'09.05.04 『スラムドッグ$ミリオネア』@TOHOシネマズ市川コルトン
これは見たかった! インド映画好きだし、ダニー・ボイルがインドを撮るとどうなるのかスゴイ興味があった。もちろんアカデミー作品賞受賞というのもあり。
「"クイズ$ミリオネア"に出演、正解を重ね1,000万ルピーを獲得したジャマール。残る1問に正解すれば前人未到の全問正解、2,000万ルピー獲得となる。だが、彼は最後の1問を残し不正容疑で逮捕されてしまう。医者も弁護士も成し得なかった偉業を、スラム出身で全く教育を受けていない青年が何故成し遂げることが出来たのか? そして彼が出演した真の目的は?」という話。これはおもしろい! そして素晴らしい。すごいスピード感。そしてインドの現実や熱気が伝わって来る。何よりこの手法が素晴らしいと思う。『フルモンティ』のサイモン・ビューフォイの脚本がいい。
冒頭、ジャマールの尋問シーンから始まる。一切何も語らないジャマールは、水の中に頭を突っ込まれたり、さんざん暴行を受けたあげく、電流まで流されてしまう。正直、仮に彼が不正をしていたとしても、ここまでやる必要あるんだろうかというくらいの取調べ。多分、彼がスラム出身だからなのだろう。インドといえば厳しいカースト制度で有名。今でこそ廃止が唱えられているようだけれど、まだまだ根強いものがあるのだろう。そもそも、逮捕された経緯だって、彼がスラム出身の低カーストの青年だからなのだろうし。この辺りは見ていてけっこう辛い。電流によるショックで意識を失うジャマール。彼に問いかけるでもなく、つい本心から「何故答えることができたんだ」と呟く警部。するとジャマールが鋭く「答えを知っていたからだ」と答える。そこからいかにして彼が最終問題まで辿り着いたのか語られるのだけれど、ここからは引き込まれて一気に見てしまった。
ネタバレしないように書くのはとっても難しい。もしかしたらネタバレしてしまうかもしれないけれど、何故クイズに正解できたのかを語るには、彼の生い立ちを語らないとならない。その人生は過酷。この穏やかそうな青年が、こんな人生を生き抜いてきたとは・・・。でも、この作品の上手いところは悲惨過ぎずに描いていること。幼い兄弟が私有地(おそらく高カーストの土地)で野球をしたことで、警官に追われるシーンのスピード感がすごい。6〜7歳くらいと思われる子供を真剣に追う警官の間の抜けた感じもおかしく、狭いスラムを疾走する感じが楽しい。少年達が走る姿を上空から、距離と広さを3段階に変えて映し出す。どこまでも続くスラムの街並みがスゴイ。ここで伏線がいくつか出て来るけれど、重要なのはこの時点では彼らにはまだ守ってくれる存在があるということ。彼らの世界はここだけだった。
そして2度目の疾走。洗濯場の汚い水に腿までつかり、洗濯をして働く美しく優しい母。その傍らで無邪気に遊ぶ幼い兄弟。貧しくても幸せな時間は突然破られる。2人は守ってくれる存在を失い、自分の命を守るため必死で逃げまどう。このシーンは前出の逃走シーンと対比となっていて悲しい。同じ逃げているのでも意味も重さも全然違う。このシーンは辛い。そして兄弟は全てを失うことになる。と、同時に運命の出会いをする。3人で雨の中眠るシーンは切ない。兄弟より少し小さい甥っ子が2人いる。兄弟の姿に2人が重なってしまい涙が出た。ゴミの山で暮らす彼らはママンという男に連れて行かれる。見ている側はママンの真の目的などお見通しだけれど、幼い彼らには分かるはずもない。でも、束の間でも楽しい時があったのは良かったと思う。ここでの生活で次第に兄サリームはリーダーの資質を見せ始める。この資質が彼に悲劇を招くことになるけど、こうならずにはいられなかったのかと思う。それがまた切ない。
