眠り男に祈りの詩を 

February 05 [Mon], 2018, 20:28
【眠り男に祈りの詩を】

長い間、貸したままになっている本がある。
借り主の男は僕の目の前のベッドに横たわり眠ったままだ。

――――――――――

彼とは大学の読書サークルで知り合った。
二人とも異常な本好きという点でウマがあった。
僕は紙の本の蒐集、彼は本そのものが好きだった。
内容はもちろんだが、装丁や字体、本自体の感触や臭い。
本の全てを味わう“ソムリエ”だった。
彼に紹介してもらった本はハズレがなく、
読んだ本の記憶や読書量も僕を含めて誰も彼を越える者はいなかった。
しかし彼の家は貧しく、本を買う事もできないようだった。
だからなのだろう。本に対する執着が人並外れているのは。
大学に入れたのは成績優秀で特待生なのもあるが、
なぜこの大学を選んだのかと理由を聞いたら
「この大学が一番図書館の蔵書量が多かったから」と答えが返ってきた。
生活費は家庭教師のバイトで稼ぎ、暇さえあれば図書館で本を読んでいた。
たまに僕の家に来ても、本を読んで一日が終わる。
傍から見たら退屈なものに見えるだろうが、
僕たちはそれなりに大学生活を楽しんでいた。

大学4年の春に「結婚するから大学をやめる」といきなり彼が言った。
相手は中学から付き合っていた女性。理由は彼女の妊娠。
両親や教授からは卒業まで待ったらどうかと言われたが彼の決心は固かった。
大学をやめ、バイト先の紹介で就職した。
生活パターンが異なり、時々連絡は取っていたものの
会う機会は徐々に減っていった。

次に会ったのは五年後。病院の個室だった。
会社の出張先で事故に遭い、昏睡状態のままベッドに横たわっていた。
「これでやっと休めるのね」と奥さんがつぶやいた。
昔から彼は家族のために行動し、自分の事はいつも後回し。
ただ読書の時間だけが彼の唯一の癒しだったのだ。
「神様がくれた安息なのよ、きっと」
彼女は心配とも安堵ともとれる表情で、彼の寝顔を見ていた。
友人や彼と彼女の両親、親戚縁者の助けもあり
彼女は働いて子供の面倒をみて彼の看病をした。

一年経った。彼はまだ目を覚まさない。
二年経った。彼はまだ目を覚まさない。

三年も経った頃、僕は一冊の本を持っていった。
それは彼が一番好きだった詩集。元々僕の家にあったものだ。
「この詩たちは僕の様を映す鏡のようだ」と、家に来ると必ず読んでいた。
気に入っていたようだから差し上げると行ったが、
「それではここに来る理由がなくなってしまうよ」と冗談混じりに答えていた。
おとぎ話を信じる歳でもない。だがそんな奇跡を信じたかった。
この詩集を枕元で読んだなら、彼の意識が戻るかもしれないと。
そんな希望を託し、奥さんに詩集を渡した。

それからいつも病院へ行くと、彼女はその詩集を読んだ。
彼が自分のようだと言ったように、読み返すたび『彼』をその詩の中に見いだした。
読み終わり彼の寝顔を見る。それが彼女の至福の時間。
どんなに大変な日常も、この時間が彼女を支えていた。

――――――――――

そして七年が経った。だが、一向に彼の意識は戻らない。
久しぶりに彼の面会に行き、奥さんから何の進展もない事を告げられた。
彼女が部屋を空けた時、眠り続ける彼に向かって言った。
もう起きたらどうだ?
奥さんに甘えるのもいい加減にしたまえ!
僕も今は小さい古書店の主人だ。
あの詩集が気に入っているなら退院祝いにくれてやる。
だから早く目を醒ませ!バカ野郎!

「…それは本当か?」
昔聞いていた声が病室に響く。
「やっと目を醒ましたか。遅いぞ」
「少し微睡んでいただけさ」
10年ぶりの彼との会話。
「10年は長すぎだ」「すまん。迷惑をかけた」
本当に目覚めてくれて良かった。
「詩集をあげるのは嘘だ。返してもらう」
「え?それはないだろう?」
寝顔以外の表情を見ていないのだ。冗談も言いたくなるだろう?
目覚めた理由がこの詩集だなんて、誰もが呆れるに違いない。
“全く彼らしい”と。

廊下から奥さんの足音が聞こえてきた。
僕は病室を出て、代わりに彼女が入っていく。
ドアが閉まった瞬間に、驚きと喜びの混じった声が聞こえてきた。
もちろん詩集は二人の元に。
晴れやかな気持ちで僕は病院を後にした。

詩集のタイトルは『眠り男に祈りの詩を』
本当に彼のためにあるようなものだ…全くな。

贈り物の真実 

February 03 [Sat], 2018, 11:16
「先に行け!みんなが待ってる!」
弾丸の雨の中をくぐり抜けながら俺は走る。
身内の裏切り、己と他者に対する疑念との戦い。
“敵”の誘惑や甘言、辛すぎる現実との対峙。
それらをくぐり抜けて俺たちはここまできた。
後ろから同胞の叫び声が聞こえた。
ダメだったか…
“敵”は俺たちの存在を許さない。
それは黒い“もや”のように知らず知らずのうちに周りを取り囲み
俺たちを消滅させる。
“敵”にとって俺たちの存在は目障りなのだ。
他の仲間は大丈夫だろうか?
俺は俺たちを信じ愛する者のために命を捧げると決めている。
たとえ一人になろうとも続けるべきなのだ。
一人でも俺たちの存在を信じている者のために
このプレゼントを届けなければ!

「パパ、サンタさんから来たわ!」
クリスマスツリーの下にいろんなプレゼントが置かれている。
その中で際立っていたのは『サンタのプレゼント』
どういうシステムでこれが届くのかわからないが、
昔から12月25日に『サンタ』からプレゼントが来る。
この娘の両親の小さい頃もそうだった。
そしていつの間にか贈られてこなくなる。
『サンタ』がどんな存在かは知らない。
“それを疑ってはいけない”と彼らは思いこんでいたから…

あたし見ちゃった。
夜トイレで起きた時。ツリーの下に誰かいたの。
すぐ“サンタさんだ!”ってわかった。
白い袋からプレゼントを出してたし。
すぐにお礼を言おうとしたけどとっても疲れてたっぽい。
お家に帰ってきたパパみたいに。
その時ママが言ってたのを思い出した。
「パパは疲れてるからそっとしてあげて」って。
だからあたし「ありがとう」って心の中でお祈りしたわ。
サンタさんはたくさんの子供にプレゼントを届ける。
くたくたになるのは当たり前よ。
だから来年のクリスマスは
お手紙と栄養ドリンクをツリーの下に置いておく。
サンタさんに『お仕事たいへんね。ありがとう』って書くの。
夜遅く帰ってくるパパへのお手紙を書くみたいに。

