Kapiw&Apappo札幌ライブ 〜CIKISANI

May 24 [Thu], 2012, 16:32
 阿寒湖畔出身の姉妹、札幌で初のライブです。若い世代によるアイヌ・ミュー
ジックを、ぜひお聴きください。

Kapiw&Apappo札幌ライブ 〜CIKISANI
とき 2012年6月2日(sat)open 18:00〜 Start 19:00~
ところ 自家焙煎珈琲と音楽の店 楽天舎
札幌市東区北50条東15丁目2−12 (地下鉄「東豊線」栄町駅、JR学園都市線 
百合が原駅 )http://rakutensha.com/

出演 床絵美 
阿寒湖畔出身 東京在住 幼少の頃よりアイヌ民族舞踊や伝統楽器ムックリなどに触れて育つ。1997から2008年、トンコリ奏者OKIらと共にMAREWREWのメンバーとして活動・2007年から作曲家・海沼武史と共にユニット
Riwkakant結成。初の自主ソロCD「UPOPOウポポ」発表。
郷右近冨貴子 
阿寒湖畔在住。幼少の頃よりアイヌ民族舞踊や伝統楽器ムックリなどに触れて育つ。阿寒アイヌコタンにてアイヌ料理店「ポロンノ」を夫ともに経営。2011年6月「第7回 国際口琴大会INサハ共和国」出場、口琴
コンテスト若手部門にて第3位を受賞。

TIKET ¥2500 (1 drink)
※席数に限りがございますので、ご予約をお願いいたします。

ーお問い合わせー
◎喫茶ポロンノ 0154−67−2159
◎楽天舎    011−704−1101
◎MAIL kapiw2011@yahoo.co.jp
--

アネサラ シネウプソロ

February 21 [Tue], 2012, 21:13
■賛同のお願い
このたび、3月の3日4日と、遠山サキさんファミリーを札幌へお招きし、アイヌの唄と手仕事のイベントを開催します。ファミリーの皆さんのご協力により急遽イベントの開催を決定したため、財団などの助成金なしの手弁当でのイベント運営です。多くの方々に参加していただきたいとのご一同の希望により、イベントの参加費は抑え目に設定しています。遠山さんファミリーには浦河だけでなく阿寒、遠くは東京・千葉からもお越しいただくため、交通費だけでかなりの経費がかかってしまい運営が厳しい状況です。
そこで、一口1,000円から(複数口歓迎)の賛同金を皆様に呼びかけることとなりました。ご協力いただける方は、お名前とご住所(イベント収支報告をお送りします)をメールでpon_syon@hotmail.com へご連絡の上、下記口座へお振込みをお願いします。
皆様のご協力、よろしくお願いします。
口座番号 ゆうちょ銀行 19070−38392631
口座名義 ホリ タエコ
呼びかけ人/アネサラ シネウプソロ実行委員会(越田 清和、花崎 皋平、山口 幸雄、
小泉 雅弘、七尾 寿子、柳幸 恵理子)
■イベント概要
アネサラ シネウプソロ
〜遠山サキさんファミリーと学ぶ、アイヌの唄と手仕事の二日間〜
浦河町姉茶の風土と日々のなりわいの中で、遠山家に代々受け継がれてきたアイヌ伝統文化。その伝承者である遠山サキさん、そして娘の弓野恵子さん、床みどりさん、堀悦子さん、さらに孫、ひ孫の皆さんを札幌にお招きして、アイヌの唄と手仕事を学ぶイベントを開催します。
この北海道に根付く豊かなアイヌの民俗文化に触れ、共に学んでみませんか?
また、外国の方にも、北海道の多層的な文化・歴史に触れていただけたらと考えております。外国籍の方には割引もありますので、是非ご来場ください。
遠山サキさんプロフィール:
1928年生まれ。北海道浦河町姉茶在住。若い頃から周りのフチ(媼(おうな))にウポポ(座り歌)、リムセ(踊り)、手仕事等を生活の中で教えられた。 現在もアイヌ文化の伝承に力を注ぎ、世界の先住民と活発に交流するなど、活躍している。エムシアッ、編み袋、アットゥシ、鮭皮細工、花ゴザ、イラクサの繊維を取る手仕事などを得意とする。

一日目は、浦河地方に伝わるウポポ(アイヌ民謡)を中心としたライブ。
二日目は、手から手へ、口から口へ伝えられたアイヌの手仕事について、サキさんファミリーにお話を聞きながら、ワークショップで実際に体験します。

(アネサラ シネウプソロ 訳:姉茶 ひとつのふところ)
一日目〜ウポポ(アイヌ民謡)ライブ
サキさんと娘さんたちによる浦河地方に伝わるアイヌ民謡、孫の絵美さん、冨貴さん姉妹による阿寒に伝わるアイヌ民謡、またウコクク(アイヌ民謡の輪唱)を教わり皆で一緒に歌いましょう。
日 時:2012年3月3日(土) 17:30開場、18:00開演
料 金:2,500円(1ドリンク付/中学生以下は1,000円引き、外国籍の方は500円引き)
定 員:30名
二日目〜トークと手仕事ワークショップ
アイヌ刺繍のコースター作り、花ゴザのコースター作り、オヒョウの木の皮を使ったストラップ作りなどを予定。
それぞれ遠山ファミリーの皆さんにご指導していただきます。
日 時:2012年3月4日(日)(10:30〜12:30)
料 金:1,500円(材料費込み/中学生以下、外国籍の方は500円引き)
定 員:50名(※予約時に参加希望ワークショップをお伝えください)
会 場:フェアトレード雑貨&レストラン みんたる(札幌市北区)
予約&問合せ:090-2050-3139、pon_syon@hotmail.com(やなぎ/19時以降で)
主 催:アネサラ シネウプソロ実行委員会
共 催:さっぽろ自由学校「遊」

