ある双子の兄弟の話 最終話 

2007年07月20日(金) 0時17分
デリーに判決が下ってから長い年月がたち
人々がすっかりデリーを忘れた頃
街で小さないざこざがあり
ある年老いた男が捕まった。

事件自体はささいな物であったが
取り調べでこの男が
昔、人を殺したことを白状した。

そのことはテリーの耳に入り
テリーはその男の話から
薬屋を殺したのがデリーではなく
この男だったことを突き止めた。

それによってデリーは釈放されることとなった。

すっかりおいたデリーは
小さな荷物一つを持って
出所した。

その姿は長い苦難にさいなまれ
やつれ、老いてやっと歩いているようだった。

刑務所の門を出たデリーが
久しぶりに外の風に吹かれていると
身なりの立派な紳士が
デリーに近づいてきた。

テリーだった。
二人はしばらく何も言わずに見つめ合い
お互いにお互いの肩を抱き合ってただただ
涙を流した。

何も言葉にならなかった。
それでもやっと巡り会えた
この世でたった二人の兄弟だった。

二人は待たせていた馬車に乗り
デリーの母親の墓に向かった。

「かあさん。やっと来ることが出来ました。
 今まで親不孝ばかりですみません。
 本当に・・本当に・・・。」

それ以上は言葉にならなかった。
ただただデリーは母の墓の前で泣き崩れていた。

二人はまた馬車に乗ってテリーの家へ向かった。
家では老いたテリーの両親が
デリーのことを待ちこがれていた。

待ちに待ったもう一人の息子に
なんて声をかけよう。
デリーは助けてあげられなかった私たちを
許してくれるだろうか?

