歪みの国のアリスお題 

November 29 [Wed], 2006, 15:22

初めまして。

歪みの国のアリスを愛す中学3年生、在(アリ)といいます。
僕とか言ってますが女の子です。

ここでは歪アリの小説や詩を描いていこうと思ってます^^
沢山お題をお借りしてきました。書いたものからここにリンクとかしますね。


■ 歪みの国のアリス

・独占
・嫉妬
・人形
・対立
・愛情
・欲望
・大切
・アリスだけ
・歌が聞こえる
・おかえり
・さあ行こう
・涙の海
・真っ赤な、君の。
世界はこんなにも
・忘れているのは
・おうちにかえれない
・閉ざされた扉


■ チェシャ猫

君を導こう
・いつものにんまり顔
・笑顔の裏で
ぼくらをわすれたアリス
・忠実な猫
・体と首の意思疎通


■ 猫アリ

膝のうえで
・体は要るかい
・僕、だけ、の、
・アリスより甘いものなんてないよ
・僕だけのアリス、キミだけの猫
・猫だからね
・ふたりきりの散歩
・甘いよ
・ケモノの匂いに包まれて


■ 武村さん
・心のゆくさき
・絶えない笑み
・穏やかに(狂おしいほど)君を愛す
・愛のカタチ
・お父さん


わかりやすいように、このカテゴリ(歪みの国のアリス お題)にはこの記事だけにします。
書いたものは「歪みの国のアリス 短編」というカテゴリに入ります。

一応受験生なのであまり早い更新は出来ないと思いますが、宜しくお願いします^^


膝の上で 

November 29 [Wed], 2006, 15:35


膝の上で





「チェシャ猫」





アリスが呼ぶと、首だけのチェシャ猫がごろごろと転がってくる。


穏やかな昼下がり。もう冬だというのに、日差しが暖かい。

アリスは御祖母ちゃんの家の縁側に座っていた。御祖母ちゃんも叔父さんも、今は出かけていていない。
最初アリスがこの家に来たときには、チェシャ猫を隠すのを如何しようと心配だったけど、幸いにも御祖母ちゃんも叔父さんも、出かけることが多い。
だから毎日チェシャ猫が見つからないようにビクビクしなくていい。