先住民族と核

July 11 [Mon], 2011, 7:29
世界先住民族ネットワークAINU
WIN-AINU 2011
〜アイヌ文化の集い〜第2回 学習会

□と き:2012年7月26日(火)18:30から
□ところ:札幌エルプラザ「OA研修室」
□テーマ:先住民族と核〜ドキュメンタリ
「石油高でウラン鉱山が復活する〜揺れるカナダ先住民族〜」
を観ながら考える!
□講 師:越田 清和 氏
(ほっかいどうピーストレード事務局長、WIN-AINU事務局)
   □資料代: 500円

核の問題は、いつも差別と背中合わせになっている。ウラン採掘にはじまり、核爆発実験の犠牲者、原子力発電所の作業員、核廃棄物処分場、その被害は多くの場合、社会のマイノリティに押しつけられている。とくに先住民族の住む場所は「空白地帯」とされ、ウラン採掘や核爆発実験が行なわれてきた。映像資料をみながら、もう一度、先住民族と核・軍事化について考えます。
                              
□問い合わせ:「世界先住民族ネットワークAINU」
□札幌事務局:島崎(TEL/ FAX:011-593-0655)
□阿寒事務局:秋辺(TEL:090-9519-9392 FAX:0154-67-2457)
この学習会はピースデイズ2011の関連イベントです

ネパール先住民族の音楽を聴く夜

May 20 [Fri], 2011, 6:21
ネパール先住民族の音楽を聴く夜
 5月25日(水) 夜7時から8時30分
 みんたる(札幌市北区北14西3 TEL 011−756-3600
 参加費 1000円(ワン・ドリンクつき)
 演奏する人たち
クリシュナ・グルンさん(49歳。ネパール国立劇場音楽ディレクター及び常勤ミュー
ジシャン)。私財をなげうって伝統音楽のリサーチと後継者育成に尽力している
ネパール民族楽器「バンスリ(竹笛)」の有名な奏者。その温かで実直な性格が
アーティスト仲間からの絶大な信頼を得ている
 ゴビンダ・グルンさん(42歳。銀行支配人をしているが、かねてより出身村の
伝統芸能の継承に尽力しており、その村のグル=昨年100歳で逝去=から認めら
れた一番弟子)。村に伝わる伝統民族舞踊「ソラティ」の名手。他にも民謡など
を作詞作曲したり、その民族の映画に出演したりと芸能をこよなく愛している。
 ブラ・カルカさん(46歳。ネパール国立劇場ミュージックインストラクター及
び常勤ミュージシャン)。ネパール民族伝統打楽器の代表「マーダル(小型の両
面太鼓)」の名手。彼の手にかかると、マーダルがまるで生き物のように見えて
くる。

演奏終了後、「みんたる」で3人のお別れパーティをします。参加費2000円(ワ
ン・ドリンクつき)
主催 世界先住民族ネットワーク AINU
札幌事務局(島崎)090−2056−0272
Maill:naomi1959@jcom.home.ne.jp

COP10という偽善

November 27 [Sat], 2010, 16:10
COP10という偽善

 COP10(生物多様性条約締結国第10回会議)は偽善的な会議だ。
 生物多様性条約には、1)生物多様性の保全、2)生物資源の持続可能な利用、3)遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分、という三つの目的がある。しかし、名古屋で本会場に集まった人の多くは、生物多様性を守ることよりも、それをどう利用するか、その利益をどう配分するか(どれだけ儲けるか)に関心があったようだ。
 COP10参加者の大半を占める各国政府の役人は、生物多様性を守る活動をしてきた人たちではない。北の政府関係者の多くは生物資源などの利用によって利潤をあげようとする企業の考えを代弁し、南の政府関係者の多くは自分たちの国家主権を強め、開発を進めたいと考えている。生物多様性が破壊されている現場から遠い人たちだ。
 では、生物多様性を守ってきた人たち、生物多様性の破壊を止めたいと考える人たちはどこにいたか。ほとんどは会議場の外にいたが、その数は少なかった。会議場の中では、先住民族とNGOの人たちが「生物多様性の正義」を主張していたが、議決権はない。
 生物多様性を本気で守ろう・そのためにはどうすればいいか、生物多様性の破壊を止めるためにはどうしたらいいか・誰が破壊しているのか、などについて、当事者が話しあう会議ではなかったのである。
 会議場の外には「生物多様性交流フェア」のブースが整然と並んでいた。そこは「市民の広場」だったのかもしれないが、立派なブースを出しているのは企業や政府機関、国際機関、自治体など。地元名古屋周辺で生物多様性を守る活動をしている人たちは大きなテントにまとめて入っていた。出店料がいくらだったのかわからないが、フツーの市民や運動体にとってはかなり高かったのではないか。
 会議場の内と外は急いでつくられたフェンスで仕切られていたので、会議場の中にいる人たちのほとんどは外で何が起こっているか知らなかった。会議期間中に埋め立て工事が強行されようとした山口県の上関原発の建設に抗議するため会議場に向かう人たちにビラを渡しているグループもいたが、静かな行動だった。
 会議場周辺でも名古屋市内でも、COP10に反対・抗議するデモはなかった。COP10のような国際会議の場合、会議場の内と外をつないで市民の声を反映させようとするのだが、今回はどのNGO・運動体も積極的にその役割を果たそうとはしなかった。
 たしかに「生物多様性を守ろう」という大目標そのものに反対するのは難しい。しかし何のために生物多様性を守るのか―生命のためか利潤のためか、誰がどういう方法で生物多様性を守るのか―新たな資金を投入した市場メカニズムか先住民族や農民、漁民などの知識と慣行か、生物多様性や生態系を破壊し続けている原因は何か―経済のグローバル化と開発の見直しは必要ないのか、人間と自然との関係はどうあるべきか、など考えるべき問題は多い。そのどれもが、私たちが生きる社会を根底から見直すことにつながる問題である。
 COP10はこうした問題を議論してかのように見えるが、そうではない。近代国家と企業などが生物多様性を守る不利をしながら、そこからどれだけ得るものがあるかを議論する会議だった。
 
