まだその名を継ぐに

December 09 [Fri], 2016, 10:58
エランドが馬に会いにこの階段をおりていった可能性を考えてみたが、それよりも、この深い割れ目の端を囲む広い岩棚をたどって行ったほうがよさそうな気がした。数百ヤードと行かないうちに、曲がりくねった暗い通路の入口から人声が聞こえてきた。声があちこちにこだまするので、言葉をききわけるのはむりだったが、ガリオンには声のひとつがエランドのもののように思えた。ガリオンは通路にはいって、その音だけをたよりに進んでいった。
 通路は使われた形跡がなく真っ暗だったので、はじめのうちガリオンは片手で岩肌をさわりながら少しずつ前進した。だが、角を曲がると、前方のどこからか光がもれてくるのが見えた――この暗い洞窟の世界を通常照らしている緑がかったかすかな燐光性の光とはまったくちがう、不思議なびくともしない白い光輝だった。やがて通路は急角度で左に折れ、角を曲がると、エランドが長身の白い長衣をきた人影と話しているのが目にはいった。ガリオンは目を丸くした。かれが見た光輝はその人影から出ているのだ。ガリオンは超越的な畏怖すべき存在を感じた。
 輝く人影は振り返らずに、おだやかな落ち着いた声で話しかけた。「よくぞきた、こちらへくるがよい、ベルガリオン」
 無言で従いながら、ガリオンは体がふるえているのに気づいた。そのとき、白衣の人影が振り返り、ガリオンはウルその人の時を超越した顔を見ていた。
「ここにいるエリオンドに、かれの前に横たわる務めについて、指示を与えていたのだ」神々の父は言った。
「エリオンド?」
「それが本当の名前なのだ、ベルガリオン。少年期の子供じみた名前を捨てて、真の名を名乗るときがきたのだ。おまえがただのガリオンを隠れみのにしていたように、かれもエランド?という名を隠れみのにしていた。英知のなせるわざだ。なぜなら偉大なる務めをひかえている者が、いたらぬときに真の名をあかすと、しばしば危険をもたらすことがあるからだ」
「いい名前でしょう、そう思いませんか、ベルガリオン?」エリオンドが誇らしげに言った。
「すばらしい名前だ、エリオンド」ガリオンは同意した。
 ガリオンが鞘におさめて背中にしょっている大剣の柄《つか》のうえで、〈珠〉が青く光ってウルの白い光輝に答えると、神はうなずいて石を認めた。
「おまえたちふたりに務めが課せられた」ウルはつづけた。「そしておまえたちに同行する仲間にも。これらの務めは〈光の子〉と〈闇の子〉がふたたびまみえ、対決をするときに、完了されねばならぬ」
「どうかお教えください、聖なるウル」ガリオンは言った。「――わたしの息子は無事でしょうか?」
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