(無題)

September 17 [Sat], 2011, 3:46


「…好きなんだ。」


話があるんだけど、と呼び止められたバイト上がり。場所は炎天下の駐輪場、偶然にも周りには誰も居らず告げられた言葉はハッキリと祐の鼓膜を刺激した。
何を?なんて野暮な事は聞かない、いや聞けないのだ。
ピンと張った糸の様な沈黙、そして向かい合う相手の真琴な眼差しがそれを許さない。
相手はバイト先の先輩で確か大学生だ。それなりに高身長な祐を易々と見下ろせる身長、物腰の柔らかい口調、そしてイケメンと評されるであろうルックス。そんな人が何故、今正にドラマで聞くような台詞を、よりにもよって自分に投げ掛けているんだ、と祐は内心頭を抱えていた。




「で?」
「………いや、だから、……頭を下げてですね、…ごめんなさい、と…」
「勿体無いねぇ」
「ああああぁぁ………」
あたしが悪いの!?
叫びながら祐はテーブルに頭をぶつけんばかりの勢いで伏せる。
それを頬杖なんて付きながら眺めていた渉は止めとばかりに溜め息を吐く。
夏休みも残すところ僅かだからと珍しく一人買い物に出てみれば、突然鉢合わせだクラスメートに腕を捕まれた挙げ句、聞いて欲しい話があるからと強引に連れ込まれたファーストフード店。そして今に至る訳だが、渉は1日の予定が無残にも崩れていく音が聞こえた気がした。
向かいであー、だのうー、だの唸っている祐を眺めるのにも飽きてきた渉は諦めた様に再度溜め息を吐き出す。それはもう深く深く。
そして、未だに釈然としない表情をしている祐にポテトを突き出し、先を促す。
「で?断ったんならもういいじゃん。何が不満な訳?」
「…不満っていうか…あぁぁ、なんかこう申し訳無いというか諦めないとか言われちゃったんだけど、…正直、応えられる気がしないし…それを伝えても、相手からしたら…こう、ね?」
「…はーん…、で?」
「うん…だからなんというか、こう…諦めて下さい土下座でもしますから!お願い!って…なるんだけど…そしたら、こうさぁ…」
「こうってどう?」
「…いや、うん、こう……あたしも思われてんのかなぁ…っさ、考えたら…」
消えたくなったよ。
最後は蚊の鳴くように小さな声で呟いた。
顔を上げたものの視線は忙しなくあっちへこっちへとさ迷っている。正く今の祐は誰から見ても落ち込んでいるのだろう。
断片的過ぎて纏まりのない言葉を聞かされている渉からしてみれば、正直何が言いたいのか掴みあぐねる。
だから何が言いたいの、と問えば矢張りさ迷う視線。
これではまるで渉が攻めているみたいにしか見えない。
それでも言葉を探し出そうと祐の頭の中の必死さは伝わるので、仕方なく待ってみる。
すると、祐が漸く視線を落ち着かせ、深く息を吐き出しながらまたも机に伏せ
「…もう潮時なのかなぁ」
そう小さく呟き、顔を腕で覆ってしまう。
その姿に渉は相変わらずの呆れ顔を崩しもせず、丸い頭に手を伸ばしポンポンと撫でてやる。
それに驚いたのか、真ん丸く開かれた瞳が間抜けで渉は思わず噴き出した。
「っ、ふっ!ははっ、祐ちゃんなっさけない顔!」
「っ……渉さんの馬鹿!」
腹を抱え、ヒィヒィと笑い続ける渉の腕を身を乗り出し叩く祐は恥ずかしさからか真っ赤だ。
ごめんごめん、と目尻の涙を拭う渉の顔はまだ頬が緩んで笑いの名残が消えていない。
「いやあ、久々に面白い物見せて貰ったよ」
「乙女の顔を何だと思ってるのよ!…もう」
ふてくされた様に睨んでくる祐を気にした風もなく、渉ははーっと一呼吸置く。そして、直ぐに話を戻すべく体制を直し祐の顔を伺う。
「…で?わざわざ俺を捕まえてまで話したかったのはそんな事?」
「……」
「和とか大ちゃんじゃなく、俺にしたのはどうして?」
「…たまたま、会ったから…」
「ふーん…?」
本当に?
真っ直ぐ見据えてくる渉の眼差しに、祐は諦めた様に、ごめんと呟く。
「…渉さんなら、」
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