 生物多様性条約締結国会議に参加する意義があるとすれば、条約の実施が先住民族・地域共同体(条約では「ILC(先住民族・地域共同体)」と分類される)の権利実現に結びつく可能性があるからだ。
 生物多様性条約は、先住民族の存在を前提にして作られていると言うことができる。それをはっきり示すのが、条約第8条j項(先住民族・地域共同体の伝統的知識の尊重)と第10条c項(伝統的な慣行に沿った生物資源の利用)である。とくに第8条j項は「伝統的知識の尊重・保存・維持、伝統的知識保有者の参加、利益の衡平な配分」と、生物多様性条約を具体的に実施していく時の根幹に関わる問題すべてに先住民族が参加することを求めている。
 今回のCOP10には世界中から180 人近くの先住民族が集まってきた。これら世界の先住民族は「生物多様性に関する先住民族国際fフォーラム(IIFB)」という緩やかなネットワークに所属し、本会議での提案や各国政府への熱心なロビーイングを行なった。2007年に国連総会で採択された「先住民族権利宣言」にある自主決定権、とくに土地や領域、水域と天然資源へのアクセスについての決定権を認めること、そこにある生物資源は先住民族に属するものであり、それを利用する場合には先住民族の同意が必要だ、というのが彼/女らの基本的な主張である。
 生物多様性条約が「尊重」することになっている先住民族の伝統的知識や生物資源の伝統的利用を、各国政府にどうやって先住民族の権利として認めさせていくか、というたたかいなのである。
 今回のCOP10では、「先住民族・地域共同体の文化的知的遺産を尊重するための倫理的行動規範」が採択され、「「愛知ターゲット」の目標18「伝統的知識の活用」で「先住民族・地域共同体の全面的かつ効果的な参加」が認められた(国内法および国際的義務に従って」という留保はついたが)。「名古屋議定書」でも第5条 と第12条に、先住民族・地域共同体の伝統的知識と関わる遺伝資源にアクセスする際には事前に通知・承認を得ること、という追加文書が入った。IIFBの働きかけの成果である。
 IIFBは議長国・日本に対して、アイヌ民族と沖縄の琉球民族は日本の先住民族であり、辺野古/大浦湾での軍事基地建設が沖縄の生物多様性に影響を与えることを憂慮すると述べた。
 沖縄の市民運動・NGOはCBD市民ネット沖縄地域作業部会をつくり、沖縄の環境を考える時には平和と人権を一緒に考えようとしてきた。「沖縄戦」「米軍統治」「日本復帰」「開発」という沖縄の経験が、「環境」「平和」「人権」が分けられないことを教えてきたからだ。しかし、COP10本会議場内で活動していた国際NGOや日本の大手NGOの多くには、この視点が欠けていた。こうしたNGOにとって、COP10は環境問題を考え、条約をより良くするための会議なのである。その意味では、COP10はNGOの限界もよく見えた会議だった。
 COP10に関わるもう一つの意味は、「生物多様性を守る」という目的を、議長国・日本にきちんと守らせることにあった。日本政府が策定した「里山イニシアティブ」では「自然と共生する」ことを謳っているが、日本政府は、それと逆行する政策を行なっている。会議場内にいるNGOなどがそれに抗議できないのなら、会議場の外でその声をあげようと「共同宣言・ニッポンの宿題」が出された。
 私は世界から集まった先住民族のコーディネーターとしてCOP10に参加した。世界中から集まった180人ほどの先住民族参加者は、通訳を介しながら熱心に議論し自分たちの意見をまとめていった。それを見ながら、現場や歴史的な背景を共有している人たちは分かりあえるものが多いなあ、と実感した。
 ほんとうに「生物多様性を守る」なら、先住民族のように貴重な生態系を破壊させまいとたたかっている人たちが集まって、互いの経験をもちより、破壊を未然に防ぐための方法や戦略を話し合った方がいいのだ。
(『インパクション』177号に掲載、一部改稿)

COP10 IIFB開会ステートメント

November 13 [Sat], 2010, 8:51
生物多様性に関する国際先住民族フォーラム(IIFB)
COP10 開会ステートメント 2010年10月18日 名古屋・日本にて

 私たち世界の先住民族の代表団は、日本においてこの機会に参集できることを喜びとしながら、日本の先住民族であるアイヌ民族に感謝の意を表します。
 私たちは、日本が現在、公的にアイヌ民族を先住民族として認めたことを大変喜ばしく思います。
 私たちはまた、琉球・沖縄民族に関しても日本の先住民族であると認識しています。
 私たちは、世界のすべての地域から先住民族としてごあいさつを申しあげます。
 私たちは、日本政府、愛知県と名古屋市がこの重要な会議を主催されたこと、また国際社会において先住民族の権利を支持し、促進するという近年の日本の一連の貢献に対し感謝の意を表します。
 私たちの代表は、多様な生態系を代表するすべての地域からここにやってきました。

