第一章「夢と日常」 

July 22 [Sun], 2007, 4:11
夢を見た。
たぶん悪夢。
最近は悪夢しかみない(・・気がする)
でもそれが、良いとも嫌ともとれない。

・・・今は、ね。

普通なら、悪夢に魘されて勢いよく起き上がるだろう。
けど、奈緒はそんな身振りを見せもせず、
慣れているかのように自然に目を開けて自然に体を起こした。
七歳の頃、この全寮制の学園に入学してから
早九年。
先月高校生に進学した。
両親には会ったことがない。
両親について覚えているのは、

ただただ真っ赤な部屋と、見慣れた背中が手に持つ赤い液体に染まった刃物。

しばらく自分にかかっている自分の髪の毛と同じ、
水色の掛け布団に目をやりながら、
ぼんやりしていた。

部屋にあるシックチックな掛け時計が静かに
「シャボン玉」
の歌をオルゴール状にして流した。

時計を持ち上げる白いペガサスと黒いユニコーン。

風と水をイメージした飾りの上で、アリスとなずけられた少女がくるくる兎と踊る。

夜中の三時。

また同じ時間。
と思いつつも、ベットから降りてスリッパを履く。

同居人の愛海はクゥクゥ寝息を立てている。

奈緒は安心したような表情を浮かべて、
小さな窓を開けた。

真正面は綺麗な海岸。
下を見れば、あたり一面にある
砂に埋もれたビンがきらりと光る。

潮の匂いが鼻につんとくる。

潮風が奈緒の長い髪の毛をそよそよ靡かせる。

梨緒は窓によっかかって、波打つ海を見ていた。

「なんだろう・・・
あれは・・・あれらは・・・誰なのかな・・・
なんであんなに必死に私を・・・
無駄な行為なのに・・・」

奈緒は小さくため息をついた。

毎日同じ夢を見て、
毎日同じ時間に起きる。

この音楽だって、
何回も聞いている。

「・・・寝よう。」

静々とベットに戻って、
布団にもぐりこんだ。

今度こそ、いい夢を・・・

『・・・・ありがとう。』

優しい声。
だけど聞いたこと無い・・

多分、近い存在だと思う。

鳥の声に目を開ける。
部屋の中、良い匂いでいっぱい。

寝る前に閉め忘れた窓からあふれる潮の香りと、良い匂いが混ざって
ちょっと変なにおい。

「あふ・・・」
と、寝ぼけたまま起き上がると、
クラスメイトの愛海が、台所に立っていた。

「あう・・・愛海?」
寝ぼけながら目を擦る奈緒の声に

「あ。奈緒?
おはよ。起きた?」

「あう・・・愛海最近早いね。」
「何を言う。
最近奈緒遅いよ。
なんかあった?
必ず窓開いてるし。」

「・・・別に、最近夜中起きるようになって・・・」

「もう。もうじきご飯できるから、顔洗ってきて。」

「はう・・・」

ノソノソと洗面所に向かって、
寝ぼけた自分の顔を見て蛇口を捻った。

手の中から逃げるように流れ行く水。
その水をじっと見つめている。

水が入った手を顔に近づけて顔を洗う。
それを二回ぐらい繰り返して、
蛇口を閉めてタオルで顔を拭く。

ボサボサの髪の毛を愛用のブラシで梳かして身支度終わり。

再びノソノソとリビングに戻って、
パンやサラダが乗ってる机の椅子に座った。

コーヒーが入ったカップを持って愛海も席に着いた。

「最近は本当に奈緒起きるの遅いね。」
「うーん・・・」
「夢を見ているって言ってるけど、どんなの?
奈緒が夜中に起きるほどの夢とは。」

奈緒はコーヒーをすーっと啜って、
「そうねえ。
どんな夢って聞かれても、説明しにくいかな。」

愛海はパンを齧りながら不貞腐れ顔でそっぽを向き、
おへそを机からそらして足組をしながら
「なあんだぁ。
怪獣マユゲノドンに襲われてる夢かと・・・」
「マ、マユゲ?」

「怪獣マユゲノドン。
今度の学園祭で出てくるらしいじぇ。」

奈緒は『か、怪獣ヲタク・・・』
と思いながらサラダを頬張った。

それから三十分間ぐらい、
愛海のマユゲノドン以外のちんぷんかんぷんな怪獣話が続き、
慌しいように愛海は食器をを洗い、
その間に奈緒は制服に着替えた。
P R
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