日本のメディアで世界はわからない
2009.11.14 [Sat] 00:17

「マルクスは生きているセミナー」第2回目の続きです。第1回、第2回の話を終えて、最後に不破さんは‥。

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「最後に、総括的なことを言いますと、いままで自然から社会まで見てきました」

「自然を見たときに『モノごとは歴史の発展の運動のなかで見ること、関連のなかで見ることが大事だ』と言いました」

「いまの社会を見るときにも、いまの世界が、まず日本が世界のなかでどんな位置にあるのかを見ること、それから世界がいまどんな方向にどういう動き方をしているのかを見ることが大事です」


という不破さん。世界の変化をつかむうえで大事なことについて、二つ話しました。一つ目は、日本のメディアの問題です。

「アジアだろうとヨーロッパであろうと新聞の大部分が、外国の報道、世界記事です。ところが日本では世界のことが報道されません」

不破さんは「アメリカの対キューバ制裁解除決議が国連総会で17年連続採択されたこと」を例に紹介しました。

「実は2日前(現地10/28)に国連で大事な決議が上がったんですね。アメリカのキューバ封鎖は間違いだからやめさせようじゃないかという決議です。これは出されて以来17回ずーっと可決されてきているんですね。それでもアメリカは、まだやめないで頑張っているんです」

「でも、決議に賛成する国がだんだん増えているんです」

「最初にこの決議が可決された時は、賛成59カ国、反対3カ国、71カ国が棄権、46カ国が欠席しました。つまり、117カ国がアメリカが怖くてモノがいえないという状況でした」

「ところが、今年は185カ国が賛成、反対3カ国で棄権が2カ国。反対したのは、アメリカ、イスラエル、パラオ。アジア・アフリカ・ラテンアメリカの国々も、アメリカの仲間であるカナダも、ヨーロッパの国々も賛成しました。世界の変化がここにもよく現れています」

「でも、これを日本の6大新聞は書きませんでした。赤旗にはちゃんと書いてありますが」

「こんなことでは、日本のメディアで世界の変化はわかりません」

「それから、世界の変化を見るうえでもう一つ大事なことは、ある国を見るときにも、その国の歴史のなかで見ることです」

「どの国も歴史もって今があります。だから、その国の歴史がなぜここまで来ているのか、我々から見て、その国の問題点だと思うことが、その国民にとって問題点なのかどうか、そういうことまでつかまないと、他国にモノはいえません」

「そういう点をつかんで、私たちはが生きている社会を見ていきたいと思います」

2回にわたる話をこう締めくくった不破さんは続いて、第1回目でよせられた質問への回答をしました‥(つづく)
 

非常に特殊な資本主義国・日本
2009.11.12 [Thu] 23:09

社会主義をめざす国、アジアアフリカラテンアメリカの国々‥世界の動きをみたあと、いよいよ不破さんのお話は「日本」のことにうつりました。「マルクスは生きているセミナー」第2回目の続きを紹介します。

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「みなさんが生きている日本という国は、非常に特殊な資本主義です」

「社会的ルールづくりがすすんだヨーロッパと比べると日本は桁違いです。例えば、学費の問題です。教育指標の国際比較をみてみると‥」

不破さんは、文科省が発表した最新の統計を紹介しました。

「日本の学費の平均は、国立81万7800円、公立93万6435円、私立129万8726円。フランスは国立24000円。フランスには私立大学がないそうです。ドイツは州立で10万6400円。大部分が州立で、教会が建てた学校が少しあり、学生数が2%だそうです」

「ヨーロッパでは、社会的ルールづくりが大学にまで及んでいるんです」

「高等教育の財政支出。GDPのうち、どれくらいのお金を高等教育に使ってるかについて、OECD加盟国30カ国中、統計が整備されている28カ国の統計でみると、日本が28位で0.5%。OECDの平均は1.0%なので、平均の半分以下です」

「同じ資本主義でもこれくらい違う。ルールある資本主義国とルールのない資本主義国では学生の生活だけをみても、こんなに違うんです。労働者の生活の農民の生活も違う」

なぜ、こうなっているのか?