ママンの元を逃れた2人は本当に2人きりで生きていく。列車の屋根に乗り移動しながらおみやげ物を売ったり、窓から乗客の食べ物をくすねたりする姿はかわいらしい。もちろん本当にこの生活なのであれば辛いと思うけれど、兄弟力を合わせて生きていることが楽しそうだったりする。乗客に見つかって列車から落ちてしまい、ゴロゴロ転がった先がタージ・マハル(笑) そして2人は少し大きくなった。この演出はベタだけど好き。タージで偽ガイドや観光客の靴を盗んだりしながら生きていく。アメリカ人を強烈に皮肉るシーンもあったりして、ここは映画の中でもコミカルな部分。もちろん、やっている事は犯罪だけど、彼らのあっけらかんとした明るさについ笑ってしまう。お金も溜まって楽しく暮らしていた2人だけど、ジャマールは生き別れてしまった初恋の少女ラティカのことを忘れる事ができない。この気持ちが切ない。
今はムンバイとなったボンベイに再び戻ってきた2人には過酷な運命が待っている。その1つ1つを書くつもりはないし、必要はないと思う。でも、まだ少年のジャマールが、かつて歌が上手かったためママンに目を潰されて街頭に立たされている少年に再会するシーンが印象的。視力を失った彼には目の前に立つ人物がジャマールだとは気付かない。ジャマールが差し出す100ドル札を疑い、描かれている肖像画の特徴を言わせる。うれしそうに「ベンジャミン・フランクリン!」と叫んだ後、「偉くなったんだねジャマール」という言い方や声に何の皮肉もない。そのセリフに涙が止まらなかった。彼の演技は見事。「僕はついてなかった、それだけのこと」と言う彼の人生を思うと本当に辛い。そうやってまだ少年であるにもかかわらず、諦めなければならない人生もあるのかと思うとやり切れない。
ジャマールは諦めない。ジャマールが自分の思いを諦めずに突き進んでいく姿がいい。いいけど、それが人を不幸にしている側面があることには気付かない。それはそれですごく切ない。ジャマールは憧れの映画スターに会いたい一心で、ウ○コまみれになってサインを貰った幼い頃から、ずっと純粋で真っ直ぐなままだった。初恋の少女を思い続けたのも、犯罪にどっぷり浸からなかったのも、彼が純粋で真っ直ぐな心を持っていたから。ジャマールのそういう性格が分かるから、見ている側は彼を応援したくなるわけで、それは本当に良かったと思うけれど、ジャマールが純粋でいられたのは、兄が自ら手を汚しても彼を守っていたからだと思ったりもする。ジャマールがウ○コまみれになって貰ったサインを、兄はあっさり売ってしまう。そこには不器用なくせに純粋な真っ直ぐさで、自分の思いを叶えていく弟に幼いながらも嫉妬した部分はあったかもしれないけれど、兄サリームはいつでも"生きる"ことを考えていた。それはきっと家長としての責任感だったんじゃないかと思う。そして、弟や自分を守るためにはあの道しかなかったのかも。そして、それはもちろんジャマールのせいではない。
ストーリーは警察で真相を語るジャマール、ミリオネア出演シーン、そしてジャマールの生い立ちの3つが交互に描かれる。それぞれ時が流れているけれど、流れ方が違う。この3つをからめての見せ方が斬新でおもしろい。だからこそジャマールの壮絶な人生をそんなに辛くなり過ぎず見ることができる。今見ているシーンは、実は彼が語る過去なのだと思うことで、少し距離感を持って見ることができた気がする。だからこそ、その過酷さがすんなり心に落ちてきたりする。正解し続けるにしたがって、ジャマールが落ち着いてこの状況を楽しんでいるように見えるのも、こんな生い立ちならば度胸もつくでしょうと思ったりするし、本当の目的を知らなくても、あの司会者の「お茶くみだってよ」という差別的な態度を見ただけでも、やっつけてやれ! と心で応援してしまう(笑) その見せ方も上手いと思う。
