渡り鳥の日々 02 

August 17 [Sun], 2008, 4:12
風が、凪いだ。


高く、高い天蓋は白く透明で、どこまでも続く炎天は陽炎とともに揺れる。

僕の翼はくすんだ灰色に染まっていて、いくら白き空の海を飛び回ってもそのくすみが取り除かれることはなかった。

砂の海。昼は荘厳に、父性の威厳さを以て万物を迎え、夜は優雅に、母性の慈しみを以て万物を迎える砂の海。遠くから聞こえる漣の微かな震動と、総てを焼き尽くす紅蓮の大地。持ち合わせた二面性は決して矛盾などではなく、確かにこの場所に存在している。


大気の先には、無限が拡がっているのであろう。しかし、その眼下には何が映るのだろうか。最果ては、何が。蜃気楼の先の遥かを眺めて、夜毎想う。そこには、僕の翼を白銀に輝かせる何かがあるかもしれない、と。

白くさせることに、意味はあるの?

彼女は言った。その為に危険を冒して、辿り着いたその先に見えるものは。

ヒトは、器をいつも求めている。遠目からでもキレイな器。でも、そこに何が入る? 何かを入れるために何をする? そこまでは思考が到達しない。空っぽの、燦然と輝く器。その器に入っているのは、空虚。

白銀の翼は、空虚の詰まった器だ━━と。


それなのに、翼を求める意味は? その価値は?



だから僕は答えた。

意味などない。ないということに、意味が残る。


例え白銀の両翼がそれ自体に無価値だったとしても、器を手に入れることに何の無意味さがあるというのだろうか。意味など後々悩めばいい。意味がないのなら、それでいい。その器は飾られるだけの存在かもしれないし、花を活けるものになるかもしれない。いつか、割れて粉々になるかもしれない。未来のことなど分からない。手に入れたとき、考えればいい。割れたとき、考えればいい。




ナンセンス、ね。


彼女は、しかし、総てを赦す微笑を称え、静かに繰り返すのだ。


ホント、バカみたい。




風が、凪いだ。

漣が僕を誘い、時刻は緩やかに誰そ彼を知らせる。今日一番の風は僕の身体を遠くまで運び、やがて誰も知らない世界へと導いてくれるのだろうか。



それは、誰も分からない。僕にさえも。





だから僕は、この翼で飛ぶ。




例えそこに器そのものがなかろうとも。僕が飛ぶ意味は、確かに存在しているはず。



漣の、向こう側へ。



大地を蹴って、見上げた天蓋は透明なほどに高い。












P R
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