はじめに。〜今のわたし〜 

January 12 [Wed], 2011, 16:50
お正月も終わり

寒さがだんだんと勢いを増してきて

春になったら、大学4年生になる。

就職活動どころか

自分のやりたいことも分からない中、

将来の不安を感じながら

自分は何がしたいのかを考える毎日。


そんなとき、あの子と出会った。

というか、あの子が産まれた。

卵。 

January 12 [Wed], 2011, 17:07
私は、ある個別指導の塾でアルバイトをしている。

担当は、英語。

のはずなのだが、ちょくちょく数学も教えている。

その日も、いつも通りバイトを終え、車に乗り込んだ。

(何コレ…)

車の中のフロントガラス前にあるスペースに

1つの丸型の物を発見した。

(卵…?)

鶏の卵よりは一回り大きいけど、

でも卵によく似てる。

手に持つと生暖かい。

(誰のだろ…)

明らかに私のものではなかった。

かといって、車の中にあったから、バイト先の誰かのものでもなく…

お母さんか妹のかな?

混乱する頭でそう解釈し(今冷静に考えたらそんなことあるはずないのだが)、

お腹もすいてた私は、早々と家に帰るために車を動かした。

得体の知れない卵は、とりあえず膝の上に置いたまま…

不安の渦 

January 12 [Wed], 2011, 20:39
帰り道。

車に乗ると習慣化されたように、

グルグルと将来の渦に巻き込まれてしまう。

私は一体何がしたいんだろう

このままの未来はどうなってしまうんだろう

今の大学を選んだ理由も

高校の時、指定校推薦の枠が空いていて

将来について漠然と考えている私を見かねた先生が

基準を満たしている私に話を持ちかけてくれたから

っていう単純な理由で選んだ大学だし。

最初は

センター試験や小論文を書ける気がしなくて

楽に大学に行けてラッキー☆

なんて思ってたけど。

今となっては、学んでいる専門分野さえ魅力を感じなくなっている。

(はぁ〜…)

大きなため息を心の中でひとつ、ついた。

そのとき、膝の上に置いてある卵が、

自分から左右に動いた気がした。

誕生 

January 13 [Thu], 2011, 0:13
家に着くのは、いつも夜11時を回る。

授業は10時前には終わるのに

私にも何故だか分からないのだけど

家から40分もかかる場所をチョイスしてしまった。

大学よりもさらに遠いという。

雨の日やラッシュの時間帯に行くときは注意しなければならない。

私の家はマンションのなので、車は地下駐車場に停める。

その日も、いつものように車を停めて、荷物を出して車から降りようとした。

そのとき、ふと、卵が異様なくらい動いてるのに気付いた。

(うわっ!!)

あまりの動きに、思わず手を離した。

何かが卵の中から出てきそう…

(ヤダ…どうしよう…)

変なの(ひよこや鳥の雛など)が出てくると想像してた私は、車の運転席に卵を放り出して

いつでも逃げられるように遠くから見守った。

卵にヒビが入り、何かが内側から殻を破る。

なんと

出てきたのは

鳥ではなく

小さな“天使”だった。

初めての出会い 

January 13 [Thu], 2011, 9:08
(何コレ…)

目の前の状況に理解できない私。

いつも通りバイトに行って

車に戻ると見覚えのない卵があって

知らないうちに割れて

中から現れたのは…

“小さくて白い羽が生えた、手のひらサイズの人”

(今日疲れてるのかなぁ…)

ありえない

夢を見てるんだ

そうだそうだこれは夢だ

と思ってると、

「ふゎぁ〜…よく寝た…!」

可愛らしい小さな子どもの声が聞こえた。

(しゃべった…!?)

夢だと思いながら、得体の知らないモノから目が離せない。

すると、

この羽の生えた小さな人は、私を見て

ニコって笑って

私の前まで、小さな翼を使って飛んできた。

(と、飛んでる…!!)