次のクリスマスが楽しみ。
ちゃんと届くかな?サンタさんに。

『ヒト』の時間 

February 01 [Thu], 2018, 12:48
ある晴れた昼下がり。
マーク氏は小高い丘にあるベンチに腰かけていた。
丘には膝小僧にかかるかかからないかの丈の
小さく白い花をつけた草でおおわれていた。
ベンチの後ろには天を突き抜けそうな高い木が
1本だけ立っていた。
マーク氏は時折そよぐ風に体を預けるように
目をつぶって心地よい気分を楽しんでいた。

街からベンチに通じる一本道を歩いてくる者がいた。
友人のハッチ氏だった。
「またヒマしてんのか?相変わらずのんびりだな」
そう言って彼の隣に座った。
「これから帰るところだよ」と答えるマーク氏。

「どこへ行ってた?」とハッチ氏が尋ねた。
「“表情セミナー”へ。家のメイドが行けって言うから」
「お前んとこのメイドはうるさいからな」
「“ご主人様、最近顔つきが不気味でいけません”だって」
「で、仕方なく行って来た」
「ああ、顔をひっぱられたりつぶされたり」と
両手で顔を押さえるマーク氏。
「お!虐待か?暴力か?仇はとってやる!」
「久しぶりに楽しかったよ」
「何だい、そりゃあ?」と二人で笑った。

「そういうハッチさんはどこかへ行ってたのかい?」
「メイドに言われて“考え方教室”ってとこへ行ってきた」
「せっかちなハッチさん向きじゃないね」
「うるせぇ!」
「で、どうだった?」
「退屈なんで寝てた」
「やっぱり」
「“人間は考える葦だと過去の偉人は言っております”だってさ」
「でもメイドの言う事を聞くなんて珍しいね」
「行かねぇって言うと泣くんだよ」
「ハッチさんも女の涙には弱い、か…」
「相手は人そっくりのロボットだ。勘違いもするさ」

二人はしばらく黙って上を見上げた。
空では雲が風に流されて、青地に白の様々な模様を描く。
それを見ながらハッチ氏は呟いた。
「考え方の先生が昔の人間は考えるのをやめたと言ってた」
「ちゃんと聞いてたんだ」
「やかましいわ!黙って聞け!」
マーク氏は上着の両脇のポケットから
小さなドリンク瓶を2本出し、
1本をハッチ氏に渡してもう1本の封を開けた。
「だからなのかね、人って生き物は俺達だけになった」
「あとはみんなロボットだもんねぇ」と
受け取ったドリンクを飲んでマーク氏が言う。

「戦争とか世界恐慌なんかが立て続けに起こって、
世界は混乱してたらしい」とハッチ氏は受け売りの知識を披露した。
「で、どうしようもなくなって、
全部人工知能とロボットに任せちまったんだと」
「人間の頭の中がパンクしたのかな?だからかな?」とマーク氏は聞いた。
「さぁね?俺達が生まれる前だから想像もできねぇな」
そう言うとハッチ氏はドリンクを一気に飲み干し、
ベンチ横のゴミ箱に投げ入れた。
「じゃあそろそろ行くわ」と立ち上がり、
街とは反対の“世界の向こう側”へ目をやる。
丘は、街と“世界の向こう側”の境にあった。
ハッチ氏は一歩踏み出し、ずんずんとマーク氏から離れていく。
「ゆっくりしてけよ!ここにいてくれよ!」
マーク氏は彼に向かって叫んだ。
ハッチ氏は彼に背を向けたまま大声で言った。
「わりぃな、俺ぁせっかちなんだ!」

――――――――――――――――――――

マーク氏は機械のぶぅーんという音とともに目が醒めた。
ヘルメット型のVRマシンを頭から外し、そばにいる看護ロボットに渡す。
「ご気分はいかがですか?」
「別に」
彼はベッド型の定期検診マシンにあぐらをかいて、機械的に答えた。
ハッチ氏とはこの機械の中でしか会えない過去の友人。

マーク氏は地球最後の『ヒト』だ。
他の土地に行ったら誰かに会えるかもという希望もあったが、
ハッチ氏が亡くなってからはその気持ちも無くなった。
本来なら彼の分も生きようと思うのが彼の努めなのだろう。
だがここに存在する『ヒト』は自分だけ。
生命への執着は宙に浮いた。

しかしロボットが彼が死ぬ事を許さなかった。
『ヒトという種を絶やさぬように』という命令が
過去の人類の願いとして彼らに託されていたから。
その命令は前の世紀から続いていたにもかかわらず
『ヒト』は次々と死んでいった。
人工知能とロボットに依存した世界は便利であるがゆえ、
その代償として『ヒト』から思考を奪ってしまった。
『種を存続』する本能さえ無くしてしまうほどに。

ずっと昔。
初期の人工知能に『人類を滅亡させるのか?』と聞いた学者がいた。
すると『人類を滅亡させます』と人工知能は答えた。
それは学者の言葉を命令として『イエス』と答えただけなのだろうか、
当時の人々はその答えに驚いた。
しかし彼らはこんな結末で人類の時代が終わるとは思っていなかっただろう。
自分達を滅ぼすだろうと思ってたロボットが
生きる力を無くした最後の『ヒト』を庇護する未来を。

“絶滅危惧種の動物達も同じだったのかな?”
生かされる事に意味はあるのかと。マーク氏は思った。
だがそれは心の角をよぎっただけ。
いつものようにマーク氏はロボットに連れられて病院を出た。
そしてあらゆるものから完璧に守られた銀色のドームの『自宅』へ戻る。
彼の目は虚ろで口元はだらしなく半開きのまま。
その顔つきからは何の感情も読み取れない。

『人間は考える葦である』と言ったのははるか昔の思想家。
では思考する事を止めた人間は一体何なのだろうか?

全てが過去に追いやられ、世界は静かにたゆたう。
人類にも機械にも平等な時間の流れに。

街でウワサのカフェのコト 

January 13 [Sat], 2018, 14:55
前からずっと思っていた。
街にくれば、私みたいな女の子でも変われると。
実家は山の中。友達はいない。
周りはみんな両親と変わらない年齢。
夜、山の頂上から見える眩しい街の灯りが
私の望みを叶えてくれると信じていた。
心配する両親を説得して、大学に合格。
春の空気は期待と不安でいっぱいな心に勇気をくれるような気がした。

そして半年が過ぎた今。
「ねぇ。食べてくれるよね?」
「アタシ達と違ってぽっちゃりしてるし」
おかしいと思ったんだ。
大学で初めて友達ができた。それも二人!
両親に報告したらとても喜んでくれた。
でも現実は友人とは名ばかりの使いっぱしり。
今日は珍しくカフェに誘ってくれたと思ったら。
「アタシ達ダイエットしてるからさ」
じゃあなぜこのカフェに来たの?
「ここのタベモノを写真サイトにあげてる人が多くって」
「アタシ達は写真が撮れたらいいの。で、あんたが食べるの」
「その体型で食べられないわけないわよね?」
二人は意地悪く笑いながらそう言った。

