不安の発芽 (限りなくとりとめもない散文)

2012年09月19日(水) 21時32分

うらびれた春の午後。
窓の外に生えたポプラの木の枝葉が、
黄金色の陽光をばらばらに砕き、
剃刀のように薄くなった光が窓辺に燦々と雪崩れ込んでいた。

春日はそんな春色めきたつ部屋の中で読書をしていた折、
ふと頭に痛みを感じた。


頭の外側でなく、内側がズキンズキンと痛かった。
神経をはりめぐらせ、意識を集中すると、
その痛みの出所はどうやら脳の裏側であるようだった。

春日は、耳の穴から中を覗きこんでみた。
耳の穴の奥底からは『オォオオオォオオオォ』という、呻き声のような音が微かに漏れ、
同時に流れ出たぬるい微風が春日の身体をまさぐった。

春日は自分の耳の穴に顏を突っ込んだ。
真っ暗闇だった。
どこまでも真っ暗闇だった。


『おおい!』

春日は自分の耳の穴に顏を突っ込んだまま、叫んでみた。
おおい、おおい、おおい、おおい、ぉぉぃ、ぉぃ…
春日の叫び声は耳の内壁を幾度もぶつかり反響しながら、
底の底まで飛んで行った…かに見えたが、反応はやはりなかった。

頭痛はひどくなる一方だった。
カニなどに代表される甲殻類が自分の脳内にぶちまけられて、
そのまま無数の脚がこすり合わさっているような、
そんな疼痛が在った。


春日は思い切って、耳の穴の中へもぐりこんでみた。
穴の中は寒くもなく暑くもなかった。
ただ暗かった。
春日は暗がりの中を奥へ奥へと進んで行った。
頭痛に耐え切れないのか、たまに外の春日が暴れ、耳の穴の中も揺れた。
倒れ伏すたび、春日が地面をつかむと、
春日の手のひらに握りしめられていたのは、
ぼろぼろに壊れた音符だった。
あちこちがひび割れた四分音符は、春日の手の上で音もなく砂になった。


それでも奥へ奥へと進むと、
ドアがひとつあった。
ドアを開けて入る。
とたんに、ものすごい光が春日の目を襲った。


そこは天から降り注ぐ、まばゆいばかりの光にあふれた部屋だった。
さきほどは闇しかなかったが、今度は光ばかりがあった。
その部屋の真ん中あたりで、リュートを演奏している小男がいた。
やせていて、足がおそろしく短く、手がとても長い小男だった。

春日は、リュートという名前の楽器があるということは知ってはいたが、
それが弦楽器なのか打楽器なのかも知らなかったにもかかわらず、
小男が演奏しているそれがリュートであるということがなぜか、わかった。


リュートは、人の頭部によく似た笛で、驚くべきことに目や鼻、口、耳もついている。
ほんの少しだが毛髪も生えている。
ただ人間の頭部と違うのは、目があちらこちらにたくさんついている点で、
眼球の無いその目は落ちくぼみ、洞のようになっている。
その穴に指を突き込み、アタマの『ハチ』のあたりからぎゅるりと出ている、
灰色の角をくわえて息を吹きこみ演奏する。

リャンリャンリャンリャン…



リャンリャンリャンリャン……



心音ではなかった。
リュートの音色だった。
春日は、リュートの演奏に聴き惚れていた。



『ねぇ、それ、ちょっと貸してくれないか』春日は声をかけた。
返事はない。リャンリャンリャンリャン。
『ねぇ』
返事はない。リャンリャンリャンリャン。
『ねぇ』
返事はない。リャンリャンリャンリャン。
『ねぇ』
返事はない。リャンリャンリャンリャン。
『ねぇ』
返事はない。リャンリャンリャンリャン。
『ねぇ』
返事はない。リャンリャンリャンリャン。
『ねぇ』
返事はない。リャンリャンリャンリャン。
『ねぇ』
返事はない。リャンリャンリャンリャン。
『ねぇ』
返事はない。リャンリャンリャンリャン。
『ねぇ』
返事はない。リャンリャンリャンリャン。


しびれをきらした春日は小男を殺してリュートを奪うことにした。
小男に走り寄り、春日が頭を殴りつけると、小男は簡単に倒れ、死んだ。
その瞬間、部屋の天井や壁すべてが無数の人差し指にかわり、春日を指さした。

殺した殺した殺したころした殺したころした殺した。


僕はやってなどいなかった。
地下鉄が遠くで走っていた面影の空を見やると、陰の橋が赤い紙を印刷していたので、
ほうきにまたがった?

