舞姫 現代語訳-プロローグ-

September 23 [Fri], 2011, 12:26
試験勉強のために個人的につくったのものなのであてにしないでくだry


石炭*1はもう積み終わった*2
中等室の机のあたりはとても静かで、白熱電灯の光が晴れやかなのも意味がなく思える。今夜は毎晩ここに集まってくるカルタ仲間もホテルに泊まっていて、船に乗っているのが私一人だけだからだろう。
五年前のことであったが、日ごろの望みが叶って、西洋留学の官命を頂き、このセイゴンの港まで来たときは、目に見えるもの、耳に聞こえるもの、一つとして新しくないものはなく、筆にまかせて書き記した紀行文は、毎日何千文にもなった。
当時の新聞に載せられて、世間にはもてはやされたが、今になって思うと、幼い思想、いいたい放題の発言・・・・・・そうでないにしても、ありふれた目に入るものすべて、また風俗・習慣などまでもを珍しげに記したのを、思慮深い人はどのように思っていたのだろうか。
今度は、旅の出発に際して日記を書こうと買ったノートもまだ白紙のままである。それは、ドイツで留学中に、一種のニル=アドミラリィの気性を養うことができたためであろうか、いやそうではない。
実際に、東に帰る今の私は、西に航海した昔の私ではなく、学問こそまだ満足できないところも多いが、世間がいかに辛いものであるかを知り、人の心が信頼できないのはもちろん、己とおのれの心でさえも変わりやすいということを知った。昨日正しいと思ったことが、今日は違うという、その時々で変わる自分の考えを、筆に写して誰にみせられよう。これが日記ができない理由であろうか、いや、これには別に理由がある。

*1 「石炭」は文明開化以降使用される、近代を象徴するもの。
舞姫は明治20年代を舞台にしているので、時代設定を暗に示しているのかもしれません。
*2 「果てつ(終わった)」は、同時にドイツでの事件がすでに終わっていることも示しています。



ああ、ブリンジィシィの港を出てから、はや二十日あまりが過ぎた。
普通であれば、初対面の客に対しても交際を深め、旅の憂いを慰さめあうのが船旅の慣わしであるが、ちょっとした病気にかこつけて船室の中にこもり、同行の人々ともあまり話さないのは、人知れぬ恨み*1に頭を悩ましているからである。
この恨みははじめ一抹の雲のように私の心をかすめ、スイスの山の景色を楽しませず、イタリアの古跡にも心を留めさせず、旅の中ごろになると嫌になり、凝り固まって、一点の影となった。
文章を読んでも、ものを見ても、鏡に映る影や声に反応する響きのように、この上ない懐旧の情*2を呼び起こして、何度となく私の心を苦しめる。
ああ、どのようにしてこの恨みを消し去ろうか。もしほかの恨みであったならば、詩にして詠めば気持ちも晴れるだろう。しかし、これだけは、あまりに深く私の心に掘られてあるので、そうはあるまい*3とは思うが、今夜は辺りに人もいないし、ボーイがきて消灯するにはまだ時間もあるので、さあ、そのあらましを文章にしてみようか*4

*1 「人知れぬ恨み」とは、ドイツでの出来事によるものです。この時点ではまだ何であるか明かされていません。
*2 「懐旧の情」=ドイツで過ごした日々
*3 「さはあらじ」=文章にしたところで、気分が良くなるわけでもないだろう。

ちなみに、「一抹の雲」→凝り固まって→「一点の影」への描写は、最初はうっすらと心の中に漂っていた憂いが、徐々に明確な意識として豊太郎の中で存在を増していく様子を表しています。



P R
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