
80年代半ば、しがないクラブDJだったJazzie BがTHE WILD BUNCHのNelly Hooperと出会ったことでSOUL II SOULが誕生。DJとプロデューサーを核にして、曲ごとに様々なミュージシャンを使い分けるという手法はこれまでもありましたが、ポップ・フィールドで成功したのはSIISが初めてです。
特にサウンドの貢献が大きかったのが元MELONの屋敷豪太(Gota)。彼が作り出すシンプルながら深いリズムは後にグランド・ビートと呼ばれ、数えきれないほどのフォロワーを生み出します。そしてシングル「Keep On Movin'」を歌うCaron Wheeler。パワフルで艶やかな彼女のヴォーカルにより、Nelly HooperのサウンドとGotaのビートは生命を吹き込まれたように輝きます。
時代はユーロビート全盛期。しかし「Keep...」のイントロ一発でフロアのトレンドが反転した、そんなインパクトがありました。SIISは続いてCaronのヴォーカリゼーション「Back To Life」をシングル用に構成し直し「Back To Life (However Do You Want Me)」としてリリース(オリジナル・アルバムには未収録だがリマスター盤に追加収録)、今度は本国にとどまらずアメリカでも大ヒットを記録します。
SIISの成功は大きな反響を呼びました。アメリカからは彼らに呼応するようにINNER CITYらデトロイト・テクノ勢がポップ的なアプローチをとり始め、その後のクラブ・シーンを牽引していきます。そしてイギリスでは彼らのアプローチ〜R&Bとクラブ・スタイルの融合、そして曲ごとにメンバーを変えるユニット構成〜は音楽シーンの定番として今も大きな勢力を持っています。彼らの存在がなければUKソウルなんてカテゴリーも、SASH!やFRAGMAといったフロアからのポップ・ヒットも、クラブ・ヒットからソロデビューにつながったCraig DavidやSophie Ellis-Bextorの活躍もありえなかったでしょう。
しかし束縛感のないユニット構成は、裏を返せばメンバーの能力頼み。このアルバムリリース後、NellyもGotaもCaronもJazzie Bのもとを離れ、実体のなくなったSIISはこれ以上の活躍をすることができずに存在感を失っていきます。日本ではこうしたダンス系の評価が不当に低いのですが、間違いなくこのアルバムは80年代イギリス音楽シーンの最重要作。昨年リリースされたAmy Winehouseの『BACK TO BLACK』を「SIIS以来の重要ソウル・アルバムだ」と評したメディアがあったのが印象的でした。
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