生まれたてだからなのか、まだ不自由そうに羽を使うのでフラフラしている。

そんな様子を見て

私はすっかり腰を抜かしてしまった。

はじめまして 

January 13 [Thu], 2011, 14:44
私は腰を抜かしたまま

目線は、変な生き物に釘づけだった。

「おっと」

生まれたてで頼りなく動かしている羽がかたむき

バランスを崩して落ちようとする生き物を

私は無意識のうちに両手で受け止めていた。

「ありがとう」

さきほどの子どものようなかわいい声で、その生き物は笑った。

「あなたがあたしのママね」

私の両手の上で、私を見上げてにこっと笑うその顔は

天使のように純粋だった。

「マ・・・ママって、私、生んだ覚えないんだけど・・・」

私が恐る恐る話しかけてみると

ニコって笑って

パタパタと羽を動かして

私の目線までやってきた。

「あたしのこと、あっためてくれたでしょ」

あっためた?

混乱している頭で、記憶を思い返す。

確か、卵は膝の上に置いてただけのはず・・・

「ママのぬくもりと、ママの気持ちが、あたしを卵からかえしてくれたんだよ」

再び羽が自由にきかなくなると

私の両手の上に戻ってきた。

そして私の上で、えへへと笑う。

「よろしくね、ママ」

私の頭の中は

思考停止っていう言葉が当てはまるくらい

何も考えられなくなっていた。

自己紹介 

January 13 [Thu], 2011, 14:57
この妙な生物はこう言った。

自分は、天使になるために生まれてきた”天使の赤ちゃん”

地上で1年間

1人の人間のそばにいながら修業をしなければならない、らしい。

「なんで天使なのに卵から生まれてくるの?」

信じていない私は

私の手の上でしゃべる“自称天使の赤ちゃん”を見て尋ねた。

「だって、地上で1人の人間に育ててもらわなきゃいけないんだよ。

”体”がなかったら、誰もあたしに気づいてくれないじゃん。

”体”はね、神様からの最初のプレゼントなんだよ。

いろんなことが感じられるようにって!」

そう言って、自分の体を見て、嬉しそうに笑った。

「ママの不安な気持ち、わかったよ

これからどうなるんだろうって

だから、ママがあたしを引き寄せたんだと思う

1年間ママのそばにいてもいい?

あたしが、その気持ちを幸せな気持ちにかえてあげるから

ママと一緒に、人間のことお勉強してもいい?」

”天使の赤ちゃん”の目を見ていると

キラキラしていて

希望に満ち溢れていて

純粋で

疑問なことはたくさんあったけど

気づいたら

「うん」

って答えた自分がいた。

「ありがとう!

あたし、立派な天使になるために頑張るね!

ところで、ママのお名前はなんていうの?」

「私は・・・『くるみ』」

「『くるみ』!素敵なお名前!

ね、ママからもあたしにプレゼント頂戴♪

神様からは”体”

ママからは”名前” をもらいたいの!」

名前かぁ・・・。

私は、少し考えて

一瞬頭に浮かんだ名前をそのまま口に出した。

「『みるく』・・・は?」

「『みるく』!?かわいい〜!!

ママありがとう!『くるみ』っていうママの名前にも似てて嬉しい!」

天使の赤ちゃんは、私の手から翼を動かして宙返りした。

こうして、わけがわからないまま

天使の赤ちゃん『みるく』との1年間の生活が始まった。

名前を呼ぶこと 

January 13 [Thu], 2011, 15:23
「あたしはこの卵で寝るの」

そう言って

みるくは自分が出てきた卵を

大事そうに抱きかかえている。

自分の体よりも大きい卵を抱えている姿を見て

なんだかおかしかった。

車の中から荷物を出して

エレベーターに乗るために階段を上がる。

みるくはまだ飛ぶのが慣れていないからなのか

ふらふら飛んでいたので

私の手の上に座れるように

手を差し出した。

それに気づいたみるくは

嬉しそうに私の手の上に一目散に座りに来た。

生まれたてなのに

白いワンピースを着ていて

背中に小指の爪ほどの小ささの翼が生えている。

だけど、天使の象徴とされる頭上に輪っかはなかった。

「輪っかはね、”天使”になったらもらえるのよ

”天使”になるためには

うんとたくさんの修業を積まなきゃならないんだから」

私はなにも言っていないのに

みるくは私の心の中の疑問に答えてくれた。

「あんた・・・心の中が読めるの?」

「相手に触ってたら読めるよ

体の中に血が流れるみたいに

エネルギーを通じて伝わってくるの

だから、あたしを温めてくれたときに

ママのエネルギーも伝わってきたから

ママの考えてることが分ったんだよ」

階段をのぼりながら

そんなことを話してくれた。

「そういえばさっき、

『私があんたを引き寄せた』

って言ってたけど・・・どういうこと?」

「あのねぇ、ママ

あたしはさっき、ママから『みるく』っていう素敵な名前をもらったでしょ?

