カードでしか知り得ないあの人が胸に秘めた偽りなき【10の本

October 21 [Mon], 2013, 14:54
られ、貪り尽くされるようなキス。
 拘束から逃れようと身体をよじると、両手首を一つにまとめて片手で押さえられ、もう片方の手は胸を這い、荒れ狂う舌はますます貪欲に動く。ふたりの他は誰もいないひっそりとした空間に、衣服が擦れる音と口から漏れ出る音。
 映画のワンシーンではない。私の身に起きているのだ。でもその理由がさっぱりわからない。
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 午前中に土屋さんと外回りに行っていた達也さんが、戻るなりメールを寄越した。
《昼休み、非常階段》
 いったい何が起きたのか。弁当組と時間をずらして休憩に入るとこっそり裏の非常階段へ向かい、待つこと数分、危険な空気を身にまとって現れた彼は噛みつかんばかりの勢いで私を壁際に押しやった。
 非常階段でディープキス。思えばあの場面に出くわしたのはちょうど一年前だった。無人とはいえ公共の場でなんと非常識なカップルか、と呆れた私が、まさか一年後に全く同じことをしようとは。
 しかしカップルの片割れがいつも彼だというのが……ちょっと複雑。

 非常階段でのキスがお好みなのかもしれない恋人は、ようやく唇を離すと激しく酸素を取り込む私を睨みつけた。
「なんで僕が怒ってるかわかるか」
「わ、わかん、ない」
「土屋に個人的なこと訊いただろ。彼女いるんですか、とか何とか」
 確かに訊いた。異動してきた彼の歓迎会を開くため、都合の良い日時を尋ねたときのことだ。
「本当にこの日でいいですか? 彼女さんに確認してからでも構わないですよ?」
「俺、今彼女いないから大丈夫だよ」
「え、本当ですか? 本当にいないんですか?」
 そんな会話を彼と交わした。先輩方に提供する良いネタが手に入ったと喜んで。
 お姉サマ方の好奇心から異動者は逃れられない。しかも土屋さんはWEB事業部のガサツで下品な気風とは一線を画すような好青年なのだ。これは情報料を期待できるかもしれないと思ったとしても仕方がないではないか。

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 しかし達也さんの目に険悪な色が浮かぶのを見て背筋が寒くなり、どういうことかと説明を求めたところ―― 
 彼がクライアントとの打ち合わせを終えて土屋さんとともに帰社する途上、異動して約二週間が過ぎ新しい職場にはもう慣れたかと訊いたのをきっかけに、同僚たちの話題で話に花が咲いた。そこで土屋さんが私のことを持ち出したらしい。
「越智さんに『今彼女いない』って言ったらすごく嬉しそうな顔されちゃったんですよ。素直なのかなあ。向井のこともあるし、社長のお気に入りっていうからちょっと引いて見てたんですけど、思ってたのと違って可愛いというか構ってあげたくなる感じというか、でもふっと顔を上げたときの無意識の目線なんか色っぽいし。僕、自惚れてもいいですかね」
……土屋さんがそんなことを。でもそれはカン違いだ!
 達也さんは険悪な目に非難の色を加えて最後にこうまとめた。
「……だから僕は言ってやった。『越智さんは異動者の情報を集めて同僚から情報料を取りたいんだよ。僕のときもそうだった。だからカン違いするな』って」
 なぜ私の思惑がしっかりバレているのだ。そちらの方がもっとコワいし、今後のことを考えるとずっと厄介ではないだろうか。でも土屋さんに恋人がいないことを個人的に喜んだわけではないと、ちゃんとわかっているのだと思えばまあいいか。

 ところが安心するのはあまりに早すぎた。達也さんのお叱りが怒涛の勢いで攻め寄せてきたのだ。
「どうして君はそう無自覚なんだ。むやみに男に笑顔を見せるなよ」
「わ、笑っちゃいけないの!?」
「時と場合によりけりだ。まったく、あいつが君に興味を持つことすら腹が立つ。言っとくが、への字の口を見せるのも、泣くのを我慢する顔を見せるのも言語道断だからな」
「む、無茶苦茶……」
「無茶苦茶じゃない。他の男にカン違いさせた罰として、今夜はウチに来ること」
 身の危険を感じて間接的に拒絶する。
「今夜は土屋さんの歓迎会です!」
「途中で帰ればいいだろ」
「幹事だから
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