二人の胸の中は少し複雑だったが
それよりはやく会いたい気持ちで一杯だった。

デリーが刑に服してすぐ神父様が亡くなった。
神父様は最後までデリーを心配していた。

神父様を看取ってから
メアリーは自らの意志で修道女となった。
そして毎日デリーと神父様のために祈り続けていた。

デリーを載せた馬車が
テリーの家の門に付いたとき
テリーの両親は待ちきれずに門まで出てきた。

しかし馬車の扉はなかなか開かなかった。
二人が顔を見合わせ馬車に近づこうとしたとき
扉が開きテリーが降りてきた。

テリーは両親の方を見ながら
呆然と立ちすくんでいた。

その様子はただごとではないように見えた。
その時テリーの目からひとすじの涙がこぼれるのを
テリーの両親は見た。

二人がテリーに声をかけようとした時
急にテリーが激しく慟哭した。

馬車の中にはデリーが少し微笑んだ顔をしながら
眠るように座っていた。
その目はもう二度と開くことはなかった。









ある双子の兄弟の話 その15 

2007年07月12日(木) 15時17分
逮捕されて留置所に入れられてから
デリーははじめ死ぬことばかりを考えていた。

そのうちデリーはいろいろなことを考えはじめた。
優しかった母が実の親ではないということ。
自分が犯した罪のこと。
そしてメアリーのこと。
神父様のこと。

自分の人生はいったい何なのか?
何のために自分は生まれてきたのだろうか?
デリーにはその答えはわからなかった。

ただ、やさしかった母と一緒に生きていたあのころ
貧しいながらも幸せだった。

教会でメアリーと神父様のもとで暮らしていた頃も
幸せな日々だった。

幸せだったことを胸に抱いて
後は運命を天に任せよう。
潔く罪を認め天に従おう。

デリーの心はもう何事にも動じなかった。


一方テリーは後悔の日々を送っていた。

メアリーに対する愛情のために
知らなかったとはいえ
生き別れたたった一人の肉親
兄弟を陥れたこと。
人として最低なことをしてしまった。

テリーは自分が許せなかった。
そしてそんな自分に耐えられなかった。

だがテリーも嘆いてばかりいるわけではなかった。
一人でデリーの事件を再調査し始めた。
だがいくら調べてもデリー飲む実につながる証拠は出てこなかった。


判決は下された。
最悪の結果には成らなかったものの
終身刑という重い刑がデリーに科せられることとなった。



ある双子の兄弟の話 その14 

2007年07月10日(火) 20時41分
いよいよデリーに判決が下されるときが来ました。

裁判長であるテリーの父は
複雑な気持ちでデリーを見下ろしていました。

「この子もまた私の子!私の息子なのだ。」

そう思うとデリーがこれまで歩んできた
不幸な人生が不憫で不憫でなりません。

テリーの母もまた胸が切り裂かれるような思いで
デリーのことを見つめていました。

見れば見るほどその横顔はテリーと瓜二つです。
なのにあまりにも境遇が違いすぎるデリー。

「できることなら今ここで抱きしめてあげたい。
 かわいそうな子、息が詰まるほど愛おしい子。」

だが二人がどんなに深くデリーを愛しんでも
判決を変えることはできなかった。

その決定はたとえ裁判長であろうとも
変えることではなかった。

証拠の品々はどれもデリーを
犯人とするものになっていた。





ある双子の兄弟の話 その12 

2007年07月01日(日) 0時55分
デリーに判決が下される日
テリーの両親はそれぞれ苦悩していた。

デリーとテリーが兄弟だとわかった今
テリーの母はテリーに対しても愛しさを感じずにはいられなかった。

そしてテリーの父はデリーを
何とか助けたいと思わずにはいられなかった。

二人にとってはデリーもまた自分の子供そのものだった。
その子供が犯罪者であるなどと
信じることが出来なかった。

しかし今日、テリーの父はテリーに判決を下さねばならない。
そのことが、我が身を切り裂くよりもっと辛かった。

「あなた・・・デリーって人は・・・
いえ、あの子はどうなるんですか?
本当に罪を犯したんでしょうか?私には信じられません。」

「証拠はそろってしまっている。
私にはどうすることも出来ないんだ・・・
たとえあいつが息子だとしても・・・。」

そんな二人の苦悩した会話が父の書斎から漏れて来た。
それをたまたまテリーは耳にしてしまった。

「あいつが息子?・・・どういうことだ?
俺の兄弟ということか?」

愕然とするテリーに、さらに追い打ちを掛けるような
二人の会話が聞こえた。

「あの日、私たちが海から助け上げた子供が
もしテリーではなくデリーだったら・・・
今頃テリーが・・・。」

「よさないか!考えても仕方のないことだ。
すべては運命なのだ。」

「あの子が罪もないことで裁かれるのが運命ですか?
いいえ私にはわかります。私はテリーの母親です。
デリーがテリーの兄弟だと言うことは
デリーも私の子供なんです。」

それを聞いたテリーはいつの間にか家を飛び出していた。
そしてなにも考えられない状態のまま
ふらふらとさまようように歩いていた。
その足はメアリーのいる教会へと向かっていることにさえ
本人は気づかなかった。


そのころデリーは母を思っていた。
何があってもいつも優しく、
苦労して自分を育て死んでいった母。
その母が本当の母ではないと言う事実は
とてもデリーには受け入れられることではなかった。