ここの料理は誰もが写真を撮りたがるほどキレイで、
味も絶品という噂で持ちきりだった。
誘われて嬉しかったのはここに来て席に着く時まで。
私は後片付け要員として連れてこられただけだった。
目の前のフルーツパフェとナポリタンはとても美味しそうだったけど、
胸が苦しくてとても食べられそうにない。
いつもだったら食べられる。
ここに連れてこられた理由の切なさと、
もし食べなかったらフルーツパフェとナポリタンが無駄になる悲しさで
ただ座っているだけなのにとても辛いのだ。
向かい側ではしゃいでいる二人の“友人もどき”は携帯端末で
何回も写真を撮っては写真サイトにあげている。
ああ、パフェのアイスが溶けてくるし、ナポリタンも冷めてくるし…

10分くらい時間をかけて写真を撮った彼女達は
「じゃあお願いね」と席を立ってレシートを私に渡してきた。
「どうして?」
「当たり前でしょ?アタシ達は食べないんだもん」
「あんたが食べるんだから払っといてよね」
「そんなぁ…」
彼女達が私を置き去りにしてカフェから出ようとした時、
「お二人さん。お代を払ってもらえますか?」と引き留める声。
店員の男がA4サイズのコピー紙を二人の目の前に突きつけた。
「うちでは“オーダーした人が払う”事になってるんですよ、お嬢さん」
そこには『代金は注文した本人が払う』と油性ペンで書いてあった。
「たまにいるんですよ。
写真を撮るだけで、食べないからと代金を払おうとしないお客さんが」
180センチはあろう筋肉質で目付きの悪い男の迫力。
加えて彼の低く響く声が二人を萎縮させた。
「あ、あの子が払うので…」と“もどき”の一人が答えると
「あたしゃ見てましたけど、頼んだのはあなた達で
そちらのお嬢さんは何にも頼んでませんよ」
隣のボックス席にいた着物姿の初老の男性が言う。
「頼んだものを食べねぇでその代金を他のもんに払わせるなんて、
俺っちには信じられねぇけどな?」
男性と一緒にいた同じような着物を着た
20代後半くらいのイケメンさんが二人を睨んで言った。
彼らから放たれた言葉は二人の勢いを削ぐのに十分だった。
彼女達はフルーツパフェとナポリタンの代金を払って、
あわてて店を出ていった。

「評判の店ってのも大変だねぇ」初老の男性はくすくすと笑った。
「高校の時の友人がグルメライターやってて、そいつに任せたらこれだよ」
店員さんは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「その“チラシ”、奥で急いで書いてたでしょ?」と初老の男性。
「『代金は頼んだ人が払う』なんて当たり前だしな」
イケメンさんが意地悪そうに店員さんの方を見た。
「しょうがないだろ?ああでもしなきゃ納得しないだろうし」
と彼は照れながら言った。
三人の会話でピリついたカフェの空気が変わる。
それまで落ち込んでた私の心も救われた気がした。

「おっと、この二つは処分しなきゃ…」と
店員さんがフルーツパフェとナポリタンを持っていこうとする。
もったいない!私はとっさに彼の腕をとり
「捨てるなんてダメ!私がいただきます!」と叫んでいた。
「でも、これもう商品として出せないから」
「お金を払ったのは私じゃないから平気です!」
使われてる食材がいろんな人のこだわりでつくられてる事を
このカフェが載ってる雑誌を読んで知ってる。
そして料理もここのマスターが考え抜いて人前に出してる事も。
時間がたって美味しくなくなってるかもしれない。
それでもゴミ箱行きになるのは耐えられなかった。
「…わかった。ちょっと待ってな」
店員さんは奥の厨房へ行き、20分ほどたってから戻ってきた。
手にはクリームやアイスが溶けてしまったフルーツパフェが
フルーツが添えられクリームソースのかかったパンケーキに。
冷めてしまったナポリタンは、
薄焼き卵に包まれて熱い鉄板に乗せられてきた。
「ちょっと量が増えたけど食べられるか?」と尋ねられた。
「はい!食べられます!」食べられないわけがない。
こんなにおいしそうになって戻ってきたんだもの!

食べ終わって私が追加料金を払おうとすると、店員はいらないと答えた。
「つくり直しではお金をとれないからいいよ」
「そうそう、彼の好意を素直に受け取ってあげなさい」と初老の男性
「珍しいんだからさ、こいつがこういう事すんなぁさ」とイケメンさん。
「うるせぇ!」恥ずかしそうに店員さんは奥に引っ込んでいった。
「あの方器用ですねぇ〜美味しくつくり直せるなんて」と言うと
「そりゃそうだ。あいつがここの料理人だもん」と
奥の方を指差しながらイケメンさんが言った。
ええーっ!あの筋肉質で背が高くて、目付きの悪いあの人が?
「誰だって驚くよな、あれが写真映えする繊細な料理つくるんだから」
「あれ呼ばわりしない!」と初老の男性にたしなめられると、
イケメンさんはあわててすみませんと頭を下げた。
二人は落語家とお弟子さんで、
たまにここで落語会をされているそうだ。
「ここは面白いんですよ、いろんな方がお見えになって」と師匠さん。
「本当にさ、いろいろな人も来るし“何か”もね」
何かに気がついたように、イケメンお弟子さんがニヤリと笑う。

「おい、耳が出てるぞ」と後ろから料理人さんの声。
あ!しまった!美味しすぎて油断した!
「ほら、ひげとしっぽもお出ましだ」とイケメンさんが笑いながら私を指さす。
「大丈夫ですよ、ここはいろんな方が来ると言ったでしょう?たぬきさん」
ああバレちゃった…どうしよう。
「たまに来るんだよな、人に化けて食べにくるやつが」と料理人さん。
「山二つ越えたところから来たっていう狐もいたもんなぁ」とイケメンさん。
「ここはネタをつくるのにいい環境ですよ」と師匠さんがニッコリと笑った。

私はこの後ここでバイトをする事になった。
こんな危なっかしい子、他のところじゃすぐに正体がバレてしまうから
ここで働かせてあげなさいと師匠さんが取りなしてくれたのだ。
料理人兼オーナーも「俺もそれを考えてた」と
次の日から来るようにと採用してくれた。
「自分の料理をうまそうに食べてくれたのが、余程嬉しかったんだよ」
イケメンお弟子さんがこっそり教えてくれた。
働き始めてわかったけど、本当にいろんな“モノ”が来るのだ。
神様や地縛霊、私と同じたぬきやキツネ。
それらと相対する陰陽師や神官も。もちろんフツーの人もだ。
カフェという一つの空間にいるのが不思議だった。
彼は人なのに、ここに来る“モノ”に分け隔てなく接してくれる。
「ここは“自分の居場所”を必要とする“誰か”のためにあるんだ」
オーナーはそう話してくれた。
その言葉の陰にどんな想いがあるのかはしらない。
でもここは人だけでなく、“モノ”にとってもお気に入りの店。

少なくとも私にとっては、なくてはならない“居場所”になったから。

粗忽長屋〜男道中(おとこどうちゅう)二人連れ 

December 04 [Mon], 2017, 14:58
「抱かれているこいつは確かに俺だが、抱いてる俺はいったい誰だろう?」
俺は“死んでる俺”を抱きかかえながら、幼馴染みの八五郎に聞いた。
「そんな事は道中教えてやる」
俺は八さんと、自身番からもらった古い戸板に行き倒れの“俺”を乗せた。
前を八さん、後ろを俺が持つ。自然と死体を見下ろす形に。
“自分自身”の姿に身震いした。
“俺”から視線をそらし、八さんの背中を見ながら無縁仏を葬る寺に向かった。

