近代文学の胎動(2) 

October 09 [Sun], 2011, 22:47
2、明治30年代の文学(1)

・日清戦争の勝利 → 国権思想の勃興と資本主義機構の発展をもたらす
                  ↓
               反面、貧富の格差の広がり
                   → 労働問題や社会問題への関心も高まる

明治31年 安部磯雄・片山潜らを中心にキリスト教徒を結集した社会主義研究会が結成

横山源之助
 『日本の下層社会』(明治32)、『内地雑居後之日本』(明治32)
 → 明治の労働者階級の実態を伝えるルポルタージュ
       
      ↓
 このような社会状勢の変化は文学の世界にも反映する
→ 多方面にわたる問題意識を展開
    ↓
 田岡嶺雲、高山樗牛の評論、悲惨小説および観念小説と呼ばれる作品群

・田岡嶺雲
  雑誌「青年文」(明治28年創刊)を拠点に、硯友社によって支配されている既成文壇を批判+下流細民の生活を直視する必要を訴えた
    = 悲惨小説・観念小説に強力な理論的支柱を提供し、社会主義文学への道程を切り開いた先駆的役割

・高山樗牛
  国権思想に密着した評論活動
一流総合雑誌「太陽」の文芸部主任に迎えられる
    ↓
 国権の伸張に自我拡大の欲求を托する浪漫的な国家至上主義(日本主義)を提唱
    ↓
 その後、ニーチェの影響をもとに、個人主義的な本能生活の充足を強調する美的生活論へと転じる
    ↓
 さらに晩年の日蓮研究へと三転
   = そのめまぐるしい思想的屈折は、日清・日露両戦役間の分g買うにおける過渡的性格を、もっとも端的に示している。

・広津柳浪
 日清戦争後、社会の矛盾に着目し、庶民生活の暗黒面に取材した悲惨小説とよばれる一連の作品を書く
  『変目伝』(明治28年)、『黒蜥蜴』(明治28)、『亀さん』(明治28年)
    → 身障者や異常な事件に執着するやや偏奇な作風がわざわいして、広い社会視野を持つにいたらず、30年代における社会小説の露払い役をつとめたにとどまった
  ↓
 柳浪の悲惨小説は文章技巧を重んじて男女の恋愛を模様的に描くことに専念していた硯友社系文学に欠けていたもうひとつの可能性を開くことになった
  → 心理的洞察を加えた『今戸心中』(明治29)

・川上眉山、泉鏡花(硯友社系)→社会の不合理に対する抗議を観念的に提出した観念小説と呼ばれる作品を書く

川上眉山『書記官』(明治28)、『うらおもて』(明治28)
泉鏡花『夜行巡査』(明治28)、『外科室』(明治28)

尾崎紅葉も、柳浪・眉山・鏡花らの進出に刺戟されて、金銭と人間の愛情との葛藤を正面からとりあげた畢生の大作『金色夜叉』(明治30〜35)の執筆に着手

・徳田秋声『藪柑子』(明治29)、小栗風葉『亀甲鶴』(明治29)ら硯友社系の作家が発表して文壇的地位を確立

・泉鏡花→ 過渡的性格の濃厚な明治30年代に独自の浪漫的な文学世界を構築することに成功し、その後も名声を維持
  ↓
 権力者・偽善者への素朴な憤りと美的なるものへの憧憬は、その後の鏡花文学を支える二本の柱

少年期における母なるものへの思慕をメルヘン風に綴った『照葉狂言』(明治29)
幽怪な奇想を縦横に展開した『高野聖』(明治33)
紅葉との確執を素材に庶民の反骨と侠気を描ききった『婦系図』(明治40)
   ↓
 いずれも天性の浪漫主義者としての鏡花の本領が遺憾なく発揮されている名作
      +
 マニエリスムの文体を駆使して幻想と神秘の世界に読者を誘うその変幻自在な想像力のはたらき


P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:雪村
読者になる
2011年10月
« 前の月  |  次の月 »
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
最新コメント
Yapme!一覧
読者になる