PHOTO BY 北風東風 様 「君に、」
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「貴方も冷たくなるのですか」A / 2005年12月03日(土)

突然の豪雨。当時小学生だった私は、ランドセルを頭にのっけ、家路を走る。
曲がり道に差し掛かると、トラックと、ぐるぐる回る赤の点滅。

担架で運ばれているのは、紛れも無い

痛いほど眩しい笑顔を持つ、彼女だった。

精神的にも幼かった当時の私にとって、限りなくショックなことで。
雨で視界が悪いうえに、前方窓の壊れたワイパーが、
窓の中心部から左右にかけての数センチの幅のみでうごうごするという、
最悪な事態をむかえたトラックに、轢かれてしまったという。

幸いにも命はまぬがれたが、ピアノは一曲弾く度に嘔吐し、
大きく生々しい傷が体に残るという、最悪な状態に彼女は陥ってしまった。

それでも笑って言う。「大丈夫だ」と。

通うたびに聴く、彼女の音。いつもより儚く切ない旋律。
悲鳴と叫び声、人々の苦痛全てが入り混じったような曲調。
彼女は望んでそんな風に弾いているわけではない、ただ
彼女の痛々しい姿からは音は酷く悲しいものに変わってしまうのだ。

ぽつりと彼女は呟く。自分の姿に絶望し、ドツボに嵌ってしまったとき。

「私は好きで生温かいわけじゃない。
皮肉ね。何故こんな自分の唯一の好きなこともできないような体で
血は通っているの。どうして・・・」

自分の存在を否定する言葉だった。

彼女の傷一つ無い、焦げ茶色の硝子玉から
涙が溢れる。涙腺が熱くなる。

止めて止めて止めて

神よ。

 
   
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「貴方も冷たくなるのですか」 / 2005年12月02日(金)

今までの生涯の中で一度だけ、死を人に問うたことがある。
彼女は目を丸くし、微笑み、答えてくれた。

「貴方が止めてというまで、私は音を弾き続けるわ」

ポロンとピアノが音たてる悲しい旋律。
泣き叫びたいけれど、その感情を押し殺しているよう。
彼女はそんな曲を弾く。奏でる。唄う。

鼓膜の契れるような轟音、鼻のもげるような排気瓦斯、
嫌になって目をそらしても、汚い膜をはったどす黒い色をした用水路があるだけで。
そんな死に廃れた世界を毎日見ている私にとって
彼女は絶対的な存在であった。

「今日は何の曲が良い。
今、学校で習ってるのは何。
ええと、其処の楽譜を取ってくれないかしら・・・」

そう優しく言う、やる気満々なハニかんだ笑顔が痛いほど眩しかった。

 
   
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