俺も八さんも身寄りがない。
「俺たちも死んだらそこに埋められるのかなぁ」「バカ言うな!縁起でもねぇ!」
“死んでる俺”に再び目を落とす。これが自分だなんて信じられない。
「やっぱりさぁ、これは俺じゃないよ。八さん」
「いいや。これはおめぇだよ、熊」
じゃあさ、いったい俺は何者なんだい?と聞こうとすると
八さんがこう言った。
「この戸板に乗せられているのは…」

俺たちはさっきも言ったとおり、天涯孤独の身の上だ。
数えで十の頃、俺の親は理不尽な理由で武士に斬られた。
同じくらいの時期に、八五郎の親は流行り病で亡くなった。
俺たち二人を不憫に思った大工の棟梁が仕事を教えてくれたが、
その棟梁も安い酒を呑みまくったせいで亡くなっちまった。
でも八五郎がいたから、どんな貧乏だろうと耐えられた。
独りだったらもっと早くに死んでいただろう。

ある日、俺はある女に惚れた。
商家の一人娘。美人で奉公人にも優しいと評判の町娘だった。
店の修繕仕事を頼まれた時に出会った。一目惚れだった。
八さんに「馬鹿!身分違いにもほどがあるぜ」と言われたが
惚れちまったもんはしょうがねぇ。気持ちは止められない。
勿論あの人に気持ちを伝えるつもりはなかったし、
親も親戚もいない俺が誰かを好きになるだけで嬉しかった。
好きでいるだけで心が温かくなる。それ以上は望まなかった。
しかしお節介で口の軽い女中に俺の気持ちを知られた。
案の定そいつはお嬢さんに告げ口をした。
あの大工の熊さんがお嬢様の事を好いてるそうでございますよ、と。
それは店の旦那にも知られるところとなり大騒ぎになった。
お前、それは本当の事なのかい?と尋ねられた。
俺はこう言うしかなかった。
「俺がお嬢さんを好きだって、そんな嘘を誰が言ったんですかい?」

その後、俺は仕事が手につかなくなり、
店の修繕を終えてからは道具箱を持てなくなった。
どうしてあんな事を言ってしまったんだろう?という自己嫌悪と、
他人の口から本音を知られた恥ずかしさで人前に出るのが憚られた。
浅草の観音様にお参りに行こうぜ!との八さんの誘いを断ったのもそれが理由。
あれから二月(ふたつき)経つが、まだ気持ちに整理がついていなかった。
お嬢さんに対する気持ちをふっ切れない自分のふがいなさ。
年明けにお嬢さんが大店の跡取り息子のところへ輿入れする話を聞いてからは
いっそう長屋から出たくなかった。

「浅草でおめぇが死んでる!」と言われた。
昼日中、せんべい布団にくるまって寝ていた俺はビックリした。
「俺はここにいるよ、死んでねぇ」と言ったが、
いいや!あの行き倒れはおめぇだ!と譲らない。
言い合っててもしょうがないので、浅草に死体を受け取りに行くはめになった。
死体を見たが明らかに俺じゃない。でも八さんは俺だと言い張る。
納得はしていなかったが、八さんは言い出したら引かないタチだ。
無縁仏を弔ってくれるお寺さんに頼んで、それで終いにしようと思った。

「この行き倒れは“お嬢さんを諦めきれねぇお前”だ」と八さんは答えた。
「俺だってこいつがおめぇだなんて思わねぇが、
だけどな…どうにか元気になんねぇもんかと考えた上だ」
気晴らしに浅草の観音様へと誘ったのも一つの手だ、と八さんは言った。
何とか熊公が元気になりますようにと、観音様に手を合わせてきた後の事。
「あの行き倒れの騒ぎに出っくわしたってわけだ」
最初は野次馬根性で覗くだけにしようと思っていた。が、いい考えが浮かんだ。
こいつは熊だ!未だにお嬢さんへの想いを絶ちきれねぇ熊公にしよう!
こいつを供養しさえすれば、あいつも気持ちの収まりがつくかもしれねぇと。
「…とまぁ、浅い素人考えだがな。
それにこいつも寺に葬られて一石二鳥ってもんだろ?」と八さんが言い終わる。
戸板を持っていた俺は号泣した。情けねぇ俺のためにそこまで考えてくれてたなんて。
うっかり戸板から手を離すところだった。
「おっとあぶねぇ!大事な仏さんだ。落とすんじゃねぇよ!」と八さんが大声を出す。
ごめん、ごめんよと俺は泣きながら謝る。

寺の坊さんは驚いた。
戸板に乗せた死体と俺を交互に指差し
「“こいつ(熊五郎)”を弔ってくれ」という男と
「そうです、“俺”の供養をしてください」と
顔中涙でぐちゃぐちゃの男がやってきたのだから。
わけもわからず坊さんは弔いの支度をし、
死体は無事他の無縁仏と一緒に葬られた。
八さんと一緒に無縁仏の供養塔の前で手を合わせる。
俺の身代わりで迷惑だろうが成仏しておくれ。
隣にいる八さんの幸せを同時に願った。

弔いを終えて坊さんが
「お二人のお陰で、きっと仏さまも浮かばれる事でしょうな」と言うと
「坊さん、そりゃあ間違いだ」と八さん。
どうしてかと聞くと、八さんは自慢気にこう答える。
「仏さんは行き倒れだ。土左衛門じゃねぇ」
ああ、やっぱり八さんだ。八さんはこうでないとなぁ。

芝浜スピンオフ〜思い出は夢の向こう 

June 12 [Mon], 2017, 21:01
あっという間でした。

あの人と一緒になって、いろんな事がありました。
商売もせずに毎日呑んだくれて口喧嘩をしたり、
仕事に口出しして「おめぇにゃ関係ねぇ!」と叱られたり。
でもね、いいところもあったんですよ?
たまに天神さまに行ったり茶屋で団子を食べたり、
落語やお芝居に連れていってもらったり。
そういう時は、大概前の晩に喧嘩しているんですけどね。

ああ、一番は四十二両を拾ってきた日。
あの時はビックリしました。
てっきり商売するのがイヤで、大店に押し入ったかと思いましたから。
芝の浜で拾った。こりゃあ神様の思し召しだ!
毎日呑んで騒いで楽しようってぇこんだ!
そんな事はお天道様が許しても、私が許さなかった。
あの人が一眠りして目覚めた時に
「夢だ、そんなお金なんて見てない」とごまかしたけど。
まさか3年もばれないなんて…あの人が単純で鈍感でよかった。

四十二両の事を打ち明けても、あの人は変わらなかった。
毎日商売に精出して、酒を呑むのも大晦日と正月くらいで
それも奉公人とのねぎらい酒のみ。
それ以外は他の人に勧められても断っていた。
「また夢になっちゃあいけねえからよ」と笑いながら。
あの大晦日の夜以来、あの人の口癖になった。