何かが違っているような気がしたが、それが何かを説明することはできなかった。


足の裏でカニを踏みつぶした感触に我に還ったとき、
春日は、もう、すでに、人ではなくなっていた。
永遠に人ではなくなっていた。


いつまでも、いつまでも、いつまでも…。




モンゴロイドの行く末

2012年09月19日(水) 21時08分

ライブ思い出し日記 8月31日編

2012年09月04日(火) 19時47分


8月31日。
なんの日かわかるかね。

夏休み最終日?
いいや違うぜ、北海道はとても冬が長いから、とても厳しい寒さがつづくから、
冬休みが長いかわりに夏休みは短いんだ。

じゃあ何の日かってーと、コレだ。

リンダリンダラバーソール企画 『僕たちの旗』最終日 at LOG。


リンダリンダラバーソールを知らないキミのために、
僭越ながら僕が説明させていただくと、

リンダリンダラバーソール は、
ササキタイガ・オクヤマケイの二人から成る(敬称略)、
過剰なぐらい優しくって、激しくって、美しい音楽を演っている、
札幌を中心に活動しているバンドだ。


僕たちは彼らの音楽がとても好きで、
去る七月の僕ら主催の企画にも呼ばせていただいてるンだ。

そんなバンドの企画の最終日に呼ばれるなんて、実にコーエーな話じゃないか。



僕らは2番目に出ていった。
思い返してみれば、この日は実に久々のライブだったんだ。
だってこの前のライブは七月二十三日、もう一ヶ月以上も前になるんだもの!!
大好きなリンダリンダラバーソールの顔にドロを塗るわけにはいかないから、
僕ら せいいっぱいやったぜ。
できることをするのは誰でもできるんだ。
できないことをやりてぇんだ。
この日、僕らはできねぇことに片足のつま先でも突っ込めたかな?
親指一本分でも突っ込めたかな?
わかんねぇけど。

出番が終わって気が付いてみれば、僕は上半身裸で、蒸し暑いライブハウスで、
汗でドロドロになっていた。
ステージではもう次の出番のバンドが準備してて、
僕はバカみたいに、裸のスネアとスティックを持って
ぼーーーっ。と突っ立ってた。

そんな僕の肩を叩いて、タイガさんは『ありがとう。』と言った。
ありがとう。
なんていい言葉なんだろうと思った。


その言葉に感銘を受け過ぎたのか、そのあと僕はポロシャツをうらがえしに着ていたのだ。
そうさ、ずっと、ずーーっとうらがえしで着ていたのさ。

ライブがハネたあと、ライブを観に来ていた爆弾ジョニーのりょーめー君としゃべりながら、
コカ・コーラを飲みつ吸ったマイルドセブン・スーパーライトは、
びっくりするぐらい美味しかった。
なんとなく、この一瞬のことは死ぬまで覚えているんだろうな、
そんな気がした。
鈴虫がリーリー鳴いててね、蒸し暑くってね、月がテラテラ光っててね。


この日、ラヂオカセッツという東京からきたバンドが、信じられないぐらいいいライブをしていた。
たった直径5メートル程度のステージで、
四人組の彼らは、信じられないぐらいの熱量でもって、
ライブハウスにいる人間すべての目と耳をクギヅケにしていた。

ライブの後半、曲のイントロのあまりにもいいトコロで、
停電になって真っ暗になったもんだから、僕は笑っちまった!!
あのときのライブハウスの空気は素晴らしかったな。


一緒にやるのは3月以来の、ブルセラ学級崩壊も素晴らしかったなぁ!
僕は悔しかったぜ。
ほんとに悔しかったんだぜ。
聴いたことのない新曲ばかりでセットリストが構成されてて、
またその曲がいい曲ばっかりなもんだから、僕は悔しかったんだぜ。
負けないぜ。おーいえー。



この夜 トリを飾ったのは
もちろん リンダリンダラバーソール。

ライブを見ながら、僕は何回も泣きかけたんだ、マジで。

ステージでギターをひき歌をうたうタイガさんと、
キーボードをひくケイさんの間には、白い旗がブッ立てられていて。
二人とも裸で歌っていた。
なんでこんなに裸なんだろうと思った。
裸というのは、一糸まとわない全裸の姿という意味じゃなくて(上半身裸ではあったけど)、
そこにはパンツも靴下も髪の毛も脂肪も骨すらもなかった。
ただ、うただけがあった。
削ぎ落とされた珠玉のメロディーと、うたと、二人の関係性だけがあった。


一曲目は『神様になりたい』という曲だった。

タイガさんがこの歌をうたいだした瞬間、ライブハウスの空気は確実に変わるんだ。
肌だけじゃ飽き足らず、脳みその裏側まで泡立つ あの カンジ!!!
この日も存分に味わったぜ。


リンダリンダラバーソールの出番がはじまったころ、
九月もちょーどはじまった。

九月もいいことありゃあいいな、そう思って僕は帰路についたのだった。


眠りにつく直前まで、アタマん中ではリンダリンダラバーソールの曲が鳴ってたんだぜ。


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magazinesという自称縦社会派バンドでドラムと作詞をやっています


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