「これは日本の歴史に関係しているんですね」

と、まず一つ目の問題として「資本主義のルールづくり」の歴史を振り返った不破さん。

「一つ目の節目となる、工場法がイギリスでできたときで、このとき日本は江戸時代」

「もう一つの節目となったのがロシア革命で、社会保障の旗が掲げられました。貧乏な国だったロシアで、労働者の権利の旗が揚げられたことが世界に影響して、ドイツのワイマール憲法には初めて生活権が入りました。このとき日本は、幸徳秋水の大獄事件があって、運動がものすごい勢いで締め付けられていた時代です」

「それから、その次のルールづくりの節目になったのが1930年代のフランスの人民戦線です」

「労働組合がゼネラルストライキをやって、有給休暇など抜本的な労働条件の改善を勝ち取りました。こうして世界が『ルールある資本主義』に向かいはじめた頃、日本は、満州事変に始まった戦争に突入した最中。絶対主義的天皇制のもとで労働組合も共産党もつぶされて、運動が一番鎮圧された時代でした」

「日本は、1945年にはじめて世界の流れに出会い、8時間労働制などが導入されました」

「しかし、同じ8時間労働制でも、ヨーロッパでは8時間以上労働しない、長すぎるから法律で制限するという考え方ですが、日本では、8時間以上働かせても残業代を払えばいいという考えでの導入なんです」

「日本では、こうした歴史のもとに、戦後も『大企業・財界中心の政府』が長年政権を握って、労働組合も押さえ込んで『ルールのない資本主義』をつくってきたので、あらゆる面で遅れるているわけです」

「ですから『ルールある経済社会』づくりという、大変やりがいのある仕事がこの国には残されています。そういう問題に直面している独特な情勢をもった国だということを見る必要があります」

「もう一つは、アメリカとの関係です」

「そもそも、20世紀にはいるまでは、すすんだ資本主義のあいだに民族的従属、国家的従属はおきませんでした。それが第一次世界大戦から変わってきたんです」

「ベルサイユ条約で、勝った連合国が敗戦国ドイツを支配下におき、これがかなり長い間続きました。ヒトラーはこれを利用して民族独立の旗頭のような顔をしてのし上がったんですね。第二次大戦後にも、戦争の性格は違いましたが、日本、ドイツ、イタリアといった敗戦国が勝った連合国に占領されました」

「しかし、そのときに占領された従属関係を、未だに引きずっているのは日本だけです」

国家・民族の支配と従属の歴史を振り返るなかで、日本の異常さを浮きぼりにした不破さん。日本がアメリカに従属している事例を、軍事、経済の二つの角度から詳しく紹介しました。

「いまでも、アメリカが基地をおいている国はありますが、おいていても独立国らしい置き方をするんですよ」

「1970年代に、イタリアのナポリに行ったときに、ナポリのきれいな海に米軍の第6艦隊の船が並んでいました。イタリアも軍港になっているんだなと思ってみていましたが、当時ナポリに誕生した共産党市長に聞いたら『アメリカの艦隊が、ナポリの海にこのままいていいだろうか、聞いてきた』というんですね。しかも、第6艦隊の母港はアメリカにあって、ナポリには地上施設が一つもない。そして、政府ではなく市長が変わっただけなのに聞きにくるというのは、同じ敗戦国に対する態度でも、日本に対する態度とは大違いです」

「経済の問題でも、日本とアメリカの間に構造改革の協定があり、アメリカの資本が日本に参入しやすいようにと、毎年アメリカから日本に要求が突きつけられるんですよ。そして、日本の各省庁がアメリカの要求をどれだけやったかをアメリカ政府に報告し、アメリカでは、日本との関係ではこれだけ進みましたと、議会に報告する。こういうことが、たしか、1990年代から続いています。こんなことをやっているのは、日本だけです」

日本の異常さについて話した不破さんは、こう締めくくりました。

「『大企業・財界中心の政府』『対米従属』ーーこの二つが、本当に日本の異常さなんです」

「日本が社会を前に進めようと思ったら、この二つの『大悪』を取り払わないと前には進めない。これを取り払うことに日本国民のエネルギーが一番発揮されると思いますし、それが発揮されたら、日本国民は自分たちで国を変えられるという自信を持って、さらに前に進む新しい時代がくるでしょうね。私たちは、さまざまな過程をふみながら、なかなか動かない日本でも動く時代を、これから迎えてくると思います」
 