キャストはほとんどインド人。どんなキャスティングぶりなのか不明なので、インドの俳優さんなのか、アメリカとかイギリスに移住している役者さんなのか分からないけれど、警部役のイルファン・カーンだけは見たことがあった。『その名にちなんで』のお父さん役。あの役も良かったけれど、今回も良かったと思う。きっと犯罪が多くてイライラしているんでしょう。スラム出身の青年なんか不正しているに違いないと決めつけて、さっさと取調べを終わらせたいと思っていた。でも、ジャマールの話を聞くうちに引き込まれてしまう感じがいい。多分、見ている側は知らないうちに彼目線で見ることになる気がする。そういう意味でも重要なので、その辺りは良かったと思う。
ラティカのフリーダ・ピントは美しい。インドの女優さんはホントみんなキレイ。その美しさゆえに悲しい人生だったりするのも納得。その生い立ちゆえ踏み出す勇気が出せない中にも、ジャマールを気遣って身を引こうとしているんだなという感じも出ていて良かった。兄サリーム役の人は白くなってしまう前のマイケル・ジャクソンに似てる・・・ イヤ! 若くしたサミュエル・L・ジャクソンだな(笑) この手の役は弟の足を引っ張ったりして、イラっとさせることが多いけれど、そういう感じはなく、彼は彼でこう生きるしかなかったんだろうと思わせたのは良かった。それは少年時代の堕ちていく彼を演じた子役の演技によるところが大きかったと思うけれど。
ジャマールのデヴ・パテルは良かった。よくぞ彼をキャスティングしたなと思った。顔がいい。イケメンとかいうことではなくて、なんとも頼りなさげで応援したくなる。母性本能をくすぐるタイプ(笑) 何歳の設定なのか分からないけれど、彼の少年っぽい容姿が、純粋さを失わず真っ直ぐ突き進む感じと合っている。意外に男らしいのもいい。彼の望みは少年のあの日から終始一貫換変わらない。そのブレのなさもスゴイ(笑) だけど、いまどき珍しいその純情な感じがとっても伝わってきたのは、もちろん彼の演技もあるけど、容姿や個性によるところも大きいと思う。少年の頃の兄弟やラティカを演じた子達も良かった。だけど、やっぱりあの幼い頃の兄弟を演じた2人がホント良かった。もうホントかわいい。こんな境遇にあっても、楽しさを見出して生きていく姿が健気で本当に泣けた(涙) あのキラキラした瞳が忘れられない。
この映画で描きたい事は、インドの貧しい人々の現状、ストリートチルドレン、幼児売春、人身売買、そしてもちろん、1人の青年の壮絶な生い立ちとサクセスストーリーなど、いろいろあると思うけれど、「ミリオネア」と絡めて描いたこの手法を考えると、それは単にテンポのためだけではなく、1番言いたいことは「どんな生い立ちでも、無駄な人生はない」とうことなんだと思う。詰め込んだだけの知識は役には立たない。経験して人は大きくなっていくんだということ。それはなにもスラムドッグ(スラムの負け犬)じゃなくても、フツーのOLの人生にも言えること。それをこんなスピード感で、こんなに斬新で楽しく、そして時に切なく見せられたら見事と言うしかない(笑) これはホントにおもしろかった。
とにかく、インドの熱気がスゴイ。 子供たちの明るい無邪気な強さがスゴイ。いわゆるインド映画とは違う熱気を感じた。ラストのホームのシーンはニヤリ。ここはインド映画に敬意を表したのかな。いつもの迫力はないけど、これはこれで良かった。ラストまでハラハラしっぱなし。そして感動! の、後のアレは素晴らしい(笑)
ホントおもしろかった! また見たいかも!
