10.29 - アスラン誕生日記念小説

2011年10月29日(土) 0時14分
−−人生25年

これだけ生きてきたにも関わらず俺は
実家に帰るのが非常に怖いと・・・きてる。阿呆だ。

「・・・どうせまた今年も」

腕時計の時計は日付変更の30分前を指している。
今から引き返さないと終電を逃すのは確実で
なのに実家の前まで帰った俺は、やはり何かしら期待してるんだ。
言葉では諦めているのに諦めきれない自分がいる。

「なあ、カガリ・・・君は」

俺は街灯でぼんやりとわかる隣家を眺めた。












俺とカガリは小さい頃から一緒だ。
家が隣同士の俺たちは勿論物心ついても大の仲良しで、何をするにもいつも一緒。
両親の仕事の事情によっては互いの家に泊ることも度々あり
小学3年生まではお風呂も一緒に入っていたし、親同士仲がよく家族旅行も一緒だ。

誕生日のときは互いにプレゼントを交換するのが恒例になっていて
恒例というよりも・・・自然とそうなっていた。
彼女が欲しいもの、俺が欲しいもの
長い付き合いでわからないことなど何一つなかった。

小学校高学年に入る頃には男と女の違いは出てきたものの
俺とカガリはそれでも一緒にいた。

−−大事な家族

そう思っていた。
俺とカガリはそういう繋がりなんだと疑いもしなかった。




中学に上がると、それがほんの少し変わってきた気がした。

でもそれはほんの些細なことで、相変わらず俺たちは一緒に登校したし
クラスは違えどお昼は必ず一緒に食べた。
ただ、クラブ活動や委員会などで離れることが多くなってきたのは確かで
でも出来るだけ一緒に帰るようにした。

彼女は俺にとって、大事な家族だからだ。




だけど中学最後の秋・・・
放課後の裏庭でカガリが隣クラスの男子に告白されているのを見た。
何故だか酷くショックを受けている自分がいて、気分が悪かった。

カガリは俺に隠し事を絶対にしなかった。
だから家までの帰り道でその男子に告白されたことも話してくれたが
カガリとしてはそれに全く興味なかったらしく平然と笑っていたのにどこかほっとしていたんだ。


「アスラン!15歳の誕生日おめでとう!」

あの告白の翌週は俺の誕生日で、
俺とカガリの両親が誕生日パーティーの準備をしてる最中
カガリは俺を廊下に呼び出して皆より早いプレゼントをくれた。

綺麗な紺色のマフラー

どこか歪な形のそれはカガリの手作りで、それを両親に見られたくなかったと
照れ隠しがヘタなカガリは顔を真っ赤にして俺に渡した。
そんなカガリの表情を見て俺はやっと気づいた。



  (カガリが好きだ。)



その言葉はなんとも心地よく俺の中に馴染んだ。
あの告白されているカガリを見たときの違和感はこれだったんだと。

カガリは大切な家族であって

俺の大切な・・・たったひとりの女の子だったんだ。





でも、それはカガリには言えなかった。
カガリは俺のことをそう思っていない気がしたからだ。

・・・それでもいい、カガリはいつも俺の傍にいる。
そう高校に上がるまでは思っていた。


当然ながら高校が一緒の俺たちは
それまでと変わりなく1年、2年と過ごし
高校3年の夏には進路という人生の分かれ道に突入した。

思えばその年からだ−−−カガリが俺の誕生日にプレゼントを贈らなくなったのは




そして、大学とともに俺とカガリは、離れた。
俺は国立の理工学部へ、カガリは地元の女子大へと。

初めてだった・・・カガリと離れることになるなんて。



大学は俺の好奇心と探究心を見事に擽った。
尊敬する教授の下で必死に学ぶことは実に楽しかった。
時折女性から声をかけられることはあったが、目の前の研究にだけ目を向ける。
女性を見るとカガリが浮かんでくるからだ。

