更新料 不当判決

2011年07月15日(金) 15時57分
 最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は、15日、3件の更新料返還訴訟について、更新料は消費者契約法10条により無効であるとはいえないとの不当判決を言い渡しました。毎日新聞その1 その2 NHKその1 その2 日本テレビ TBS 読売新聞 産経新聞その1 その2 京都新聞
 判決は、「更新料は、賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するもの」との見解を示します。しかし、使用の対価である賃料以外に、「使用を継続するための対価」なるものが観念できるのでしょうか。
 しかも、判決は、更新料が「民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」であるかどうかの判断については、こうした法的性質に照らし、民法等の適用される場合に比較して消費者である賃借人の利益をどう侵害しているのかの具体的な検討もなしに、単に、「更新料の支払にはおよそ経済的合理性がないなどということはできない」とか、「一定の地域において、期間満了の際、賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であることや、従前、裁判上の和解手続においても、更新料条項は公序良俗に反するなどとして、これを当然に無効とする取扱いがなされてこなかったことは当裁判所に顕著である」などと述べて、「更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃借人と賃貸人との間に、更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に、賃借人と賃貸人との間に、更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない」などと結論づけます。
 しかし、第一に検討すべきは、「当該条項の性質」であるはずです。しかも、消費者契約法施行前には公序良俗に反しないとされた契約条項であっても、同法により無効とされる例として、大学の前期授業料の不返還特約があるのですから、かつて公序良俗違反でなかったということが消費者契約法10条により無効とされない理由にはなりません。また、事業者として反復継続して賃貸事業を営んでいる賃貸人と、一生のうちに数度あるかないかの契約をするにすぎない賃借人との間の社会生活上の構造的な格差を無視して、「更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない」などと決めつけるのは非常識というほかありません。
 最後に、判決は、「更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情」があれば消費者契約法10条により無効となる余地があるかのようにいいますが、2年で2カ月分、1年で2カ月分、1年で2カ月あまりの額であっても、「高額に過ぎる」とはいえないといいます。しかし、これほど、庶民の懐事情を知らない、きわめて冷淡で、賃貸借契約をなるべく存続させ賃借人の居住権を保護しようとした借家保護法制を踏みにじる論はありません。
 判決は、総じて、消費者契約法が施行されたことなどなかったかのようなむきだしの「契約の自由」論であり、合意している以上仕方がないという弱肉強食の論理です。これまでの賃借人保護の司法判断や、下級審の精緻な論理展開をぶち壊す不当判断というほかありません。
  • URL:http://yaplog.jp/lawyaz-klub/archive/3877