「大洪水よ、わが亡きあとに来たれ」
2009.11.30 [Mon] 18:25
なかなか更新できず、大変お待たせしました‥。
しかも、実は第1回目の最後のお話の紹介がまだでした
というわけで、第1回目「大学時代にマルクスが必読な理由」の続きで、最後の部分です。
マルクスの自然観と社会観を話した不破さんは、マルクスの目でみた現代資本主義について話を続けました‥
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不破さんは、「私は資本主義が生み出し、いま経験している害悪は3つあると思うんです」と切り出しました。
「一つは格差と貧困です」
「これは資本主義の最初から付き物なんです。私は資本主義は利潤追求が目的だと言いました(利潤第一主義)。まさに利潤というのは労働者をできるだけ安く雇用して、できるだけ多くの生産をさせます。その差額から利潤は生まれるわけです」
資本家が労働者を雇うことでもうけがうみ出される仕組みについて、サラリと解説した不破さんは、「大洪水よ、わが亡きあとに来たれ」(※)ーーマルクスが『資本論』で述べたフランス革命のころの貴族の言葉を紹介しました。
「これが資本家の合い言葉だったんです。マルクスはどういうことを言いたかったのか」
「イギリスで資本主義が発展するなかで、労働者を働かせるほど儲かるということがわかると、資本家は、労働者が体を壊して、いなくなってしまうこともわかっているのに、労働時間を限りなく延長するんですね」
「マルクスは、これは資本家の個人のいい悪いじゃない、資本家の競争がそうさせている、それを止める力があるのは社会が強制する時だけだ、そういうことを言っているんですね」
「でも、マルクスは資本が搾取するのは当たり前だから、とことん搾取をさせて、みんな怒って革命を起こそうーーそんな単純な議論をしなかったんですよ」
「そういう資本の搾取に対してたたかって社会の強制で制限しよう、そういうものを勝ち取ってこそ労働者階級は強くなる、『社会の強制』資本論のある部分では『社会的バリケード』という言葉を言っているんですね」
「それをなぜ言ったか」
「実は、マルクスの目の前でイギリスの労働者階級が、長い間闘って10時間労働制を勝ち取ったんです。資本家が無制限に時間延長するということがなくなりました。勝ち取った労働者階級が、いまの社会での生活も守れるし、強い階級になれる、マルクスはそう思ったんですね」
「だから、現在の私たちも『貧困と格差』のない社会をめざしますが、それを待って黙って見ているんじゃダメなんです。『社会的バリケード』を闘って勝ちとらないといけないーーこれがマルクスの見方で、これが世界では広範に広がっています」
「それから二番目の害悪、これは恐慌です」
「リカードが恐慌は起こらないと言ったのは経験しなかったからじゃなく、市場経済にはそういうものを調節する力があると思っていたからなんですね。実際、長い目で見ると、需給を調節する作用があります」
「ところがマルクスはそれをもっと分析したんですよ」
「ごく簡単にいいますとね、資本主義は労働力の売り手としての労働者は出来るだけ生活我慢させる、安い賃金で働かせようとする。ところが、自分の商品の買い手としてくる労働者にたいしては出来るだけ豊かであってほしいと思う。それで豊かであることを計算してものをつくる」
「つまり、生産で発展する時と自分が生産する時に労働者に対する態度と市場でものを売る時の態度で全然矛盾しているっていうんです。この矛盾に恐慌の根源がある。それから市場の調節作用についても、これは穴があるんだと。資本主義経済にはその矛盾に応じて過剰生産を生み出している仕組みをね市場自身がもっているんだということを詳しく分析しました」
「ところが、資本主義側の経済学は資本主義の深刻な矛盾を認めるわけにいきませんから、いろんなことでゆれるんですね」
「今まで、私たちが経験した資本主義派の経済学の大きな流れが二つありました」
「一つはケインズ派の経済学」
「それまでは資本主義の国家は経済に手を出さないのが原理原則でした。ところが、1929年の大恐慌が世界を揺るがした時に、アメリカのルーズベルト政権が大規模な国家による経済への介入をやりだしたんです。それをみていたケインズという経済学者が、国家の財政支出で消費を増やせば恐慌が起きない、そういう経済学を発表したんですね」
「これが第二次大戦後からの指導理論になりました」
「日本ではケインズ流だと言って汚職にまみれた公共事業経済をつくりましたが、ケインズ経済学は世界的に広がって国の支出で恐慌を回避する、恐慌の程度を回復するにはかなり役立ちました」
「しかし、これはお金がかかりすぎて国家財政が破綻します。1970年代に、アメリカが音を上げたことが転機でケインズ経済学は、資本主義の指導理論じゃなくなりました」
「変わって出てきたのが、新自由主義という経済学」