———————

 2007年、国連総会は、先住民族が世界の他のすべての人民と同じ権利と自由を持つことを承認し、支持しました。
 私たちは、自己決定の権利を有しており、それは、私たちが私たちの土地、領域、水域および天然資源へのアクセスに関して私たち自身で決定を行う権利を有することを意味します。
 私たちは、自分たちの領域の所有者であり、その領域に存在する生物多様性、生物に由来する物質と資源について全面的な責任を持っています。
 私たちは世界の他の諸人民によって自由に享受されているのと同じ権限を行使する権利、つまり、私たちの領域や資源が利用されようとしている時、自由で事前の十分な情報に基づいた合意(FPIC)の権限を有しています。
 先住民族としての私たちの地位や権利は普遍的に承認されており、今こそ生物多様性条約締約国によって尊重され、実施されなければなりません。
 これらの権利に関して妥協はありえないのです。
 国家によって先住民族が支配されていた時代は終わりを迎えました。

————————

 先住民族の生活は自然やその摂理と分かちがたく結びついています。
 私たちには生物多様性の喪失という事態を転換し、母なる大地の自然で精神的な存在を保護することが必要とされています。
 生物多様性条約プロセスにおける先住民族女性の参加は、条約交渉に重要な貢献をもたらしてきました。先祖伝来の知識を継承してきた私たちの長老は、条約の関連領域の重要な専門家です。
 先住民族の若者は、私たちの土地、領域、水域および資源、そして伝統的知識の継承に対して未来の責任を有しています。したがって、この会議での決定と行動に関して、彼(女)らの全面的かつ効果的な参加を保証しなければなりません。

————————
 私たちは、昨日、10月17日が国際貧困根絶の日であることを認識しています。
 先住民族にとって、貧困は、私たちの土地、領域、そして水域の喪失によってもたらされます。
 領域と資源がなければ、私たちの文化、伝統的知識、生計、発展の権利、そして精神的なアイデンティティは深刻な危機にさらされます。

———————

 本条約締結国が私たちの存在意義や重要性を無視することを、私たちは認めることができません。
 1992年に本条約が交渉され採択された時、私たちの先住民族としての存在と重要性も、私たち自身の領域に対する責任も、十分に考慮されてはいませんでした。
 過去20年のあいだに、多くの議論を経て、私たち先住民族に関する問題が少しは意識されるようになりました。それゆえ、私たちはこれまでの部分的な進歩について、条約締約国のみなさんに感謝したいと思います。
 しかしながら、「第三次グローバル生物多様性展望報告書」は、2010年に向けての目標が達成されていないという、決定的で有害な証拠を示しています。
 そして、Akwé: Konガイドラインが守られてこなかったということは、先住民族にとって重要な目標を2010年までに達成できないということを意味します。
 もし(←★削除)生物多様性と先住民族の権利の保護において積極的な成果を生みだすためには、より多くのことがなされなければなりません。
 締結国会議は、先住民族の権利が条約および関連する機関において定着するように確保する責任があります。
 私たちは、みなさんが自分自身のために設定した目標を達成できなかったことを、重ねて指摘したいと思います。
 もし、私たちや先住民族の重要な役割とアイデンティティを無視すれば、みなさんの失敗は続くことになるでしょう。

———————

 私たちは、先住民族の権利、利益、そして必要がこの会議におけるすべての決定を通じて考慮され、そして組み込まれることをCOP10に要請します。
 私たちは、計画および意思決定、実施のすべてにおいて、その最初から全面的かつ効果的に参加しなければなりません。そしてこの役割は合意文書に明確に反映されなければなりません。
 条約の実施におけるこの非常に重要な局面において、生物多様性条約における議論が先住民族の権利と利益に関わる際、先住民族が必ず参加することをCOP10は保証しなければなりません。

(仮訳:COP10先住民族ニュース取材班/市民外交センター)