「新しい社会主義」が合い言葉
2009.11.10 [Tue] 23:46

「マルクスは生きているセミナー」第二回目。社会主義の過去と現在について話した不破さん。世界を見るもう一つの問題として、アジア・アフリカ・ラテンアメリカのことへ話を進めました。

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「いまや人口38億人、世界の6割近くを占めるアジア・アフリカ・ラテンアメリカの国々が台頭してきた世界。かつて世界はキリスト教文明が中心だった欧米に仲間入りするというところから、世界の姿は変わってしまった」

「これらの国々は、いろんな体制の国があるが独立・平和・非同盟・大国の覇権主義反対で大多数の国で共通。独自の価値観をもった文明があることも大事な特徴」

不破さんはアジア・アフリカ・ラテンアメリカの国々の動きについて、主に、イスラムとラテンアメリカのそれぞれの変化について詳しく話しました。

はじめに「イスラムの国のこと」として「日本共産党がイスラムの主だった国をだいたい訪問」した体験を通じて実感をしている世界の変化について話しました。

「私たちがイスラムを訪問して歓迎されることが3つあります。一つは文明の共存ーー考え方は違うが、この世界に共存しようという綱領もっていること。二つは日本共産党がソ連のアフガン侵略に反対貫いたこと、3つ目は覇権主義に反対して世界の平和秩序の確立をめざすこと。これがイスラムと私たちの深い関係の基盤になっています」

それを示す体験として、サウジアラビアとの関係について紹介した不破さん。

「サウジアラビアは、スターリンのときにソ連と断交して以来、1991年前後までソ連とも中国とも国交もたない、反共に徹していた国でした。私たちが、湾岸戦争ときに反対声明をもって大使館を訪問したときは、大使が会ってはくれたが日本共産党の代表に5メートル以上近づかない、というほど(笑)ところが、イラク戦争間近の頃に同じようなメッセージをもっていくと、すぐに近寄ってきて『あなた方の手紙は国王に届けた。アジアの心は一つです』という。イラク戦争の前の年に、中東訪問したときは、日本共産党を徹底研究したうえで受け入れてくれました」

「世界観をこえた共存は、その立場が明確で、異なる文明を受け入れる用意があれば、広がりうる世界なんです」

「もう一つ、ラテンアメリカの変化が最近はさらに大きいですね」

不破さんは、まずラテンアメリカの歴史的特徴について、二つふれました。

一つは、もともと、早い時期に独立共和国になったラテンアメリカ諸国ですが、実際にはアメリカに支配されていても独立共和国という形をとっていたことで、むしろアメリカの支配が長く続いてきたこと。

もう一つは「『ラテンアメリカの闘争はゲリラ武装闘争』『ラテンアメリカ一つ、革命に国境はない』というゲバラ主義が影を潜めたこと。とはいえ、「もともと共和制の国ですから議会で多数をとって政権をつくるということが日程の上ってきますが、ある国では、選挙に勝つと暗殺集団がいて勝った政治家を殺すという国があって、なかなか進みませんでした」

「転機になったのは、ベネズエラのチャベスなんですね」

「1999年大統領選で当選しました。実は前は彼はゲリラ派だったんです。クーデターをやろうとしてつかまったことがあるんですね。釈放されたときに、これはまずい、選挙でやろうということで切り替えた、最初の選挙で勝っちゃったんですよ。1999年2月に政権ができ、これが転機になるんですね」

「ベネズエラ自体はいまでも革命反対の勢力がものすごく強固にあります。一時は逆クーデターがあって、チャベスが孤島に流されたりする。そうすると民衆ががじわじわと立ち上がり、逆クーデターが失敗する。こんなことが何回もあり、それからいままでずっと選挙で政権を維持して改革をやっています」

「当選して11年になりますけれども、国政、大統領、国民投票など国民的投票が21回ありましたが、革命の一歩一歩を、選挙で民意を確かめながら革命をやるということをベネズエラでやっちゃったんですね。その後、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、ボリビア、チリ、ニカラグア、エクアドル、ガテマラ、パラグアイ、エルサルバドルこういうところでも、選挙で左派政権が生まれてラテンアメリカの半分以上が左派政権になりました」