アリスはチェシャ猫を抱き上げた。
相変わらずのにんまり顔。アリスを何度も助けてくれたにんまり顔だ。


「今日は暖かいねチェシャ猫」

「そうだね」


アリスはチェシャ猫を膝の上に置く。撫でてやると、ぐるぐると喉を鳴らした。



「やっぱり猫なのね」

アリスはくす、と笑う。


「?」

「日向ぼっこ、好きでしょ」

「ああ、好きだよ。でも」


くるりとアリスのほうを向く。
アリスは「?」と首をかしげる。


「アリスのほうが好きだよ」

「!」


アリスの頬が紅く染まる。チェシャ猫はにんまりと笑っている。この猫には照れというものがないらしい。
アリスはチェシャ猫を抱きしめる。


「・・・私も大好きだよ、チェシャ猫のこと」

「・・・・・・・・・。」


チェシャ猫はアリスの腕の中でぐるぐると喉を鳴らす。

にんまりとした笑顔が、緩んだ気がした。




「今日は暖かいね」



チェシャ猫が言った。



「・・・そうね」




身体も心も。




貴方がいるから、ほら、こんなにも暖かい。










+++

ほのぼのはどうも苦手。
久々に書きました猫アリ。
短くなっちゃったのは時間がないからというのもあったり。


君を導こう 

November 29 [Wed], 2006, 22:36

君を導こう


「猫、行くのですか?」


ゆったりとした口調で、緑色の髪の男が言った。口の端が持ち上げられているので笑っているように見えるが、全く笑っていない。

口の端から、先の割れた細い舌がチロチロと揺れる。
爬虫類を思わせる。


彼は本当に爬虫類なのだ。蜥蜴(トカゲ)。蜥蜴のビル。



チェシャ猫はにんまりと笑ったまま振り向く。


「ビルかい。君は番人だったね」


「ええ」


ひんやりとした冷たい声。
血色のよくない肌も、触れたらきっと冷たいのだろう。



「光栄なことだね」


猫の言葉に蜥蜴は頷く。


「私たちは選ばれた」


感情の篭っていないような冷たい声。だがどこか誇らしげだった。



「でも私にはアリスのためにしてあげられることはほとんどない。猫、導く者である貴方が重要なのです」

「解ってるよ」



導く者はゆっくりと歩き出す。滑るように。

番人は導く者を見送る。






アリス、僕は君を導こう


シロウサギという真実がどれだけ君を傷つけても

それでも君は生きることを望んだから


僕は無感情に君を導くことしか許されないけれど、それでも君を守ろうと思う

僕は導く者だから、アリスを真実へと導かないといけない


だけどねアリス

僕はこれは義務じゃなくて権利だと思うんだ



ビルは番人だからいちばん遠くにいる。

僕は、ビルの次にアリスの遠くにいる。



だけど僕はいつでも君のそばで




君を導くよ










そしてチェシャ猫は学校へと足を踏み入れた…






















+++
本当に時間がありませんでした。
チェシャ猫がアリスの元へ行くちょっとまえのお話。
このまえCURURUで書いた、これに似たお話は、番人がビルじゃなかったんで、
こっちでちゃんとビルにしてみた。
ビルが番人だということをすっかり忘れててね…変なおっさん風なひとが番人になっちゃってたんで。



体は要るかい 

November 30 [Thu], 2006, 14:36


体は要るかい



「ねぇ、チェシャ猫」


「なんだいアリス」



出口の見えない、まるで迷宮のようなバラ園の中を歩きながら、アリスが口を開いた。

アリスのエプロンドレスのエプロンに、首だけになったチェシャ猫が綺麗にくるまれている。


「本当に、大丈夫なの?体、なくっても」


アリスはチェシャ猫の顔を覗き込んだ。


チェシャ猫の首と体は、さっき女王の城に行ったとき、女王によって切断された。
だが首も体も死ぬことはなく、体は走って逃げてしまった。


「大丈夫だよ」


にんまりと猫は言う。

痛そうにしている様子もないし、もう血もとまっているようだったから、本当に大丈夫みたいだった。


「体、なくて不便じゃないの?」


「アリスが運んでくれるから大丈夫だよ」


「だって、自由に動けないんだよ?」


私だったら嫌だ。自分が首だけになるのなんて、絶対嫌だ。


「体、いらないの?」


アリスは念を押すように問う。
アリスを庇って首だけになってしまったのだから、罪悪感もある。



「アリス」


いつもより低い声でチェシャ猫がアリスを呼んだ。


「…なぁに?」


いつもと違うチェシャ猫の様子に、アリスは少し動揺した。




「体と首、どっちが大事なんだい」





「へ?」




「体、かい?」



なんだか怒っているような声だ。

もしかしてチェシャ猫…


「嫉妬してる?体に」


「・・・・・・・・・。」


図星のようだった。


チェシャ猫にとって首と体は別物らしい。

この首のチェシャ猫は、アリスが体のほうがいいと言っているように聞こえたようだった。



アリスは戸惑う。


廃ビルから飛び降りたときも、バラに襲われたときも、女王様の城でも、犠牲になってくれたのは体。
だけどそれは、チェシャ猫(首)の意思であって…


「…体は要るかい?」



…怖い。いつもどおりのにんまり顔だから、余計に。



アリスは少し考えて、答える。


「チェシャ猫が不便じゃないって言うなら、なくてもいいと思うよ。私は…体のないチェシャ猫も好きだよ」





沈黙。


無言の息苦しさにアリスは小さく息を吐いた。

こんな威圧的なチェシャ猫は初めてだ。



・・・・・・・・・・・・。





沈黙を破ったのはチェシャ猫だった。




「そう」




満足げな声。

顔を覗き込むと、いつもよりにんまり顔が深い気がする。



アリスはふふ、と笑った。






嫉妬深い猫が愛おしかった。





首だけになったって、私は貴方が好きだよ、チェシャ猫。





























+++
びっみょ…
ごめんなさい、変なお話に…!もしチェシャ猫が嫉妬ぶかかったら可愛いなって思って…!
てへへ★
これは、5章の【赤と黒の迷宮】の、最初のバラ園でのお話です。
本編ではこのあとアリスは足音を追いかけます多分。