COP10と先住民族

November 05 [Fri], 2010, 19:41
 10月18日から名古屋で開かれていたCOP10が29日に終わった。マス・メディアは、遺伝資源の利益配分に関する「名古屋議定書」と2020年に向けた生態系保全の目標「愛知ターゲット」が採択されたこと、採択をめぐって「先進国と途上国の対立」があったこと、交渉を成功させるため議長国・日本は合計70億ドルの途上国支援を決めたこと、などを伝えている(「朝日新聞」2010年10月30日)。
 たしかに、「先進国と途上国の対立」という図式で説明できる部分はあるし、この説明はわかりやすい。しかしこの説明では、生物多様性条約(CBD)の議論において最も重要な交渉主体である先住民族(CBDでは「ILC(先住民族・地域共同体)」と分類される)の存在と主張がすっぽり抜け落ちてしまう。
 生物多様性条約は、先住民族の存在を前提にして作られていると言うことができる。それをはっきり示すのが、条約第8条j項(先住民族・地域共同体の伝統的知識の尊重)と第10条c項(伝統的な慣行に沿った生物資源の利用)である。とくに第8条j項は「伝統的知識の尊重・保存・維持、伝統的知識保有者の参加、利益の衡平な配分」と、生物多様性条約を具体的に実施していく時の根幹に関わる問題すべてに先住民族が参加することを求めている。
 今回のCOP10には世界中から200人近くの先住民族が集まってきた。これら世界の先住民族は「生物多様性に関する先住民族国際ネットワーク(IIFB)」という緩やかなネットワークに所属し、本会議での提案や各国政府への熱心なロビーイングを行なった。IIFBは1996年のCOP3で設立され、COP5で正式の交渉・諮問団体として認められ、これまでのCOP交渉において重要な役割を果たしてきた。「200人近く集まった」と聞いて、「良く集まったなあ」と思う人も多いだろうが、ボンでのCOP9には500人の先住民族が集まっている。今回少なくなったのは、議長国・日本政府が先住民族の参加に支援しなかったからである。
 IIFB(とそこに集まった先住民族)の主張は、COP10開会にあたっての声明にはっきり示されている。そこでは、2007年に国連総会で採択された「先住民族権利宣言」にある自主決定権、とくに土地や領域、水域と天然資源へのアクセスについての決定権を認めること、そこにある生物資源は先住民族に属するものであり、それを利用する場合には先住民族の同意が必要だ、と述べる(全文はhttp://bit.ly/indignewsから読むことができる)。生物多様性条約が「尊重」することになっている先住民族の伝統的知識や生物資源の伝統的利用を、各国政府にどうやって先住民族の権利として認めさせていくか、というたたかいなのである。
 これに立ちはだかるのが、国家主権とその背後にある企業の利害という論理である。ここには「南北対立」は顔を出さない。カナダ政府は、名古屋議定書草案にあった「国連先住民族権利宣言」への言及を除外し削除すべきだと主張し、ニュージランド政府も「人びとの幸福」に関わることへの言及は生物多様性条約の権限を超えていると主張した。インド政府は愛知ターゲットの目標18「伝統的知識の活用」にある「先住民族の全面的かつ効果ある参加」という文章に「国内法に従って」という文言を入れるよう提案した。
 最終的には、この主張が通って、先住民族の権利は制限付きでしか認められていかない。これが国連会議の現実である。数ある国連会議の中でも最も先住民族を重視している生物多様性条約の会議でも、この壁はまだまだ高い。
 しかし大きな成果もあった。「先住民族・地域共同体の文化的知的遺産を尊重するための倫理的行動規範」の採択と「国内法および国際的義務に従って」という留保はついたが「愛知ターゲット」の目標18「伝統的知識の活用」で「先住民族・地域共同体の全面的かつ効果的な参加に」が認められたことである。また「名古屋議定書」でも第5条 と第12条に、先住民族・地域共同体の伝統的知識と関わる遺伝資源にアクセスする際には事前に通知・承認を得ること、という追加文書が入ったことも成果といえるだろう。
 問題は、これがどう実施されていくかだ。
(「反改憲運動通信」2010年11月10日号に、一部改稿して掲載)

生物多様性に関する国際先住民族フォーラム(IIFB)の最終声明

November 03 [Wed], 2010, 9:25
生物多様性に関する国際先住民族フォーラム(IIFB)の最終声明
第10回生物多様性条約締結国会議(COP10)
2010年10月29日 名古屋

議長、ご臨席の閣僚および参加者の皆様、先住民族の兄弟姉妹

 本日、私は生物多様性に関する国際先住民族フォーラム(IIFB)を代表して
声明を読みます。

 2週間におよぶ作業と長時間の議論、多くの交渉を重ね、COP10が終わろうとし
ています。私たちIIFBの代表たちは、先住民族女性の参加もえて、私たちの提案と
考察をもってすべての議論に積極的に参加しました。

 IIFBは、先住民族と地域コミュニティの文化的知的遺産に対する尊敬を保証す
る倫理的行動規範の採択を歓迎し、条約締結国と利害関係者が先住民族と関わる
際にはこの規範を活用することを求めます。私たちは、8条j項の作業プログラムに
おける慣習的持続可能な使用に焦点があたったこと、生態系管理と生態系サービス、
保護地域に関する真剣な議論のためのテーマも歓迎します。

 私たちは、厳しく集中した議論の中でも先住民族・地域共同体の権利に関する
関心を表明するという、締約国が示してくれた配慮の気持ちに感謝します。妥協は
強いられましたが、戦略計画の決定過程と実施における先住民族・地域共同体の
全面的かつ効果的な参加の権利が認められたこと、指標に関するIIFBの作業を、
私たちは指摘したいと思います。

 COP10における決定を先へ進めることを、私たちは強調します。締約国が合
意されたことを公約とし実行しなければ2020年目標は再び失敗することになりま
す。私たちの権利−とりわけ「先住民族の権利に関する国連宣言」、全面的かつ
効果的な参加、伝統的知識と慣習的持続可能な利用−の正当な承認と尊重によっ
て、私たちは条約の目的に従って前進することになるでしょう。

 先住民族は、とくに自分たちの領域と生物多様性において、気候変動の悪影響
に直面しています。締約国が、経済的および非経済的な動機がもつ社会的文化的
な側面について配慮を払わなければ、私たち先住民族の生物多様性と生き方を保
護することはできないでしょう。私たちにとって、その配慮とは、回復、適正技
術の移転と能力形成、恩恵の公正かつ衡平な分配、そして何よりも私たちの自主
決定権の尊重なのです。

 ABS名古屋議定書の採択にともない、締約国政府は、遺伝資源と関連する伝統
的知識を重視した国際法上の責任を明確にしたことになります。先住民族と地域
コミュニティはすでに精神的価値と倫理規範、慣習法、自分たちの土地と領域、
資源、伝統的知識についての導きとなる確立された権利を持っており、それらは
尊重されなければなりません。