「しかも、どこでも主力は、共産党でない革命派。ちなみに、チャベスという大統領はキリスト教、カトリックなんです。その共産党でない革命派のなかから、最近はアメリカ資本主義にひどいめにあわされた、資本主義はごめんだと言い出した国が生まれているんですね。ベネズエラ、ボリビア、エクアドルなどは社会主義をめざすといっています。こういうことも、新しい動向なんですね」

つまり、どういうことか。

「ある時期までは、植民地から解放されたら、資本主義の道をとおって発展水準を高めようとした国がありました。アメリカもそういって、資本主義になったら遅れた状態から離脱できるーー「離陸理論」なんて唱えた人もいました。でもそのなかで、離陸できた人はほんの少数なんです。みんな失敗しているんです。新自由主義の言いなりになったらヒドい目になった。だから、資本主義の道には行かない社会主義にいこう、こういう新しい流れが生まれているんですね

「チャベスは、ソ連は社会主義じゃなかった、新しい社会主義をめざそうじゃないかと言っています。『新しい社会主義』が、こういう国々の合い言葉になっています。そのなかで、ブラジルは人口が多く、G20にはいっている国ですが、ブラジルの政権党たる労働党の大会に行きますと社会主義について盛んに議論しています」

「いまの時代は、マルクスとは縁がない、共産党とも違う勢力が、真面目にアメリカの大国主義・覇権主義とたたかい、国内改革をやろうと思うと社会主義ということがすぐに目標にうかんでくる、そういう状況にあることをラテンアメリカの例は非常によく示していると思うんですね」

「そういう世界に私たちは生きているわけですが、そういうなかで日本はどうなっているのか」

そういって、不破さんの話は資本主義国・日本のことへ移りました‥(つづく)
 

中国は「社会主義の発展途上国」
2009.11.09 [Mon] 23:51

「マルクスは生きているセミナー」第2回目のつづきです。

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「本来素晴らしい力をもつはずの社会主義が、なぜ現実はそうなっていないのか」と問題提起した不破さん。まず、社会主義に向かう道筋についての問題について話を進めました。

まず、マルクスはどう考えたのか。

「マルクスの時代にマルクスが考えたのは、資本主義で一番進んだ国から社会主義をつくる仕事が始まるというのが大方の予想でした。なかでもイギリスという資本主義の本家本元が動き出して初めて社会主義にいけると」

「しかし、実際に、最初に社会主義の国づくりが始まったのは資本主義の発達の程度が大変低かったロシアでした。第二次大戦後にうまれた社会主義をめざす国で現在もちゃんとやっているのは中国、ベトナム、キューバーーかつてのロシアよりもはるかに遅れた国でした」

生産力が低いところから出発した社会主義がかかえる困難とは何か。

「資本主義の生産力を十分発展させ、矛盾が激化したところで社会を切り替えたら、それ以上に経済成長は要らないんです。社会の進歩に応じて着実に成長すればいいのです」

「ところが、生産力の発達が遅れた状態から『公正な分配に』とか『計画的に』とかいってもモノごとは解決しないんですよ。少なくとも資本主義に対抗して、社会主義らしいを作ろうと思ったら、資本主義に対抗できるくらいの経済力まで自分を成長させないといけないわけですね

「いま社会主義に向かって進んでいる国は、社会主義的に社会と経済を切り替える仕事と、経済の発展水準を発展させる仕事の両方をやらないといけないというのが、実際の姿なんです」

「だから日本共産党の綱領では『社会主義』ではなく『社会主義をめざす国』と書いているんです。中国やベトナム、キューバも社会主義を目標にしている発展途上国、つまり『社会主義の発展途上国』なんです」

ヨーロッパで革命が成功しなかったために、唯一、社会主義国となったロシア(1917年)も、生産力の発達が遅れた状態からの出発でした。

「指導者のレーニンは、どうやって社会主義に向かって進んでいくのかということを苦労して考えて、1920〜21年頃に内政外交で路線をひきましたが、その2、3年後に死んでしまいました」

