コーヒーの木促成栽培大作戦 

November 19 [Wed], 2014, 21:03



私達の住むジープ島は別名チューク島ともいって、トラック諸島に属する小さな小さな島である。第二次世界大戦中は日本軍によって占領されていたため、美しい自然の中に突如その爪痕が現れたりする。


深い海でシュノーケリングを楽しんでいると、岩の陰にゼロ戦が沈んでいたり、ジャングルを探索してるといきなり戦車砲がニョキッとこちらを狙ってたりする。
こないだなんかは、ガーデニングのために隣の島で土を耕していたら不発弾が出てきてしまい、慌てて本部に連絡した。


さて、こんな重労働が続くと、作業の後には苦いコーヒーが欲しくなる。
前パラダイス時代に各ベテルに貯蔵されていたコーヒー豆を少し分けてもらっていたのでしばらくはそれで凌いでいたが、それもだんだん乏しくなってきた。聞いてみると、各地でもその模様である。それではと、この赤道付近のコーヒーベルトと呼ばれる地域に住んでる私達としては、コーヒー栽培にも着手することにした。


さすがにこの狭いジープ島では何も育たないので、コーヒー栽培に適した別の島を探さないといけない。


コーヒーは育てるのが非常に難しい植物だという。四つもの生育条件を満たした場所でないと育ってくれない。その四つの条件とは、雨、日当たり、温度、土質。

まず、降雨に関して必ず必要なのが、成長期に雨が多く、収獲期に乾燥している、つまり雨季と乾季があるという環境。


二つ目の条件は、日当たり。コーヒーは、日光を好む植物にもかかわらず、日当たりが強すぎると元気がなくなってしまうらしい。

三つ目の条件は、温度。温度は、高からず低からず年平均20℃という夏の避暑地のような過ごしやすいところでないとコーヒーは育たない。

最後の条件は、土質。土質は肥沃で、水はけが良いことが重要で、かつ少し酸性の土壌のほうがコーヒーにはいいという。

では地球上でこの四つの条件を満たすことができる場所は一体どこか。それは、赤道直下の南北回帰線<北緯、南緯それぞれ25度>ちょうど条件を満たすエリアがベルトのように位置する。これが「コーヒーベルト」と呼ばれる地域だ。


ちなみにジープ島はこの条件に全く当てはまらない。土はほぼ砂だし、標高の高い山は全くない。


いろいろ思案して思いついた場所は、ジープ島から南東に位置するユーマン島(冬島)と呼ばれる島だ。この島なら、ある程度標高の高い山が中央に存在する。ここならうまくいきそうだ。


ただ一番厄介な問題は、コーヒーの木は豆が収穫できるまでに10年以上かかる、ということだ。確かに永遠という時間から考えたら短い期間かもしれないが、その間ずっとコーヒーがない生活は寂しすぎる…とても耐えられそうもない。


そこでふと、古くからの友人で植物分子生物学を専門としている研究員ノリピンのことを思い出した。彼女なら何かうまい策を講じてくれるに違いない。さっそく連絡を取ってみると、すぐこの島に来てくれることになった。


次の日さっそく彼女が来てくれた。相変わらず行動が早い人だ。
彼女曰く、植物は種子の遺伝子を調整すれば促成栽培も可能だという。コーヒーの木でもうまくいくだろうとのことだった。
まずは栽培地の気候を観測したいとのことなので、私達夫婦とノリピンの三人で冬島に向かった。


冬島が見えてきた。うっそうと茂ったジャングルに囲まれている。




島に上陸。さっそく高原地に向かう。
しばらく険しい勾配が続いて辟易してきたが、ふと横を向くと眼下に広がる海。




疲れが吹き飛ぶ。
しばらく歩くと、少し平らに開けた場所に出た。ここならコーヒー畑が作れそうだ。
ノリピンは持参してきたコーヒーの木の種子を何やらビーカーのようなものに入れて、これまた持参してきた機器に組み込んでガチャガチャし始めた。パソコン画面の横からは棒のようなものが上に突き出て、その上部では扇風機の羽のような部品がクルクル回っている。


ノリピンによると、ここでの気候の観測結果に基づいて、促成栽培に最も適した遺伝子に組み換えていくらしい。
説明を聞いても分かるような分からないような…とにかく難しいことは専門家の彼女に任せることにして、私達はその土地を耕す作業に専念した。


一時間後、ノリピンの作業が終わった。
ビーカーの中の種子は見た目には何も変化はなさそうだけど、これでうまくいくはずだという。一ヶ月後にはもう豆が収穫できるという。早すぎる!大丈夫か…?


とりあえずその種子を三人で手分けして撒いていく。芽がでるのが楽しみだ。
まずは苗木を作り、そしてしっかりした苗木を本格的に植えていくことにした。
しばらくは毎日水やりに来なければ。


成長の様子をしばらく見守るために、ノリピンもここに残ってくれることになった。
ちょうどうちに空き部屋があったのでそこを使ってもらうことにした。


もしこのコーヒーの木促成栽培が成功したら、次は他の野菜も試してみたい。
トマト、スイカ、チェリー、イチゴ、モモ…あ〜食べ放題なんて夢のよう…


そして大切な主食のお米、小麦なども成功すれば、この技術をベテルに報告して他の地の仲間たちにも広めることができるかもしれない…。


そんなことを話しながら帰途についた。
山を下りながらまたふと横をみると、こんなものを見つけてしまった。






また……
これは弾薬庫ですか…?






そしてこれは防空壕……?


挙げ句の果てに…






……戦車…………


また撤去作業依頼を本部に報告しないと。
ホントにキリがない


だけど、その地味な作業ひとつひとつが美しいパラダイスへ近づくことになる、そう考えたら力が湧いてきた。


だけどまずはコーヒーの収穫が楽しみ
早く大きくなあれ!

P R
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