独占 

November 30 [Thu], 2006, 16:43


独占




アリス



僕らのアリス




君は僕らのアリス


だけど君は僕だけのもの



君が僕をいちばん信頼してるって知ってるから


知ってて僕は忠実な猫を演じ続ける




ずるい猫だと思うだろうね




アリスを独占できるなら、猫を被ることくらい、容易いこと





僕は君だけを愛すから



君も僕だけを愛してください





僕は君の大切な猫



君は僕の大切なお姫様





ねぇ、アリス?





君の柔らかい髪も暖かい腕も優しい視線も全部全部





僕  の  も の ・ ・ ・







僕だけの、アリス。











+++
短いです。ほんとに。
チェシャ猫視点。今度追記するかも。


嫉妬 

December 01 [Fri], 2006, 17:19



嫉妬








「チェシャ猫…」





アリスが、震えた声で僕を呼んだ

僕がゆっくりとアリスを見ると、アリスの頬は涙で濡れていた。




僕が、泣かしてしまったの?




「ねぇ、チェシャ猫…なんで…?」




ナンデ?




そう僕が首を傾げると、アリスは信じられないといった目で僕を見た。





「なんで、なんで殺したのよ…!」





アリスの声は、綺麗だ。



大事なアリスが泣いているというのに、僕はこんなことを考えていた。





「なんでかって?当たり前だろう?」





僕はにんまりと笑った。



僕の手は、血で濡れていた。


僕の血じゃない。



女王やビル、帽子屋、ネムリネズミたちの血だ。



僕の足元には、その死体が転がっていた。




僕の爪は、鋭い。





「じょ、女王様…ビル…帽子屋…ネムリ、ネズミ…」



アリスはしゃくり上げながら、その人たちの名前を呼ぶ。

だけど動かない。




当たり前だよ、僕が殺したんだから。




「ねぇ、チェシャ猫…なんで…?なんで殺したのよ…」





僕は、笑う。





「君と仲良くしていたからね」







アリスに近づく者はみんな邪魔。


僕のアリスを見るな。触るな。来るな。





「チェシャ猫…?」








「猫は嫉妬深いんだよ、アリス」




























+++
チェシャ猫が、アリスが女王とかビルとか帽子屋とかネムリネズミとか、その辺の人たちと仲いいのに嫉妬して、殺しちゃったお話。
月並みだなぁorz

絶えない笑み 

December 01 [Fri], 2006, 17:36



絶えない笑み






亜莉子ちゃん


僕はどうしても君が欲しい



いつでも、そばにいてほしいんだ










「やぁ亜莉子ちゃん」


「武村さん!こんな時間に如何したんですか?」



深夜12時。

僕の突然の訪れに、僕のお姫様は驚いたようだった。



パジャマ姿が愛おしい。




「えっと…上がってください!すぐお茶出しますから!」




亜莉子ちゃんは僕を家に入れてくれた。


此処は、亜莉子ちゃんの御祖母さんの家。



あの男の家…



僕はふつふつと湧いてくる気持ちを押さえ込んで、にこやかな笑顔を作る。




僕はリビングに通された。

幸い、御祖母さんもあの男も起きなかったようだ。



すぐにお茶入れるから、と亜莉子ちゃんは台所へ向かった。



その隙に僕は持っていた鞄から、あるものを取り出す。

僕は亜莉子ちゃんに気づかれないように、静かにリビングを出た。





そっと戸を開けると、キィ、と音がした。予想以上の大きい音に僕は少し驚いたが、大丈夫。

あの男は起きていない。



僕は寝ているあの男に近づいた。




のんきな寝顔だ。

こんな男に亜莉子ちゃんを守れるわけがない。



亜莉子ちゃんは僕のところに来るべきなんだ。





この男さえいなければ。





僕は握り締めていた包丁を、寝ている男――亜莉子ちゃんの叔父である、和田康平の胸に、思い切り突き刺した…