【追記】
公式サイトによるとデヴ・パテルくんはロンドン生まれなのだそう。どうりでラストのアレがしっくりこなかったハズだ(笑)
『スラムドッグ$ミリオネア』Official site
これは見たかった! インド映画好きだし、ダニー・ボイルがインドを撮るとどうなるのかスゴイ興味があった。もちろんアカデミー作品賞受賞というのもあり。
「"クイズ$ミリオネア"に出演、正解を重ね1,000万ルピーを獲得したジャマール。残る1問に正解すれば前人未到の全問正解、2,000万ルピー獲得となる。だが、彼は最後の1問を残し不正容疑で逮捕されてしまう。医者も弁護士も成し得なかった偉業を、スラム出身で全く教育を受けていない青年が何故成し遂げることが出来たのか? そして彼が出演した真の目的は?」という話。これはおもしろい! そして素晴らしい。すごいスピード感。そしてインドの現実や熱気が伝わって来る。何よりこの手法が素晴らしいと思う。『フルモンティ』のサイモン・ビューフォイの脚本がいい。冒頭、ジャマールの尋問シーンから始まる。一切何も語らないジャマールは、水の中に頭を突っ込まれたり、さんざん暴行を受けたあげく、電流まで流されてしまう。正直、仮に彼が不正をしていたとしても、ここまでやる必要あるんだろうかというくらいの取調べ。多分、彼がスラム出身だからなのだろう。インドといえば厳しいカースト制度で有名。今でこそ廃止が唱えられているようだけれど、まだまだ根強いものがあるのだろう。そもそも、逮捕された経緯だって、彼がスラム出身の低カーストの青年だからなのだろうし。この辺りは見ていてけっこう辛い。電流によるショックで意識を失うジャマール。彼に問いかけるでもなく、つい本心から「何故答えることができたんだ」と呟く警部。するとジャマールが鋭く「答えを知っていたからだ」と答える。そこからいかにして彼が最終問題まで辿り着いたのか語られるのだけれど、ここからは引き込まれて一気に見てしまった。
ネタバレしないように書くのはとっても難しい。もしかしたらネタバレしてしまうかもしれないけれど、何故クイズに正解できたのかを語るには、彼の生い立ちを語らないとならない。その人生は過酷。この穏やかそうな青年が、こんな人生を生き抜いてきたとは・・・。でも、この作品の上手いところは悲惨過ぎずに描いていること。幼い兄弟が私有地(おそらく高カーストの土地)で野球をしたことで、警官に追われるシーンのスピード感がすごい。6〜7歳くらいと思われる子供を真剣に追う警官の間の抜けた感じもおかしく、狭いスラムを疾走する感じが楽しい。少年達が走る姿を上空から、距離と広さを3段階に変えて映し出す。どこまでも続くスラムの街並みがスゴイ。ここで伏線がいくつか出て来るけれど、重要なのはこの時点では彼らにはまだ守ってくれる存在があるということ。彼らの世界はここだけだった。
そして2度目の疾走。洗濯場の汚い水に腿までつかり、洗濯をして働く美しく優しい母。その傍らで無邪気に遊ぶ幼い兄弟。貧しくても幸せな時間は突然破られる。2人は守ってくれる存在を失い、自分の命を守るため必死で逃げまどう。このシーンは前出の逃走シーンと対比となっていて悲しい。同じ逃げているのでも意味も重さも全然違う。このシーンは辛い。そして兄弟は全てを失うことになる。と、同時に運命の出会いをする。3人で雨の中眠るシーンは切ない。兄弟より少し小さい甥っ子が2人いる。兄弟の姿に2人が重なってしまい涙が出た。ゴミの山で暮らす彼らはママンという男に連れて行かれる。見ている側はママンの真の目的などお見通しだけれど、幼い彼らには分かるはずもない。でも、束の間でも楽しい時があったのは良かったと思う。ここでの生活で次第に兄サリームはリーダーの資質を見せ始める。この資質が彼に悲劇を招くことになるけど、こうならずにはいられなかったのかと思う。それがまた切ない。