「その後をうけて指導者になったスターリンが、1930年代に国内政策でも対外政策でも大規模な路線転換をしました。国内では『国有化さえすれば社会主義だ』ということで一番大事な生産者が主人公を投げ捨てました。レーニンがつくりあげた社会主義らしい平和の外交政策も投げ捨てました。1939年にヒトラー・ドイツと東欧の分け取り協定を結び、そこからソ連の大国主義、覇権主義は始まりました」

「歴史をふり返って、ソ連は『1930年代に社会主義の旗を捨てたことの矛盾が、1989〜91年に爆発して、ついに崩壊した』と、私たちは見ています。生産力の発達が遅れたところから出発して社会主義に向かうという難しい道をレーニンの指導のもとに始めましたが、大失敗してしまったのがソ連の経験なんです」

不破さんは、いま社会主義をめざしている国には「ソ連の失敗の教訓がいろんな形で強く生きている」と、外交路線と経済路線の二つの転換について話しました。

一つ目は、外交路線の転換の問題として、中国の例にふれました。

「スターリン以後のソ連は、外国を侵略、併合、併合それができなくても政府や運動を支配するーー外国への支配主義、干渉主義、侵略主義、併合主義が外交の一番の中心でした。これを覇権主義と言います」

「中国も毛沢東の時代に覇権主義をやったことがあり、これに対して日本共産党も闘争し、中国共産党との関係が決裂しました。しかし、中国はその後、きちんと誤りを反省して、是正することを確認し、1998年には関係を回復しました。私は、この過程をつうじて、中国共産党にはいろいろあるが社会主義の精神が生きているなと思いました」

「そして、実際に中国が様々な国と外交を発展させているのは、ソ連とは違う、覇権主義ではないということを確認しているからだと思います」

二つ目に、経済路線の転換について話しました。

「いまから30年ほど前のことですが、ベトナムも中国も『市場経済を通じての社会主義』へという路線へ大転換したんです。これは実はレーニンが最後にたどり着いた路線だったんですね」

ベトナムはレーニンをよく研究して、中国は実践をつうじて歩み始めた『市場経済を通じての社会主義』という路線。

「この道は大変難しい道で、やり始めた人はいるけど、歩き抜いた人のいない道だが、この道でベトナムも中国も大きく成功しています」

「しかし、成功したと言っても現状はごくごく過渡期のまた初期の初期という段階です」

不破さんは、こう指摘して、主に中国の弱点、同時にその弱点をどう見るかについて話しました。

「この前中国と会談をやったときに『経済危機に対して、中国の一番の弱点は国民に対するセーフティネットが足りないことだ』と言いました。まず、全国一律の社会保障制度がありません。また、極貧層をだいぶなくしてはいるが、上下の格差は激しいんです」

「でも、よく見ていてほしいが、中国は国民一人当たりのGDPが世界第3位になるところですが、国民一人当たりGDPはアメリカの20分の1、日本の15分の1。人口が10倍だからです」

「よく中国の状況について、あれが足りないこれが足りないという人がいますが、日本の15分の1の経済力しかかないところで、そんなに『万全のことはまだできない』でいるのです。また、そういう段階で、市場経済の計画を立てるのは大仕事。試行錯誤しながら開拓しているところです」

「日本のマスコミを見ると、ときには『中国経済が爆発寸前』といい、時には『中国は、経済危機に一番強いので頼りにしよう』というーー日本のマスコミの悪い癖ですが、総体をきちんと見ないので、その弱点が何なのか、弱点を乗り越えようとしているのかどうかもわからないんですね」

資本主義は「世界の一部」となり、社会主義が起こりつつある今の時代。これから、世界はどうなるのか。

「いま、私たちは社会主義をめざす国が経済力を勃興させている時代に生きていますが、その起こり方は、うんと遅れた国の発展途上の起こり方です。いまからが資本主義と社会主義の競争の本番が始まる時代なんです」

「社会主義をめざす国も、経済力の面で大きくなると世界の諸問題で態度が問われるようになります。例えば、温暖化でも、資本主義で乗り越えられるのかが問題になれば、じゃあ社会主義は乗り越える力があるのかどうかが、試される時代に入るわけです」

