南西地方・二日目 〜ジュランソンより、熱を込めて〜
2013.04.04 [Thu] 09:57

初日のイルーレギ訪問から、翌日のジュランソン訪問に向けて
Cauhape, Clos Uroulat, Bru Bache, Bordenave,,,など
秀逸な造り手が集まるモナン村に宿泊。

早めの朝食を済ませ、今日は一日、
ジュランソンの生産者を廻って来ました。




ジュランソンの栽培地はいくつかの小高い山と谷の連続で、
想像以上に起伏に富んでいます。

見晴らしの良い通りに出ると、はるか遠くには
見事な白銀を纏った巨大なピレネーが鎮座。

向こう側の世界が想像できないほどの存在感。
今でこそ、地図を見てあの向こうはスペインだと分かっていても、
この景色を見たら、山の向こうにはもう世界は存在しない、
この山が世界の果てとでも思わせるような、大自然の持つ迫力があります。




そんなピレネー山脈に抱かれ、葡萄畑と向き合う4つの生産者を
少しだけご紹介しようと思います。

朝一番の造り手では、Secを2種類、InoxとBarriqueで造り分け、
甘口では、Gros Manseng 100%、Petit Mansengとの半々でブレンド、
そしてPetit Manseng 100%と、3種仕込んでいました。

おおまかに、辛口は主にグロ・マンサンが主体、
甘口はプティ・マンサンがメインとなり、後者の葡萄の方が酸が強く、
ゆえに長熟で、味わいも気品を帯びる傾向にあります。




土地のチーズ、ブルビは定番ですね。

羊のミルクから作られる、ホロッとしてコクがあり、
適度な旨み、塩気が心地よいチーズです。




モナン村の東に、Cuqueronという丘がありますが、
最初の蔵、そして続いての蔵、ともにこの優れた斜面に畑を持っていました。

ジルはたった一人で、全ての畑仕事を貫徹します。
広さは2ha. これが一人での限界だそうです。

数年かけてじっくりと畑の手入れを行い、2005年から
ワインを生産し始めた気鋭の造り手です。

ジュランソンの未来を感じさせる、重要人物にお会い出来
とても嬉しく思います。




ソーテルヌなどで見られる、移動式のプレス機。
2haとは言え一人で行う為、2樽分の容量だけ一度に行い、
10月の中頃から11月の終わりまで、収穫を繰り返すそうです。

彼の話は非常に興味深く、自分もテイスティング・メモが
コメント以外でびっしり埋まっていました。

もちろんワインは素晴らしい純度を持った、極上品。




今日の訪問3件は、日本にほとんど紹介されたことのない造り手ですが、
ビッグネームは実際、どうなんだろうか。

Les Jardin de Babylone. (Didier Dagueneau)

先入観なしで味わえる、初体験の造り手のワインと、
先入観の塊(情報過多という意味)で味わうビッグネーム。

日本では、美味しいに違いない、ジュランソンの最上品だ、
若いヴィンテージでも2万円を下らない、シャトー・ディケムに匹敵する、etc...

はたして、純粋に楽しめていたのでしょうか。

土地に立って、同日に、同気候、同体調で臨むテイスティングは、
とても意味があります。




ディディエが生前、この地でワイン造りを始めるに当たり、
パートナーとして手を組んだのが、彼、Guy Pautrat.

ディディエ顔負けの、バイキングのような風貌ですが、
サングラスの奥には、とても澄んだ瞳があり、
表情には優しさがありました。

訪問は難しい、と聞いていましたが、
ディディエの奥様、そしてギイ本人ともに
快諾してくれたのでした。




日本での高価な値付けは、生産量を見れば納得でした。
熟成中の樽は、10樽程度。

フードル新樽×2個、2年樽(Didier Dagueneau)×1個、5年樽が3個ほど、
反対側に、ドゥミ・ミュイが4〜5個ほどだったと記憶しています。

醸造所の前には、緩やかなスロープの半円形コロシアムのような
段々畑。

新たに植樹した区画も入れて3ha.

ジュランソンの遅摘みは極めて収量が低い為、
年に5000本ほどしか生産できません。




樽からいくつかテイスティングさせてくれた後、
ボトルから、2005年を頂きました。

sucre 120g/L エクセプショネル。例外的に素晴らしい作柄。
『世界最高のグレープフルーツ・パッションフルーツ』と自筆メモがありました。

この安定感、高貴な気配、静けさと情熱の同居、
先入観はプラス方向に働くだけで、口に含む度に幸福感が込み上げてきます。

ラ・ヴィネにも少しだけ、ストックしています。店頭は2004年でしたね。
http://www.lavinee.jp/shop/g/gSOB2-6077/




バビロンを後に、最後にもう一人。

名もなき門の向こう、ここが今回のジュランソンの本命です。
タイユヴァンのヴリナさんとも親交が深かったという
ミシェルさん。




葡萄畑は、マコタージュによる増やし方で、
失われた農法とでも言うような、伸ばした一本の枝を地中に埋め、
土と出逢った枝は自分が新たな根となり、そこから新たな樹が生まれていく、という
100%優れた遺伝子を継承していく、昔の方法です。




ボランジェの有名なヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズは
フィロキセラの付かなかった畑を、この方法で継続維持しています。

ただし、この名も知らぬ葡萄畑の樹の樹齢の古さ、
ここまで徹底されている光景は、見たことがありません。

枝が地面に吸い込まれ、隣の樹となっているのです。
それはまるで、へその緒のよう・・・。




そうして造られた葡萄はワインとなり、畑の急傾斜を下りきった母なる貯蔵庫で、
永い眠りにつきます。

シャトー・シャロンのマクルの貯蔵庫を彷彿とさせる、
古い樽と壜。

あそこにも、何人たりとも邪魔を許されない、
同様の静謐な間がありました。




わずかな隙間から、光に透かされた鼈甲の輝き。
このボトル達は、20年の時を待ちました。




数十年分あるストックの中から、
好きなものを一本だけ、開けてみよう。

テイスティングできるのは、その一本だけです。

と、ミシェル氏。


私は、1993年を手に取っていました。

『ジュランソンの優れたものをじっくり寝かせると、
  白トリュフの香りが出るよ。』

まさしく、これだ。





ほんの少量だけ、日本に向けて分けて貰える約束を取りました。

親切に感謝致します。

***

偏にジュランソン、とだけ聞いて、
マンサンの葡萄で、辛口と甘口があって、
フォアグラなどと相性が良くて・・・云々・・

教科書で教わることは、理解する前提には必要だとしても、
百聞では絶対にわからないことが、現地に来ると分かります。

ジュランソンは偉大なテロワールのワインであり、
ピレネーと共に生きる自然の結晶であり、
決してソーテルヌの二番煎じなどではない、
楽しみ甲斐の懐の深さを持った高貴なワインです。


その思いを胸に続いての舞台、マディランに辿り着きました。

明日はマディランの生産者訪問です。


*ラ・ヴィネfacebookページでも写真などご紹介しています。