 締約国は、先住民族の慣習と人権を支持し伝統的知識を保護する施策を国内法
に盛り込むことを受け入れました。しかし、生物学的海賊行為を止めるためにす
べきことはまだまだあります。その公正かつ意味ある実行のために、私たちは各
国政府と共に働くことを期待します。

 私たちを受け入れてくれた日本政府と私たちの兄弟姉妹である日本の先住民族
のもてなしに感謝したいと思います。そしてIIFBは、辺野古/大浦湾での軍事基
地建設とそれが生物多様性に与える影響という沖縄の兄弟姉妹についての憂慮を
表明したいと思います。

 議長、最後になりますが、COP10が終わる今日、そして国際生物多様性の年で
ある2010年の終わりにあたる今日、私たちは1992年に決めた未来に生きています。
しかし私たちは何を達成したのでしょうか。いつまで未来を見つめなければなら
ないのでしょうか。今こそ動き始めるべきです。

 議長、ありがとうございました。

COP10での先住民族関連イベント

October 08 [Fri], 2010, 10:20
名古屋でのCOP10の時に行なわれる先住民族関連のイベントです。
http://indigenousnet.blog75.fc2.com/ にも載っています。10月15日〜17日まで、国際先住民族フォーラムの準備会合も行なわれますが、これは非公開の戦略会議なので、先住民族以外の方は基本的に参加できません。

1.国際先住民族フォーラム(IIFB)主催夕食会

日時:10月19日(火) 午後7時から9時
場所:朝日新聞名古屋本社1階 ダンスホール・ウィンターガーデン
(名古屋市中区栄1−3−3)
主催:国際先住民族フォーラム(International Indigenous Forum on Biodiversity)

IIFB主催で開催するレセプション(夕食会)です。
当日は、先住民族による踊りや歌の披露もある予定です。
入場料は設けない予定ですが、寄付を呼び掛けるかもしれません。

2.国際先住民族フォーラム(IIFB)サイド・イベント

サイド・イベント1「先住民族に関連する指標(INDICATORS RELEVANT FOR INDIGENOUS PEOPLES)」
日時:2010年10月20日(水) 18:15 - 19:45 
場所:名古屋国際会議場 Room 236 - Bldg 2 - 3rd Floor
主催:TEBTEBBA、国際先住民族フォーラム・指標に関する作業部会(THE IIFB WORKING GROUP ON INDICATORS)

サイド・イベント2「農業生物多様性と食の安全保障に関する先住民族の知恵(INDIGENOUS WISDOM FOR AGROBIODIVERSITY AND FOOD SECURITY」
日時:2010年10月21日(木)
場所:CENTURY HALL - Bldg 1 - 1st Floor
主催:国際先住民族フォーラム(INTERNATIONAL INDIGENOUS FORUM ON BIODIVERSITY)

*場所の名前が一部英語ですみません。日本語表記のものが掲載されていないので、取り急ぎ英語表記のまま掲載します。両方とも本会議場(名古屋国際会議場)での開催ですので、COP10本会議への参加登録が必要となります。

3.「先住民族・地域共同体の日」
日時:2010年10月20日(水) 9:30-21:00
会場:名古屋国際会議場 エコシステムと気候変動パビリオン
主催:国連開発計画(UNDP)、生物多様性条約会議事務局(SCBD)

*9時半のオープニングで、アイヌ民族によるお祈りの儀礼あり

4.CBD市民ネットグローバル対話フォーラム
日程:10月19−28日
会場:名古屋学院大学体育館2階 大会議場
先住民族関連の部会:
10月19日(火)10時から12時
「13人のグランマザーから」
10月28日(木)10時から12時
「2050年のための戦略 先住民の知恵に学ぶ、地球市民のために」
主催:CBD市民ネットワーク

5.先住民族サミットin あいち 2010

主催:愛知県立大学、WIN-AINU(世界先住民族ネットワーク=アイヌ)、朝日新
聞社)
10月15日(金)13:00〜16:00(朝日新聞名古屋支社内の朝日ホール)
セッション1「先住民族の現状と生物多様性」
基調トークは、萱野志朗、山田勇、渡邊欣雄、カナル・キソル、稲村哲也
 16:00〜18:30 朝日新聞社前の屋外スペースでマウコピリカ音楽祭(アイヌ
アートプロジェクト、ミナミナの会など)
10月16日(土)モリコロパーク(地球市民交流センター)(10:00〜18:30)
 セッション2「先住民族の研究と実践」10:00〜14:00(休憩12:00〜12:30)   
小野有五、清水展、後藤明、結城幸司、阿部健一、先住民族の代表(数名)
セッション3「人類の進化と古代からのメッセージ」12:30〜14:00(並行開催) 
渡邉毅、大貫良夫、杉山三郎
 マウコピリカ音楽祭:地球市民交流センター・屋内広場14:30〜17:30
10月17日(日)野外民族博物館リトルワールド
 ・カムイノミ:リトルワールドのアイヌ家屋10:30〜11:00
 ・トリンギットとアイヌ民族の口承伝承:リトルワールドのトリンギット家屋11:30−12:00
・先住民族音楽祭 12:45〜14:00 
10月18日(月)愛知県立大学学術文化交流センター(12:50〜17:40)
12:50〜16:00 セッション4「生物多様性と先住民族の役割・研究者やNPOの連携」
  小野有五、山田勇、萱野志朗、結城幸司、阿部健一、本多正也、先住民族の代表(数名)