血しぶきが飛んだ。



「っぐぁあああ!」



痛みで目が覚めたのか。

和田が叫び声をあげた。



「はははははっ!お前さえいなければ亜莉子は僕のもの!」



僕は嬉しくなって、何度も何度も、和田の胸に包丁を突き刺す。


苦しめて殺したかったので、一発で死なないよう、心臓を避けた。




だがやがて和田は、叫び声を上げなくなった。






「如何したの叔父さん!」




和田の叫び声が聞こえたのか。

亜莉子ちゃんが部屋に飛び込んできた。




「叔父さん?!ねぇ!大丈夫?!叔父さん!」





この光景を、何処かで見たことがある気がした。



――そうか。

あの日、亜莉子ちゃんの母親であるあの女に僕が刺されたとき、亜莉子ちゃんは必死で僕の名を呼んでいた。




亜莉子ちゃんだって僕を求めているんだ。




僕は笑った。




「武村さん…?!」




返り血で真っ赤に染まっている僕を見て、亜莉子ちゃんの顔の色が変わる。


僕はいつもと同じ、にこやかな笑みを浮かべる。



僕はいつでも笑みを絶やさない。


亜莉子ちゃんを怖がらせないように…






「亜莉子ちゃん、僕のところへおいで・・・・・・」





























+++
キモ武村さんです^^
パジャマ姿が愛おしい、ってとことかきもすぎる武村さんになった!
武村さんは悪役にしか出来ないというorz



おかえり 

December 02 [Sat], 2006, 16:06


おかえり






病院の解剖室での出来事から、もう3ヶ月が経った。

御祖母ちゃんと康平叔父さんの家での生活は、楽しい。


おなかの傷もほとんど治り、私は新しい学校で新しい生活を送っていた。




学校からの帰り道、ふと顔を上げると視界いっぱいに夕焼けが広がった。


「綺麗…」


私は思わず目を細める。



そういえば、初めてチェシャ猫や不思議の国の住人に会ったのも、こんな夕焼けの日だったっけ。


学校の窓から、茜色の光が差し込んでいて、凄く綺麗だった。





―――あの日から、私は一度も不思議の国の住人に会っていない。




いつでも傍にいたはずのチェシャ猫も、私の前には現れなかった。



身体が砕けたときに、頭も消えちゃったのかしら…




そんなことを考えているうちに、家に着いた。


御祖母ちゃんや叔父さんが昔から住んでいる家なので、少し古いが、懐かしい雰囲気で、私は気に入っている。



「ただいま」



ドアを開けて靴を言いながら、奥にいるはずの御祖母ちゃんに言った。



叔父さんは仕事で、帰って来るのはいつも遅い。


だから私はいつも御祖母ちゃんとふたりで晩ごはんを食べる。



だからといって寂しいわけじゃない。

御祖母ちゃんは優しくて、3ヶ月前に会ったばかりなのにすぐに馴染むことが出来た。




靴を脱ぎ終わって立ち上がると、玄関からリビングに通じるドアのところで、叔父さんが立ってるのが見えた。



「あれ、叔父さん今日は早いね」



叔父さんは、ふっと笑って私の頭をくしゃ、と撫でた。



「おかえり亜莉子」



暖かい手。
優しい声。

もう聞きなれた、私の家族の声だ。




なのに、何故かチェシャ猫の声と被った気がした。





―――オカエリ、アリス―――






私を何度も助けてくれた、強い猫。


私を元気付けてくれた、優しい猫。


私に愛することを教えてくれた、愛しい私の猫。






気づいたら、私の目から涙が出ていた。


涙の理由は解らない。




ただ、もうチェシャ猫に会えないということが、たまらなく悲しかった。



初めて、愛すことが出来たのに。




もうチェシャ猫にオカエリ、と言ってもらえないことが、たまらなく寂しかった。





チェシャ猫が私の帰る場所だったのに。







私が泣いているのを見て、叔父さんは驚いたようにわたわたと慌てた。



