やさしいひかりとふしぎなきもち。 

November 28 [Mon], 2005, 19:54

「塑螺さんっ」

 私は空兎。トビネの女の子、こんなこと言ったら笑われそうだ。
 だっていつも私は、喋る時は「オレ口調」なんだから。

「……空兎さん?」

 お友達の、塑螺さんの島に遊びに行った。塑螺さんは読書が大好きで、きれいな栗色の、優しいトビネさん。
 私も読書が大好きだから、今日は私のお気に入りの本を持って行ったんだ。塑螺さんにも読んで、感想を教えてもらいたかったから。
 面白いから、と言って半ば強引に塑螺さんに本を渡した。私も、同じ本を持って塑螺さんのよこにすとん、と座る。
頭上では木の葉が風に揺られて、小さな演奏をしている。太陽の光は優しくて、このまま眠ってしまいそう。
 ふと横を見てみると、もう塑螺さんは本のページを捲っていて。慌てて私も読み始めた。

 静かに、静かに

 時間が流れてく。

 もう何度も読んだお話なのに、私は夢中になった。

 楽しいところでは、思わず顔がほころんで
 哀しいところでは、思わず眉がさがったり
 
 傍目から見れば怪しいんだろうけど、(本読んで表情変えてるなんて)気にしないことにする。
 その中に出てくる、髪がとても長い女の子。私とは違って何もかも女の子らしくて、少し羨ましい。
 そして、その子にはすてきな恋人がいる。その子のことを一番に考える、優しい優しいすてきな恋人。

 ――私もこんな性格の女の子だったら、何か変わっていたのだろうか?

 そんなことを考えてしまう。女の子に自分をムリヤリ当てはめて、恋人は誰かと考えてみた。

 ――……よくわからないけど、顔が紅くなってしまった。

 だって私の頭の中をよぎったのは、小説に出てくるかっこいい男の子でもなくて。

 ……よく知っている、片眼鏡をかけた――

「大変だね……」

 いきなり降ってきた塑螺さんの言葉に、私は驚く。
 何が大変なんだろう? その気持ちが声に出てしまった。

「え?」

 驚いたことによって、紅くなった顔が元通りになる。私は心の中で、塑螺さんに感謝した。
 何だかよくわからないけれど、塑螺さんは苦笑している。どうしてだろう?

 ――今日は温かくて優しい日だけど、とっても変な日。
   ……まさか恋人役に、モノクルを想像しちゃうなんて。
     私、疲れてるのかなぁ?

やさしいひかりとちいさなきもち。 

November 28 [Mon], 2005, 19:52

 今日は日差しが甘く優しい。
 ずっとあたっていたら、バターのように溶けてしまいそう。
 たまに吹く風が、木の葉を少し揺らす。いい音。

 ……こんな日は、散歩するのに丁度いい。


 僕はそんなことを思って、空兎の島に行った。

「空兎ー?」

 声を掛けてみる。でも、空兎は島にはいなかった。僕の想い人の、トビネの女の子――空兎はどこへ行ったのだろう?
もしかして、もう散歩に行ってしまったのだろうか。
 僕は空兎を探すことにした。でも、空兎は追跡されるのが好きじゃないから、偶然を装って探すことにする。

 空兎を追いかける魔法の呪文を唱えて、流れに身を任せた。
 ――すると、そこはお友達のトビネさんの島で。

「……空兎?」

 小さい僕の声が空気に混ざって消える。
 近くの茂みの中に入り、顔だけ出す。キョロキョロ辺りを見回していると、

「……」

 見つけた。空兎を。
 この島の住人さんの、落ちついた栗色のトビネさんの――塑螺さんと一緒に本を読んでいる。

 ――別にそれだけだったら、構わないのだけれど。

「……あの距離は……?」

 塑螺さんがこて、と首を空兎の方に傾けてしまえば。頭が空兎の肩の上に乗って。
――まるで恋人同士のような光景に。

 羨ましい。
 空兎の横で一緒に本を読んでいられる塑螺さんが。
 でも、少し憎い。
 空兎は、空兎は僕の好きな人なのに。
――できることなら、塑螺さんの位置に僕が座りたい。

 嫉妬。
 ――……はずかしいな……。

 何、嫉妬なんかしてるんだろう。
 こうやって、いつも顔さえ見せてくれない空兎の幸せそうな表情が見れて。

 ――それだけで、満足じゃないか?

 そう思ったとき、塑螺さんが呟いた。

「大変だね……」

 たぶん、僕の存在に気が付いたんだろう。でも、どうでもいい。このままここにいよう。

 僕は今、しあわせだから。

「え?」

 突然言われて、少し驚いたような空兎の顔。

 ――本当に、しあわせだ。
   ……その表情が塑螺さんに向けられているのは、ちょっと悔しいけど、ね。
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