ママンの元を逃れた2人は本当に2人きりで生きていく。列車の屋根に乗り移動しながらおみやげ物を売ったり、窓から乗客の食べ物をくすねたりする姿はかわいらしい。もちろん本当にこの生活なのであれば辛いと思うけれど、兄弟力を合わせて生きていることが楽しそうだったりする。乗客に見つかって列車から落ちてしまい、ゴロゴロ転がった先がタージ・マハル(笑) そして2人は少し大きくなった。この演出はベタだけど好き。タージで偽ガイドや観光客の靴を盗んだりしながら生きていく。アメリカ人を強烈に皮肉るシーンもあったりして、ここは映画の中でもコミカルな部分。もちろん、やっている事は犯罪だけど、彼らのあっけらかんとした明るさについ笑ってしまう。お金も溜まって楽しく暮らしていた2人だけど、ジャマールは生き別れてしまった初恋の少女ラティカのことを忘れる事ができない。この気持ちが切ない。
今はムンバイとなったボンベイに再び戻ってきた2人には過酷な運命が待っている。その1つ1つを書くつもりはないし、必要はないと思う。でも、まだ少年のジャマールが、かつて歌が上手かったためママンに目を潰されて街頭に立たされている少年に再会するシーンが印象的。視力を失った彼には目の前に立つ人物がジャマールだとは気付かない。ジャマールが差し出す100ドル札を疑い、描かれている肖像画の特徴を言わせる。うれしそうに「ベンジャミン・フランクリン!」と叫んだ後、「偉くなったんだねジャマール」という言い方や声に何の皮肉もない。そのセリフに涙が止まらなかった。彼の演技は見事。「僕はついてなかった、それだけのこと」と言う彼の人生を思うと本当に辛い。そうやってまだ少年であるにもかかわらず、諦めなければならない人生もあるのかと思うとやり切れない。ジャマールは諦めない。ジャマールが自分の思いを諦めずに突き進んでいく姿がいい。いいけど、それが人を不幸にしている側面があることには気付かない。それはそれですごく切ない。ジャマールは憧れの映画スターに会いたい一心で、ウ○コまみれになってサインを貰った幼い頃から、ずっと純粋で真っ直ぐなままだった。初恋の少女を思い続けたのも、犯罪にどっぷり浸からなかったのも、彼が純粋で真っ直ぐな心を持っていたから。ジャマールのそういう性格が分かるから、見ている側は彼を応援したくなるわけで、それは本当に良かったと思うけれど、ジャマールが純粋でいられたのは、兄が自ら手を汚しても彼を守っていたからだと思ったりもする。ジャマールがウ○コまみれになって貰ったサインを、兄はあっさり売ってしまう。そこには不器用なくせに純粋な真っ直ぐさで、自分の思いを叶えていく弟に幼いながらも嫉妬した部分はあったかもしれないけれど、兄サリームはいつでも"生きる"ことを考えていた。それはきっと家長としての責任感だったんじゃないかと思う。そして、弟や自分を守るためにはあの道しかなかったのかも。そして、それはもちろんジャマールのせいではない。
ストーリーは警察で真相を語るジャマール、ミリオネア出演シーン、そしてジャマールの生い立ちの3つが交互に描かれる。それぞれ時が流れているけれど、流れ方が違う。この3つをからめての見せ方が斬新でおもしろい。だからこそジャマールの壮絶な人生をそんなに辛くなり過ぎず見ることができる。今見ているシーンは、実は彼が語る過去なのだと思うことで、少し距離感を持って見ることができた気がする。だからこそ、その過酷さがすんなり心に落ちてきたりする。正解し続けるにしたがって、ジャマールが落ち着いてこの状況を楽しんでいるように見えるのも、こんな生い立ちならば度胸もつくでしょうと思ったりするし、本当の目的を知らなくても、あの司会者の「お茶くみだってよ」という差別的な態度を見ただけでも、やっつけてやれ! と心で応援してしまう(笑) その見せ方も上手いと思う。
