Evidence Love 3 

December 28 [Mon], 2009, 7:00


 「……はっ………やん! 止め……んっ!!」
 「嘘ばっかり。ココは止めて欲しいとは言ってないくせに。」
 「やっ………あん!」
 お風呂場だからなのか、声が余計に響く。
 ユニットの壁に反射して、妖艶に聞こえる。
 それが堪らなく恥ずかしい。
 心はそう感じているのに、身体は別の感情を引き出されていく。
 「お願…い……もう…………。」
 「お願いって、もっと?」
 一哉さんは、私の身体ごと後ろから包んで、快感に反応している蕾を弄ぶ。
 「いつもより、沢山の蜜が溢れてきてる。いつもと違う場所だから? それとも……久しぶりだから、か?」
 耳元で囁いては、理性を無理矢理引き戻し、煽っていく。
 「………ちがっ……んやぁああっ!!」
 「違うんだったら、こうか?」
 一哉さんは指を私のナカに埋め込み、掻き回す。

 「だ…め………立って…られ、な……いんんっ!」
 膝がガクガクする。足に力が入らなくなっていく。
 「大丈夫だ、俺が支えてやるから。」
 一哉さんの左手は私の右胸に、右手は私のナカに……その二点の支えで、何とか立っているようなもの。一応、両手は一哉さんの左腕を掴んではいるけど。
 それでも自分の足で立とうと力を入れる所為で、違う場所にも力が入る。
 半分は無意識だけど、私のナカにある一哉さんの指の存在がはっきりと分かる。
 「凄いな、指が引きちぎれそうだ。藍莉も結構、こういうの好きだったんだな。」
 「ちょ……変なこ、と…い……ぅん、あっ………はぁっ!!」
 一哉さんは私のナカだけでなく、大事な蕾を刺激するのを忘れない。
 右胸を掌全体で包み込んだり、誇張する頂きを指で、更に刺激する。
 左胸も、一哉さんの左腕の摩擦によって、適度な刺激を受ける。
 「はぁ……いやぁ…んん!」
 「嫌じゃないだろ?」
 一哉さんは、私の快感を煽る刺激を止めてはくれない。

 私の全てが、嫌だと否定してはいない。
 でも、本当に止めて欲しいとも思っている。
 だからといって、本当に止められてしまったら、中途半端な状態で平然としていられないのも事実。
 心よりも、身体はもっと先へと昇り詰めたいと欲している。
 それなのに、一哉さんは、ギリギリまで追い詰めては、ギリギリのところで刺激を緩やかにする。
 そうして、私の理性を奪おうとしてくる。
 だったら、理性を完全に壊してくれたらどんなに楽か。
 何も考えられなくなって、一哉さんに身を委ねられれば、求めている頂点まで辿り着くことができるのに。
 一哉さんだって、それが分かっているはずだし、自分を解放したいと思っているはずだもの。
 私のお尻に伝わる、一哉さんの分身が、そう主張している。
 だけど、一哉さんは、その行動を起こさない。
 一哉さんは辛くはないの?
 私は辛いよ。我慢の限界を超えそうなんだよ………。



 でもどうして、お風呂場なの?
 何の柔らかさもない硬いタイルしかなくて、重力が分散されない。
 支えだって、二本足だけ。その支えも、充分に果たしてはいない。
 支えの力の殆どは、一哉さんの支え。
 一哉さんは疲れているはず。なのに。
 一哉さんだって、疲れてる、ってそう言った。
 だから、二次会の途中で抜け出してきたんじゃないの!
 そうよ。肝心なことを忘れていたけど、一哉さんてば、公衆の面前で、夫婦の証明するだなんて、私にキスしてきたのよ。それも、深く、長く、しつこく。
 あのときはビックリしすぎて、一哉さんの唇しか感じられなく、周囲の状況とか考えている場合じゃなかった。
 アルコールの酔いも災いして、足元もおぼつかなくなって、一哉さんに促されるまま、二次会の席を後にした。
 確かにね、私も抵抗しなかった……んじゃくて、抵抗できなかった。
 濃厚すぎるキスに、思考回路が麻痺したわよ。
 でも、そうさせたのは、一哉さんじゃない。
 そして、私が何も言えないことを他所にして、つらっとした顔で、恥ずかしいこと言ってなかったっけ?

 「年末の忙しさで、俺は疲れてるから帰るよ。」

 それは別に問題ないわ。でも、その後よ。

 「最近、奥さんに構ってやれなかったから、寂しかっただろうし、愛情確認しないと。それに、バタバタしてて、新婚生活もきちんと味わえてなかったし、夫婦での最初の年越しをゆっくり過ごさせてもらうよ。じゃあな!」

 そう言ってたわね。しかも、平然と。
 何なの、この人!?
 一哉さんて、そういうキャラだった?
 二人きりのときは、恥ずかしげもなく、そういう台詞吐いてるわよ。
 でも、職場では公私はきちんとつけていた。
 飲み会の席とはいえ、羽目を外す人じゃなかった。
 なのに……嫉妬?
 それはそれで嬉しい気がしないでもない。

 結婚後も、職場での私達の関係は変わらなかった。
 それもあって、あまり夫婦に見えなかったと思う。
 だから、一哉さんへのアプローチも絶えなかったんじゃないかな。
 でも、今回は、私と一哉さんが、夫婦だということを、職場の人達に認めてくれたらいいなと。
 そう素直に両手を挙げては喜べないけど……というか、年明け、出社するのが恐ろしい。

 一哉さんの莫迦〜!!

