眠らない娘の話 

2009年03月13日(金) 13時54分
向かいの家の屋根が扇風機の使いすぎで飛ばされたのが三日前。

お父さんのネクタイの柄が猫の目のドットだったのが二日前。

妹の足が消えたのが昨日。



今日は何が起こるのかと私は今から怯えている。

もしかしたら今日は我が身かもしれないと思うだけで眠るのが怖い。

恐怖で縮こまってしまった私を怪しいものでも見るかのような目で一瞥し、五体満足の妹は「じゃあウチ出掛けるから。あ、夜ご飯要らないって言っておいて」と残して家を出て言った。ガシャンと鍵が掛かる音が響く。閉じ込められた。



やがて日が落ちて部屋は暗くなってきた。
そろそろ母が帰ってくる時間だ。ぼんやり、時計の秒針を眺めて数分。ガシャン、鍵が外された。



「あら、あんたいたの?部屋真っ暗だったから誰もいないかと思ったわー。電気くらい点けなさいよもう」

そう言ってスイッチに手を伸ばす母。私は黙って秒針を見つめていた。あ、眩しい。




「ちょっとお昼はどうしたの?ちゃんと食べた?」


冷蔵庫の中身がまったく減っていないことに気付いた母が私の体を案じている。

昼過ぎに目覚めてからずっとここで縮こまっている私は当然何も口にしていない。そっか、もう晩御飯の支度する時間なんだ。


適当な返事で誤魔化して、妹の伝言もちゃんと伝えた。もうすぐ夜が来る。





買ったばかりのマニキュアが腐って変色したのが四日前。

うちの金魚が毒を吐いたのが五日前。

玄関の百合が呼吸を忘れたのが六日前。






今日で七日目に入る悪夢。

きっと今日も眠りたくないと恐怖する。


プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:奈多
読者になる
2009年03月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
最新記事
最新コメント
Yapme!一覧
読者になる