B型肝炎訴訟 「長男成人するまで生きられるか」救済策一刻も早く(産経新聞)

May 20 [Thu], 2010, 14:44
 「スタートラインにすら立てなかった」。14日、国が和解協議入りを正式表明したB型肝炎訴訟。しかし、具体策が提示されなかったことに、多くの原告は怒りをあらわにした。東京原告団副代表の石川冬美さん(32)=川崎市=もその1人だ。札幌地裁の和解勧告から2カ月。その間に原告の仲間2人が死亡した。命の危機に直面している原告も多い。「国は解決を引き延ばそうとしている」と声を震わせた。(蕎麦谷里志)

 石川さんがB型肝炎ウイルスの感染を知ったのは18歳のとき。弟の感染判明をきっかけに、家族全員で検査をしたところ、石川さんと母親の感染も判明した。祖父母は感染しておらず、担当医から「母親が集団予防接種で感染し、母親から2人に母子感染した可能性が高い」と伝えられた。

 平成18年11月、職場で突然嘔吐(おうと)。運ばれた病院で免疫がウイルスに過剰反応する「急性増悪」と診断された。10月に結婚、新婚生活をスタートさせたばかりだった。「何も悪いことしてないのに…なぜ」。当時28歳。突然のことに現実が受け入れられなかった。

 樹木医を夢見て2年半勤めた造園会社も、肉体的な負担が大きいため、辞めざるを得なかった。今は体調は安定しているが、担当医からは「いつ肝がんへ進行してもおかしくない」と言われており、毎月1回の定期検査は欠かせない。悪化を防ぐには抗ウイルス薬の服用という選択肢もあるが、決心できずにいる。薬の副作用で生まれてくる子供が障害を持つ可能性があるためだ。

 仕事、夢、家庭、出産…。石川さんの人生の歯車は大きく狂った。心の支えは2歳になる長男。笑顔を見ているだけで病気を忘れさせてくれる。ただ、「この子が成人するまで生きていられるのか」と不安になることも多い。

 昨年3月、裁判に加わった。「集団予防接種なので誰が感染してもおかしくなかった。国は国民全員を危険にさらしたことを謝罪し、責任を果たしてほしい」。石川さんは訴えている。(蕎麦谷里志)

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