キャストはほとんどインド人。どんなキャスティングぶりなのか不明なので、インドの俳優さんなのか、アメリカとかイギリスに移住している役者さんなのか分からないけれど、警部役のイルファン・カーンだけは見たことがあった。『その名にちなんで』のお父さん役。あの役も良かったけれど、今回も良かったと思う。きっと犯罪が多くてイライラしているんでしょう。スラム出身の青年なんか不正しているに違いないと決めつけて、さっさと取調べを終わらせたいと思っていた。でも、ジャマールの話を聞くうちに引き込まれてしまう感じがいい。多分、見ている側は知らないうちに彼目線で見ることになる気がする。そういう意味でも重要なので、その辺りは良かったと思う。
ラティカのフリーダ・ピントは美しい。インドの女優さんはホントみんなキレイ。その美しさゆえに悲しい人生だったりするのも納得。その生い立ちゆえ踏み出す勇気が出せない中にも、ジャマールを気遣って身を引こうとしているんだなという感じも出ていて良かった。兄サリーム役の人は白くなってしまう前のマイケル・ジャクソンに似てる・・・ イヤ! 若くしたサミュエル・L・ジャクソンだな(笑) この手の役は弟の足を引っ張ったりして、イラっとさせることが多いけれど、そういう感じはなく、彼は彼でこう生きるしかなかったんだろうと思わせたのは良かった。それは少年時代の堕ちていく彼を演じた子役の演技によるところが大きかったと思うけれど。
ジャマールのデヴ・パテルは良かった。よくぞ彼をキャスティングしたなと思った。顔がいい。イケメンとかいうことではなくて、なんとも頼りなさげで応援したくなる。母性本能をくすぐるタイプ(笑) 何歳の設定なのか分からないけれど、彼の少年っぽい容姿が、純粋さを失わず真っ直ぐ突き進む感じと合っている。意外に男らしいのもいい。彼の望みは少年のあの日から終始一貫換変わらない。そのブレのなさもスゴイ(笑) だけど、いまどき珍しいその純情な感じがとっても伝わってきたのは、もちろん彼の演技もあるけど、容姿や個性によるところも大きいと思う。少年の頃の兄弟やラティカを演じた子達も良かった。だけど、やっぱりあの幼い頃の兄弟を演じた2人がホント良かった。もうホントかわいい。こんな境遇にあっても、楽しさを見出して生きていく姿が健気で本当に泣けた(涙) あのキラキラした瞳が忘れられない。
この映画で描きたい事は、インドの貧しい人々の現状、ストリートチルドレン、幼児売春、人身売買、そしてもちろん、1人の青年の壮絶な生い立ちとサクセスストーリーなど、いろいろあると思うけれど、「ミリオネア」と絡めて描いたこの手法を考えると、それは単にテンポのためだけではなく、1番言いたいことは「どんな生い立ちでも、無駄な人生はない」とうことなんだと思う。詰め込んだだけの知識は役には立たない。経験して人は大きくなっていくんだということ。それはなにもスラムドッグ(スラムの負け犬)じゃなくても、フツーのOLの人生にも言えること。それをこんなスピード感で、こんなに斬新で楽しく、そして時に切なく見せられたら見事と言うしかない(笑) これはホントにおもしろかった。
とにかく、インドの熱気がスゴイ。 子供たちの明るい無邪気な強さがスゴイ。いわゆるインド映画とは違う熱気を感じた。ラストのホームのシーンはニヤリ。ここはインド映画に敬意を表したのかな。いつもの迫力はないけど、これはこれで良かった。ラストまでハラハラしっぱなし。そして感動! の、後のアレは素晴らしい(笑)
ホントおもしろかった! また見たいかも!
【追記】
公式サイトによるとデヴ・パテルくんはロンドン生まれなのだそう。どうりでラストのアレがしっくりこなかったハズだ(笑)
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