千秋11 

2006年06月06日(火) 18時39分
何にも言わないの?彼の声は遠かった。
私は泣くのを堪えることしかできなかった。
もう、勝手にしたらいいよ。
突き放す言葉だ。

彼は私を家まで送って、帰っていった。
私はごめんなさい、とつぶやいて泣いていた。
ずっと泣いてた。

あんなにも私を好きだと言った彼。
好きになった途端に離れていった彼。
彼の手に入らないものなんてあるんだろうか。
どうしていいのかわからない、なんて気持ちは彼にないんだろうか。

自分の思うように行動できる彼には、自分の思いさえ定まらない私の気持ちなんて理解できないのだろうか。

千秋10 

2006年06月06日(火) 18時28分
翌日、バイトが終わってから彼に呼び出された。送るから、と車に乗った。
駐車場で停まったまま彼は口を開いた。なんで自分から何かしようとしないの?きつい口調だった。私を見る彼の目も失望したような蔑んだような目で、私はそんな彼を知らない。いつでも私を想ってる優しい目しか知らない。
怖い。
黙ったまま目を逸らした。
ホントに俺のこと好きなの?好きならもっと相手のこと考えて行動にしないの?
彼が何を言っても私は何も言えない。わからなかった。
ただ当たり前のようにそこにあったものが急になくなって、どうしていいのか、わからなくなってしまった。

寂しい。
悲しい。
側にいたい。
それしか考えられなかった。

千秋9 

2006年06月05日(月) 23時33分
謝らなきゃいけないのはわかってた。でも気持ちの説明ができなかった。

誕生日にもらったハート型のピアスを眺める。はずさなければならなくなるだろうか。
そう思うと怖くなった。
ごめんなさい、と一言だけのメールをいれた。

その日メールは返ってこなかった。

バイト先でも目を合わせることすらなくて、苦しかった。
帰り際、彼の携帯からストラップがはずされていることに気づいた。お揃いのストラップ。
なんだか頭がフラフラして帰り道に泣いてしまった。
離れていく。離れていく。心も体も彼は自由だ。私だけが引っ張られて落ちていく。
引き止め方を私は知らない。
いつも彼が与えてくれたから。離れていかれたら、私はどうすればいいんだろう。

千秋8 

2006年06月05日(月) 10時02分
どうしていいかわからなかった。
近づけないのに離れるのは寂しかった。

バイト先で他の女の子と彼が話していた。
胸がイタい。気持ち悪い。
嫉妬してる。
なんて声を掛けていいのかわからなくて、一人でバイト先を出た。

そういえば私は私から動かない。
デートでどこ行きたいって聞かれても答えられない。
みんなで遊んでいたときもソコにいただけで、ただ話しに相づちを打っていただけだ。
好きな場所も好きなコトも知らない。わからない。
つまらない私。

後ろから彼が追いかけてきた。
なんで黙って帰るの?そう聞かれて言葉に詰まった。
わけわかんないよ。
そう言って彼は行ってしまった。
失望したのだろうか。でもこれが私なのに。

その夜、彼からメールはこなかった。

千秋7 

2006年06月05日(月) 0時00分
デートをして以来、私は急速に彼を意識した。
今までも好きだった。だけど、このキモチは初めてだった。

10月になって大学が始まった。バイトが週末だけになる。
それでも彼は毎日、駅まで迎えにきてくれた。家まで送ってくれた。

バイトからの帰り道。手をつないで歩くのが急に恥ずかしくなった。普通に話している時の距離が近すぎる気がして、彼の顔が見れなかった。腕が触れると顔が熱くてぎこちなくなる。

近づけなくなった。

私の態度に彼は戸惑っていた。
どうしたの?と聞かれても答えられない。自分でも私に何が起きたのかわからなかった。
彼がキスを促す。顔が近付いた時、体が強張った。
あっ、と思った。私が謝る前に彼はごめんと言った。
キスをしないで帰ったのは初めてだった。

胸の奥の方がすくような感覚を覚えた。

千秋6 

2006年06月03日(土) 11時02分
彼はこまめにメールをした。毎日のように会って、帰ってメールをした。
態度も言葉も気の使い方も、女の子が気に入りそうなものだった。
彼が時折、髪を撫でてくれるのがとても好きだった。

夏休みが終わる日、初めてデートをした。昼から水族館に行って夜に観覧車に乗った。
手をつないで歩くことが嬉しかった。
観覧車の中で彼は怯えていた。高所恐怖症だと。乗ろうと言い出したのは彼だったから意外だった。観覧車の頂上でキスするのがデートっぽくてイイらしい。
私は初めて自分からキスをした。

彼が愛おしかった。

自分の知らない気持ちに少し戸惑い、怖かった。

千秋5 

2006年06月02日(金) 20時04分
翌日には付き合っていることが広まっていた。みんな彼が私を好きなことを知っていたらしい。

どうして私が好き?
そう聞くと彼は好みだからと答えた。見た目も性格も好きだと。
少し引っかかった。私をどんな性格だと思っているんだろ?

バイトは連日続き、休みはなかなか取れなかった。それでもバイトが終わってからみんなと離れて二人で会った。近くの公園での2時間。
何か話すわけじゃない。ただ側にいて抱きしめてキスをした。彼はひたすらに好きだと言い続け、私も少しずつ呼応した。
2時間は短かった。

千秋4 

2006年06月01日(木) 21時46分
家に着く少し手前の道で彼は足を止めた。どうしたの?と尋ねる前に彼は私を抱きしめた。
付き合ってほしいと言われた。
私はなんだかうまく頭が回らなくて理解するのに少し時間がかかった。話したこともない彼。みんなの中心にいる彼。誰からも好かれる彼。
そんな彼が私を見てる。
マジで好き…
真剣な顔。真剣な声。抱きしめられてる腕の感触。強い温もり。
興味があった。
彼に。付き合うことに。特別に想われることに。
いいよ、と返事をすると彼は嬉しそうに笑った。

私は興味本位だった。

千秋3 

2006年05月31日(水) 18時24分
それは突然だった。

いつもと同じように夜が明ける前にファミレスでみんなと別れた。その日、彼だけはそこにいた。
直接話したことはなかった。でも、知ってる。
みんなの中心的存在。
何か特別なことをするわけじゃないのにみんな見てる。惹かれてる。
才能だと思っていた。
私は彼が少し怖かった。本能的に。
いかつい顔でタバコを吸う、その姿は同い年に見えなかった。バニラの香りの真っ黒なタバコ。
一人タバコを吸っている姿は何かを拒絶しているようにも見えた。

一言声をかけて帰るべきかと思っていると、送るよと彼から声を出した。断る理由もない。隣に誰かいるのは心地良かったから。
ありがとうと微笑って私は歩き出した。彼は隣にいる。

千秋2 

2006年05月30日(火) 11時45分
始まりは彼からだった。

夏休み。私は初めてアルバイトをした。近所の飲食店で、みんな仲の良いバイト先だった。ただ、大学に行ってるのは私だけで、休学中やフリーターが多かった。
一週間もたつと仕事にも慣れて、私もみんなの輪に入れるようになっていた。ラスト作業が終わってから十数人で遊んだ。カラオケやボーリングに行ったりする事もあったけど、大抵ファミレスで時間を過ごした。夜更かしはワクワクした。話していることは無意味なことだ。ムダで下らなくて、楽しい時間。
居心地が良かった。

いつも夜が明ける前にみんな帰っていった。眠らなくていいことにホッとした。
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