「そういう広い角度から、社会主義をめざす国を見てほしい」

最後に、市場経済をとっていないキューバについて「アメリカの経済封鎖をずーっと受けきて、いまも貧しい国だが、一方で国民は底抜けに明るい」「『資本主義者』の中谷巌氏が、新自由主義路線を反省した著書のなかで『国民が暮らしやすい国を挙げるとしたらキューバとブータン』と書いている」と紹介しました。

「だから、社会主義をめざす国々を判断するときも、その国がどういう筋道でここまで来ているのか、大局観からどんな位置にあるのかを見ながら考えることが大事です」

と締めくくり、話は、アジア・アフリカ・ラテンアメリカの国々のことへと移りました‥(つづく)

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Photo by (c)Tomo.Yun
 

「利潤からの解放」
2009.11.08 [Sun] 23:27

さて、「マルクスは生きているセミナー」第二回目の様子の続きです。「資本主義をどうするのか、社会主義の問題なんです」と言って‥。

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「社会主義の国でどうなっているか、について二つテーマをたてました」と切り出した不破さん。

「一つは、社会がどのように変われば、資本主義の矛盾を解決できるのか」

「それから、もう一つは現在、社会主義の国といわれている国のこと」

と二つのテーマ設定をし、一つ目のテーマについて、話をすすめました。

そして、まず話したのは「マルクスの社会主義の理論が、なぜいまも力をもっているのか」についてです。

「マルクスは資本主義の次にくるのは社会主義だと言いましたが、社会主義の設計図を書いたわけではないんです」

「マルクス以前の社会主義者は、設計図を一生懸命書きました。でも、本来、設計図というのは、いよいよ家を建てるときに、建てる世代の人たちが書くべきもの。マルクスは、設計図を書かずに、資本主義が矛盾でゆきずまったときに、それを乗り越える道筋はだいたいこういうことになるという歴史の流れ、展望を明らかにしたんですね、それが大事だったんです

どう大事だったのか。

「もしマルクスが、19世紀に社会主義の設計図を書いていたら、いまは役に立たないでしょう。そうではなく、資本主義の矛盾を乗り越える道筋と展望を明らかにしたから、いまでも彼の社会主義の理論は力があるんです」

では、マルクスが明らかにした資本主義の次の第一歩とは何か

「前回お話ししたように、格差と貧困、恐慌、環境破壊‥その大もとには利潤第一主義があります。利潤第一主義が、これだけの害悪を生むなら、次の社会の第一歩は、利潤から解放されることなんですね」

「いまの社会では、利潤第一主義は当たり前。なかには、利潤があるから競争もあり、張り合いもある、利潤がなくなったら何の楽しみがあるのか、という人もいます」

「しかし、利潤を目的にして経済が動いたのは、人類の歴史で資本主義しかないんですね」

利潤から解放された社会とはどんなものなのか?

「人間とその社会の生活の維持、再生産を一番の主眼にして活動するーーこういう本来の姿に戻すことです」

「本来の姿に戻すために、マルクスが方向づけたのは、生産を社会が握るということです。生産者たちが中心になって、生産の機械や工場、農場を握らないといけないし、そうなるだろうと、マルクスは展望したわけですね」

「しかも、一人一人が個々に生産した時代ではなく、物質的生産力が高度に発展した現代にふさわしいやり方で、生産者の集団が中心になって経済を動かすーーそれが次の社会の方向になるというのがマルクスの見通しです」

生産者が中心になって経済を動かすと、社会はどう変わるのか。

「いまは生産者たちはしいたげられていますね、働いても働いても貧しい。しかし、今度は生産者たちが中心になって分配をやるわけだから、不公正な分配をなくせます」

「それから、必要のないものをつくったり、環境を壊すといった、利潤第一主義からうまれる大量生産・大量消費・大量廃棄という不合理な経済活動ではなく、理性的に経済活動ができるわけです」

「しかし、実は、マルクスが未来社会に一番期待をかけたのは、なにより人間が自由に発達できるということなんです」

「過去の時代を見ると、知力や科学、文化を発達させた人と生産で社会を支えた人が別枠なんですね。いろんな人が、いろんな能力を持っていてもそれを発達させる条件がないまま生涯を終わる人が圧倒的多数です。最高の知能をえた人類が、本当に全面的に能力を発揮する社会になっていない。マルクスは、ここに階級社会の一番の弱点があると見ていました」