「これは新版のリカード理論で、ケインズは市場経済を信用しないで国家が経済に手を出したから失敗した、市場経済に任せておけば心配ないという理論を唱えて、金融経済中心のやり方を、世界中に押しつけたんです。それが失敗しました」
「いま、新自由主義に代わる経済学が、あまりありそうもないんですね。だから、資本主義は経済学のうえでもピンチになっている。これも、資本主義体制の非常に深刻な問題であります」
「それから3番目の問題は、環境問題です」
「これは資本主義のいま言った二つの害悪よりも、もっと深刻かもしれないですね」
「地球温暖化といいますけれども、これ何が問題化といいますと、地球大気が危ない訳ですよ」
不破さんは、まず二酸化炭素がいまの数百倍もあった原始地球が、海の中にうまれた生命がはき出した酸素によって、31億年かけて、生命が地上で暮らせるような大気に改造されてきたことを紹介。
「だから私は、この大気は生命が作り上げた生命維持装置だと言っています」
「その大気が、人間が400万年生きていても、16、17世紀までは普通だったんですが、18世紀に起きた産業革命で生産が急上昇してから、二酸化炭素の量がだんだん増えだしました」
人間が地球上で使うエネルギー(石油に換算)は、18世紀の産業革命の頃とくらべて、19世紀にマルクスが『資本論』を書いた頃には30倍に、20世紀の世界大戦が終わった頃には約400倍に、いまは約4000倍に急上昇していると、不破さんは指摘しました。
「とくに最近こうなっているというのは、大量生産、大量消費、大量廃棄というアメリカ式生産様式というのが大きいんですね。日本は、ヨーロッパに比べてアメリカ的な生産、生活様式が一番影響されていますよね。だから、消費が美徳になっちゃってますね」
「エネルギー消費のカーブが示しているように、主犯は資本主義なんです」
「それまで社会体制はいろいろあったけれども、こんなに急速に不必要に生産を増やしてきた体制はありませんでした。マルクスは『生産のための生産』が資本主義の合い言葉だと『資本論』で書いていますが、それが現実に、ここまできてしまいました」
「だから、これを資本主義が解決する力がなかったら、資本主義に地球の管理能力がない。まかせておけないという結論が地球規模で出されることになるんですね」
「ですから、これにどれだけ取組めるかということが、いわば資本主義に存続能力があるかどうかが問われるわけです」
「だからそういう点で見て、格差と貧困、恐慌、温暖化ーーこの3大害悪がここまできているということは、16世紀に生まれた資本主義が、今のままではやっていけない時代を迎えているということを示していますし、それを一番、象徴しているのが温暖化だと思うんですね」
「こうした害悪は、資本主義がもっている利潤第一主義の結果なんです」
「だから、私たちは、社会主義が問題解決の道だというのは、それが利潤第一主義から解放されるからです。つまり、生産力が発展し、経済がこれだけ高度に発展した土台のうえに、経済活動が人間の生活のために働くという本来の姿にに戻る道だということ、そういう点を考えてみてほしいと思います」
「この点については、第二回目にお話します」
「以上、自然観につづいて、マルクスの社会観のあらましをみましたが、これは、本当にごくあらましです。こういうマルクスの見方が、120何年経っても現代に生きる力をもっていることを、あらましでも感じて頂ければ、今回のセミナーの目的が達成したと思います」
そう話して、不破さんは第一回目の講演をしめくくりました(第二回目につづく)。
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※「資本論」第一部(1巻)、第三篇第八章「労働日」、第五節の「標準労働日獲得のための闘争。14世紀中葉から17世紀末までの労働日延長のための強制法」(社会科学研究所監修、資本論翻訳委員会訳、新日本新書版、第2分冊、P.464)
「どんな株式思惑においても、いつかは雷が落ちるに違いないということは誰でも知っているが、自分自身が黄金の雨を受け集め安全な場所に運んだ後で、隣人の頭に雷が命中することをだれもが望むのである。“大洪水よ、わが亡きあとに来たれ!”(注)これがすべての資本家およびすべての資本家国民のスローガンである。それゆえ、資本は、社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命にたいし、なんらの顧慮も払わない。‥しかし、全体として見れば、このこともまた、個々の資本家の善意または悪意に依存するものではない。自由競争は、資本主義的生産の内在的な諸法則を、個々の資本家にたいして外的な強制法則として通させるのである」
注)「宮廷の奢侈が財政破滅を招くと忠告されたときに、フランスのルイ15世の愛人ポンパドゥール夫人がノアの洪水伝説にちなんで言った言葉の言い換え。デュ・オセ夫人『回想録』、序文、19ページ。『あとは野となれ山となれ』の意」