隣の家に住みながらも
研究に夢中で家に帰らない日が続くのも多かったため
大学2年目からはもう殆どカガリとは会わなくなっていた・・・。


子供じゃないからと、なくなった5月と10月の誕生日パーティー。
そして、彼女からのプレゼント。

だけど俺はそれでもカガリにプレゼントを贈っていた。
意地とかではなかった。


ただ、カガリの喜ぶ顔がみたかったから

もう一度俺の前で喜ぶ顔を見せて欲しかったから



俺の心の奥にはいつもカガリの笑顔があった。












大学を卒業し、都内の会社に就職。
企画開発での仕事も慣れてしまえば楽しいものだ。

「よっアスラン相変わらず引き篭もってんのか?」

「引き篭もるとか余計ですよ、ハイネさん」

俺より3つ年上のハイネさんは営業部の期待の星と呼ばれている人だ。
営業と開発・・・合わない部署だが1度だけ会議で顔合わせをしたことがあり
それだけでハイネさんは俺の事を気に入ったらしくよく声をかけてくる。
月に数回は飲みにも行くし、俺とハイネさんは馬が合った。

「お前の作ったあれ評判いいぜ、俺も営業しがいがあるってね」

「ああ、あれはこれから多少改良していく予定なので来月には・・・」

他愛なく話しながら昼飯を食べているとハイネさんが思い出したように雑誌を俺に渡した。

「昨日出版されてたやつだけど、アスランの尊敬する教授が出てるぞ」

「えっ本当ですか?」

「まあ俺はよくわかんないけどさ。引き篭もってちゃこういうの見ないだろ?」

やはり一言余計だが
俺はありがたく雑誌を受け取り仕事をするためハイネさんと別れた。
だが小休憩中に捲った雑誌のコラムに目がいった。


コラムニストは、カガリだった。

「・・・カ、ガリ?」

小さなコラムだ。
だけどその記事はとても誠実で温かみのある文章で綴られていて
俺は夢中になって読んだ。






言葉のひとつひとつでカガリの性格がよくわかる。
一本気で誠実で、どこまでも自信とカガリという魅力に溢れてる。

「そうか、君は相変わらずなんだな」

就職してから一人暮らしを始めた俺はカガリには一度も会っていなかったが
彼女はこんなにも成長していた。
母からは何も聞いていないので彼女はまだあの家にいるのだろう。

他の雑誌や新聞でもカガリの記事を見かけることが多くなった。


会いたかった







カガリに、会いたかった。















そうして、俺は日付変更前の深夜に実家まで来たわけだ。

自分の誕生日に来たのは
もしかしたら彼女ときっかけが生まれるかもと思ってのことだが
・・・ありえないだろう。

もう7年間も彼女から何も貰っていない。


カガリは俺をどう思っているのだろう。


街灯の明かりに浮かぶ隣家には明かりは灯っていない。
それもそうだ・・・こんな深夜に。



「・・・はは、どうしたんだろな俺は」

自嘲しながら俺は踵を返し来た道を引き返した。



















タタン タタン タタタン



土手から電車が対岸へと向かうのが見えた。
きっとあれが最終電車だ。

「・・・野宿決定」

ぽつりとこぼれた言葉に思わず溜め息を付いた。
仕事疲れとここにくるまでに時間潰しとばかりに歩きまくったため見事に体力と気力が尽きていた。年なのかもしれない。

土手に腰を下ろすと懐かしい草の感触が布地越しに伝わる。
この土手沿いも俺とカガリの思い出のひとつだ。
小学、中学、高校と幾度となく通った道だから。

街灯もない道沿いは薄暗かったが
対岸の町や夜空を飛ぶ飛行機のネオンが夜を彩っている。

10月下旬ともなれば夜は寒く、我ながらよくコートを持ってきたいたものだと思う。
このままここで夜を明かせば風邪を引くだろうか・・・
でもそれも悪くないような気がした。