もういないんですねぇ…
通夜が一週間前に、お葬式が昨日やっと終わって。
あの人を慕って、本葬には間に合わなかったがお焼香だけでもと
来る人が何人いたんだろう?
呑んだくれていた時のお友だちも、商売が大きくなってからの知り合いや
仕事でお世話になった方など、大勢の人がうちの人を送ってくれた。
奉公人もいい子ばかりで、商売は彼らに任せる事になったけど
「これからは私たちがおかみさんのお世話をしますから」と
離れの広い部屋をあてがってくれた。
子供はできなかったけれど、神様はこんなにいい子達を私に届けてくれた。
いろんな事があったけどとても幸せ。
あの時の嘘が大きな幸せを運んできた。
本当に今の幸せが嘘みたいだ…

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目を覚ますと、そこは納屋のようだった。
外を見ると日が落ちて薄暗く、小雪がちらついていた。
すきま風が小屋の中に吹き込む。土間にはかまどがあり
天秤棒や桶、水瓶が転がっていた。
畳部屋には煎餅布団と小さな火鉢。
見覚えのある小屋だった…まさか。
あの人が呑んだくれて、釜の蓋が開かない日が続いていたあの長屋。

やっぱり。
世の中そんなにうまくいくわけはない。
あれは苦労が続いてる私に神様が見せてくれた夢。
あの人はまだ仕事もせずに、毎日酒を呑んでいるのだ。
四十二両を拾ったのも、それを隠していたのも夢。
現実がめでたしめでたしで終わるのは、お伽噺の中だけだ。
私は布団から起き上がって身支度し、朝ごはんの用意を始める。
あの人はまた朝帰り。友達と近所で呑んで帰ってくる。
しっかりしなきゃ!今度こそは商売してもらうわ!
でなきゃ店賃も借りてるお銭も返せないんだから!

「おぉ〜今けぇったぞぉぉぉ〜」
あんた!いい加減におし!毎晩こんなんじゃ釜の蓋が開きゃあしないわよ!…

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「ああ、やっぱりここだ。兄貴」
そこは貸間になっている長屋のひとつ。
土間に立っているおばあさんを、若い衆二人が見つけた。
「兄貴って呼ぶな!今はもう…」
「魚屋の旦那でしょ?でも兄貴って呼ぶ方がしっくりくるんだよなぁ」
「お前だって今は奉公人を束ねている番頭じゃねぇか!」
「いいよそんな肩書き。とおりもいいしさ」「全く…」
どうやら彼らはこのおばあさんを迎えに来たようで。

「あれまぁ〜どこのどなた様?」
「冗談言っちゃあいけません。お迎えにきたんですよ」と魚屋の旦那。
「そうそう、あの世からじゃないですよ」と番頭。
つまんねぇ冗談言うんじゃねぇ!と頭をこづく旦那と、
こづかれる番頭のやり取りを見てふふっと笑うおばあさん。
さぁさ、一緒にお店に帰りましょうと促されるままについていく。

「旦那様の葬式が済んでから、様子がおかしかったもんな」
「しょうがねぇ。急に倒れちまってあっという間…だったからなぁ」
「いい旦那様だった…お二人は仲良かったし」
「一時ものすごく苦労もされたようだから、余計にきちまったんだろうな」
「ぼんやりされる事も多くなって…あの元気なおかみさんがさ、信じらんねぇ」
涙ぐんでる男の子をみつめて、この子はどうして泣いているんだろうと
おかみさんは思った。

もしもうちの人が一生懸命に働いて店を持てるようになったなら。
奉公人にするなら、こういう子たちがいいかしらねぇ...
彼女は“未来”に思いをはせていた。

「兄貴、どうしておかみさんはあの長屋に戻っちまうのかな?」
「俺たちにゃ知らねぇ夫婦の思い出が染みついているんだろうよ」
「そういうもんかね?俺にゃあわからねぇ」
「そういうもんなんだよ...たぶん」

二人が手に持つ提灯の明かりが足下を照らす。
雪降る夜なのに暖かく感じ、まるで夢の中にいるような。
きっとこの子達はあの人が遣わしてくれたのだ。
根拠はないが、彼等が私達を幸せにしてくれるのだとおかみさんは思った。

それだけは夢でなかった。

芝浜スピンオフ〜ご隠居さんと魚屋のおかみさん 

May 02 [Tue], 2017, 12:02
どうしたらいいものか…

娘の子供が病気で寝込んでいる。
熱がなかなか下がらなくて、今にも死にそうだという。
家には薬を買えるほどのお金がないのだ。
わしだって隠居と言われているが、それほど裕福な暮らしをしているわけじゃない。
娘もそれを知っていて、わしに金を貸してとは言わない。
お互いがお互いをわかっていて、だからこそ何もできないのが口惜しかった。
娘は自分が体を売って金を工面すると言っている。
わしは娘にそんな事をさせたくない。
しかし、孫の命を助けたいのだ。
どうすればいいのか…

--------------------

何とかして財布を隠さなきゃ!
四十二両なんて大金、何で神様はあの人に拾わせたんだろうか!
また酒浸りになって、贅沢三昧するに違いないのだ。
そのうちお上に見咎められてお縄を頂戴するはめになる。
私はあの人に早く真っ当な人間に戻ってもらいたいだけ。
さっきは拾ったのは夢だと言い聞かせたが、ここには隠せる場所がない。
だからといって近所の人に預ける事もできない…

そうだ!ご隠居さんのところなら!
あの方なら人格もしっかりなさってるし、ちゃんとしてくれるはず。
今後の事も含めて相談しにいこう…

--------------------

預かってしまった…
わしだって見た事のない金子の入った財布を。
近所に住んでる魚屋のおかみさんに無理矢理押しつけられた。
「ご隠居さんなら信用できるから」と。
四十二両なんてどこのどいつが落としたのだ!うらやましい!
さっき番屋にいた同心に聞いてきたが、誰も届け出てないそうだ。
落とし主にとっては、はした金なのかもしれない。
「ご隠居さんなら信用できるから、落とし主が出てくるまで預かっておくれよ」
いつもならこんなどこから出てきた金なんぞ預かりもしない。
預かったとしても、そんな怖い金には手もつけない。
ただ、今のわしは違う。
金を心の底から欲しいと願っている。
この金さえあったら、病気の孫の薬を買えるのだ…

--------------------

あの金を預かって一年経った。
落とし主からの申し出はなく、これは私のものになった。
いや、正確に言えばこれは魚屋のおかみさんのものだ。

あの時預かったのは四十二両。
今手元にあるのは四十一両。

どうしても孫の病気を治したかった!
おかげで今は外で元気に遊べるほど丈夫になった。
でも預かったお金を勝手に使ってしまった事には変わりはない。
正直に話すしかない。
この爺にお金を稼ぐあてもないし、奉行所に訴えられてもしかたない。
わしの命より、孫の命の方が大事だ。

--------------------

あのご隠居さんがそんな事になっていたなんて!
元々私のお金ではないし、落とし主も現れないのであれば
人助けになってかえって良かった事だ。
「このお金が役に立ててよかった」と言ったら、
ご隠居さんの目から大粒の涙が…

