第一話 魔王の手下と学校生活

April 21 [Sat], 2012, 0:19
 
 ――あの日、妹の部屋に入った俺は、いきなり口をふさがれた。それも、口で、だ。
 マウストゥマウス、ピンク色の頬、さらりとした黒い長髪、薄く開いた瞳、そこからのぞく紅い目……。
 何が言いたいのかというと、奪われた。両性にとって大事な意味をもつものを。

「起きてくれよー、魔王の旦那」

 そんな事を懐かしく感じながら思い返していると、そんな声が聞こえた。
「ああ、起きたよ」
 目を開け、装飾の施された扉の方を見る。すると、そこには当然のごとく白いエプロンをした女の子が、笑顔でおそらく寝ぼけ顔の俺を眺めていた。ノックが聞こえなかったが、どうやって入ったのだろうか? そう考えていると、彼女の手元に光る機器を見つけてしまった。
「おはようございますー、魔王の旦那」
 平然と挨拶をしているが、その機器(デジカメ)をスルーはできなかったので……
「おはよう、エターシャ。……ところで、少しそれをかしてもらえないか?」
「いいっすよー?」
 予想が正しければ、簡単に貸せるものではないと思うのだが、二つ返事で彼女はそれを俺に渡す。
 ――SDデータの回覧開始直後、スクロールするまでもなく、それは見つかった。俺はそれを――

「――削除完了……と」
 
 考えなしに片っ端から削除していく。削除、削除っ、削除ッ、削除! っと始めのを合わせ、5削除を達成する。
 しかし、それの持ち主は全く動じる様子を見せず、むしろ冷静な様子で
「これ、なんですかね?」
 と別のSDカードを取り出す……胸から。
「そんな場所に本物隠すな! 消せないだろ!」
 ふっふっふっ〜、とSDカードを持った手をパタパタさせ、反対の手の人差し指と親指で丸を作り、それを反転させる。
「消させないっすよ〜、依頼の品っすからねー」
 丸を崩し、千円札を取り出す……また、胸から。取り出すたびにたゆんたゆんと揺れるため、直視できない。
「毎回誰なんだ、依頼出してんの……」
「企業秘密っすね、魔王の旦那にも教えられないっすよ」
 なんて理不尽な……俺が撮られてるのに。
「はあ……」
 まあいいか。そんな女の子なんだ、エターシャ=イルバックは。そう考えるとあきらめがついた。
 


     
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