風邪をひいたときもカガリはいつも傍にいてくれた。
うまく剥けない林檎はいつもボコボコしていたけど甘かった。

どんな些細なことでも
俺の人生にはいつもカガリとの思い出が詰まっているんだな。







「・・・アスラン」


懐かしい声に、思わず肩が震えた。
ここ数年会ってないとは言え、忘れたことなかった彼女の声が背後から聞こえた。

「カガリ、なんで」

振り返ればやはりカガリがいた。
パジャマの上に厚手のカーディガンを羽織って、俺の目の前にいた。

思い出の最後のときよりも幾分伸びた金の髪が風で揺れる。
あどけなかった子供のときから、大人びた顔。
でも会いたかった、心底会いたかった俺のカガリだった。

「そこ座っていいか?」

カガリは俺の返事を待たずに隣に座った。
こういうところは小さい頃から変わっていないようだ。

「久しぶりだな・・・」

「お前も。・・・仕事が忙しいんだってな。おば様が愚痴っていたぞ」

戸惑う俺に対してカガリは全然変わっていない。
何もなかったかのように俺に話しかける。
いや、何もなかったなんて・・・元々俺とカガリには何もなかったんだから。

「カガリはなんでここに?家にいたんだろ?」

パジャマ姿からして寝ていたはずだ。
カガリはほんの少し笑ってから夜空を見ながら言った。


「アスランが、見えたんだ」


どきりと胸の鼓動がはねた。



「何気なく外を見たらお前がいてた。」

だから追いかけてきたのだと、彼女は言う。

「アスランは?」

「え・・・」

「こんな深夜に帰ってきたわけ。何かあったのか?」

屈託なく話しかけてくるカガリは俺の顔を覗き込むように訊く。

「あ、もしかしてなにか仕事で・・・」
「会いたかったんだ」

遮るように言った俺の言葉はカガリに届いていたようだ。
彼女の瞳がきょとんと丸くなって俺を見つめる。

会いたかった

その言葉は、中学のときの「好きだ」と同様に心地よく身体に染み渡る。
でもあの時みたいに、もう自分の中で押しとどめたりはしない。
何も言わずに後悔してきた今を繰り返したくないから−−此処に来たんだ。


「会いたかった・・・カガリ、君に」




「好きだったから、ずっと・・・カガリのことが好きだったから」





夜空の向うで飛行機が音を立てて通り過ぎた。
言ったときは気持ちよいくらいの爽快感があったというのに
言い終えると、途端に胸の置くから熱が篭ってきて恥ずかしくなる。

25年生きてきて、これがカガリへの初めての告白だ。


ガサリと、彼女が勢いよく立ち上がる音がした。
見上げると、唖然とした表情なのに瞳は潤んで俺を見下ろしていた。

「ずっと・・・?」

「ああ、ずっと好きだった。いつからだか覚えてないくらいずっと」

カガリはきゅっと唇をかんだ。
心なし、握り締めたこぶしが震えてるような気がする。
怒ってるのだろうか?
俺の言葉は俺とカガリの今までの付き合いを壊す言葉だ・・・。

カガリが受け入れてくれなくても、俺はそれでもいい。


「ばかっ!!」

カガリの大きな声が土手に響く。
びっくりして目を丸くする俺をカガリはもう一度馬鹿だと言う。

「私だって・・・ずっとお前のことが好きだったんだぞ!!」

言い切ったカガリの顔は夜でも真っ赤に染まってるのがわかる。
真っ赤に染まった頬に流れるしずくは潤んだ瞳からこぼれていて、カガリは泣いてた。
それを見ながら、俺の頭の中にはカガリの言葉が何度も何度も繰り返し響いてる。