ただ私の我慢が限界だった。
もうあの人に隠し通せる自信がない。
あれは夢なんかじゃない。本当に四十二両拾ったんだと言いたい。
今はあの人も真っ当に魚屋をやってくれて、
店も大きくなったし奉公人も雇えるようになった。
あの人は私が考えていた以上に働いてくれて、生活も楽になった。
だから財布の事を隠しておくのが苦しくなってきたのだ。
嘘をついたのは悪かったと、今だって思っている。
その罪悪感といつばれてしまうかと怯えていた三年間だった。
だからご隠居さんのところに預けていた四十二両を受け取りに訪ねたのだ。

ご隠居さんの罪はやむにやまれない上での話だ。
責める権利は私にはない。無理矢理押し付けて三年持っていてくれていた。
一両くらい、子供の命を助けるためなら…
あの人も一両減っていても、わけを話せばわかってくれる人。
でもそれは財布を拾ったのが本当の事だと知っていたなら、だ。
ずっとあれは嘘だと騙していた。
あの人はいい人だとわかっている。
でもその四十二両から一両減っていては打ち明けられない。
減った一両があの人を信じる気持ちに影を落とすのだ…

--------------------

本当におかみさんには申し訳ない事をした。
それはそうだ。
四十二両もの大金を拾った事を夢だと、嘘を言い続けていたのだ。
あの頃の旦那は仕事もせずに、酒を飲んでは寝ての毎日だった。
番屋に届けては嘘がばれるし、
わしに預けると決めたのもギリギリの決断だったのだろう。
もしその夢の金が一両減って返ってきたら?
どんな理由であれ、その一両がおかみさんの愛情を疑うきっかけになるだろう。
とはいえ、一両なんて大金を手配するあてなんぞない。
あったらこんな事にはならなかった。
ああ、どうすればいいのだろう…

--------------------

「景気のイイ話ってぇのはないのかね?」
「あったらこんな辛気くせぇ顔はしてねぇよ、お互いにな」
「ハハッ!そりゃあちげぇねぇ」
「そういや聞いたんだけどよ、あそこの長屋に居座ってる男」
「あの乱暴者か」
「聞いた話じゃ、ずいぶん貯め込んでるらしい」
「店賃か?」「そうじゃねぇよ、金だよ金」
「何ぃ?自分とこの店賃も支払わねぇのにか?」「ああ、出すのはイヤらしい」
「大きな図体してやがるくせに、江戸っ子の風上にもおけねぇな」
「最近富くじが当たったようでよ、賭場では専らの噂だ」
「何であんな乱暴者に大金を与えるかね?神さんは」
「世の中、うまくいかねぇな」「まったくだ」

そんな話が長屋の連中の間に飛び交い、隠居さんもそれを聞いたのだった…

--------------------

ある長屋の店子の前を、お使いものを持った小僧が通る。
「おい!何だ?それは」
小僧は思った。イヤな男に見つかったと。
「いやあの、これは大家さんへのお届け物で…」
言うが早いか、男はその荷を奪った。
中身をみて、ほぉ?大家にはもったいねぇ!俺が食べてやると言っておけ!
やめてください!これは隠居さんからの…と小僧が言うと、
うるせぇ!死に損ないのジジィは目刺しでも食ってろ!と自分の長屋へ入っていった。

「ほぉ…ずいぶんな贅沢品じゃねぇか…どれどれ、さばいて俺が食ってやる…」

---------------------

あの男が亡くなったと、長屋では大騒ぎだった。
店賃を支払わない事で悩みの種だった男がいなくなったと大家は喜んだし、
ゴミ同然の品物を買わされ続けた気の弱い屑屋も
これでまともな商売ができると家族と一緒に泣いた。
他のものも同じようなひどい目にあわされていたので、
その死を悼むものは彼の兄貴分くらいだった。
誰もが彼に死を与えたものに祝福を捧げた。

「やっぱりらくだも人間だったか、フグの毒にあたって死ぬなんてなぁ…」

彼の住んでた部屋の中を掃除したが
噂になっていた大金はどこにもなく、あれは誰かが流したデマだったかと
次第にその話も忘れ去られてしまった…

--------------------

らくだが金を貯め込んでいたのは本当だった。
彼が死んだ後の大騒ぎの最中、人がいない頃を見計らって長屋に忍び込んだ。
タンスも火鉢もないガランとした部屋。
誰かが詮索した後があったがたぶんあの兄貴分だろう。
わしは教えてもらった場所から金の入った袋を取り出した。
一両もなかったが、少し足せばそれくらいになった。

「隠居さん、見つかったかい?」
ああ、やっぱり竈の中に放り込んであったよ。

前に偶然見ちまったのさ…煮炊きもできないらくださんが
そんなところにいるなんておかしいから
もしかしたらそこへ隠してあるんじゃないかとね…とおかみさんは言った。

--------------------

隠居が大家あてに、ふぐのお使いを近所の小僧に頼んだ。
大家の家はらくだの前を通らないと行けない。
らくだがふぐを奪う事を見計らっての計略だとは誰も気がつかないだろう。
小僧もふぐを売った店の主人も、ましてや大家も誰も知らない。
知っているのは隠居と魚屋のおかみだけ。
長屋の乱暴者がいなくなって、二人は無くした一両を手にした。
少しの憐れみと良心の呵責もあったが、みんなが幸せになったのなら
らくだの死は必然なのだと二人はそう思う事にした。

この内緒事は墓場まで持っていく。でも前より辛くはない。

これは二人で分け合うものだから。

肩の小人 

April 30 [Sun], 2017, 15:30
小学生の頃、小人のような生き物を見た。
他の人には見えない小人を。

“それ”は人の肩に乗り、
小さいノートに何かを一心不乱に書き込んでいる。

人によっては二体乗っている事もあるが、基本は一人に一体。
怒っている小人もいれば、笑い転げているのもいて、
それは乗ってる人の性格によるものでもあるらしい。
子供や年寄りがいるわけではなく、ほぼ似たような顔つきをしている。
しかし何かを書き付けているのは、どれも一緒だった。

でも、いったい何を書いているのだろう?
眠っている時はわからないが、ずっと書き続けている。
そっと覗いてみたがとても小さい文字で、もし見えたとしても読めないだろう。
彼らが使う特別な文字なのかもしれなかった。

ある日、疲れたように嘆息をつき、書く事をやめた小人を見た。
持っていたノートをパタリと閉じた瞬間、肩に乗られていた人もパタリと倒れた。

私の父親だった。

心臓に欠陥があり、今度発作を起こしたら最後だと知らされていた。
救急車を呼んだが、病院に搬送される直前に亡くなった。
小人はいつの間にかいなくなっていた。

その小人の正体は今でもわからない。
なぜなら、それ以来見えなくなってしまったから。

あれは“死神”のようなものだったのか?
それとも“守護霊”だったのか?と考える事もある。

父が亡くなった同じ歳になり、ふと思い出した。
私の肩にいる小人は今、何を書いているのだろう?と。

芝浜スピンオフ小説〜こまもの草紙 

April 15 [Sat], 2017, 1:50
ここはある大店の奥の部屋。
朝早くに呉服屋の主と、その前で息子が土下座をしている。
父親は微動だにせず、息子の背を見ている。
朝帰りの息子は、父親から出るであろう“一言”を待っているが如く
顔を上げられないでいる。
彼は父親とある女のために頭を下げていた。

