米Appleは4月8日(現地時間)、米国で報道関係者向けの説明会を開催し、今夏にリリース予定のiPhone OS 4の概要を解説した。同時にOS 4に対応したSDK(ソフトウェア開発キット)のβ版を用意し、iPhone Developer Programに登録している開発者向けに配布を開始している。
iPhone OS 4では、1500以上の新しいAPIを提供。In-app SMSやカレンダーへのアクセス、写真や映像データへのアクセス、マップへのオーバーレイ表示、ファイルの内容が容易に表示できるQuick Lookなど、サードパーティーベンダーでもiPhone OSに用意されているより多くの機能が簡単に利用可能になる。
またエンドユーザー向けにも、100以上の新機能を用意した。ホーム画面に壁紙が設定できるようになるほか、Bluetoothキーボードのサポートが加わり、誕生日のカレンダーが用意されたり、最大5倍までのデジタルズーム機能や、動画撮影時にタップした場所にピントを合わせる機能が準備されたりと、さまざまな改善が施されている。
こうした数々のOS 4の新機能は、大きく7つのカテゴリーに分けられる。
1. マルチタスク対応
2. フォルダ機能
3. メールの強化
4. iPhone向けiBooks
5. エンタープライズ対応
6. ゲーム関連機能の強化
7. 広告機能「iAd」
以下で順に説明していこう。なおOS 4はiPhone 3G、iPhone 3GS、第2世代iPod touchおよび第3世代iPod touchで動作するが、マルチタスクを含むすべての機能が利用できるのはiPhone 3GSと第3世代iPod touch(2009年後半に発売された32Gバイト版と64Gバイト版)に限られる。
●“Apple流”のスマートなマルチタスク
OS 4の最大の目玉はマルチタスクに対応したこと。これまでiPhoneやiPod touchでは、iPod機能での音楽再生など一部を除いて、複数のタスクを同時に実行する機能は提供されていなかった。しかしOS 4と対応機器の組み合わせでは、Skypeでオンラインを保ち、待受状態のままSafariを開いてWebブラウジングをしたり、動画のアップロードなどの時間がかかる処理をバックグラウンドで行いながらゲームをしたりと、複数の機能を同時に利用できるようになる。
起動中のタスクの切り替えは、ホームボタンの2度押しで呼び出せる専用画面で行う。この専用画面では、起動中のアプリが画面最下段に横一列に4つ表示されるので、任意のアプリをタップするだけで切り替えられる。アプリの一覧は左右にスクロールでき、4つ以上の機能が起動していても容易に切り替えが可能だ。
なおタスクの終了方法に関するデモはなかったが、発表会後の質疑応答でスティーブ・ジョブズ氏が「スマートな方法を用意している」と語っている。
マルチタスクで利用できる主な機能は以下の7つ。
・バックグラウンドオーディオ
・Voice over IP
・バックグラウンドロケーション
・プッシュ通知
・ローカル通知
・タスクの完了待ち
・高速アプリ切り替え
バックグラウンドオーディオは、その名の通り別の機能を利用中に音声を再生しつつける機能。例えばインターネットラジオのクライアントで音楽を再生しながら、iTunesを開いて楽曲を購入したりできる。iPod機能以外のアプリでも音声のバックグラウンド再生が可能になるのが便利だ。
Voice over IPは、SkypeなどのVoIP機能を備えたアプリを常駐させられるというもの。Skypeなら常時起動しておいて、ほかのアプリを利用しながら着信を受けられ、ポップアップ通知から通話に移行することが可能だ。
バックグラウンドロケーションは、起動中のアプリで位置情報を取得できるもので、例えばナビアプリを起動しておけば、音楽を聴きながら音声ガイド機能を継続可能。位置情報は、正確ながらも消費電力の大きなGPS情報と、簡易的に大まかな位置が取得できる基地局の情報を用途に合わせて利用できる。位置情報の取得はアプリ単位で許可・拒否でき、位置情報を取得しているアプリは、ステータスバーに方位磁針型のアイコンを表示するようになっている。
プッシュ通知はこれまで通り提供されるが、バックグラウンドで複数の機能を動かせるようになることで、Appleのサーバを利用しない通知も可能になる。これがローカル通知だ。テレビ番組の視聴予約をしておけば、10分前に画面上に通知を表示するなど、より手軽に通知機能が使える。
もちろん複数の処理が実行できるため、動画のアップロードなど、処理に時間がかかるタスクも、バックグラウンドで実行させることでユーザーのストレスは減る。特定のアプリに画面を占有されることがなくなるので、時間を効率よく使えるようになる。
高速アプリ切り替え(Fast App Switch)も用意した。バックグラウンド処理に移る際にアプリの状態を保存しておき、再度呼び出したタイミングでもとの状態に復帰する機能で、バックグラウンドに移したアプリのうち、動作し続ける必要がない機能は停止させる。バッテリーやプロセッサパワーを節約しつつ、素早いタスク切り替えを実現する。
●「フォルダ」の提供で、インストールできるアプリが最大2160個に
2つめの大きなトピックは、ホーム画面にフォルダが作れるようになったことだ。OS 3.0までは、ホーム画面にはアプリしか配置できなかったが、OS 4ではフォルダを作り、複数のアプリをまとめて格納できるようになる。たまにしか使わないアプリをフォルダに入れて整理することで、11ページのホーム画面がアプリのアイコンで埋め尽くされてしまうことがなくなる。
1つのフォルダには12個のアプリが収納できるため、ホーム画面の全スペースをフォルダにすれば、最大2160本のアプリがiPhone上で管理できることになる。フォルダは任意のアプリを別のアプリのアイコンに重ねるだけで作成でき、フォルダに収納したアプリのカテゴリーなどから自動的にフォルダ名を付けることもできる。フォルダは画面最下部に常時表示されるドックにも配置しておける。
