ハンカチ 

September 11 [Mon], 2006, 18:51
それはあるよく晴れた秋の午後のことだった。

空があまりにも透けるように青くて、普段は部屋で読書に耽っている僕も、
思わず戸外に誘われるほどだった。

秋の一日は過ごしやすいのでとても好きだ。

そんなわけでアパートを出て、愛読の一冊を片手に、秋の日が斜めにさす通りを大学に向かった。

大学では、僕はあまり知り合いがいなかった。
もともと大学とはそういうものかもしれないが、僕は特に、他人との接触が少ない方だと思う。
まあ確かに、眼鏡をかけて神経質そうにシャツ襟を立てた僕は、話しかけやすいタイプではないだろう。
よく同僚から「冷たそう」といわれるが、実際、表面上は冷たい印象を与えていると自覚もある。
あまり感情にまどわされたくない、という思いが黙っていても周囲には伝わるのだろう。
論理と博愛の思想があれば、僕は自分を正しいと信じていられる。
そのバランスを崩されることを、僕はどこかで恐れていたのかもしれない。

ほんとうに秋の風は心地よく、僕の中にやさしくしみわたるような気がした。
と、そのときだった、
はためく音とともに、視界がさえぎられる。

僕は予想外の出来事には、めっぽう弱い。
おかしいほど動揺して、はた目にも異様なほど慌てた。
よくよく確認すると、それは白い絹のレースのハンカチだった。
秋風で飛んできたものらしい。

焦ったのは何よりも、ハンカチから女性の香りがしたことだった。
やさしく白い花のような香り。どこか懐かしいような、はかない香り。
いまだ動悸を押さえるのに労しながら、手に取ってみた。
すると、端にイニシャルが刺繍してあるのに気がついた。
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