鬱病克服の絵本、兵庫県立大准教授が上梓 

August 25 [Wed], 2010, 17:50
 近年増加傾向で“心の風邪”ともいわれる鬱病(うつびょう)の克服体験を、兵庫県立大の准教授が『しあわせというやまい』という絵本にまとめた。周囲に支えられて回復するまでの体験を、やさしいタッチの絵と文章でほのぼのとつづっている。裏表紙に180円切手を張れば、そのままメッセージカードとしても郵送でき、絵本は「病気になった自分を気にかけてくれる人は必ずいるはず」と読者を励ましている。

 絵本を作製したのは、兵庫県立大環境人間学部准教授の阿久澤麻理子さん(46)。

 阿久澤さんが鬱病の症状を自覚したのは4年前。体が停電したような激しい疲れに襲われ、次第にベッドから起きあがれなくなった。はうように出勤しても、90分間の講義が続かない。私生活でも料理や片付けができなくなり、自宅はゴミだらけの状態になった。

 当時はシングルマザーとして2人の子供を育てながら、人権教育の研究者として論文作成や学生の指導にも追われた。弱音を吐くことを自分に許さず、叱咤(しった)し続けた末の病。「『踏ん張ればなんとかなる』と走り続け、抑えつけていた感情が吹き出した」と振り返る。

 症状を感じてからも病を認めることに抵抗を覚え、ためらいの気分から、あえて病院も自宅から遠い場所を選んだ。

 症状が回復に向かったのは、ようやく周囲に病を伝えることができるようになった半年後だった。

 病気や仕事の辛さを、友人らが時には共に食卓を囲みながら根気よく耳を傾けてくれた。同じ病に悩む人との出会いにも恵まれ、いつしか自分をさらけ出して話せる人間関係を幸せに感じるようになった。

 こうした体験をもとに、絵本では、馬車馬のように働いていた登場人物が病に倒れ、友人や同じ病を抱える人たちとの交流を通じて回復するまでを優しいタッチの絵とともに静かにつづっている。

 仕事や生活に悩む人に、そばに寄りそう気持ちをそっと伝えられるように、絵本はそのままメッセージカードとして使えるカードサイズにしてある。

 厚生労働省によると、鬱病などを含め、自分の感情をコントロールできない「気分障害」の患者数は、平成8年の約43万人から、20年には104万人に増加。鬱病との関連が深いとされる自殺者数も、平成10年以降、12年連続で3万人を超えている。

 阿久澤さんは「人間は1人で頑張るのは限界がある。辛いとき素直にSOSを出せたら、助け合う中でいつか幸せを感じることができるかもしれない」と話している。