戻ったよ。」


やはり私がいろいろ調べた通り、これから他の指にも次々発症していくもののようだでも、イケメン整形外科医が言った「痛みはおさまっても変形自体は治らない」というのとは話が違う。


そして彼は続けた。


「痛くてもしっかり動かした方がええよ。」


そうなん?


「そうか〜、ヘバーデンなんて、ここで聞くなんてなあ〜。もう20年以上前のこっちゃ」

「とにかく、しっかり動かして。大丈夫!」



あの巨匠がそうだったなんて。一気に親近感が湧いてしまった。


でも本当に痛い病気だし、力も入れにくくなるし、何よりピアニストが指の病気になったのだ。言ってみれば命に別状はない、たかが指の病気だが、ピアニストにとっては死ぬより辛いことだ。きっと当時は絶望的な気持ちになられたに違いない。コンサートをキャンセルするということもあったのだろうか……。

本当はもっと聞いてみたかったが……。


レッスンそのものも厳しかったけど素晴らしかった。でもレッスン後のこの話で私はどんなに力をもらったか分からない。単にヘバーデン結節がどうこうということだけではなくて、音楽家として、人間として。
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