「マルクスは、人間の活動には『必然性の国』と『自由の国』があるとよく言いました」

「『必然性の国』とは、生きていくために最低限に必要な生産活動の時間であり、必要性に縛られた時間です。これは、社会主義になっても必要です」

「『自由の国』とは、『必然性の国』以外の、生産活動にしばられない自由な活動の時間です。ここでは、ずーっと遊んでもいい。でも、人間はたいてい遊んでばかりいると、勉強のしたくなるもんなんですね(笑)」

「また、今より多くの、またすべての人が経済活動に参加したら、今と同じような生産活動ももっと少ない労働時間でできるはずです」

「そして、すべての人に、自由の時間があれば、スポーツや研究などに携わる人がいまよりずっと増えるでしょう。マルクスは『自由の時間を生み出すのが未来社会の一番大事なところだ』と言ったことがありますが、『自由の時間』をそれを原動力にして、今までとはケタ違いに科学が発達する時代になると思ったみたいです」

「生産者たちが社会を握ることで、そういう社会に道を開こう、と」

「じゃあ、いまの社会主義といわれる国々、先ほど話した中国やキューバ、ベトナムが、そういう社会になっているか」

「そうはなっていないですよね。本来なら社会主義は、そういう素晴らしい力をもつはずなのになぜそうなっていないのか、というのが次の問題です。それがいまの世界で考える必要があることなんです」

不破さんのお話は、現在の社会主義といわれる国々をどうみるのか、ということに移りました‥(続く)
 

資本主義が「世界の一部」になった時代
2009.11.07 [Sat] 09:45

昨日の「マルクスは生きているセミナー」は前回より多い580人の参加!で無事成功することができました。ご参加、ご協力いただいたみなさん、本当にありがとうございました。

前回に続いてノーミツな、そしてダイナミックな不破さんのお話に、刺激を受けっぱなしの2時間半でした。不破さんのお話を、少し紹介します♪

ちなみに、これは実行委員会が聞いたものを独断と偏見で(?)紹介していますので、どうぞご了承ください。



お話の最初に「我々が生きている資本主義はどんな位置にあるのか、を考えてみたい」と切り出した不破さん。

「16世紀ヨーロッパに生まれた資本主義。いまは、ほぼ5世紀を終えて6世紀目に入ったところです。資本主義が生まれたばかりの時代の世界は、奴隷制、封建制などさまざまな段階の国がありました。そういうなかで資本主義が生まれ、その後世界に広がっていきました」

「植民地として資本主義を押し付けられていた国も多かったですが、それも含めて、20世紀の初めには世界の全部が資本主義国になってしまいました」

「しかし、20世紀は資本主義の歴史で一番栄えた時代ですが、一方で二つの大きな出来事がおきました」

「一つは、19世紀の始まった社会主義運動がロシアで革命が勝利して資本主義とは違う社会主義を作ろうという動きが始まったこと(1917ロシア革命)」

「もう一つは20世紀後半にそれまで押さえ込んでいた植民地体制が崩れたこと(植民地体制の崩壊)」


「世界の全部を資本主義がにぎっていた20世紀に、社会主義が誕生し、植民地が独立するーーそういう形で、いままで資本主義が押さえ込んでいた世界が大きく割れたのが21世紀」

「それを経て、現在がある」

「いま世界をみるときに、資本主義が『世界の一部になった時代』に、資本主義国・日本にあなた方は生まれたんだということ考えないといけません」

不破さんは、そう話して、一つの図を紹介してくれました。

「世界で大きな顔をしている4つの国(中国、ドイツ、日本、アメリカ)のGDP(国内総生産)が、世界のGDPのどれくらいを占めていたかを、資本主義が始まった16世紀〜21世紀まで計算したグラフです(『朝日新聞GLOBE』09/10/19付より)」

「これを見ると、16世紀の初め、中国は封建制でしたが、いまの資本主義諸国よりも、はるかに大きなGDPをつくりあげていました」

「でも、産業革命のあと、帝国主義の時代が来る、大帝国だった中国はどん底の時代になりました」

「それで、いまどうか」

「かつては世界の片隅だった資本主義が、物質的にはさらに栄えました。一方で社会主義国が誕生し、資本主義は世界の一部になりました。そして、いまは社会主義をめざす力で、中国が大きくなりつつあるーーいまはこういう時代なんですよ」