「今日は俺が晩ごはん作るからなっ俺の料理は美味いんだぞ!」



だから泣くなよ、と明るく言った。


わざとらしいくらいの明るい声が、妙に可笑しかった。




「うん…ごめんなさい、大丈夫……ただいま」




私は精一杯の笑顔を作った。


叔父さんも安心したように息をついた。









私は自分の部屋で、小さく呟く。




「ただいま、チェシャ猫」




こうやって、自分の記憶に話しかける。


そうすると、ほら。






―――オカエリ、アリス―――







私の猫が、にんまり顔で私を迎えてくれる。










いつだって、私の中にあの愛しい猫はいる。









―――オカエリ、僕らのアリス―――















+++
「猫を連れて」以外のエンディングのあとの話。
アリスは叔父さんの家に住んでます。
チェシャ猫はきっと一生現れないという設定で。


対立 

December 02 [Sat], 2006, 16:35


対立





「今日もいい天気ねーチェシャ猫」


「そうだねアリス」



アリスはチェシャ猫を大きめのトートバッグに入れて、胸の前で持って歩いていた。
いい天気なので、散歩中なのである。

散歩ついでに買い物もしてきたので、トートバッグには大根やら南瓜やら、野菜が入っている。


そこへ突然走ってきた何かが、アリスを抱きしめた。



「私のアリスっ!今日こそ首になって私と暮らしましょう!」


金色のウエーブのかかった長い髪に、淡い薔薇色のドレス。アリスより年下に見える可愛らしい少女だ。


「じょ、女王様?!」


突然の女王の出現にアリスは動揺を隠せない。


―――お城にいなくていいの?!



「いいのよアリス!私は首だけになったアリスと城へ帰るわ!」


女王はアリスを抱きしめる腕にさらに力をこめた。





「苦しいよ女王」





「?!」

女王はばっとアリスを放した。


「ね、ねねねねね猫…!貴方何やってるの?!」


信じられないといった顔で、トートバッグにおさまるチェシャ猫を見ている。

チェシャ猫は相変わらずのにんまり顔で、のんびりと答える。


「アリスと散歩してたんだよ」


「まぁあああああっ!」


女王はアリスからチェシャ猫の入ったトートバッグを奪うと、地面に投げつけた。

大根や蜜柑など、先ほど買ってきたものが宙を舞った。
トートバッグは一度跳ねて、ぴたりととまった。


「女王様!チェシャ猫に乱暴しないで!」


「アリスは黙っていて!これは私と猫の問題なのよ!」


女王はツカツカと落ちているトートバッグに近寄ると、乱暴に持ち上げた。

トートバッグにおさまるチェシャ猫のフードは、相変わらずぴたりともずれない。



「貴方みたいなのが、アリスと散歩ですって…?!あつかましいにもほどがあるわよ猫!」

「アリスが行こうって言ったんだ。それに僕はアリスに運んでもらわなきゃいけない」


本当に首狂いの声は耳障りだよ、とチェシャ猫が付け足した。


「まあああ!もう!なんであの時飛び出してきたのよ!貴方が邪魔しなければ今頃アリスは首だけになって私の城で…!」


「僕はアリスを真実へと導かないといけなかったからね」


のんびりとしたチェシャ猫の口調は、さらに女王を苛々させる。

アリスは呆然と見ていることしか出来ない。

ふたりの口喧嘩はヒートアップしていく。
といっても、チェシャ猫は軽くかわしている感じなのだが。


「もう貴方の役目は終わったでしょう!とっとと消えなさい!」
「駄目だよ、僕らの存在はアリスが生きることを望んでいる証だろう?」
「だからってアリスに持ち運んでもらわなくたっていいじゃないの!」
「アリス以外に僕を持ち運んでくれる人がいるのかい?」
「貴方なんか運びたい人はいないでしょうね、でも私のコレクションにならしてあげてもよろしくてよ」
「君の城に飾られるなんてごめんだね」
「まあああ!生意気な猫!」
「首狂いには言われたくないね」
「殺してやりたいくらいよ!」
「やるかい?」
「なんですって!?」