「母さん・・・母さん・・・。」

デリーは空を見つめうわごとのようにただ
母を呼んでいた。

誰がなんと言おうと、事実がどうであろうと
自分の中に母と呼べる人はあの母一人だった。

本当の母親は誰なのか?
どうして自分はあの母親にゆだねられたのか?
そんなことはあの母の愛情の前には
どうでもいいことだった。

そして命をかけて自分を育ててくれた母に
報いることの出来なかった自分の人生を嘆いた。

いつの間にか外は雨が降り始めていた。
その雨はそれぞれの心まで濡らす雨であった。

ある双子の兄弟の話 その11 

2007年06月29日(金) 14時11分
コンコン!
扉がノックされ
「どうぞ!」
とテリーの父親が答えた。

扉が開くとそこには青ざめたテリーのは母が立っていた。
母は部屋にはいると矢継ぎ早に言った。

「あなた、あれを良く見せてください。
 法廷に提出されたあのよだれかけとロケットを!」

そのただならぬ言い方にテリーの父は
「どうした?」
と聞いた。

「見せてください。みせて・・・。」
テリーの母はうわごとのように言った。

テリーの父は机の引き出しから
今し方預かった証拠の品である
デリーのよだれかけとロケットを手渡した。

それを手にした母は震えながらつぶやいた。
「間違いないわ」

その常人ではない態度を見てテリーの父は訪ねた。
「いったいどうしたというんだ?」

「あなたは忘れたんですか?
 あの日、流されていたテリーが身につけていたよだれかけと
 首にかけられていたロケット。」

その言葉にテリーの父親も愕然と成った。
「まさか・・・そんな・・・どういうことだ?」

「私にもわかりません。でも・・・おなじなんです。
 このよだれかけも、この刺繍も、ロケットも
 そしてこのロケットの写真も・・・。」

「それじゃあ・・・あの男は・・・
 あのデリーという男は・・・。」

二人はお互いにお互いの顔を見合わせながら
しばらく凍り付いたように立っていた。

「ああどうしたら良いんでしょう」
 
「おお!神よ。」

二人は愕然とするばかりだった。
そしてただただ立ちすくむばかりだった。


そのころテリーはメアリーのことを考えていた。

「これであの男もおしまいだ。
 メアリーも自分の愚かさに気づくだろう。
 でも案ずることはない。
 私の愛こそが君を救えるのだ。」

真実を知らないテリーは、一人有頂天になっていました。

ある双子の兄弟の話 その10 

2007年06月25日(月) 2時56分
デリーが捕まってからというものメアリーは
ほとんどの時間を祭壇の前で祈りながら過ごしました。

神父様は、飲まず食わずでろくに眠りもせず
ただひたすら祈り続けるメアリーが不憫でなりません。

「メアリー、神様はきっとデリーを救ってくださる。
 だが今のままじゃデリーが戻る前にお前が倒れてしまうよ。
 せめてスープだけでもお上がり」

そんな優しい神父様の言葉もメアリーには聞こえません。
ただただ一心に祈り続け、メアリーは日に日にやつれて行きました。

テリーは毎日のようにメアリー目当てに
教会に通うようになりました。

でもメアリーは振り向いてもくれません。
そして病人の様にやせこけてゆきながらも
一心不乱にデリーのために祈り続けるメアリー。
その姿を見てテリーはデリーを激しく憎みました。

「一刻も早くデリーを死刑にし
 メアリーにあきらめさせなければ・・・。」
そう思いました。

そしてデリーの裁判が開かれました。
ありとあらゆる証拠が挙げられ
そのどれもがデリーを極悪人に仕立て上げてゆきました。

「教会に逃げ込み村人に尽くしているふりをしたのも
 すべては自分の犯した罪を欺くためである。」
検事や警察官は口をそろえてデリーをひどく言いました。

それを聞いて人々は今までさんざん助けられたり
仕事を手伝ってもらったのにもかかわらず
デリーを悪く言いました。

「人の言い神父様やメアリーまでだましやがって
 血も涙もない極悪人だよ。」
人々はデリーをすっかり悪人と決めつけていました。

それでも神父様とメアリーだけはデリーの無実を信じ
心の中で神に祈っていました。

検事はさらにデリーも知らなかった
デリーの生い立ちも語り始めました。
「そしてデリーは病気の母親も見殺しにしたのです。
 それはこの母親が実の母ではないことを
 デリーは知っていたからに違いありません。」

それを聞いてデリーは
「うそだ!そんなことでたらめだ。」と叫びました。
彼の優しかった母が実の母親でないなんて
初めて聞いたデリーにはとても信じられなかったのでした。