軍増強計画に反対するグアム住民

May 23 [Sun], 2010, 9:46

 新聞などでは、毎日のように沖縄の米軍普天間基地の移設先がどこになるのか、が話題になっている。「キャンプ・シュワブ陸上プラス徳之島移転案」、「勝連沖埋め立て案」、そして「グアム」。しかし移設先として名前が挙がったところではどこでも、「米軍基地はいらない」という声が高まっている。
 これまで「米軍基地移転受け入れ」ではないかと思われてきたグアムでも、いま進められようとしている「米軍増強計画(military buildup)」に対して反対・再考の声が高くなっている 。〇九年一一月二一日に米軍増強に関する環境影響評価書(EIS)の素案(以下、EIS素案) が発表され、これまで曖昧にされてきた米軍増強計画の中身がかなりはっきりしてきたことが、その最大の理由である。米軍増強計画は大きく、一)沖縄から八六〇〇人の海兵隊とその家族九〇〇〇人を移転し、あわせて海兵隊の訓練機能・飛行場機能・沿岸機能も移転する、A)原子力空母寄港のための埠頭建設などアプラ海軍基地の拡大、B)陸軍対空・ミサイル防衛部隊の配備、に分けることができる。これを二〇一四年までに実現しようというのだから、グアム住民にとっては大問題である。
 一万ページを超えるこの膨大なEIS素案に対するパブリック・コメントの期間が三カ月しかなかったことも、グアムの人たちを怒らせた。グアム住民の声など無視してもいいという米国政府の態度が、そこにはっきり示されているからだ。
 私は二月一四日から二五日にかけて、ピープルズ・プラン研究所の山口響さんとグアムでいろいろな人たちの声を聞き、議論をしてきた。そして、今グアムで起こっている動きを、米軍基地見直しを求める「島ぐるみ」のたたかいと言ってもいいのではないか、という印象をもった。グアムでの新しい動きを紹介したい。

 「環境影響評価」素案への意見表明
 私たちがグアムを訪れた二月中旬は、米軍基地増強をめぐって、グアム社会全体が大きく動いている時期だった。
 二月一一日には日本の政府・与党の沖縄基地問題検討委員会のメンバー(国民新党の下地幹夫や社民党の阿部知子など)が、「グアムを普天間基地の受け入れ先に」という社民党の提案が実現可能かどうかを調べるためにグアムを訪れ、州知事やグアム議会の議員たちと話し合った。日本の議員は「普天間基地の移設先」としてのグアムしか念頭になかったようだが、グアム側が問題にしているのはグアムにおける米軍増強計画全体であり、2009年に2月に日米が結んだ「グアム移転協定」によって、日本政府がこの計画にかかる資金の60%近くを負担することになっている。この米軍増強計画だけでも受け入れがたいのに、それに加えて普天間基地の移設を打診するという日本側の態度は、グアム側にとっては論外ということである。
 二月一七日は、「EIS素案」に対するパブリック・コメントの締め切りだった。この締め切りを視野に入れ、グアム議会は、満場一致で「EIS素案に対する所感」を決議した。この決議はかなり強いトーンでグアム住民の意向を無視した軍事増強計画への不快感を示している。
「米国における最も小さいコミュニティの一つで、米国史上最も大規模な平時における米軍増強強化が計画されているが、このように過大な軍事的負担を強いるのであればグアムの市民コミュニティのことをもっと深く真剣に考慮しなければならない」。 
 二月一五日には、一一月に任期を終えるフェリックス・カマーチョ知事が、任期中最後の「グアム島一般教書演説」を行なった。カマーチョ知事は、日米グアム協定が結ばれた一ヶ月後に「米軍幹部、グアム議会議員、経済界代表など二一人からなるタスクフォース」 を召集したことに示されるように、米軍増強を歓迎し、グアム島の住民に向かっても米軍増強を支持することを訴えてきた。しかし、この日の演説では「EIS素案」を批判し、このままでは「EIS素案」を受け入れられないと明言している。
 カマーチョ知事が問題にしているのは、一)米軍増強にともなう「痛み」を軽減するための社会整備資金を米国政府がはっきり示していない、二)2014年までに米軍増強を終えるという期間が短すぎる、三)実弾射撃場の設置とアプラ海軍基地の浚渫工事の見直し、である。とくに、三)の実弾射撃場の設置にともなって提案されている「グアム先祖土地委員会」と「チャモロ土地トラスト委員会」が所有する土地の強制収用については、支持しないことを明言している 。
 翌二月一六日には、グアム島選出の米連邦下院議員(ただし投票権はない)マデーレン・ボダーリョが議会報告を行なった 。彼女も米軍増強はグアムの経済を好転させるとして、米軍誘致を積極的に行なってきた一人である 。しかし、この報告で彼女も「EIS素案」に対する批判をはっきり述べた。米軍増強によってグアム住民が再び土地を奪うわれることに反対だとし、「現在の基地内で米軍増強を行なうべきだ」と言う。そして、射撃訓練場の建設と原子力空母入港のための浚渫工事によるサンゴ礁破壊を見直すこと、グアム住民の社会・経済的な改善について全面的に書き換えることを求めたのである。
 もちろん、ここに挙げたグアムの政治家たちの発言が全て米軍増強に反対するものだとは言えない。州知事や下院議員が米軍増強受け入れという姿勢を変えていないことも明らかだ。とはいえ、全ての政治家が、米海軍省が提案した米軍増強計画に対して今のままでは受け入れられないという立場を示し、米国中央政府にグアム住民の声を突き付けたことの意味はきわめて大きい。
 