どうして名前で呼んでくれないの?

名前で呼ばないっていうことは

その人にとって、とっても失礼なことなんだよ

ママが無意識に

自分が相手を思い通りにするぞ

って思ってる心の表れなんだよ

そんなのは『エゴの押しつけ』

一番しちゃいけないこと

だからママ、これから気をつけなくっちゃ」

みるくの言葉にびっくりして

「はい」

って小さく返事をして

まじまじと”天使の赤ちゃん”を見た。

この子・・・本当に赤ちゃんなの?

私よりもすごくいろんなこと知ってそうなんだけど・・・

存在 

January 13 [Thu], 2011, 15:40
エレベーターに一緒に乗って

ふと気付いた。

「ねぇ、アン・・・みるく」

私は、みるくのことを無意識に「アンタ」と呼ぼうとしていることに気付いた。

さっき言われたばっかりなのに。

こういう気づかないところで

自分の心の表れって出てくるんだなぁ

と思ったら

言葉って簡単に使うけど

一番気をつけなければならないものだと思った。

「なぁに?ママ」

自分の名前を呼ばれたのが嬉しかったのか

私の手の上に乗ったまま顔を上げる。

「私、家族で暮らしているんだけど、みるくの姿が見られても平気なの?」

自称”天使の赤ちゃん”が飛んでいて

1年間一緒に生活する

って言ったら、みんなどうするだろう。

おじいちゃんなんて、びっくりしすぎて倒れちゃうかも。

「大丈夫だよ

あたしの姿は、ママにしか見ることができないようになってるの

あたしが「ママ」って決めた人にしか

あたしの姿は映らないように

神様はあたしの”体”を作ってくれたの」

な、なるほど・・・

もうこうなったらみるくの言うことをすべて信じるしかなさそうだ。

にしても、神様ってすごいな・・・

「ただいまー・・・」

大丈夫と言われてもやっぱり不安で

恐る恐る家に入る。

11時を過ぎているのに

お母さんと妹は大体起きている。

「おかえりー」

お母さんがストーブの前で本を読んでいたけど

私が帰ってきたのを見て

立ち上がってご飯の準備に取り掛かってくれる。

「おかえり」

妹もお風呂上がりなのか

顔を赤くしてスウェットを着て出てきた。

・・・誰も私の手の上にいる”天使の赤ちゃん”には気づかない。

「ね、言ったでしょ

ちなみに声も聞こえないから安心して

あ、でもママがあたしに話す声は聞こえちゃうからね

ママの体は、みんなに見えるようになっているんだから」

そう言いながら

ご飯の支度をしてくれているテーブルの上に

パタパタと羽を動かして飛んで行った。

「あ・・・」

「どうしたの?ご飯食べるでしょ」

「うん・・・」

目はみるくに釘づけのまま

お母さんの質問に答えた。

みるくは

テーブルの上にある、みかんやコップに興味を示しているようだ。

(本当に私にしか見えないんだぁ・・・)

変な興奮と不安とドキドキが混ざり合う心臓を抑えながら

着替えに行くために

みるくのそばを離れた。

ハラハラ 

January 13 [Thu], 2011, 17:16
ご飯を食べながらも

テレビを見ながらも

みるくの様子が気になって気になって仕方がない。

だけど

部屋にはまだお母さんも妹もいるし

妹の話を聞いても

上の空で返事をしてしまう。

一方みるくはというと

お母さんや妹のことを見て

嬉しそうに微笑んで

一緒になって妹の話を聞いている。

妹はといえば

学校での話や

場所は違うけど同じ塾のアルバイトをしているので

授業の進め方なんかを話している。

と、突然みるくがパタパタと飛び回り始めた。

私はギョッとして

思わず目で追ってしまう。

「…虫かなんかいるの?」

妹が怪訝そうな目で
私を見ている空中を一緒に見始めた。
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:くるみ
  • アイコン画像 性別:女性
  • アイコン画像 職業:大学生・大学院生
読者になる
2011年01月
« 前の月  |  次の月 »
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
最新コメント
Yapme!一覧
読者になる