これは誰がやったのでShow 後編 

July 12 [Sun], 2015, 15:32
それからしばらく私は
他の容疑者と一緒の部屋にいた。
当然帰れるわけはなく。
ただただ探偵が来るのを待つだけだった。
無機質な講義室で何もしないというのは
どれだけ苦痛なことか。
一秒一秒が長く感じる。
こんなことをして待っていたら気がくるってしまう!
そうだ、今のうちにあの二人に詳しく話を聞いてみようかな。
「ねぇ、お二人さん。
こう何もしないのも苦痛だし少しお話しませんか?」
二人は少し怪訝そうな顔をしたが、
このまま何もしないのも嫌なのか
しぶしぶ話をできることになった。


 「私は貴方達二人は白だと思っているんです。
確証はないけど、
動機も薄いし、
それに、証拠もない」
そう言うと二人はすぐに食いついた。
「そうよ!私がここにいる意味が解らないわよ!」
「そうだよ!僕たちは何もしていない!」
二人は必死に弁解しだした。
「じゃあ、一応事件が起こった時間に
何をしていたか教えてもらえる?」
「……私は、普通に講義に出ていたわよ。
友達や教授に聞けばすぐにわかるわ!
昼休みは友達とご飯を食べていたの。
食堂でね。私が席を外したのはお手洗いに行った時だけ。
それも、食堂近くのを使ったから。
あんな入り組んだ場所にある所に行くなんて無理よ。
確かに少し戻るのは遅くなったけれど。
それは、少し化粧を直していたからよ。
証言してくれる人はいないけど……本当よ!」
「僕は昼休みは家にいたよ。
午後から講義だったからそれまで家で
準備をしていた。
一人暮らしだから商人はいないけど……。
あ、でも、下の階のおじさんに会って
あいさつしたから証拠になるかもしれない。
それから講義が始まるぎりぎりに登校して、
講義室に向かったよ。
でも、僕の場合午前中のアリバイがないんだ……」
なるほど、きっと警察はさおりに関係のある
人物の中でアリバイのない
時間がある人を調べたらこの二人になったってわけか。
でも、二人とも犯行は無理だ。
殺されたのは恐らく昼休み。
私が発見したのは午後の最初の講義の時間。
トイレに行ってから戻ってくるまで
少し遅かったとしてもその時間であの現場まで行って、
被害者を殺すのは難しい。
午前中にアリバイがなかったとしても、
彼は男だ。
女性用のトイレでわざわざ殺すとも思えない。


 そう言えば、被害者は
どうやってあそこに呼び出されたんだ?
そこも解明しないといけないな。


 「そして、あんたは?」
「私?私は午前中は講義が入っていたわ。
昼休みは友達とご飯を食べたの。
談話室でね。
で、眠たかったのか昼休みのことはあまり覚えてないの。
気が付いたら談話室のテーブルに突っ伏していた。
多分寝ていたのね。友達が隣にいて
心配そうに見てた。
で、午後の講義は休みだったからそこで過ごすことにしたの。
そして、お手洗いに行ったら。
あの遺体を見つけてしまったのよ」
そう、私が殺していないということは火を見るよりも
明らかだ。
それは自分が一番わかっている。
「多分、犯人はこの中にいないんじゃないかな。
それか、誰かが嘘をついているか。何らかのトリックを使ったか」
多分前者だとは思うが。
「それに、そろそろ私の知人の探偵が来るから。
安心していいよ。きっと無実が証明される」


 その時、学校の外から車のタイヤがこすれる
すさまじい音がした。
この音は……
「清水警部!」
窓の外にはいつも車の運転が雑な清水警部と、
隣でぐったりしている越上警部。
その後ろには死にそうな顔をしている探偵のみんながいた。
「相変わらずだなぁもう」
私は思わず顔を緩ませた。


 「……それで、凶器はその包丁だったのよね」
「あぁ、警察側がそう言っている。
指紋はついていない。
柄の所に帰り血が付いていないのでなにか
ビニールなどをつけていた可能性があるかと思われる。
指紋は見つからなかったので予め準備して殺したと考えられる」
「なるほど、衝動ではなかったということか」
越上警部と美羅は真剣に話をしている。
他の探偵は証拠を探したりアリバイを確認したりしている。
それによって、私以外の二人のアリバイはかくりつされた。
しかし。私のアリバイはないままだった。
と、言うのも……


 「さっき吉野の友人に聞いてきたところ。
吉野は昼休み中に一度席をはずしている。
そして、長い間戻ってこなかったらしい。
そのことを教えてくれないか?」
そう言ったのは坂木と言う男だった。私を疑うのは辛いのかなんだか悲しそうな顔をしている。
「それが、何も覚えていないんだよね。
寝ていたと思ってたけど。
席をはずしてたんだね」
「……これじゃアリバイが成立しない。
もしかしたら容疑者として捕まるかもしれないよ」
「大丈夫だよ、証拠がないもの」
そういったものの、なんだか探偵団は私に疑いの目を注いできた。


