退廃 

February 24 [Sun], 2008, 18:46
―――可哀想に。


荒い息をしながら私に覆い被さる男を水晶体に写しながらそう思うと、彼がとても滑稽に見えて愉快だった。これは自尊心を満たすための行為なんかじゃない。だって私はこんなにも虚しい。彼が果てても、きっと私は虚ろな眼でそれを見下ろしているんだろう。浮かんでいるのは憐憫の色か、侮蔑の光か、君には向けなかったまなざし。



愛は美しいと唄ったのは誰?死を望むことは愚かだと嘆くのは誰?私は悼まれることなんて求めてはいないのに。


ああ、まだ私は、沈んでいない。

ジレンマ 

November 24 [Sat], 2007, 21:49
もしもこの世界に酸素が無かったら、太陽が、月が、星が、風が、言葉が無かったら、きっと僕はあの時、何のためらいも無く君を抱きしめていたのに。
しがらみだとか理性だとか、自分に歯止めをかける鎖に繋がれた自分が酷く矮小なものに思えて堪らなかった。壊したいくらいに愛していると、正気を失ってでも訴えるべきだった。君を失うくらいなら。
後に残った美化された記憶。面影は脳の内側にへばりついて矧がれようとしない。
もう満たされない欲求のせいで眠れない夜が続く。からっぽの腕の中で君の抜け殻を抱く。自慰行為同然のそれは僕を虚無へと晒すだけ。



明け方に見る夢はどうしてかいつも哀しい。

未来永劫遠い過去を見続ける 

November 10 [Sat], 2007, 21:33


「―痛いでしょ」

たった今俺を捕らえた目の前の女が言った。彼女の右の手の中に血で濡れて光る刃を見た。


「痛い想いすればいいんだわ。あなたなんか」

そう吐き捨てるように言って、俺を押さえつけたまま、俺の顔を見上げて口の端だけで笑った。彼女の明るい色をした瞳に映る俺の顔は茫然自失そのものの表情をしていた。
視界の端で、右肩の傷口から腕を伝って流れ落ちる血が地面に染みを作っていくのが見えた。

―――何をやっているんだ、俺は。


下手をしていたら殺されていた。否、寧ろ、何故彼女は俺を殺さなかったのか。

「あなたのこと捕まえるためにこんな疲れることする気ないの、私」

それが例え運命づけられた役目だとしても。



そして、彼女は俺に一つ仕事を頼んだ。それは明らかに俺への挑戦だった。彼女が知りたいのは俺の想いと真実。因縁づけられた血は俺を苦しめ続ける。螺旋状に連なった、どこまでもループし続ける運命。俺は堪らなくなって、君の名を掠れた声で呟いた。それは運命に抗う者の喘ぎにも似ていた。

独り善がり 

September 17 [Mon], 2007, 11:44
私には愛される価値がない、とか、汚して欲しい、とか、なんでみんな生きる意味を欲しがるんだろうって、どこか苛立ちにも似た不甲斐なさを私はこの狭苦しい世界に感じる。それは誰も幸せを定義づけてくれなかったせいだと思ってる。ばかみたいだ。





疲れた。もう疲れたたんだ。そういって貴方は倒れたまま起きようとしなかった。いやできなかったのだ。 この息をすることさえ憚られる空間で、立って歩くことさえおぼつかない世界で、生きる意義を見失った貴方にどうして目を開けて欲しいなんて言えるだろう。




完璧な人間に生まれていたかった。


貴方の最期のことばを、私はきっとこの先背負っていかなければならないんだろう。ただ、息をするためだけに。





生きているのは、ただ、死ぬのが怖いからだ。

恋々蝶々 

August 02 [Thu], 2007, 21:56
 その瞬間、私は泣き出してしまいました。絶望したのです。貴方の目が指が声が私が愛したそのときと変わらずそこにあることに。貴方と目が合った、その、瞬間。そう、貴方は紛れも無く、私にとっての過去の人になどなり得ないということに気付いてしまったのです。
 はらはらと流れ落ちる涙は残酷で、私の、まだ癒えぬ傷を抉るのには十分すぎるほどでした。

 私はもはや観念せざるを得ませんでした。貴方を未だ愛していることを認めざるを得ませんでした。何故、今更になって私は貴方に触れたいと願ってしまうのでしょうか。こんなにも、近くて遠い距離を、私は未だかつて、感じたことがありませんでした。

空が白み始めるころ 

August 01 [Wed], 2007, 17:04
君が向こう側で笑った
僕に手を伸ばしてきたのでこれは夢なのだと気付いた

抱きしめたら泣き出した
その涙は確かに暖かかった
僕はその涙の理由を知っているような気がした

思い出そうとした次の瞬間には忘れていた

髪を撫でたら目を閉じた
囁こうとした君の名前も忘れていたので口付けることはできなかった

目を開けた君の唇が僕の名をなぞった
言いようの無いいとしさがこみ上げてきたので腕に力を入れたら君は消えた



夢から醒めた僕はだれよりも孤独だった

愚かな女 

August 01 [Wed], 2007, 16:56
傷つけたことが苦しいのか傷ついたことが悲しいのか

まどろみの中で愛された日々反芻する
あの日貴方が囁いた「あいしてる」の残り香にまだ縋りたがってる

愚かなのはお互い様じゃない


貴方のために生きたかった 誰かを信じてみたかった
居場所を失くした私はわたしがわからない


ねぇどうしよう 貴方と絡ませるための指先はこんなにも冷たい
ねぇどうしよう 私が愛するための貴方の唇はかたくかたく閉ざされている

さよならなんて言わないで 嫌いでもいいから傍にいて
狂おしいほどの恋情と云う名の絶望に苛まれながら私は最後の瞬間を迎える



「どうしたら信じてくれてたの?」

やがて酸素の無い朝がくる 

July 27 [Fri], 2007, 18:03
平衡感覚のなくなった頭で
きみのことばかり考えてた

「人の価値は関係性よ。あの子にとってはクズ以下でも、あの子にといっては神に等しい。そういうものでしょう?だからあなたが今、私が私のことを大切にしていないように思うなら、それは、私の前にいるのが、あなただからよ」

それならばぼくは、誰になればよかったのだろう?
きみの隣にいるのがぼくじゃなくほかの誰かだったら、きみはもっと自分を大切にしていたのだろうか

なんて、今更考えたところでどうしようもないけど


ねぇ、今でもぼくの足元には思い出の残骸が散らかっているよ
吐いた嘘の破片やきみを傷つけた言葉の欠片


これもきみを「愛してた」証拠のひとつだというなら





幼くて拙い想いは罪だったのかもしれない

もっと優しく傷つけてあげられたらよかったのに








君は今も、夢の出口で泣いている
P R
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