零れてしまった涙が戻らないように
飛び出した言葉は戻らない。

そう気づいたカガリは一気に捲くし立てた。
もう隠す気なんてない。


「アスランは15歳の誕生日のプレゼント覚えてるか?」

「ああ、紺色のマフラーだろ」

思い出すのはマフラーと、あの時のカガリの顔。
あれを見て俺は・・・。

「今までは家族として好きだと思ってたけど
あの時のアスランの顔を見てもっと別な意味ですきなんだって気づいた。」

どきり、とした。
カガリも俺と同じことを感じて痛んだと思うと胸が熱くなる。


「だけど壊したくなかった・・・アスランとずっと一緒にいたかったから黙ってた
高校に入ったら入ったでアスランは男らしくなって女の子にもてはじめるし
私はこんなだから、アスランには相応しくないって・・・
そう思うと誕生日のプレゼントも渡せなくなって」







「誕生日ごめんな・・・それと、プレゼント今までありがとう凄く嬉しかった」





カガリは泣いてた。もうずっと。
顔を覆う両手の指の隙間から涙が零れて落ちて

俺も立ち上がるとカガリのその両腕に触れた。
・・・ああ、カガリはこんなにも小さかったんだと初めて気づく。


「俺も、15歳の誕生日からカガリが好きだったよ・・・家族以上に大切な意味で」

掴んだ両腕を引き寄せて
カガリの身体を引き寄せて

剥がれた掌から見えたカガリの顔はやっぱり真っ赤に染まってて可愛い。


「遅くなったけど、誕生日おめでとうアスラン」

カガリの笑顔は俺の大好きな頃とそのまま。
だけど、誕生日ってもうとっくに過ぎたはずじゃないかと腕時計をちらりと見ると
11時半のままで止まったままの時計。
いつから止まっていたのか・・・どうやらまだ俺の誕生日は終わってなかったらしい。

同時に、タタンタタンと対岸へと電車が走っていくのが見えた。
ああ、あれが最終電車だったのか。


なんだかひどく胸がスッキリして、心が満たされてる。



「カガリ」

ぐいっと腕を引っ張って
俺の腕の中にすっぽりと収まるカガリは我に返ってあたふたと慌て始める。

「え、アア、アスラン!?」

「これからはずっとプレゼントくれるんだろ?
これからずっと一緒に、隣にいてくれる?俺はもうカガリを離したくないから」

カガリの息をのむ音が、聞こえた。
伝わってる・・・俺の気持ちが彼女に伝わってる・・・そう思うだけで嬉しさが溢れそうだ。

カガリの小さな手が俺のコートをぎゅっと掴んだ


「好きだから、離さないで」

「離すもんか。俺も好きだよ」




タタンタタンと電車の通り過ぎる音が遠くで聞こえる。

15歳の誕生日に貰った紺色のマフラーのような夜空に包まれて。





「帰ろう、アスラン!」


俺の大好きな笑顔のカガリと手を繋いで土手を歩く。
何年も二人で歩いてきた道を、もう一度これからも二人で歩いていくんだ。








何年も何十年も、これからの誕生日を二人でずっと−−−

























*あとがき
アス独白なお話ですみませんそしていきなりの更新ですみません。
何気にサイトを除いたらコメントくださってる方がいて、返信してるとふと「あ、29日ってアスの誕生日だ」と気づいたので思いつきだけで。
ヤマもなくオチもなくですみません。優しい感じな話を書きたかったんです;
書きながらやっぱりアスランもとカガリはいいなーと思ってました。
勿論シンやキラたちも大好きです!

アスラン誕生日おめでとう!何歳だ!そして読んでくださった方ありがとうございますw






  • URL:http://yaplog.jp/kutabirewarutu/archive/630
コメント
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てふこ
新作嬉しいです。有難うございます!!不器用な2人が愛しいです。
2011年11月02日(水) 21時52分
ぺそ
久々の更新嬉しいです(>_<)幼馴染みネタはアスカガの鉄板ですね☆
2011年11月02日(水) 1時27分
あすかが占いだぞ!***いらっしゃいませヽ(*´▽`*)ノ***Thanks!800,000HIT !!。・゚・ヾ(*´∀`*)ノ・゚・。                    うらー♪  
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『ケダモノケダモノ、コイゴコロ』
11〜13話をUP***


1/12・13-裏に
『未完成な僕ら"9』
『鶯』をUP
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