 どうして、私はやっていない。これは本当のことなのに。
「ねぇ吉野。落ち着くために少し散歩に行かない?」
「……由乃……」
私は黙ってうなずいた。
今日はいい天気だな。
なんて、関係ないことを考えながら歩いた。
「吉野がやってないって言うのはわかるよ。
だから、ちょっと落ち着こうよ」
「うん」
「でもどうしてもわからないのは。
吉野に席を外した記憶がない。
っていうところなの。友人が嘘をついているのか。
それとも、夢遊病のような形で動いていたか」
「……たまに、記憶がなくなっているときがあるの。
そういうときは大抵寝てしまっていたと考えているんだけど。
全く違う場所にいたりするのよね。どうしてだろう……」
「……」
それは高校を卒業する前からだった。
突然眠気が襲って目を閉じると。
知らない部屋にいる夢を見る。
そして、起きるとまた同じ場所。
寝てたのかななんて思うけど。
歩いていたでしょといわれることがある。
私に似た誰かか、私がかってにうごいているのか。
それすら分からない。
うして始まったんだろう。
それはいつから起きていただろう。
思い出せない。
思い出したくない。


 「あ、吉野。美羅が犯人わかったって」
「本当?」
「うん」
私たちは大急ぎで学校へ戻った。
さっきの二人の容疑者含め、
全員が講義室にいた。
「これから推理を始めるよ。
この事件はとても簡単な事件だったよ。
でもね、きっと私たちじゃなきゃ解けなかった。
……さおりちゃんは入り組んだ場所にある人気のないトイレで
殺害された。
近くに会った包丁で刺されて失血死したと考えられる。
その包丁は返り血を防ぐ細工もしてあったと思われる。
その細工がこれ。……ルーズリーフ。
しかも沢山つなげて大きくしてある。
そして、犯行は昼休みに行われた。
犯人がトイレに行くと見せかけて途中であったさおりちゃんを連れて
一緒に行ったんだ。
そこでトイレに入る寸前のさおりちゃんの
背後から刺そうと思ったが、
突然振り返ったので腹に刺さった。
そのまま便器に座ったんだ。
いや、座らせた。
ここで叫んだところで、人気がなく、
他の場所は騒がしいこの大学では目立たなかった。
そして、何食わぬ顔で戻ったんだ。
それができるのはこの中で一人しかいない」
美羅は言葉を詰まらせた。
そして、ぼろぼろと涙を流した
。どういうことが全く分からなかった。
でも、なんとなくわかっている気がした。
「……吉野。貴方が犯人だよ」
「私が?」
「正確に言うと、今の吉野じゃない。
……吉野は人格がもう一つできてしまっている。
信じられないかもしれないけど。
吉野は裏に別の人がいる。
その人と話したいから出てきてくれないかな」
裏の顔?人格がもう一つ?頭の中がぐるぐるする。
そしてまた意識が遠のいた。


 「よお、なんで僕が犯人だってわかるのさ」
「貴方が吉野のもう一つの人格ね。
まずアリバイがないわ。
そして、部屋にあった包丁もなくなっている。
ここまでくればもう明らかよね。
そして、ルーズリーフは燃やしたのよね。
貴方がマッチかライターを持っていたら確実。
それとももう捨てたかしら」
「あーあ、ばれないと思ったのにな。
ライターはほら、
そこの窓のくぼみに
で、そんな大層なことをやってのけた僕の殺害動機は?」
「喧嘩よ。高校卒業少し前。
さおりちゃんと喧嘩したのよね。
それで、表向きには押し込めていた怒り、
恨み、憎しみは無意識に閉じ込められ
、大きくなりすぎて貴方になったのよ。
そして、この二つの間で記憶の共有はされない。
そして、他人にも気付かれない」
「あぁ、よくわかったな。
あの女は僕を裏切ったんだよ。
ずっと友達とか言っておいて。
おかしいもんだよな。
それで勉強に手がつかなくなって。
ネットに逃げて。
本当大変だったんだぜ?
なのに、こいつはそんなことも知らず楽しそうに
へらへらしやがって。
殺したかったんだよ。あの時から。
ずっと」
「そんなこと、表の吉野が知ったらどう思うか」
「しらねえよ。あいつが作った無意識なんだからさ」
「でも殺したのはあなたよ」
「……それもそうか。
でも、どうしてお前らだからわかった事件なんだ?」
「吉野と昔ずっと一緒にいたんだから。
親友の異変くらいすぐ気がつくわよ。
会ったときからなんだかおかしいと思っていたから」
「なるほどな」


 「越上警部。こいつを。吉野を逮捕してください」

 美羅は泣きながらそう言った。
どうして、私はやっていない!
私は汗を流し、手をばたつかせて。


 目が覚めた。


 見なれた天井。
いつも通り落ちてしまった布団。
不快感ののこる手首。
激しく上下する肩。
「夢か」
そう言葉にするととたんにほっとした。


まだ暗い未明の部屋で私はほっと溜息をついた。
プロフィール
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  • アイコン画像 ニックネーム:白銀文京
  • アイコン画像 性別:女性
  • アイコン画像 血液型:A型
  • アイコン画像 現住所:北海道
  • アイコン画像 職業:大学生・大学院生
  • アイコン画像 趣味:
    ・小説を書く-みなさん知っての通りですね。
    ・絵を書きます-あまりうまくはないですがね。
    ・吹奏楽-ホルニストにしてトランペッター
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空想。

君が死んで
私が悲しみに暮れぬよう
私は世界を作るよ

誰かを迷わせて。

たくさん作り上げて

そうしてできた私の
空想

誰でも来れる。
空想の世界を

君の名前にちなんで

ソラの庭と名付けるよ

 『ソラの庭』

*************

退屈そうだねそこの娘さん。
暇そうだねそこの君。

楽しい物語を見に行かないか?

君の望んだ世界。
私の望んだ世界を
一緒に見に行こう?

ほらおいで。

見破ってみて。
分るかな?

「ここは現実だって断言できますか?」
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