またOS 4では、iPadのようにホーム画面に壁紙を設定することが可能になっている。壁紙は、待受画面とホーム画面で別のグラフィックを設定できる。
●メールの使い勝手を向上
今まで別々にしか見ることができなかった複数アカウントのメールを、1つの統合された受信ボックスで閲覧できるようになったのもOS 4での進化ポイントの1つ。アカウントを切り替えることなく新着メールを確認できる。
またExchangeのアカウントは複数設定できるようになり、利便性が向上した。またアカウントの切り替えも容易になり、受信ボックス間の移動が素早く行えるように改善されている。
メールのスレッド表示にも対応したため、特定の人や題名のやりとりを確認しやすくなったほか、メールの添付ファイルをアプリで開く機能も提供する。これでMicrosoft Officeのファイルや、PDFファイル以外のファイルがメールで送られてきても、慌てることなく対応アプリで確認できるようになる。
●iPhone上でもiPadと同じ本を閲覧できる「iBooks」
OS 4向けには、iPadで提供した電子書籍リーダーiBooksも用意する。iPad向けの書籍はすべてiPhoneのiBooksで表示できるとのこと。
書籍は1度購入すればiPadでもiPhoneでも閲覧でき、ブックマークや既読ページのデータは同期されるという。「くまのプーさん」が無料プリインストールされており、操作感が容易に体験できるのもiPadと共通だ。
米国内ではiBookstoreも利用可能。海外でこの対応がどうなるかは明らかにされていないが、サービスが開始され次第、利用できるようになると思われる。
●企業ユースに配慮した高度なセキュリティ
業務にiPhoneを活用する法人ユーザーが増えていることを受け、OS 4ではエンタープライズ対応機能の強化も図っている。メールや添付ファイルを暗号化することが可能になるほか、アプリ向けにもデータを暗号化するAPIを提供。データを強固に保護できる。
また業務用に開発したアプリケーションを容易にダウンロードできるよう、企業向けにはiTunesのApp Storeではなく、企業のサーバからアプリをダウンロードできる機能を提供予定だ。iPhoneの一括管理機能やExchangeの複数アカウントサポートなども用意する。
Juniper NetworksとCisco Systemsは、SSL VPN機能も提供予定で、iPhoneからのセキュアな接続も可能になる。
●ゲームでのソーシャル機能をサポートする「Game Center」
今や5万タイトルを超えるゲームを擁する一大プラットフォームに成長したiPhone OS。単純なゲームだけでなく、ソーシャル機能に対する要望が高まっていることを受け、OS 4では新たにGame Centerという機能を提供する。
ここでは友達をゲームに誘ったり、対戦相手を募集したり、オンラインのスコアランキングで他のユーザーと競ったりすることができる。この機能はゲームアプリから容易に利用できるようになる予定で、自前のソーシャルネットワークを用意しなくても、ソーシャルゲームの開発が可能になる。
●Apple独自の広告プラットフォーム「iAd」
かねてからうわさされていたApple独自のモバイル広告プラットフォーム「iAd」もOS 4に実装される。2010年1月にAppleがモバイル広告企業のQuattro Wirelessを買収したことから、同社がモバイル広告事業に関心を持っていることは知られていたが、早くもOSに直接広告プラットフォームを用意し、アプリ内でインタラクティブな広告や動画コンテンツの展開を可能にする。
Apple自身が広告枠を販売し、広告をホストするのが既存のiPhoneアプリ向けアドネットワークなどと大きく異なる点で、開発者には収益の60%を分配する。検索の結果に連動させて広告を表示するGoogleのように、Appleはアプリ内で関連性の高い広告を表示し、広告を見終わったらスムーズにアプリに戻れるような仕組みを実装する考えだ。しかもその広告はWebサイト上のバナーのようにインタラクティブで、なおかつテレビCMのように感情に訴えるようなものになるという。
iAdはHTML5を用いて、広告の中で動画を流したり、簡単なゲームを提供したりもできる予定で、アプリのユーザーが煩わしいと感じない、むしろ楽しいと感じるような広告を提供する。
なお広告は、どんな広告でも流せるわけではなく、Appleの事前審査が必要になるようだ。
以上ざっとOS 4の特長を列挙してきたが、今回のアップデートはOS 3.0でのアップデート以上に大きなバージョンアップとなりそうだ。特にマルチタスクはAndroidがiPhoneに対する優位性として常に挙げていた部分であり、OS 4でキャッチアップし、なおかつ使いやすいタスク管理機能を提供することで、大幅な使い勝手の向上が見込める。そのほかの機能もユーザーが現状感じている不満を解消するものが多く、夏のリリースが待ち遠しい。
なおiPhone向けのOS 4の配布は今夏の予定だが、iPadでの対応は秋になるもよう。
2009年は、3月17日にOS 3.0が発表され、コピー&ペーストやプッシュ通知、Spotlightなどの新機能が導入された。そして新OSへのアップデートは6月17日から配信が始まった。OS 3.0を搭載したiPhone 3GSは、6月8日のWWDC 2009で発表され、6月26日に発売された。今年はiPadの発売があったせいか、OS 4の発表が昨年より1カ月遅くなったが、OSのリリースが今夏とされていることから、今年のWWDCではまた新型iPhoneの発表が聞けそうだ。【園部修】
【4月9日22時37分配信
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