ポイントは“本業”を通じた環境経営――ゴールドウインの自転車通勤制度(Business Media 誠)

May 27 [Thu], 2010, 15:05
 スポーツウエアメーカーのゴールドウインが、エコ通勤の促進を目的に、自転車を正式な通勤手段として認める社内制度を始めました(出所:同社プレスリリース)。同社は「GOLDWIN」「SCOTT」の2ブランドで、自転車や自転車関連商品を販売しているので、エコ通勤の促進として自転車通勤の促進に取り組むことにはストーリー性や説得性があります。

 最近、企業の社会的責任を問うCSRや、社会問題や環境問題などへの取り組みをマーケティングや商品・サービスの販売に活用するコーズマーケティングが取りざたされ、さまざまな社会貢献活動に取り組む企業やカーボンオフセット商品やNPOなどへの寄付付き商品などを出す企業が出ています。

 しかし、それらの中には、「なぜその会社がそうした取り組みを行なうのか」と感じるほど関連性が見えず、「その前にもっとやるべきことがあるのでは?」と疑念を持たざるをえないケースが多々あります。

 カーボンオフセット商品を例に取ると、まだまだ自社でCO2を削減できるだろう企業が、そうした努力を行わず、安易に排出権を買って、いきなりカーボンオフセット商品を出しても、まったく魅力を感じません。

 そもそも、CO2削減と環境負荷低減はまったくイコールの関係にあるわけではないので、排出権を活用したCO2削減については、その目的の優先順位付けが果たして正しいのか、いまだに疑念を感じざるをえません。

 企業は、社会にある問題の解決や新しい価値の提案を事業として行い、それらを顧客から認めていただくことで利益を上げ、その利益を次の問題解決や価値提案に向けて再投資することで継続して社会に価値を提供していくのが存在意義です。

 「本業から離れたCSR活動で社会に貢献する」というのは、企業にとっては副次的活動であり、副次的であるがゆえに中途半端な形で終わってしまいがちです。本気で社会貢献したいのなら、その活動を主目的とした企業、NPO法人などの団体を組織して取り組まなければ、実のある成果を上げることは難しいでしょう。

 利益と社会正義という、時には二律背反するような目的を、脈絡もなく同時に複数並べては、顧客や社員からの求心力が得られないどころか、言っていることとやっていることが異なっていたり、社会貢献活動や環境負荷低減の活動が全事業活動のうちの微々たるものの時には、「きれいごとばかり並べて」と顧客や社員からの反発やシラケを生み、逆効果にすらなってしまうこともあります。

 こうした反動を考えると、いくら世の中のためになることであっても、中途半端な活動ならばやめた方が良く、やるなら徹底してやる。徹底してやる覚悟がない、できないならば「やらない」とはっきりさせた方が、経営にとっては効果的です。

 そうした意味では、自転車や自転車関連用品ブランドを持つゴールドウインがこうした取り組みを行うというのは、説明が付きやすく、顧客や従業員にとってもストンと腑に落ちます。

●スポーツ業界初だった理由

 逆に、意外だったのは、ゴールドウインによると、この制度は「スポーツ業界初」ということです。

 その理由は、実はこの取り組みは導入する企業にとっては、乗り越えなければならないハードルが高いものだからかもしれません。まず、この制度を利用している社員が事故を起こしたり、飲酒運転で捕まるといったことが懸念されます。また、会社に着いた後、勤務中の自転車の保管。自社の前に自転車が並び、一般の方々の通行に迷惑を掛けてしまったら、良いことをしているつもりが、独善になってしまいます。細かい話ですが、「雨や雪、もしくは強風など自転車での通勤が困難な時に、この制度を利用している社員は、それでも自転車で通勤しなければならないのか」「そういった日は電車などほかの公共交通手段に切り替えると、自腹を切らなければならないのか」といった問題があります。

 同社では、こうした課題に対し、飲酒運転や過労運転など7つの禁止事項を明確に定め、ヘルメットやグローブの着用、任意保険の加入の義務付けなど、制度利用者の安全やほかの通行者への迷惑が生じないよう配慮しています。勤務中の駐輪の問題については、本社ビルの地下1階に駐輪場を用意しています。自転車通勤者にも、通勤距離に応じた通勤手当が支給されるので、悪天候の中や付き合いで飲酒の予定がある時などは、無理をせずに代替の交通手段を利用できます。

 よく考えると、ここで懸念されている問題は、制度がなくても実際に起こりうる問題です。それを社員の自己責任とするより、会社として受け皿をしっかりと用意し、そうした事態を未然に防ぐ方が、経営としてより優れているのは明らかです。恐らくこうして制度化して、制度利用者を会社の顔として立てた方が、制度利用者にも強い自覚が生まれ、より責任のある行動を取り、問題の起こる確率は大きく減ることでしょう。

 駅前や繁華街でところ狭しと並んでいる駐輪自転車、歩道を我が物顔で走る自転車、歩道を避けて走ろうとすれば、車道を走らなければならない道路環境。こうした現状を見ると、環境負荷低減ということで人気が集まっている自転車ですが、日本では自転車の利用が文化として社会に定着しているとは言えません。事故や運転マナーの問題を恐れて、問題から目を背けるより、そうした問題に正面から取り組み、自転車文化を築いていくという同社の姿勢は、自転車用品ブランドメーカーとして、非常に好ましいものです。

 加えて、対戦相手への挑戦、記録への挑戦、自分への挑戦などスポーツは色々な意味で「挑戦」と言えるでしょう。スポーツメーカーが挑戦する姿勢を失っては、会社が提供するブランドも色あせて見えてしまいます。

 そうした意味からも、色々な困難が想定されるにも関らず、果敢に環境負荷低減の取り組みに挑戦する同社の姿勢は、そのブランド価値を高めることにもなるでしょう。

 環境負荷の低減や社会貢献は非常に間口の広いテーマです。環境負荷の低減や社会貢献と、商品・サービスの開発から、原材料の調達、製造、物流、販売、メンテナンス、回収・廃棄処分に至るまでの各事業プロセスとを掛け合わせて見ていくと、関連性の薄い社会貢献活動にお金を使うよりも、本業を通じて社会に貢献する方法はいくらでも見つかるものです。

 今回のゴールドウインの取り組みのような、本業を通じて腰をすえて社会に貢献する活動に取り組む企業が増えていくことを望みます。(中ノ森清訓)

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