しかも、実は第1回目の最後のお話の紹介がまだでした

というわけで、第1回目「大学時代にマルクスが必読な理由」の続きで、最後の部分です。
マルクスの自然観と社会観を話した不破さんは、マルクスの目でみた現代資本主義について話を続けました‥
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不破さんは、「私は資本主義が生み出し、いま経験している害悪は3つあると思うんです」と切り出しました。「一つは格差と貧困です」
「これは資本主義の最初から付き物なんです。私は資本主義は利潤追求が目的だと言いました(利潤第一主義)。まさに利潤というのは労働者をできるだけ安く雇用して、できるだけ多くの生産をさせます。その差額から利潤は生まれるわけです」
資本家が労働者を雇うことでもうけがうみ出される仕組みについて、サラリと解説した不破さんは、「大洪水よ、わが亡きあとに来たれ」(※)ーーマルクスが『資本論』で述べたフランス革命のころの貴族の言葉を紹介しました。
「これが資本家の合い言葉だったんです。マルクスはどういうことを言いたかったのか」
「イギリスで資本主義が発展するなかで、労働者を働かせるほど儲かるということがわかると、資本家は、労働者が体を壊して、いなくなってしまうこともわかっているのに、労働時間を限りなく延長するんですね」
「マルクスは、これは資本家の個人のいい悪いじゃない、資本家の競争がそうさせている、それを止める力があるのは社会が強制する時だけだ、そういうことを言っているんですね」
「でも、マルクスは資本が搾取するのは当たり前だから、とことん搾取をさせて、みんな怒って革命を起こそうーーそんな単純な議論をしなかったんですよ」
「そういう資本の搾取に対してたたかって社会の強制で制限しよう、そういうものを勝ち取ってこそ労働者階級は強くなる、『社会の強制』資本論のある部分では『社会的バリケード』という言葉を言っているんですね」
「それをなぜ言ったか」
「実は、マルクスの目の前でイギリスの労働者階級が、長い間闘って10時間労働制を勝ち取ったんです。資本家が無制限に時間延長するということがなくなりました。勝ち取った労働者階級が、いまの社会での生活も守れるし、強い階級になれる、マルクスはそう思ったんですね」
「だから、現在の私たちも『貧困と格差』のない社会をめざしますが、それを待って黙って見ているんじゃダメなんです。『社会的バリケード』を闘って勝ちとらないといけないーーこれがマルクスの見方で、これが世界では広範に広がっています」
「それから二番目の害悪、これは恐慌です」
「リカードが恐慌は起こらないと言ったのは経験しなかったからじゃなく、市場経済にはそういうものを調節する力があると思っていたからなんですね。実際、長い目で見ると、需給を調節する作用があります」
「ところがマルクスはそれをもっと分析したんですよ」
「ごく簡単にいいますとね、資本主義は労働力の売り手としての労働者は出来るだけ生活我慢させる、安い賃金で働かせようとする。ところが、自分の商品の買い手としてくる労働者にたいしては出来るだけ豊かであってほしいと思う。それで豊かであることを計算してものをつくる」
「つまり、生産で発展する時と自分が生産する時に労働者に対する態度と市場でものを売る時の態度で全然矛盾しているっていうんです。この矛盾に恐慌の根源がある。それから市場の調節作用についても、これは穴があるんだと。資本主義経済にはその矛盾に応じて過剰生産を生み出している仕組みをね市場自身がもっているんだということを詳しく分析しました」
「ところが、資本主義側の経済学は資本主義の深刻な矛盾を認めるわけにいきませんから、いろんなことでゆれるんですね」
「今まで、私たちが経験した資本主義派の経済学の大きな流れが二つありました」
「一つはケインズ派の経済学」
「それまでは資本主義の国家は経済に手を出さないのが原理原則でした。ところが、1929年の大恐慌が世界を揺るがした時に、アメリカのルーズベルト政権が大規模な国家による経済への介入をやりだしたんです。それをみていたケインズという経済学者が、国家の財政支出で消費を増やせば恐慌が起きない、そういう経済学を発表したんですね」
「これが第二次大戦後からの指導理論になりました」
「日本ではケインズ流だと言って汚職にまみれた公共事業経済をつくりましたが、ケインズ経済学は世界的に広がって国の支出で恐慌を回避する、恐慌の程度を回復するにはかなり役立ちました」
「しかし、これはお金がかかりすぎて国家財政が破綻します。1970年代に、アメリカが音を上げたことが転機でケインズ経済学は、資本主義の指導理論じゃなくなりました」
「変わって出てきたのが、新自由主義という経済学」
「これは新版のリカード理論で、ケインズは市場経済を信用しないで国家が経済に手を出したから失敗した、市場経済に任せておけば心配ないという理論を唱えて、金融経済中心のやり方を、世界中に押しつけたんです。それが失敗しました」