「じょ、女王様?」


怖々と、アリスが口を挟んだ。

「なぁにアリス?首だけになってくれるの?」


違う違う、とアリスは首を振る。



「私、チェシャ猫も女王様も大好きだよ。それじゃ駄目なの?」



「まああ!大好きだなんて嬉しいわ!じゃあ早速首になって…」


女王が鎌を取り出した。
いつものことだが、どこに持っていたんだろう。


「駄目だよ女王。アリスが首だけになったら僕を持ち運んでもらえない」

「五月蝿いわね猫!貴方のことは如何でもいいのよ!」


「五月蝿いのは君だろう」



再びふたりの喧嘩が始まる。



みんなには仲良くしててほしいのにな…

このふたり、なんでこんなに仲が悪いんだろう。因縁の仲っていうか、犬猿の仲っていうか。




でも、喧嘩するほど仲がいいって言うし。

アリスはふふっと笑った。


「何笑ってるんだいアリス」



いつのまにかチェシャ猫がアリスの足元に転がっていた。
トートバッグはない。

とりあえず転がっているチェシャ猫を抱き上げた。


「あれ?チェシャ猫、バッグは?」

チェシャ猫はにんまりしてちらりと後ろを見た。


「ああ、女王が…」


アリスもそちらを向くと、女王がトートバッグを殴っているのが見えた。

「ほほほほほ!猫!貴方だけは許さなくてよ!」


ぼこぼことグーで殴っている。


「もしかして…」

アリスは女王に殴られている可哀想なトートバッグを見る。

「南瓜」

チェシャ猫が笑った。


トートバッグに入っている南瓜を、チェシャ猫だと思って殴っているようだった。



女王様って、結構抜けてる。


アリスはくすっと笑った。



「じゃあ、帰ろうかチェシャ猫」


「そうだねアリス」



この勝負はチェシャ猫の勝ちということで。




「女王様またねー!」


殴るのに夢中になっているので聞こえてないと思うが、アリスは女王に声をかけた。



「…マタネー」

チェシャ猫も真似する。



「?!」


チェシャ猫の声だけ器用に聞きとって、女王は顔を上げた。


「まああ!猫?!なんでそこに…?!」


驚く女王を見て、チェシャ猫はアリスの腕の中でにんまりする。


「マタネー」







「ね、ねね猫ぉおおおおおお!!!!!!!!!!!」

























+++
女王様VSチェシャ猫。
かなり長いかも。
公式サイトのコラムとかの影響うけまくってるorz
女王様とチェシャ猫は最高に仲が悪いといい。


閉ざされた扉 

December 07 [Thu], 2006, 14:55

閉ざされた扉





「…ス、アリス…」


誰かに呼ばれた気がして、幼いアリスは目を開けた。
眠っていたはずなのに、不思議と頭は冴えていた。


「…だれ?」


身体を起こしてみる。

声は、意外と近くで聞こえた。


「アリス」


振り向くと、灰色のローブに身を包んだ男が立っていた。
表情はにんまりと笑っていて、その口からは黄色い鋭い牙が見えた。


「チェシャ猫…」


「ほら、ごらん」


チェシャ猫はいつものにんまり顔で、遠くを指差した。

さっきまで真っ暗だったはずの世界はいつの間にか、明るい草原になっていた。
可愛らしい花が沢山咲いて、蝶々が華やかに飛んでいる。


私が夢見た世界。


「…あ…」


耳に入ってきたのは、何人かの楽しそうな声。



「私のアリス遅いわね…」

「アリスはあんたのじゃないだろっ」

「五月蝿いわねガキんちょ!」

「あーもー女王は自己中だなー!」

「クスクス」

「…けんか…だめ…」



「みんな…」


アリスの目に映ったのは、大好きなみんな。


淡い薔薇色のドレスに身を包んだ、可愛らしい女王様。
顔がすっぽり隠れるくらい大きな帽子を被った帽子屋。
幸せそうに眠って、むにゃむにゃ言っているネムリネズミ。
緑色の髪の毛の、爬虫類みたいなビル。


