今USで一番ホットなプロデューサーは誰かと訊かれれば、それがHoward Bensonという答えに異論を唱える人は少ないだろう。え、誰?と思った人は、少なくとも現代USロック・シーンには縁のない人だと自覚してほしい。
Howard Bensonが一般的に注目されたのは03年、COLD『YEAR OF THE SPIDER』(#2/'03)やHOOBASTANK『THE REASON』(#3/'04)だろう。しかし後述するけど2位か3位のアルバムがやたら多いな。適度にポップでヘヴィ、新世紀産業ロックのフォーマットを確立した彼は、アメリカン・アイドル・バンド(←変な表現)DAUGHTLY『DAUGHTLY』(#2/'06)の商業的成功で不動の地位を築いていった。
そんな彼がディケイド最後の年になって止まらない。前述のDAUGHTLYの2nd『LEAVE THIS TOWN』、彼らにとってはアメリカン・アイドルの大先輩Kelly Clarksonの大復活作『ALL I EVER WANTED』(一部のみ担当)が共にUSチャート1位獲得、そして勢いは更に加速し、次々とヒット作を生み出している。と、ここまで書いて疑問に思う人はいるだろう。かつてのTimbalandやTHE NEPTUNES、最近のJim JosinらHip Hop系プロデューサーはその数倍の仕事をこなしているのではないかと。
しかし基本的に楽曲単位で仕事を引き受け、ラッパーだけスケジュールを押さえれば良いHip Hopと違い、ロック・バンドの場合プロデューサーはバンド・メンバーとレコーディング中つき合わなければならず、自由度は格段に低い。にも関わらずここまで仕事をこなすのはどれだけ
安請合激務なのだろうか。加えて彼の仕事ぶりには以下の特徴がある。
・ほとんど似たようなバンドしか手がけず
・ほとんど同じ時期にリリースされ
・ほとんど同じチャートアクションを残す
ということでひとくちレビュー番外編として、最近のリリースの中から彼が手がけたアルバムを紹介していこう。
■SKILLET『AWAKE』(#2/'09)

まずは8月に発表されいきなり2位に登場したメンフィスのクリスチャン・バンド。前作が50位内にすら入らなかっただけでなく、新作から目立ったエアプレイ・ヒットも出ていないことを考えると、ほぼ固定票でこれだけ伸びたということか。実はこれが9作目のベテランだけど。
元々ゴシック/シンフォニック色が強かったのが、Howard Bensonによってシンプルなリフと派手なドラムの構成が前面に出て特徴であったストリングス(的なキーボード)は後退。加えて「Hero」や「Awake」では新加入の女性ドラマーによるヴォーカルが良いアクセントになって、かなりキャッチーな作風に転じている。
しかし男女2名づつの編成というだけあって色々と。そもそも作曲とヴォーカルをこなす男ギターがバンドの創設者だが、そこに女ギターと女ドラムが加入。すると男ギターと女ギターが結婚し女ドラムが脱退。さらに後任のドラムも女(18歳の美人)でしかもパートヴォーカルの座を女ギターから奪い、裏ジャケでは嫁である女ギターを差し置いて男ギターの横に立っているという。いろいろ憶測呼びそうな遍歴ですね。
■THREE DAYS GRACE『LIFE STARTS NOW』(#3/'09)

やはりHoward Bensonが手がけた前作『ONE-X』から3年振り。チャート的には前作を上回る3位につけた3DGの新作。実際はこの3年の間に
素晴らしい来日公演やAPOCALIPTICAのアルバム(これもHoward制作)にヴォーカルのAdamが参加してヒットを飛ばすなどのイベントがあったせいか、あまり久々感はないのかもしれないけど。
ジャケの雰囲気は変わったけれど今回も前作の路線を踏襲。相変わらず言いたいテーマを絞って何度も同じことを繰り返す歌詞や、それを生かすシンプルなメロディは健在。バンドの演奏力/表現力も上がったようで、ツインリードのギターソロやシャッフル・ビートの明るいナンバーなど新境地もあり。ただし1stの「I Hate Everythig About You」や2ndの「Animal I Have Become」みたいな強い印象の曲はないか。エアプレイも以前ほど爆発的でないので、次作は苦戦するかもしれません。
■CREED『FULL CIRCLE』(#2/'09)

お次はCREED。単に再結成されただけでなく、2nd発表後に脱退したBrian Marshallも密かに復帰しています。しかし何もMichael Jacksonと同じ週にぶつけなくても...そんなに2位が欲しいのか。
一般的にバンドの再結成というと落ち目で解散→初心に返ってというパターンが多く、したがって再結成後の作風は初期に近いものになることが多い。しかしCREEDは別に落ち目になって解散したわけじゃないので(ヴォーカルのご乱心に他のメンバーがついていけなくなった)、前作『WEATHERD』の勢いをそのまま持ち込んだ形となった。
過去3作を手がけていたJohn Kurzwegの暗くこもった音がバンドのイメージを決定づけていた部分もあり、Howard Bensonがどうアップデートするか期待していたが、はたして明るく切り開くHoward流の音像はきちんと成立している。しかしバスドラ連打やムダなベースの重低音もちゃんと生かされており、その辺りバンドのキャラクターを生かしているということか。というよりScott Stappの暑苦しいヴォーカルがあれば充分CREEDなんだけど。
考えてみれば、今Howard Bensonが手がけるコンサバ・ヘヴィ・ロックのフォーマットは10年以上前にCREEDが確立したものだし、彼らが活動休止したからこそNICKELBACKがここ数年デカい顔をしているという話もある。2009年の今、CREEDが再び王道ロックの意義を問うということか。ちなみにMark Tremontiのギターはこれまでになく目立っており、「再結成は嬉しいけどホントはALTER BRIDGEの方が良かったな」という少数派の人たちも満足できるでしょう。
■FLYLEAF『MEMENTO MORI』(#?/'09)

最後は昨日リリースされたばかりのテキサスのクリスチャン・バンドFLYLEAF。ということでチャート順位はまだわからないものの、デビュー作である前作からシングル「All Around Me」TOP40ヒットとなりアルバムもミリオン達成なので、今作のブレイクも充分ありえるでしょう。ちなみにアルバムタイトルはラテン語の宗教用語。
このバンドは前作もHoward Bensonプロデュースで、そういう意味では(3DG同様)相性は良い。ただ、前作の「I'm So Sick」でみられたヴォーカルのLaceyがウィスパリングからスクリームに一転するような衝撃はなく、すっかりメジャーフィールドに移行したということか。曲調もこれまで(というか1枚しか出してないけど)になくバラエティに富み、ニューウェイヴ調の「Missing」(おそらく次のシングル)はかなりのヒットが狙えそう。しかしLaceyのヴォーカルはかなり表現力があるのだが、いかんせんメロディのインパクトが弱くヴォーカルを生かしきっていない。SKILLETと合体すれば良かったのに。
11/23追記:初登場8位でした。年末シーズンじゃなければもっと上位だったかもしれませんね。
Howard Bensonはこの後もHAWTHORN HEIGHTS久々の新作など話題作を抱えており、しばらく多忙な日々が続くだろう。くれぐれも体には気をつけて。