「証拠としてこれを提出します。」
そう言うと検事は“デリー”刺繍の入った一枚のよだれかけと
小さなロケットを裁判長に差し出しました。

たまたまその日傍聴席にはテリーの母が来ていました。
裁判長として裁判を開く夫の姿を見るためでした。

テリーの母は初めてデリーを見たときに
どこかテリーに似ている気がしていました。

テリーの母は差し出されたデリーのよだれかけやロケットを見た時
驚きのあまりからだが震えるのを押さえることが出来ませんでした。

そんな母を見てテリーは不思議に感じました。
「かあさん・・・。」
テリーは母に声を掛けようとしましたが
母はただただ驚きとショックに激しく動揺するばかりでした。



ある双子の兄弟の話 その9 

2007年06月22日(金) 17時01分
デリーが退院の日
メアリーは朝からそわそわ落ち着きませんでした。

デリーが入院して
二人でやさしい神父様のもとで暮らすことが
どんなに幸せなことか改めて知らされた気がしていました。

でもまた今日からその暮らしに戻れると思うと
メアリーはうれしくてたまりませんでした。

迎えにきてくれた神父様とメアリーにつきそわれて
ドリーは病室を後にしました。

頭や顔の一部を覆っている包帯はまだ取れないものの
ドリーの身体はすっかり元気になっていました。

3人がお世話になった看護師さんやドクターに
お礼やあいさつをしていると
突然4、5人の刑事や警察官がやってきて
ドリーたちを囲みました。

「ドリーだな!
 海辺村で薬屋が殺された件で
参考人として 署まで来てもらう。」

一人の刑事がそう言うと
警察官がドリーを取り囲みあっという間に
捕まえて連れて行こうとしました。

「待って下さい!刑事さん。これは何かの間違いです。」
神父様は必死に刑事に言いました。

「ドリー、ドリー」
メアリーはただただドリーの名を呼ぶ事しかできませんでした。

「メアリー、神父様!」
ドリーは数人の警察官に引きずられ
二人の名を呼びながら連れて行かれてしまいました。

突然の出来事に力を失いへたりそうになるメアリーを
何者かが後ろから抱き留めました。


それはまだ癒えない顔の傷をサングラスで隠した
テリーでした。

「お嬢さん 大丈夫ですか?」
優しくメアリーを支えるテリーでしたが
実はデリーを警察に告発したのはテリーでした。

メアリーを思うあまりデリーのことを調べさせ
父親の友達の警察署長に密告したのでした。

警察署に連れて行かれたデリーは
それから長く厳しい取り調べを受けました。

そうしているうちに
皮肉なことにデリーは記憶を取り戻し始めていました。

そしてあの薬屋での出来事の記憶も
徐々によみがえってきました。

「僕は・・・僕はひ・と・ご・ろ・し・・・。」

デリーはその時初めて
失っていた真実の恐ろしさを知ったのでした。

そしてデリーは自分の犯した罪の重さにさいなまれ
狂ったように叫びながら暴れ出しました。

それを数人の警察官に取り押さえられ
そのまま暗い独房へとぶち込まれてしまいました。

そのころテリーの方は
両親と豪華な夕食を取っていました。

「なんでも何年も未解決だった事件が
やっと片づくと所長がたいそうご機嫌だったよ。」
と何気なく父が言いました。

「そうですか、それは良かった。」

テリーはそう答えながら
「これでメアリーと自分の間に邪魔者はいなくなったぞ!」
と思っていました。

今のテリーには、メアリーのことがすべてでした。
 

ある双子の兄弟の話 その8 

2007年06月18日(月) 2時11分
テリーが気付くとそこは病院でした。

特別室のベットの傍らには
心配そうな母親と父親の姿がありました。

目を開けたテリーの手をしっかりと握りしめ
母は涙を流していました。

そんな母の肩に手を置いて父は言いました。
「もう大丈夫だ!よかった。良かったなテリー。」

テリーは自分がなぜここにいるのかを思い出しました。
そしてあの娘のことが気になりました。

「あの娘は?とうさん、あの娘はどうなりました?」
と訪ねました。

「あの娘さんなら大丈夫だよ。
ただ、連れの人がひどい怪我で
娘さんがつきっきりで看病しているよ。」
そう父親が言いました。

テリーはそれを聞いてホッとしました。


そのころデリーは
ケガと高熱にうなされつつけていました。

頭の傷は思いのほか深く
なかなか意識の戻らないデリーを
メアリーは必死に看病しました。

傍らでは神父様が一心に神様に祈っていました。
その祈りが通じてか
5日目の朝、ようやくデリーの意識が回復しました。

それからメアリーの看護の甲斐あってか
デリーは日に日に元気を取り戻しました。

それでも起きあがるにはまだ時間を要しましたが
時々メアリーと楽しそうに話が出来るようにまで回復しました。

そんな二人の様子を遠くから見ている一人の人物がいました。
テリーでした。

テリーの傷は完全に治ったわけではありませんでしたが
重傷と言うほどではなく
通院で治療をしていたのでした。

テリーは病院に来るたびに
メアリーの様子をのぞいていました。

そしていつしか自分がメアリーを愛していることに
気が付いたのでした。

それに付けメアリーとメアリーが看病している男の関係が
気になり始めていました。

はじめは黙って遠くから二人を見ているだけでしたが
とうとう思いあまって父の部下の一人に
その男のことを調べさせていました。

