神様のボート 

2005年12月16日(金) 16時18分
――どうしてこんなに引越しばかりするの?
 ママにそう尋ねたことがある。草加から引越すときだった。だってあたしはあのときすでに、六歳にして六度目の引越しだったのだ。最初の二度はまだ赤ん坊だったから、記憶にはないけれど。
――引越しはいや?
 ママはピアノの前にすわって、右手に鉛筆、左手に煙草をもっていた。鉛筆も煙草ももったまま、あたしを抱きあげて訊いた。
――ここが気に入ったの?
 あたしは黙っていた。なにがいやなのか、どうしたいのか、自分でもわからなかったから。
――どうして?
 仕方なくもう一度訊いた。
――どうして引越しばかりなの?
 ママはあたしの髪に何度も唇をつけながら、
――ママも草子も、神様のボートにのってしまったから。
 と言ったのだった。
――神様のボート?
 訊き返したけれど、それ以上の説明はしてくれなかった。
――そう、神様のボート。
 そう言ってあたしを膝からおろし、この話はそれでおしまいになった。




出典―「神様のボート」

著者 江國香織

発行所 株式会社 新潮社

星の王子さま 

2005年12月14日(水) 13時01分
 王子さまはもう1度庭園のバラを見に行った――
「きみたちはぼくのバラとはぜんぜん似てないよ。きみたちはまだ何でもない」と王子さまは言った。
「誰もきみたちを飼い慣らしていないし、きみたちだって誰も飼い慣らしていないからね。きみたちは以前のキツネに似ている。前は10万匹のキツネたちのどれとも違わないただのキツネだった。でもぼくたちは友だちになったし、今では彼は世界でただ1匹のキツネだ」
 バラたちみな当惑していた。
「きみたちはきれいさ。でも空っぽだよ」と彼は続けた。「誰もきみたちのためには死ねない。もちろん、通りすがりの人はぼくのあのバラを見て、きみたちと同じだと考えるだろう。でも、あれはきみたちをぜんぶ合わせたよりもっと大事だ。なぜって、ぼくが水をやったのは他ならぬあの花だから。ぼくがガラスの鉢をかぶせてやったのはあの花だから。毛虫を退治してやったのはあの花だから(チョウチョになる分を2、3匹残してね)。愚痴をいったり、自慢したり、黙っちゃったりするのを聞いてやったのは、あの花だから。なぜって、あれがぼくの花だから」



「じゃ、秘密を言うよ。簡単なことなんだ――ものは心で見る。肝心なことは目では見えない」




出典―「星の王子さま」 

著者 アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ

訳者 池澤 夏樹

発行所 株式会社 集英社

はじめまして 

2005年12月14日(水) 12時56分
anneです。


このブログには、私の好きな小説の文章を載せていこうと思います。


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