 だから、私もそれなりに怒っていたし、タクシーに乗り込んだときには我に返っていたから、一哉さんと口を利かなかった。
 ただ、一哉さんは、タクシーの中でも、ずっと手を離さなかった。
 その繋いだ一哉さんの手から、一哉さんの熱い想いだけは伝わってきていた。
 あの言葉は、本当だったんだということが。
 だからこそ、余計に何も言えなかった。
 だからといって、家に着いて、『ハイ、そうですか!』と事に運ぶのも、気が引けるから、一哉さんにタクシーの会計を済ませてもらっている隙に、先にエレベーターに乗って家に入った。
 でも、それがよくなかったんだと、今更ながら後悔した。


 後から遅れて家に入ってきた一哉さんの顔は、とてつもなく怖かった。
 無表情で、何を考えているのかが、全く予知できなかったから。
 でも、無表情の中にも、疲労の影は伺えた。だから。
 「疲れてるみたいだから、さっと汗流して、早く寝よう…ね!」
 なんて言ったのが、そもそもの間違いだったんだ。
 「そうだな。」
 一哉さんは、そう一言だけ言った。
 だから、私もホッとした……と同時に騙された。
 別に、一哉さんは一言も一人で入るとは言っていなかったから、騙されたわけではないけど、一哉さんは、ツカツカと私に歩み寄り、私を肩に担いで、お風呂場へと連れて行った。
 私を脱衣所に降ろすなり、さっきよりももっと濃厚なキスをお見舞いしてきた。
 先程のキスの余韻が残っていたのと、突然の状況についていけなかった私は、一哉さんにされるがままだった。
 抵抗できない私の代わりに、一哉さんは、私の服を器用に脱がせていった。自分のも。
 そして、脱衣所で立ったまま、一哉さんに抱かれた。
 熱も冷め切らないうちに、一哉さんと繋がったまま、今度はお風呂場の中に入り、そこで、一旦、一哉さんは私から離れ、私を後ろから支えた状態で、身体の隅々まで洗われ、泡と一緒に、汗を流した。しかも、立たせたままで。



 「……どうして欲しい?」
 一哉さんは、私の耳元で、そう囁く。
 でも、私は何も答えない。答えられなかった。
 理性が邪魔をしているのもあるけど、叫びにも近い甘い声しか出てこない。

 今まで、一緒にお風呂に入ったことはなかった。断固拒否したから。
 一哉さんを求めたいと思う心は強くある。自分から求めるのも、初めてじゃない。
 だけど、ここはベッドの上じゃない。
 ベッドは、そういう行為が前提にあるから、恥ずかしくても求めることができた。
 ……違う。そういう状況に立たされたのもある。それが殆ど。
 だけど、ここは身体を洗う場所であって、こんなことをする場所じゃない。
 そんな考えが、私を躊躇させる。
 でも、慣らされた身体は、そんなのは関係ないと言ってる。
 身体だけは、今の苦痛ともいえる快感を解放する術を知ってる。
 だから、それに集中すればいいのに、一哉さんは、そうはさせてくれない。
 「身体を洗っているはずなのに、洗っても洗っても、拭いきれない。これはお湯じゃないよな?」
 一哉さんの言うように、下肢に伝わるのは、お湯とは別のモノ。さらっとしてはいない。身体に吸い付いているような感じ。
 「どうしてそんなに我慢するんだ? そうか、まだ足りないんだな?」
 「あ…やっ……んはっ……うぅん!!」
 一哉さんの指は、ナカを掻き回すのを止め、指の形を変えて、ある一点へと集中を変える。
 我慢の限界を超え、身体が前のめりに倒れる。
 それでも、何とか倒れずに、浴室の淵に掴まる。

 上体だけが一哉さんから離れもなお、下半身への刺激は止まない。
 「…………っ!?」
 無防備な背中に、一哉さんの唇が、舌が這い回る。
 同時に、チクリとした痛みも生じる。幾つも。
 「……どう、して……はぁ………こん、な…に………んっ…意地悪、する………の?」
 必死で、一哉さんに問いかける。
 「どうして、って? そんなの、藍莉が愛しいからに決まってるだろ?」
 私には余裕なんてないのに、一哉さんの声には余裕がある。
 それに、愛しいのなら尚更、意地悪はしなくてもいいのに………。
 「藍莉は、俺より……アイツの方がいいのか? それとも、俺を受け入れたくない?」
 アイツ…って、神永くんのこと……だよね?
 一哉さんを受け入れたくないわけじゃないの。一哉さんだって、それを分かってるはず。
 じゃなかったら、何度も一哉さんに抱かれない。
 いつだって、さっきだって、嫌なら抵抗するもの。
 だけど、言葉にはできなくて、一生懸命、首を横に振る。
 「だったら、俺が欲しいと言えよ! 俺だけに、そう言えばいい!!」
 一哉さんは、私のナカにある指を抜いて、腰を少し落として、一哉さんの昂りを私の敏感な部分に擦り付ける。

 「俺が欲しいのは藍莉だけだ! だから、藍莉が欲しいのも俺だと言ってくれ!!」