テリーはメアリーを愛しく思えば思うほど
その男のことが気になりました。

そのうちにあの男さえいなければ
メアリーと仲良くなれるのにとさえ思うようになりました。

初めての狂おしい思いに
テリーはまともな考えを失いかけていました。

メアリーもまた
デリーに対する自分の気持ちに気づき始めていました。

それは友達に対する気持ちとは少し違っていました。
それはメアリーにとっても初めての気持ちでした。

自分の中にどれだけデリーの存在が大きいか
そしてそれが“愛”という物だと
メアリーは自覚し始めていたのです。

しかしこのとき3人は
それぞれの悲しい運命が待っているとは
知るよしもありませんでした。











ある双子の兄弟の話 その7 

2007年06月15日(金) 10時51分
メアリーがドリーを捜して街をさまよっていると
酒瓶を持った酔っぱらい達がメアリーに近づいてきました。

「これはこれはかわいいお嬢さん
そんなに急いでどこへ行くんだい?」

「おじさん達に酒を一杯ついでくれないか?
ついでに一緒に飲もうじゃないか。」

メアリーはとっさに後ずさりして
逃げようとしました。

すると一人の酔っぱらいが
すかさずメアリーの手を掴みました。

「逃げなくても良いだろう。
怖くなんか無いから」

メアリーは思わず行き交う人々に助けを乞いましたが
人々は面倒に巻き込まれたくないと
みんな見て見ぬふりをしました。

恐ろしくなってメアリーは叫びました。

するとその声を聞きつけてドリーが
メアリーを助けに来ました。

「メアリー、大丈夫かい!」
ドリーはメアリーを連れて逃げようとしました。

ところが酔っぱらい達は二人を取り囲み
ドリーを足蹴にすると、メアリーの手を
再び掴んで引き寄せました。

ドリーは必死で酔っぱらい達から
メアリーを守ろうとしました。


すると一人の酔っぱらいが
持っていた酒瓶でドリーの頭を殴り
さかびんが「ガシャーン」と大きな音を立てて割れました。

ドリーは頭からたくさんの血を流し
その場に倒れてしまいました。

そんなドりーをよそに
酔っぱらい達はなおもメアリーを囲み
いやがるメアリーにしつこく絡みました。

「何をしている。やめろ!」
激しく酒瓶の割れる音と助けを呼ぶメアリーの声で
駆けつけたのはテリーでした。

テリーはメアリーを引き寄せると
「か弱い娘に何をしているんだ。
さっさと消えてしまえ、ろくでなしども!」
と酔っぱらい達をにらみつけました。

ところが酔っぱらい達はそれを聞いて
逃げるどころかますます興奮し
二人を取り囲みました。

テリーは思わず上着を脱いで
立ち向かおうとしました。

しかしテリー一人ではかなうはずありません。
たちまち酔っぱらいたちに殴る蹴るの暴行を受け
テリーもその場へ倒れてしまいました。。

「ピピー、ピピー」

ようやくその時数名の警官が
騒ぎを聞きつけてやって来ました。

そして酔っぱらい達は全員
警官に取り押さえられ逮捕されました。

「ドリー、ドリー大丈夫?しっかりして、目を開けて!」

メアリーは泣きながら血だらけのドリーを起こそうとしましたが
ドリーは動こうとはしませんでした。

その声を少し離れたところで聞いていたテリーも
倒れたまま意識を失ってしまいました。

ある双子の兄弟の話 その6 

2007年06月10日(日) 2時14分
ドリーが助けた少女はメアリーと言いました。

幼いときに両親が山火事でなくなり
身寄りのないメアリーは教会に預けられたのでした。

メアリーは優しい神父さまの元で
働き者の愛らしい少女に育ちました。

でも村には同じ年頃の子供がいませんでしたので
メアリーはいつもひとりぼっちでした。

だからメアリーにとってドリーは
少し年上の唯一の友達に感じられました。

ドリーにとってもメアリーは妹のような存在でした。
そして二人は何をするのも二人一緒にするようになりました。

そんな二人の様子を神父さまはほほえましく思いました。
二人は神父さまの元で幸せな日々を送り
いつしかたくましい青年と美しい娘に成長していきました。

ある日二人は神父さまの使いで近くにある街の教会まで
ゆくことになりました。

初めて見る街の景色にメアリーはどきどきしていました。
いろいろな店が建ち並ぶ広い道。
たくさんの人の声や美味しそうなにおい。
何もかもがメアリーには珍しいものに見えました。

ところがドリーはなぜか怖いような悲しいような
不安にも似た複雑な気持ちを感じていました。

なぜなのか、何が不安なのかドリーにはわかりません。
ただ思い出せない昔と関係あるような気がしました。

神父さまの使いが終わったドリーは
はやく帰ろうとメアリーを促し足早に歩きました。

ところがメアリーは洋服屋の店先に飾られた
美しいドレスに見とれてドリーとはぐれてしまいました。

メアリーは行き交う人をかき分け
必死にドリーを探していると
一人の立派な身なりの青年とぶつかってしまいました。

メアリーは必死に青年に謝りました。
はじめは腹を立てていた青年でしたが
美しいメアリーを見て一目で惹かれてしまいました。

そしてメアリーに名前を聞こうとしたとき
メアリーは足早に人の群れの中に消えてしまいました。

青年は何とかメアリーを探そうとしましたが
追いつくことは出来ませんでした。

実はこの青年こそがドリーの双子の弟
テリーだったのです。

テリーもまた父の使いでこの街へ来ていたのでした。