「いま生きている資本主義は、いままでのどの時代とも違います。世界の経済も、G8ではやっていけなくて、G20になった時代の資本主義に、私たちは生きているということをよく見ておいてほしい」

不破さんは、いまの資本主義は世界の多数ではなく、少数になったの段階にあり、その資本主義国に私たちが生きていることを、繰り返し強調しました。

そして、そのことを示すもう一つ資料を紹介した不破さん。

「世界を、発達した資本主義のグループ(型)、社会主義をめざすグループ、アジア・アフリカ・ラテンアメリカの膨大なグループ、旧ソ連・東欧体制のグループの4つに分類してみましょう」

「人口でいうと、発達した資本主義は世界の8分の1程度。アジア・アフリカ・ラテンアメリカは世界の6割近い比重もっています。これから世界を見るときに人口が力になるという風によく言いますね」

「それから経済力で見ると、発達した資本主義は、世界の7割を握っています(2006年)。これは、かつては世界の全部を握っていたところから7割になったところです。また、最近20年の成長率でみると、社会主義をめざす国が約4.8倍、アジア・アフリカ・ラテンアメリカが2.4倍、発達した資本主義国が一番低くて1.8倍ーーこういう世界になっているんです」

「前回は内部の矛盾から、資本主義はかなり危ないことになっているという話をしましたが、いまみたように歴史をたどってみると、新しい時代がひたひたろと迫っている様子がよくわかるんじゃないかと思います」

「じゃあ、その資本主義をどうするのか、それが次の社会主義の問題なんです」

話は、社会主義のことへと続きました‥(つづく)。前回に同様、少しずつ不破さんのお話をご紹介していこうと思います。



さて、そして、今回もたくさんの感想が寄せられましたので、ホンの一部を紹介します

●今はよく閉塞感ある時代と言われているが、今はまだ発展途上で、その道のりに参加することには価値があるというのは、おもしろいと思った。‥資本主義がまだ完成されていないものだということがわかり、どういう方向に世の中が向かっていくのかを見極めるのも面白いし、自分もその当事者になり得るということがわかった。(理T・1年)

●社会主義国の象徴と言えるソ連が、実は遥か昔に社会主義をやめていたという視点には気づかされるものがあった。自分のなかでは、社会主義とは「資本の国有化」に始まり、@中央集権、A個人崇拝、B国民の労働意欲の低下、C生産の減衰、D思想統制等を思い出すだけであった。しかし、それのどれもが本来の社会主義とは結びつかない、ということを知った。(大学院)

●大切なのは全体を見ること、全体を見なければ部分は正しくわからない」というテーマが前回と一貫して流れていて、その大切さが強く実感されました。この考えに基づいたからこそ、マルクスは資本主義を発見・認識することに成功し、共産主義という新たな枠組みを作り出せたのだと思います。(文T・1年)

●意外とマルクスの話ばかりでなかったのにビックリしました。(文U・2年)

●唯物論が人間の精神や自由意志を否定するものじゃないとわかった。(理U・1年)

●中国(旧ソ連も)への見方もとても勉強になりました。社会主義をめざす実験的な国としての役割、とても大事ですね。マスコミの報道では見えてこない姿です。(大学院)
 

第二回「マルクスセミナー」スタート!
2009.11.06 [Fri] 18:57

「マルクスは生きているセミナー」最終回がついにスタート!!

今回も満員御礼!

開場後、第一会場、第二会場ともに、あっという間にいっぱいになりました。

そして、先ほどから不破さんのお話が始まりました♪

「私たちが資本主義の歴史のなかで、どういう地点に生まれ、生きているのかを知ってほしい」と切り出した不破さん。

中国、ドイツ、日本、アメリカのGDPが、封建制から資本主義、社会主義と時代とともに、どう移り変わっているのかをあらわした図などを使いながら、お話はすすめられています

そして、世界はいまどんな国々で成り立っているのか、世界の構造のお話へ‥