0・想出
2007.04.14 [Sat] 22:33

山の中を寄り添うように歩く
二つの、影があった。

浅黒い肌に漆黒の髪

その中で際だつ
鮮やかな、蒼(ブルー)。





「――もう、少し」

女は枯れた声で言った

「――うん」

…少年が答える

「もう少しだから」

「うん」

「もう少し、だから
そしたら きっと――」

「…うん」

「きっと――」

「解ってるよ、母さん

絶対、大丈夫。

――今度こそ」

「…今度こそ。

今度こそ今度こそ」

女は反復する

「……母さん。」

「今度こそ、大丈夫なのよね

大丈夫なのよね?」

「大丈夫だよ。

――絶対、大丈夫」

息子の真っ直ぐな声に

女は弱々しく 笑んだ。






(今度こそ、神様)


少年は心の中で呟いた


(今度こそ 僕らに)


やつれた母の横顔を想って


(今度こそ――)






2007.04.14 [Sat] 22:41






「それでは――確かに」

事務的ともとれる 声

「はい、よろしくお願いします――さあ、君も頭を下げて」

ぐいっと頭を押さえつけられた、不格好な礼

頭を上げた後も、俯いたままの少年

漆黒の髪に、浅黒い肌

長めの前髪の間から蒼の
憤りの感情が滲んだ蒼の眼が、ちらつく

「お前!
神父様に失礼だぞ!
お前のようなモノを、引き取ってくださるんだ!」

少年は屈せず、男をきっと睨み返す

恰幅のよい禿げた男――神父は笑って言った

「御安心ください。
ここは、この『神の家』は、
全ての子どもに開かれていますから――

例えそれがこの――」

見下ろすような瞳
神父は少年を横目に言った

「『南人』でも――」

少年がその言葉に激昂する

「うるさい!!!」

「お前!やめろ!」

男は声を荒げた。

急に神父に飛びかかって、胸ぐらを掴んだ少年を引き剥がし、羽交い締めにする

「うっ…」

少年は抵抗の色を見せたが
…やがて俯いた

「ごほっ…だ…大丈夫です…
最初はみな反抗しますから…

君、怖いだろうけど――安心して大丈夫だからね」

(――何が安心だ)

少年は心の中で毒づいた

「君はもう私達の家族だよ」

(違う!!
僕に――僕に、

家族はもう いない)


――あの声が、耳に帰ってくる





『……今度も……
 今度も駄目だったね――』





「―――っ」

「君?大丈夫かな?
怖がらないでいい――」

肩に置かれた男の手が気持ち悪くて仕方がなくて

「触るな――!」

払って

「お前性懲りもなく――」

捕まえようとする村人の手をすり抜け


走った



――まだ

後ろで何か言っていたけど



――聞かない


今耳に響いているのは

いつまでも響いているのは

あの 声





『ごめんなさい……
ごめんなさいガリアン』







「母さ、ん……」

少年は

世界が憎くて、仕方がなかった
P R
最新記事
カテゴリアーカイブ
Yapme!一覧
読者になる