ティーカップやケーキやクッキーなどが彼らが囲むテーブルを飾っていた。


私の大好きな、不思議の国のみんな…


「みんな…」


トン、とチェシャ猫に背中を押された。


「お行き」


「え…?」


チェシャ猫はいつものにんまり顔で、だけど少しだけ悲しそうに見えた。

「チェシャ猫も、行こう?」

アリスがチェシャ猫のローブを軽く引っ張ると、チェシャ猫は少し戸惑った様子を見せて、それから頷いた。



「アリス!」

最初にアリスに気づいたのは女王。
女王はアリスをぎゅっと抱きしめてから、アリスを椅子に座らせた。


「アリス!遅いじゃないか!」

「おかえり…僕らの…アリ…ス…」


彼らは優しくアリスを迎える。
その暖かい空気に、思わずアリスの頬は緩む。

チェシャ猫も、アリスにほら、と言われて椅子に座る。


なんて幸せな空間。
私は、みんなが大好きだった。


「あのねっみんなっ!アリスね、みんなのこと大好きだよ!」

アリスが興奮気味に言うと、彼らは優しく笑った。

「私もよ、アリス」
「…まぁ、どっちかってぇと嫌いじゃないけどな」
「すなお…じゃないんだから…すきって…言えばいい…の…に…」

ネムリネズミがムニャムニャと言うと、帽子屋はうるせぇ!と言って口にクッキーを押し込んだ。

そんなみんなを見て、ビルが薄く微笑む。


私の大好きな、大好きなみんな…


そして…


「やあ、遅れたよ」


そう言って椅子に腰掛けたのは…


「シロウサギ!」


アリスはシロウサギに飛びついた。
ふかふかの毛に、まんまるの赤い目。
大好きなお父さんの格好をした、私の大好きなシロウサギ。


「おやアリス。今日はご機嫌だね」

「うん!だってみんながいるんだもん!」

ね、チェシャ猫、と言うと、アリスの脇に座っていたチェシャ猫はにんまりした。



私は、この世界が大好きだった。

落ちることのない太陽。
朽ちることのない花。
死ぬことのない蝶たち。

そして、アリスを愛してくれる彼らがいる。

誰も私を殴らない。
みんな私を大好きだと言ってくれる。

アリスはシロウサギを抱きしめた。

「アリス、シロウサギが大好きよ」

ふかふかの毛が気持ち良い。

「僕もだよアリス。みぃんな、アリスのことが大好きだからね」


シロウサギは優しくアリスの頭を撫でてくれる。

アリスは、あまりの心地良さに、目を閉じた。














「なんでそんなありもしないことを言うの?!」


パァン、という音が響いた。
幼いアリスは、真っ赤に腫れた頬を押さえて泣いている。

「ごめんなさい…でもみんなは、シロウサギは本当にいるんだもん…」

再び、パァンという音が響く。

「シロウサギなんかいないの!そんな話しないで!」

女性は今にも泣きそうな声でアリスを叱り続ける。


「ごめんなさい…ごめんなさい…」

幼いアリスは謝り続ける。


お母さんは、みんなみたいに私を大好きだと言ってくれない。シロウサギみたいに抱きしめてくれない。



「ごめんなさい…おかあさん……」






「泣かなくていいんだよ」


上から、優しい声がした。
顔を上げると、見慣れたシロウサギの顔があった。

シロウサギはいつものように、アリスの頭を撫でてやる。

「………」

アリスはその手を払った。


「シロウサギなんていないの……」

アリスは俯いた。
シロウサギが悲しい顔をしているんだということは、見なくても解った。


ふと、アリスが顔を上げると、もうそこには誰も居なかった。





アリスは不思議の国を閉じた――――




そしてあの惨劇の夜、閉ざされた扉は再び開く―――







おかえり、僕らのアリス




彼らは屈託のない笑顔でアリスを迎えるだろう。



彼らは、アリスを待っていた。

アリスが真実と向き合うために、再び扉を開くのをずっと待っていた。

自分達を大好きだと言ったアリスに会うのをずっと待っていた。





おかえり、僕らのアリス









アリス


僕らのアリス



貴方の腕を足を首を声を




僕にください


貴方を傷つけるだけの世界なら捨ててしまって





千切れた身体は狂気に包まれて穏やかに眠る






さあ

終わることのない悪夢を貴方に…













「さぁアリス。シロウサギを追いかけよう―――」






全ては、アリスが望んだのだから。




僕というニンゲン
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