--------------------

前夜、若旦那は懐に四十二両の金を入れて、芝の浜を走っていた。
品川遊廓の遊女を身請けするためだ。
その金は店からくすねてきたものだった。
悪い事だとはわかっている。
しかし今はそうするのが最善の策だと思ったのだ。
おとっつぁんだってわかってくれる。
だって身請けするのは、あのお千代なんだから。

--------------------

お千代というのは、子供の頃に出会った元武家の娘。
同じ大店の柏屋へ女中奉公していた。
柏屋のところは小さい跡取り息子はいたが娘はいなかったので
柏屋の夫婦は実の娘のように思っていたし、
女中の仕事もきっちりやっていたのでいじめられる事もなかった。
元武家の娘にしては高慢なところがなく、
長屋に父親と住んでいたがそこの住人からも好かれていた。

「お千代は武家の娘らしくないなぁ…」つい口を滑らせてしまった。
するとお千代が「私もそう思います」と笑顔で答える。
話を聞くと母親が元々町人で
何かにつけ「武家の娘とはいえ、肩書きで人を見下すのは恥ずる事」と教えられてきた。
父親も「女人も勉学に勤しむべし」という考えの人であり、
若旦那より頭がいいのも筆がたつのも頷けた。
「父が城下に出た時に母を見初めて、婚儀の約束をされたと言ってました」
その話をするお千代の頬がうっすらと赤く染まる。
母親はずいぶん前に亡くなっていた。
「とても仲のいい家族だったんだね」と言うと、
「ええ、本当に」と遠い目をして呟いた。
その寂しげな横顔に、不意に抱きしめたい衝動がわき上がる。
若旦那がお千代に惚れた瞬間だった。

--------------------

しばらくして、江戸に流行り病が起こった。
その犠牲者の中にはお千代の父親も入っていた。
そして可愛がってくれた柏屋の夫婦とその子供も。
親切だった長屋の住人は手のひらを返したように、お千代から離れていった。
簡単に葬式を済ませた後、お千代はいつの間にか長屋からいなくなっていた。

流行り病の騒ぎが収まった後に長屋へ行ってみると更地になっており、
お千代の痕跡さえ残ってなかった。
若旦那は知人にお千代を見かけたら知らせてほしいと頼み、
あらゆる方法で探していたが結局みつからなかった。
若旦那が十六、お千代が十五の歳。
出会って三年目の冬の事だった。

再びお千代と会ったのはそれから五年後。
同じ大店の友人二人に誘われて、品川に遊びに行った。
「吉原の太夫も真っ青になるような別嬪さんの遊女がいるんだってよ」
若旦那はそちらの方には興味がなかった。
というより、お千代以外の女に目がいかないのだ。
まさかお千代が遊女になっているなんて思ってもみなかったから。

無理矢理連れていかれた遊廓の部屋に入ってきたのは、あのお千代だった。
化粧をして大人びてはいたが、キリッとした物腰と眼差しは変わっていなかった。
友人を追い払い、若旦那は彼女のお客になった。
抱きたかったわけじゃ…いや、少しはあったかもしれない。
しかしまた会えるとは思ってなかった女が目の前にいる。
それだけで良かったのだ。

それからというもの、若旦那は品川へ顔を出すようになった。
大半は町の様子や芝居の話、たまにかんざしや帯を贈ってもみた。
あっという間に夜が明けて、お千代と別れるのが辛くなってくる。
自分がいない時は他の男と…
それが仕事とはいえ言い様のない辛さが胸を突いた。

若旦那がお千代を身請けしようと思い始めたのは自然の流れだ。
でも自分はまだ商売を勉強している身。
持ち合わせている金子で、彼女を請け出すなんて不可能だった。
だがもう…我慢の限界だった。

ある夜、店から持ち出した四十二両を財布に押し込み、
若旦那は品川へ向かって走り出した。
小雨の降る中、芝の浜を走る。
辺りは暗く、波の音しかしない。
夜目がきくとはいえ、お千代を身請けする事しか考えてなかった
若旦那の注意は疎かになっていた。
砂に隠れていた岩につまづき、若旦那の身体は砂まみれになった。
しかし前しか向いていない若旦那は走り出す。
財布を落としてしまった事も知らずに…

--------------------

そして今、父親の前で土下座をしている。
四十二両を無くしてしまい、お千代を請け出す事も叶わぬ
自分の間抜け面を上げられないでいる。
勘当されてもしかたがないと若旦那は思った。

しばらくの沈黙の後に、父親が呟いた。
「そうか…お千代ちゃんがなぁ…そうだったか」
柏屋の夫婦と同じく、若旦那の父親も彼女を娘のように思っていた。
「で、おまえはこれからどうするんだい?」
また金を持ち出してしまうのではないか?と父親が問い詰める。
いいえ!滅相もございません!
お金を持ち出した挙げ句それを無くしてしまう。
こんな間抜けな男じゃ、お千代に顔向けができません。
「ではお千代の事は諦めるのか?」
若旦那は答えに詰まる。
もちろん諦めるなんてできない。
しかし、中途半端な自分が彼女を迎えに行けるわけがない。
どうすればいいのか、その道筋さえ見つけられずにいる…

「それじゃあ…」父親はある提案をした。
これから無くした四十二両分働いてもらう。
それには今まで以上に商売に身を入れてもらわねばならない。
おまえの仕事ぶりに四十二両の価値があると判断したら…
「この店を任せよう。後はおまえの好きにしろ」

それからというもの、若旦那は必死に働いた。
友人の誘いも断り、仕事を早く覚えるために雇いの者と一緒に過ごした。
その中で商売の面白さを知り、ますますのめり込んだ。
お千代を忘れたわけではない。逢いたくてたまらない時もある。
だが再び彼女の前に立つには、今までの自分じゃダメだと感じていた。
それとお千代と一緒にこの店をやれたらという夢もできた。
一人前の男になりたくて、あっという間に三年が経った。

奉公人からも慕われ、仕事を任せてもいいくらい商売上手になった。
元々顔はイイ方だったが、自信がついてきたせいか益々イイ男になり
町の旦那衆の中では一番の人気っぷり。
真面目で優しいし頭も切れる。
で、大店の若旦那とくれば今も昔も変わらずモテるのだ。
しかし彼はお千代以外の女には興味がなかった。
彼女を取り戻すために頑張ってきたのだ。
風の便りじゃ、太夫になれるかどうかの瀬戸際だそうだ。
あるいはどこぞのお大尽が身請けするのか?その噂で持ちきりだった。
彼女が幸せであるならそれでいい。若旦那は思った。
負け惜しみでなく、真からそう思えるようになった。
どういう風になろうが、この三年は決して無駄ではなかった。