グアムの軍事化に反対する新しい動き
 このように、州議会・知事・地元選出下院議員がこぞって、米国政府(正確には米海軍省グアム統合計画開発室)の作った「EIS素案」を支持しないという声を挙げるのは、先に述べたように、この米軍増強計画がグアム住民を無視して進んでいることへの強い反発からだ。グアム住民を無視しているのは米国政府だけではない、米国の言いなりになって米軍増強計画に資金提供する日本政府も同じである。
 グアム島は、沖縄本島の半分ほどの面積に一七万人が住む小さな島である。そこに八六〇〇人の海兵隊員とその家族九〇〇〇人など最大で八万人が新たにやってくる、日本と米国が合計で一〇二・七億ドル(約一兆円)の資金を投入する。こんな大改造計画にもかかわらず、住民の暮らしや大事にしてきた文化、グアムの重要な産業である観光業に与える影響は全く考慮しないで「環境影響評価」素案がつくられた。この案をつくったのはハワイにある合弁コンサル業者「AHLセティアデ・グシケン」社である。
 米連邦環境保護局(EPA)も、現行の計画のままでの実施は認められないと、素案に「落第点」をつけた。その理由として、急激な人口増を予想しているにもかかわらず、上下水道整備計画が不十分で住民の健康に大きな被害が予想されること、アプラ港の浚渫工事によってサンゴ礁による生態系が破壊されることなどをあげている。ずさんな計画だと言ってもいいだろう。
 このまま米軍増強が進んでいけば、自分たちの暮らしや文化、自然環境が破壊されると考え、多くのグアム住民が声をあげ始めている。グアムに投じられる巨額の資金が米軍基地の機能増強と米兵の住宅環境の改善などだけに使われ、「フェンスの内」(米軍基地)と「フェンスの外」(グアム社会)の格差がさらに広がることも、米軍増強への反感を募らせる理由となっている。
 住民の多くが米軍基地のことに関心をもちさまざまな声をあげるようになったのは、「今までになかったことだ」と、多くの人が話してくれた。この新しい動きの中心にいるのは、これまでグアム島の軍事化に反対してきた「チャモロ・ネーション」のような先住チャモロ人の組織というよりも、グアムの環境や経済に関心をもつ若い世代だ。
 その中心となって積極的動いているのは、グアム大学の教員や学生などを中心にした「We Are Guahan 私たちはグアハン」(http://weareguahan.com/)というグループだ。このグループは、「EIS素案」の問題点をわかりやすく説明するリーフレットを作ったり(何しろ一万ページ以上もあるのだから、それに目を通すのは容易なことではない)、グアムを訪問する予定になっているオバマ大統領に「グアムの声を聞く」よう求める署名を集めたりしている。学生を対象に、強制収用の対象となる場所や浚渫工事で破壊されるかもしれないサンゴ礁へのエコ・ツアーを行なっている。
 これは、確かに新しい動きだ。しかし、このグループが自分たちの名称を米国の占領にともなって付けられた「グアム」ではなく、島の本来の呼び名である「グアハン=私たちは・持つ」と付けたことが示すように、自分たちの「島」が植民地とされている歴史を強く意識していることも明らかだ。一八九八年の米国によるグアム占領と同時に米海軍の基地が設置されてからすでに一〇〇年、今もグアム島の三〇%近くを米軍が保有している。一九四四年八月に、米軍が日本からグアムを「解放」してから、そのまま接収(強奪)した土地である。「EIS素案」を検証することは、米国によるグアム侵略・占領・再占領という歴史をもう一度見直すことにつながっている、という印象を私はもった。
 「We Are Guahan 私たちはグアハン」は、「チャモロ人の自決権」を掲げた運動ではない。しかし、若い世代が中心となった運動の背景には長い間「脱植民地化」と「自決権」を訴えてきた先住チャモロ民族のたたかいの歴史がある。グアムにおける米軍増強の問題は、先住民族の権利の問題でもある。
 米軍増強計画に対して、日本政府はすでに二〇〇九年度に約三五三億円を出し、二〇一〇年度予算では約四六八億円を計上している。二〇一一年度からは、国際協力銀行による融資(米軍住宅建設)も計画されている。グアムは日本が四年近く占領し、殺りくと破壊を行なった島である。それに対する補償も賠償も、グアムが「アメリカ領」だということで一切行われていない。にもかかわらず今度は、その島を再び軍事化するために日本の公的資金が大量に投入される。
 何より先ず、この歪んだ関係を正す必要がある。そのためには、まず米軍増強計画への資金提供をストップすることだ。環境影響評価も認められていない計画に資金を出す理由はどこにもない。そして国連の先住民族権利宣言に賛成している政府として、この宣言が先住民族の土地における非軍事化(第三〇条)をはっきり謳っていることを真面目に考えるべきである。グアム島は国連が脱植民地化を進めるべきとした植民地の一つでありチャモロ民族の自決権・先住権の尊重こそが、いま日本政府がすべきことなのである。。
 「島ぐるみ」で、「米軍基地見直し」の声をあげているグアムと「米軍基地はいらない」という声をあげている沖縄。米軍基地を押し付けられた二つの先住民族の島の動きは、米軍基地はどこかに移転するのではなく、閉鎖し、その土地を住民に返還すべきであることを伝えている。
 
 
 
2012年05月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
最新コメント
yutakarlson
» G8サミットと北海道(2) (2008年02月05日)
Trisha Black
» やちむんのライブに行った (2007年12月18日)
なっちゃん
» バタバタした日 (2007年04月17日)
まめちゃん
» バタバタした日 (2006年10月13日)
かくぼん
» 蟻の兵隊を観た (2006年10月05日)
Yapme!一覧