「いま、新自由主義に代わる経済学が、あまりありそうもないんですね。だから、資本主義は経済学のうえでもピンチになっている。これも、資本主義体制の非常に深刻な問題であります」
「それから3番目の問題は、環境問題です」
「これは資本主義のいま言った二つの害悪よりも、もっと深刻かもしれないですね」
「地球温暖化といいますけれども、これ何が問題化といいますと、地球大気が危ない訳ですよ」
不破さんは、まず二酸化炭素がいまの数百倍もあった原始地球が、海の中にうまれた生命がはき出した酸素によって、31億年かけて、生命が地上で暮らせるような大気に改造されてきたことを紹介。
「だから私は、この大気は生命が作り上げた生命維持装置だと言っています」
「その大気が、人間が400万年生きていても、16、17世紀までは普通だったんですが、18世紀に起きた産業革命で生産が急上昇してから、二酸化炭素の量がだんだん増えだしました」
人間が地球上で使うエネルギー(石油に換算)は、18世紀の産業革命の頃とくらべて、19世紀にマルクスが『資本論』を書いた頃には30倍に、20世紀の世界大戦が終わった頃には約400倍に、いまは約4000倍に急上昇していると、不破さんは指摘しました。
「とくに最近こうなっているというのは、大量生産、大量消費、大量廃棄というアメリカ式生産様式というのが大きいんですね。日本は、ヨーロッパに比べてアメリカ的な生産、生活様式が一番影響されていますよね。だから、消費が美徳になっちゃってますね」
「エネルギー消費のカーブが示しているように、主犯は資本主義なんです」
「それまで社会体制はいろいろあったけれども、こんなに急速に不必要に生産を増やしてきた体制はありませんでした。マルクスは『生産のための生産』が資本主義の合い言葉だと『資本論』で書いていますが、それが現実に、ここまできてしまいました」
「だから、これを資本主義が解決する力がなかったら、資本主義に地球の管理能力がない。まかせておけないという結論が地球規模で出されることになるんですね」
「ですから、これにどれだけ取組めるかということが、いわば資本主義に存続能力があるかどうかが問われるわけです」
「だからそういう点で見て、格差と貧困、恐慌、温暖化ーーこの3大害悪がここまできているということは、16世紀に生まれた資本主義が、今のままではやっていけない時代を迎えているということを示していますし、それを一番、象徴しているのが温暖化だと思うんですね」
「こうした害悪は、資本主義がもっている利潤第一主義の結果なんです」
「だから、私たちは、社会主義が問題解決の道だというのは、それが利潤第一主義から解放されるからです。つまり、生産力が発展し、経済がこれだけ高度に発展した土台のうえに、経済活動が人間の生活のために働くという本来の姿にに戻る道だということ、そういう点を考えてみてほしいと思います」
「この点については、第二回目にお話します」
「以上、自然観につづいて、マルクスの社会観のあらましをみましたが、これは、本当にごくあらましです。こういうマルクスの見方が、120何年経っても現代に生きる力をもっていることを、あらましでも感じて頂ければ、今回のセミナーの目的が達成したと思います」
そう話して、不破さんは第一回目の講演をしめくくりました(第二回目につづく)。
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※「資本論」第一部(1巻)、第三篇第八章「労働日」、第五節の「標準労働日獲得のための闘争。14世紀中葉から17世紀末までの労働日延長のための強制法」(社会科学研究所監修、資本論翻訳委員会訳、新日本新書版、第2分冊、P.464)
「どんな株式思惑においても、いつかは雷が落ちるに違いないということは誰でも知っているが、自分自身が黄金の雨を受け集め安全な場所に運んだ後で、隣人の頭に雷が命中することをだれもが望むのである。“大洪水よ、わが亡きあとに来たれ!”(注)これがすべての資本家およびすべての資本家国民のスローガンである。それゆえ、資本は、社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命にたいし、なんらの顧慮も払わない。‥しかし、全体として見れば、このこともまた、個々の資本家の善意または悪意に依存するものではない。自由競争は、資本主義的生産の内在的な諸法則を、個々の資本家にたいして外的な強制法則として通させるのである」
注)「宮廷の奢侈が財政破滅を招くと忠告されたときに、フランスのルイ15世の愛人ポンパドゥール夫人がノアの洪水伝説にちなんで言った言葉の言い換え。デュ・オセ夫人『回想録』、序文、19ページ。『あとは野となれ山となれ』の意」
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