日がかわって、南平台で若い男を乗せた。
「あの、八幡山。と、いうか、あの、環八沿いのドンキってわかり
ますか?」
お客さんは、焦った声だ。
「はい、わかります」
「今日はじめてのバイトだっていうのに、遅刻しそうなんですよ」
「いつもどうやっていかれてますか?」
「面接の時は、246いって、環八をバイクで走りました」
「もっといい道がありますから、そっちで行っていいですか?
覚えられると、約立つかもしれませんよ」
「間に合いますか?」
「246走ったらムリですけど、今から走る道だったらなんとか
なるでしょう」
お客さんと時間の事を確約などしたらダメだ。
間に合わなかったらりしたら、ものすごいトラブルになったり
するのだ。だけど、今夜は自信があった。
実は、少し前に乗せたお客さんと走った道なのだ。
かかった時間は覚えている。
「よ、よろしくお願いします!」
「わかりました!」
「ぜひ!」
「はいな!」
狭い住宅地を中心に走るので、お客さんと会話をする余裕はな
い。
お客さんも時計と流れる風景を交互に見つつ、焦る気持ちを抑
えているのだろう。静かだ。
とにかく、僕は時間までに事故なく到着する事をめざしてビシバ
シ気合いをいれて走ったのだった。
こうして、お客さんが指定した時間より10分も早くドンキホーテ
に到着した。
「着きましたよ」
僕は、お客さんに声をかけた。
しかし、返事がない。
「ここでいいですよ……ね?」
振りかえると、お客さんがいないのだ。
うひゃー!
ついに、僕も幽霊を乗せてしまったのかー!
と、目など三角に釣り上げ、意味もなく『ガッチョーンポーズ』な
ど決めてみたりしつつ、よく見ると、お客さんは床にきれいにはま
っていたのだった。
しかも、熟睡。
あんた、遅刻しそうで焦っていたんじゃないのかねー!
起きろー!