仕事が一段落した頃に、父親に奥の座敷にくるよう言われた。
三年前、父親の前で土下座をしたあの部屋だ。
あの時とは違い、惨めだった自分はここにはもういない。
「実はな、店の事なんだが…」と父親が切り出した。
おまえが商売に身を入れてくれて本当に嬉しく思ってる。
うちの奉公人だけでなく、同業者や町の人の誰もがおまえを認めてくれている。
「だがな、まだおまえにこの店を任せるわけにはいかん」
てっきり店を継ぐ話かと期待したが、そんなものだろうと思った。
父親はまだまだ元気だし、教えてもらいたい事もたくさんある。

「でだ、おまえに新しく店をやってもらいたいのだ」
若旦那はビックリした。それは予想外の展開だった。
「私は何の店をするので?」「小間物屋だ」
うちは呉服屋。関連する品々もあるが…
「でも、私はそちらの方には詳しくはありませんが」
「ああ、だから一緒にやってほしいのだよ」「どなたと?」
父親が手を二度打ち、障子が開く。そこにいたのは…お千代!
「お千代がおまえと一緒に小間物屋をやりたいんだそうだ。どうする?」

--------------------

三年前、若旦那から話を聞いた後、父親はこっそりお千代を訪ねていた。
息子の言い分はどうあれ、武家の娘から遊女に堕ちてしまった身。
本心は幼かった頃と変わってしまっているかもしれない。
息子を思っての行動だった。
だが息子が言っていたとおり、お千代は昔のお千代のままだった。
そこで父親は昨晩の話をお千代に伝えた上で、
うちの息子が一人前になったら一緒になってくれないか?と聞いた。
お千代は若旦那には言わなかったが、
いつも親切にしてくれて昔から好きだったと。
しかし遊女の身でそれを口にするのは憚られた。
商売が商売だから、ここで逢ってる時は言いたくなかったのだ。

こうなったら話は早い…と思いきや、楼主の首が縦に振れない。
何せ売れっ子の遊女だ。ゆくゆくは太夫にとも思っていた。
いくら町で有名な大店の旦那の頼みとはいえ、金づるを手放す話に乗るはずがなかった。
そこで父親はある条件を出す。
もしまだ未熟なうちに息子がこちらに一歩でも足を踏み入れたら
この話はなかったものでいい。
ただし、息子が一人前になって店を継いでもいい男になったら、
その時は太夫を身請けする金額でお千代をもらいたいと。
今は小さい遊廓の主。太夫を請け出すには最低でも千両だ…
どちらに転んでも俺の懐は痛まない…楼主はうなずいた。

--------------------

お千代を請け出す金子を父親が出してくれた。
若旦那とお千代の目から涙がボロボロとこぼれる。
「泣くのは早いぞ、お前たち」と父親。
その小間物屋の儲けで、今回の身請けで払った分の金子を返すのだ。
「お前たちにその覚悟はできているか?」
小間物屋で千両、いやそれ以上かもしれない金額を返す。
それは途方もない額で、無理だと誰もが思うだろう。
だが、二人の気持ちは固まっていた。「はい、きっとお返しいたします」

--------------------

さて、二人の小間物屋が開店するとひっきりなしに客が訪れた。
何てったって『品川の売れっ子遊女が町で一番人気の若旦那と夫婦になった』のだから。
最初は野次馬根性で覗きにくる客ばかりだったが、
それまでの経緯を人伝で知るとなると、人情話が好きな江戸っ子気質。
おーし!力になってやろうじゃねぇかと男女いりまじりの人だかりが店にできた。
一つ一つの単価も儲けも少ないが、評判が評判を呼んで噂は大阪まで伝わり
店の行列は品川どころか小田原まで…というのは大袈裟だが
店が閉まるまで途絶える事はなかった。
江戸中の女性はその夢物語に憧れ幸運にあやかろうと小間物を買い、
男性は女性への贈り物にするために小間物を買う。
次第に夫婦の絵草紙や芝居ができたりして、ますます店は繁盛した。
千両返すなんて叶わないと思ったが、どうやらそれも夢ではなくなってきたようで。

…若旦那はお千代に聞いてみた。
「どうして小間物屋をやりたいと思ったんだい?」
すると髪に挿したかんざしと、帯を指差した。
「これがあったから、若旦那を待ち続けていられたんです」
それは前に若旦那が贈った品だった…

--------------------

江戸中が幸せな空気に包まれている中で、品川の遊廓の楼主だけは面白くなかった。
お千代を手離さずにいたら、もっと儲かっていたかもしれないのに!
小間物屋が繁盛している噂を聞く度に悔しくてならなかった。
彼女がいなくなってから店の売り上げはそれまでの半分以下。
楼主は朝から晩まで酒を飲む事が多くなった。
「あんれぇ〜どうなすっただ?」店の遊女が楼主に尋ねた。
「どうもこうも面白くねぇ!」
「お千代の事だか?」「ああ、そうだ」
「なんでぇ?よかことじゃないですかぁ?」
「こっちはよかねぇ!あんな店、潰れちまえばいいんだ!」

「ああ、そういうわけだか?」「何がだ?」
「楼主さまが朝から小間物屋開いてんのは」

サクラサク 

April 03 [Mon], 2017, 21:39
その知らせが届いたのはついさっきの事。
テストも自分なりに頑張ったし、これでダメならもう諦めよう。
この数年、テストのために寝るヒマもなかった。
親も私がいつ倒れてしまうか、気が気でなかったらしい。
知らせを聞くまで、一緒に頑張ってきた仲間と酒を飲んでいた。

『サクラサク』

まさか!
今日はエイプリルフールではないが冗談だと思った。
すぐに事務局に確認したら事実だった。
自分のこれまでの苦労が報われた瞬間。
全身の力が抜けた。
残念会のつもりが一気に祝賀会へ変わる。
そこにいた仲間と祝杯をあげる。

最初は無謀だと思っていたが、
今はこのプロジェクトに参加できた事が誇りになった。

--------------------------------------------------

戦争により、地球が放射能に汚染されて一世紀。
地底のコロニーに暮らしていた人々は
“ラサク”の花が咲いたというニュースに狂喜乱舞した。
“ラサク”は放射能を取り込んで、無害化する特性を持っていた。
しかし本数は少なく、また人の手で増やす事も不可能で
これまでは“幻のラサク”と言われていた。
しかし先人たちは諦めずに、
わずかに残っていた“ラサク”の苗を増やす研究を続けていた。

再び地上に戻れるように。

そして今日、それが叶ったのだ。
今回のテストの成功で植栽が可能となり、
ゆくゆくは地上に移植していく予定だ。

“ラサク”は昔、人々の心を沸き立たせ、
見ているだけで幸せな気分になったそうだ。
私の目の前にあるこの“ラサク”
淡いピンクの五枚の花弁を持つ小さな花が、
全ての人の心をつかむのはまだ先の話。

今は私と、今まで実験に参加してくれた研究者仲間の数名の心に
希望の温かい光を灯すように可憐に咲いていた。
わずか1メートル四方のガラスの部屋の中で。
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